川口市のクルド団体「テロ支援」の疑いをかけられ資金凍結

あらー。

＜独自＞川口のクルド団体「テロ支援」トルコが資産凍結　地震で「４千万円」、団体側「冤罪だ」

2023/12/5 13:54

埼玉県川口市に在留するトルコの少数民族クルド人の団体「日本クルド文化協会」と同協会の代表者らについて、トルコ政府が「テロ組織支援者」に認定、トルコ国内の資産凍結を決定したことが５日、分かった。同国の非合法武装組織「クルド労働者党（ＰＫＫ）」への資金提供が理由。同協会は今年２月のトルコ地震の際、日本国内で募金活動を行い、約４千万円を集めたという。

産経新聞より

懸念はしていたんだけれども。

公安調査庁案件か

現時点では疑惑の段階

さて、川口市の「日本クルド文化協会」という団体に対して、トルコ政府がトルコ国内の資産を凍結したという衝撃のニュースが流れてきた。

日本でトルコ地震の際に募金を行い、4千万円を集めて祖国に送金したそうな。

ところがこの資金がクルド労働者党（PKK）に送金されちゃったと。

このうち日本国内で対象となったのは同協会などと、同協会事務局長で東京外国語大講師のワッカス・チョーラク氏（４２）や代表理事（３２）らクルド人数人。

産経新聞より

あーあ、という感じである。川口市に多数のトルコ人が居住しており、その中に多数の不法滞在者もいて、治外法権的な状態になっている場所があるという様な話は以前に触れた。

修羅の国、川口市で外国人同士のトラブル

これ、昨日の時点では殆どのメディアが速報を避けていたようだが、かなり大変な状況だったらしい。 外国人同士でトラブル　搬送先病院に100人集結し混乱、逮捕者も 2023年7月5日 20時30分 埼玉県川...

annex2.site

2023.12.21

この記事のトルコ人達が、直ちに犯罪に荷担したとは言わない。少なくとも、日本側は動いていないし、検察は注視している状況ではあると思うが、具体的な嫌疑があるわけではなさそうだ。

つまり、冒頭の記事を以て、「大変なことになった！」と言う積もりはない。

冤罪を主張

しかしながら、トルコ政府は少なからず疑いがあって、資金凍結に足る証拠を持っている状況だと、理解した方が良さそうである。

取材に対し、チョーラク事務局長は「私達はテロ支援もテロ活動もしていない。在外選挙で私達が支持した政党が、真偽は不明だが、その後ＰＫＫを支援したと政府は言う。投票と駐日トルコ大使館内で選挙立会人を務めた以外の接点はない。以前も米閣僚の資産凍結をしたように現在のトルコは政権に批判的な者へ報復行動をとる。冤罪であり恣意的な資産凍結だと考えている」とメールで回答。

産経新聞より

そして、おそらくは日本の事務局側がコントロールできる話でもないので、この事が直ちに問題に直結するとは思わない。

岸田首相、ガザ情勢「民間人被害防ぐあらゆる措置を」トルコのエルドアン大統領と会談

2023/12/2 00:44

アラブ首長国連邦（ＵＡＥ）のドバイを訪問中の岸田文雄首相は１日夕（日本時間夜）、イスラム原理主義組織ハマスに一定の影響力があるトルコのエルドアン大統領と会談し、パレスチナ自治区ガザを巡り、イスラエル軍とハマスによる戦闘休止を持続させることの重要性を共有した。

産経新聞より

ただし、日本政府は国際情勢を考えるとトルコ大統領の意向をある程度汲む必要はある。よって、トルコ政府からの要請があれば、場合によっては逮捕なんて動きも出る可能性はあるだろう。可能性はかなり低いけどね。

トルコ大統領「イスラエルはテロ国家」、訪独控え西側の支援非難

2023年11月16日午前 7:32

トルコのエルドアン大統領は１５日、議会でイスラエルを「テロ国家」と呼び、その指導者や西側諸国による支援への批判を強めた。

イスラエルはパレスチナ自治区ガザで戦争犯罪を犯し国際法に違反していると指摘。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する軍事作戦には、西側諸国からの「無制限の」支援による「人類史上最も背信的な攻撃」が含まれていると強く非難した。

ロイターより

トルコ政府の方針を日本政府が受け入れる可能性は低そうだからね。ただ、しっかりした証拠が出てこればまた話は別である。

埼玉県警はクルド人団体との連携をとっている

寧ろ日本国内では、こんな動きも。

報道陣も困惑「ＳＮＳは嘘やデマ多い」　川口のクルド人団体代表、合同パトロールで「強気発言」

2023/11/4 20:41

埼玉県警は４日夕、同県川口市内で入管や地域住民らとの合同パトロールを行った。クルド人団体も初めて参加したが、代表者が「ＳＮＳは噓やデマが多い」「日本人もやっている」などと話し、好意的に伝えようと集まった一部報道陣が困惑する一幕もあった。

団体は在日クルド人でつくる一般社団法人「日本クルド文化協会」（川口市）。この日は同協会からクルド人の男女５人が参加した。ワッカス・チカン代表理事（３２）は報道陣の取材で、一部クルド人による車の暴走行為やトラックの過積載が交流サイト（ＳＮＳ）で批判されていることについて問われ、「ＳＮＳで出ているのは噓やデマが多い」と切り出した。

産経新聞より

うーん、SNSに嘘やデマが多いのは事実なんだけど、トルコ人（記事ではクルド人）の犯罪に関する話だけ特別に嘘やデマが多いわけではないと思うよ。

そういえば、自民党の議員がSNS上で騒いでいたけれども、あれもおかしな感じなんだよね。日本保守党の主張は全く信じていないし、最近は情報も入れていないんだけど、和田氏の主張は最近のヤツはどうにも腑に落ちないものが増えている印象だ。応援はしていたんだけどね。

募金については「日本の皆様にもご支援いただき約４千万円が集まった。トルコの国会議員を通じて被災地で赤十字のような活動をしている団体に渡されてテント村が作られた。その国会議員から贈られた感謝の動画を当協会のホームページに掲載している。議員と政党からの感謝状が日本政府にも届けられた。日本の皆様に再度感謝申し上げたい」と回答した。

産経新聞より

日本で募金が集まり、トルコの議員に贈られたと。しかし、トルコの議員と言っても、クルド系のトルコ人が議員になっているからねぇ。

トルコ、クルド系国会議員2人逮捕

2016年12月14日 9:19

トルコの警察当局は13日、少数民族クルド人中心の野党・国民民主主義党（HDP）の国会議員2人をテロ組織支援などの疑いで逮捕した。

日本経済新聞より

トルコ最高検、クルド系政党の解党申し立て　米は批判

2021年3月18日午後 2:07

トルコ最高検察庁は１７日、少数民族クルド人系野党、国民民主主義党（ＨＤＰ）の解党を憲法裁判所に申し立てた。国家の結束を崩す狙いで非合法武装組織のクルド労働者党（ＰＫＫ）の傘下組織として活動していると主張した。

～～略～～

エルドアン大統領が率いる公正発展党（ＡＫＰ）と協力関係にある政党はＰＫＫとのつながりを理由にＨＤＰの解党を呼び掛けてきた。エルドアン政権は新型コロナウイルス禍の景気落ち込みへの対応に苦戦しており、支持率は低下している。

ロイターより

そして、時々逮捕されたりしている。

公安調査庁のサイトから削除

なお、肝心の公安調査庁なのだが、最近ちょっとおかしな話も出ている。

公安調査庁はトルコのクルディスタン労働者党、パレスチナのハマースを「世界のテロ・武装組織等」から削除

11/29(水) 9:31

トルコのハベル7、イェニ・ヤシャム、シリアのクルド民族主義組織の民主統一党（PYD）に近いハーワール・ニュース（ANHA）などは11月28日、日本の公安調査庁が公式サイト内の「世界のテロ・武装組織等」欄から、クルディスタン労働者党（PKK）を削除したと一斉に伝えた。

PKKは、トルコが分離主義テロリストとみなす組織。シリアのPYDはこの組織の系譜を組む。

Yahooニュースより

コレに関して、問い合わせをした新聞があったようだ。

広報はそもそも公安調査庁として「国際テロ組織を指定する制度はない」とした上で、大幅削除の理由について「情報出典元を改めたため」とした。23年版から記載内容を国連安保理決議第1267号に基づく制裁リストに準拠したという。従来は海外のシンクタンクのレポートなどを出典としていたが「どのような基準なのか」という問い合わせもあり、「基準を明確に分かりやすく、との方針の下で23年版を発行した。ウェブ版の更新がこのタイミングとなり、話題になったのではないか」（担当者）としている。

Yahooニュースより

うーん、公安調査庁の広報の回答も分からないではないんだけど、そもそも国連安保理の情報が信用出来るのか？というと、これが出来ない。

この話は、公安調査庁の能力について、国際情勢を得るためのソースや権限がそもそもないことが問題で、各国の情報機関の分析を参考にした上で、独自に調査できる能力があればこんな事にはならないのである。

公安調査庁自身にも問題のありそうな話になってしまったが、そもそも日本に諜報機関がないから問題なのであって、今回の話の真偽はハッキリしないことも、日本が独自のルートで調査できる能力が無いことが問題である。

本来ならば、日本の募金がおかしな事に使われたという情報があれば、やはり放置すべきではない。川口市の件も十分に気になるが、国家の体制そのものも見直す必要があるんだよ。警察庁もそうなんだけどさ……。

追記

あー、うーん。

＜独自＞公安庁がクルドＰＫＫを「テロ組織」除外　トルコ大統領が岸田首相に不快感報道　サイトは閲覧停止

2023/12/6 11:47

公安調査庁が世界のテロ組織の情勢をまとめた年報「国際テロリズム要覧」の最新版で、テロ組織のリストからトルコの非合法武装組織「クルド労働者党（ＰＫＫ）」などが除外され、トルコ国内で反発が広がっている。他にもイスラエルとの戦闘が続くイスラム原理主義組織「ハマス」も削除されていた。トルコでは各メディアが非難し国会でも取り上げられるなど、国際問題化しつつある。

産経新聞より

国際問題に発展しそうな流れになってきたね。そりゃ、トルコは怒るさ。

追記２

さて、流石に公安調査庁、国際問題に発展してしまい、慌てた模様。

「政府の立場に誤解招いた」　公安庁「国際テロリズム要覧」当該ページを公式削除

2023/12/6 16:28

公安調査庁の年報「国際テロリズム要覧」２０２３年版で、テロ組織のリストからトルコの非合法武装組織「クルド労働者党（ＰＫＫ）」などが除外され、サイトの当該ページが一部で削除、閲覧停止となっていた問題で、公安庁は６日、同庁サイトで当該ページを削除したことを公式に認めた。

～～略～～

同庁サイトに掲載された文書は「『国際テロリズム要覧』に関するお知らせ」と題し、《『国際テロリズム要覧２０２３』から抜粋し、公安調査庁ウェブサイトに掲載していた「主な国際テロ組織等、世界の国際テロ組織等の概要及び最近の動向」と題するウェブページについては、政府の立場について誤解を一部招いたことから、当該ページは削除しましたので、お知らせします》と説明。

産経新聞より

まー、恥ずかしい。

https://www.moj.go.jp/psia/ITH/index.html

www.moj.go.jp

しかし、リンク先は国際テロリズム要覧2023年版の要素を取り込んで、しっかりと削除されたはずのPKKなどの組織のことについても言及した内容になっている。

2022年度版の内容をつかって手を加えたにしては、仕事が早いような気もする。

想定されるシナリオとしては、既に作ってあって何らかの事象があって、修正版を作ったがデータが残っていたケースと、指摘があってから慌てて作ったパターン。だが、修正部分は多岐にわたるため、直ぐに対応できるとは考えにくい。

まあ、公安調査庁の内情は分からないが、政治的圧力がかけられて一部の内容を削った版を出したら、批判を喰らった、という事があったのかも知れないね。

内容が間違っていたので、追記３を確認して欲しい。

追記３

ちょっと構図が見えてきた気がする。

なお、公安調査庁は、テロ組織等を認定又は指定する事務は行っておらず、本要覧中のテロ組織
等に係る記述は、公安調査庁の独自の評価を加えたものではなく、上記のとおり、各種公開情報に基づくものである。

国際テロリズム要覧２０２２年版より

まず、僕自身も誤解していた部分があったので、情報修正をしなければならない。そもそも件の「国際テロリズム要覧」は、公安調査庁の判断を含まないものだという事実がある。そういう意味では、産経新聞の記事の書き方がおかしい。

公安調査庁は各国の資料を纏めた「国際テロリズム要覧」の年度版を発表しているが、この内容については公安調査庁の判断は含まれない。つまり、内容が削除された理由は各国の資料がそうだったから、と言うことになる。

本要覧は、主に 2022 年 1 月までの国際機関及び各国政府の発表、研究機関の報告書、内外の各
種報道等の公開情報を基に作成したものであり、まず、2021 年の国際テロ情勢として、「イラク・レバントのイスラム国」（ISIL）を始めとする国際テロ組織の動向のほか、在留邦人・企業数が多く、我が国とのつながりも深いアジア地域や欧米諸国における国際テロ関連動向を概観した。

国際テロリズム要覧２０２２年版より

産経新聞は、あたかも公安調査庁が独自の判断で、テロ組織カテゴリーからＰＫＫを外したようにも読めるのだが、事実は異なる。