太陽光発電をするのであれば、電力安定供給のために蓄電設備が必須だと、僕自身もそのように考えてきたわけだけれども、こんなお粗末な事件が起こるとは。
太陽光発電施設で爆発 消防隊員1人大けが 3人軽傷 鹿児島 伊佐
2024年3月27日 23時20分
27日夕方、鹿児島県伊佐市にある太陽光発電施設で爆発がありました。消防によりますと、消火にあたっていた隊員4人がけがをしてこのうち、1人は顔にやけどを負う大けがをしました。
NHKニュースより
幾つか記事が上がっていて、出火原因などに繋がる話までキチンと報道されていないように思われるので、少し整理しておきたい。
何が問題なのか
災害に弱いメガソーラー
以前にも似たような記事を取り扱ったので、ソレを先ず紹介しておき……、あれ?記事にするのを諦めたのかな。途中までは書いた記憶はあるんだけど。
能登半島地震で太陽光パネルに被害相次ぐ 和歌山の山林火災では消防士が感電の危険
2024/1/18 13:38
能登半島地震の被災地にある大規模太陽光発電所(メガソーラー)の少なくとも3カ所で、斜面崩落など地震による被害を受けた可能性があることが、金沢工業大の調査で分かった。今回の地震では経済産業省が太陽光パネルによる感電の危険性を注意喚起。一方、和歌山県では1月13日、山林火災でメガソーラーが焼け、消防士が感電の危険に遭いながら消火活動に当たっていたことも分かった。
産経新聞より
メガソーラーの施設が斜面崩落によって破壊する話は、大雨・台風の時にも見かけたけれども、地震の発生でも問題となるようだ。そういえば、熱海の崖崩れの際にも、メガソーラーの施設の悪影響が疑われたんだっけ。
幾つか特徴的なメガソーラー関連の特徴的な事件を列挙しておこう。
- 平成29年2月16日 埼玉・物流センター「ASKUL Logi PARK(アスクルロジパーク)首都圏」で火災発生
- 屋根に太陽光パネルを設置していたため、初期消火に失敗したと「噂」される。出火原因、鎮火に時間がかかった理由は、現時点でも不明。ただし、太陽光パネルが載っていることで消火の際に漏電を懸念する必要があるという事情が世間に認知される
- 令和元年9月9日 千葉・山倉水上メガソーラー発電所で火災発生
- フロート式の架台が台風15号の強風で破損、約13.7MWのメガソーラー設備から出火して消火に3時間を要した
- 令和3年7月3日 静岡・熱海市伊豆山土石流災害が発生
- 土石流の発生の原因は「新幹線ビルディング」の残土処理が杜撰であったことだとされたが、山頂近くにあった太陽光発電施設の設置に関して山の保水力が失われたために土砂崩れを誘発した可能性が指摘された(因果関係は不明)
- 令和6年1月13日 和歌山・旭メガソーラーすさみ発電所が山火事に巻き込まれる
- 山火事発生理由は不明。すさみ発電所のメガソーラーはパネルの下に敷くシートに類焼した。感電の危険があるために鎮火に時間がかかった
- 令和6年3月27日 鹿児島・「ハヤシソーラーシステム高柳発電所」で出火
- LG化学製のLiイオン蓄電池からの出火が疑われるが、現在調査中。太陽光パネルの鎮火に手間取り長時間燃え続けた
何れの事件もメガソーラーだからダメだった、とまでは言わないのだけれども、何らかのトラブルの要因になった可能性が高い。
大掛かりなトラブルは上に挙げた通りなんだけれども、細かいトラブルは山ほどある。台風が来るために太陽光パネルが飛んで、大雪が降る度に太陽光パネルが破損し、大雨が降る度に崖崩れに巻き込まれる。
つまり、結構脆弱なシステムなんだよね。
今回の火災は蓄電池?!
ただ、鹿児島県伊佐市のこの件は、ちょっと様子が異なるようだ。
警察と消防によりますと、27日午後6時すぎ、伊佐市大口大田のハヤシエネルギーシステムのメガソーラー発電所から出火し、蓄電設備が入っている建屋1棟130平方メートルを全焼しました。
当時、建屋内には煙が充満していて、駆け付けた消防隊員が扉を開け排煙装置を設置していたところ、屋内で複数回、爆発が起きたということです。この爆発で消防隊員4人がやけどなどのけがをし、うち1人は顔に重いやけどを負う重傷です。
MBC NEWSより
太陽光パネルの消火活動というのは、設置面積が広くなればなるほど消火が難しい傾向にある。出火場所にアクセスしにくいことと、通電している設備なので、水をかけると感電するリスクがあるからである。
だけど、今回、消火に苦労した理由はこちら。
……こちら?!
こちらですな。
LG化学社製のリチウムイオン蓄電池システムが燃えたということで、ここの鎮火には非常に時間を要したようだ。
建屋の屋根が歪んでいることからも、高温で長く燃焼を続けていたことが推測できるのだが、おそらくはシステムの鎮火に時間がかかったのだろう。この点に関しては似たようなロジックで新宿会計士さんが記事を書いているので参考にしていただきたい。
火事の消火で大切な事は、火元となっているところを先ず消火することである。
蓄電池そのものが問題とは言えない
で、韓国製の蓄電池がダメだ!とか言う積もりはない。それはまだ明らかになってはいないのだから、論点では無い。
問題は、火元の消火がいつまでもできなかったと言うことが問題なのである。
このようなレイアウトになっていて、蓄電池の入っている小屋を消火できなかったにせよ、小屋の消火は出来そうなものである。
これが火事の時の様子で、恐らくは右側に移っているのが建屋で、出火は中央部分に集中しているように見える。
このことから考えるに、おそらく火元はパネルの方で、蓄電池の方が類焼したのだと思われる。
そうだとすると、太陽光パネルのレイアウト上の問題で、消防車を中に入れることが出来ずに外側から消火していたと考えられ、そのうちに蓄電池小屋にも火が回って、こちらも鎮火出来ず。丸1日近く燃え続けたということだ。
小屋の方の鎮火に入った消防隊員が、爆発に巻き込まれて怪我をしたという感じの事件だったのだろうと思う。
施工不良が問題
今回のこの火事は、平地に配置された太陽光パネルから出火したのだと思われる。似たような事件は、他にもいくつかあったようで、調べて見るとこんな話も。
接続箱や電線が炭のように丸焦げ、配管の未固定と地盤沈下で火災に
2018.05.24
~~略~~
この太陽光発電所は、稼働してから約半年間しか経っていなかった。エネテクに現地調査の依頼があり、向かってみると画像のような衝撃的な状況だった。
接続箱は、まるでニュース番組で報じられる火災事故のように、激しく焦げていた。接続箱に入力している電線や、電線を覆っていた保護管も同じように、炭のように真っ黒に焦げていた。
この状況から推察すると、アーク(火花)が生じた、などという程度ではなく、一時は炎を上げて燃えた可能性が高いという。
日経XTECHより
火事の様子から施工不良っぽいのだけれど、どうやら不適切な配線だけが問題ではなかったようだ。
通常は、樹脂製などの保護用パイプに電線を通した上、固定具を使って保護管を接続箱の配線穴に適切に固定する。さらに、配線穴と電線の間にできる隙間を、パテを使って埋める。これによって、保護管を適切に接続箱に固定するとともに、虫や小動物などの侵入を防き、雨水も入り込みにくくしている。
この施工を省いていることから、接続箱内には雨水や湿気などが入りやすくなる。小動物も侵入しやすい。前回紹介した端子の錆びは、こうして雨水や湿気が入りやすくなっていたことで生じた。
日経XTECH「接続箱や電線が炭のように丸焦げ」より
この記事で興味深いのは、太陽光パネルによる発電が、直流設備であることの問題点を指摘している点である。
直流の設備の怖さを示す例の一つとしている。接続箱に入力されるのは直流の電気である。交流の場合とは異なり、一度アークが発生すると、なかなか火花が消えない。今回の場合のように、火花が接続箱全体に燃え移って、火災にまで至る恐れさえある。
~~略~~
エネテクの推察では、こうした地盤沈下が生じたときに、接続箱の配管穴にしっかり固定していない保護管は、そのまま下に引っ張られやすい。これによって、保護管内を通っている電線にも、引っ張られる力がより大きくかかり、抜け落ちてしまった結果、接続先であるPN極の端子が短絡し、火花が生じたのではないかと見ている。
日経XTECH「接続箱や電線が炭のように丸焦げ」より
この話、今回の火事の要因としてはかなり有力なものではないだろうか?まあ、あくまで推測ではあるのだが、高圧の直流電流が通る設備にも関わらず、施工不良のチェックが甘い設備で、建てたらほとんどメンテナンスもチェックも無し。
漏電遮断ができない
交流電流の方がより質の悪い部分もあるんだけど、何れにしても漏電は危険で、太陽光発電の質の悪さは、漏電遮断が出来ないと言う点である。外部の回路から切り離しても、太陽光で発電するので昼間は感電リスクが高くなるのだ。
感電というのは、直流と交流でその危険度は異なり直流で感電した場合は、筋肉が硬直するともいわれ、交流で感電した場合は心臓の筋肉が痙攣するそうで、交流の感電による危険度は、直流の5~6倍にも及ぶといわれています。
それでは、電流が体に流れるとどうなるのか、一般的に言われていることをまとめてみました。
1mAでは「ビリッ」と感じる 5mAでは苦痛を感じる 10mAでは耐えがたい苦痛を感じる 20mAでは筋肉が痙攣し、神経がマヒして自力では動けなくなる 50mAでは呼吸が困難となり、死に至る確率が高くなる 100mAでは、心臓の筋肉が障害を起こし、呼吸が停止して死に至る
ここからわかるように、20mAの電流が体に流れると、自力では脱出できなくなる危険があります。 一般家庭に設置されている漏電遮断器の感度電流は30mAになっていますが建設現場などで設置されている漏電遮断器の感度電流は15mAとなっているのはそれだけ危険なケースが存在するためといえます。
株式会社デンソーより
太陽光発電は、大規模なシステムになると1000~3000Aといった大きな電流が、2~4本程度の電線に分岐して流される。
消火活動が如何に危険か、という話が分かっていただけると思う。燃えていると配線を外すことも難しいわけで、消火に水を使って良いのか?という話にもなってしまう。
もちろん、水を使った消火は良いのである。だが、「感電リスクに対して最大限配慮する必要があるよ」ということで、地面に水たまりができるような消火方法をすると、感電リスクは高まる。
そういった知識が消防隊員の方にも必要で、それをいちいち考えて消火活動をしなければならないということになる。そして、大電流がながれるメガソーラーは特に危険というわけだ。
山間部での鎮火は……
最近、ネットで話題になった阿蘇のメガソーラーだが……。
万が一火が出た場合に、どこに入ってどうやって消火するのか?と言うことを考えると、相当恐ろしい構成になっている。
多分ではあるが、燃えるに任せるしかない状況だよね。
そしてこんな巨大なメガソーラーが発電下電気を垂れ流し、これを一般家庭で使えるように整流しなければならないというのだから、再エネ賦課金を支払うのがバカバカしくなる。
その辺りの話は昨日も書いたね。
ただ、本当にこの件に関しては、腹に据えかねているのである。
何が問題かと言えば、太陽光発電設備の設置基準がしっかり決まっておらず、トラブルは既に発生して様々な問題が生じているのに、規制が追いついていない。それなのに、お金だけが巻き上げられている現状にムカつくのである。
こんなのを日本を挙げて増やすメリットが一体どこにあるのだろうか?
コメント
ども。妻の実家の農園は風力は利用しているけれど、太陽光発電はやらんですね。農園主の義弟によると、
①発電量と製造コストを考えるとコストベネフィットに合わない。
②従って助成金が停止または減額の瞬間に御荷物になる。
③廃棄に手間と費用が掛かり、環境破壊の原因になる。
④もてはやされているのは政治的利権によるもので、世間の風向きでガラリと変わる。いずれは厄介者あつかいされる。
だそうです。
実際、実害あったんですよね。仔細には書けないけど。助成金目当てで造成地を造り、置いたら台風で吹っ飛び、車に直撃して事故になり裁判沙汰。ケーブルは盗まれる。挙げ句に斜面を造成してパネルだらけにしたから土石流を誘発して、
麓の生産農家を直撃。高級食材を生産する農園なので裁判沙汰。
地域では「バカは死ななきゃ治らない」なドラ息子の所業ですが。それにしても太陽光は後の始末が悪すぎますよ。
木霊様へおねだり。
イーロン・マスクのニューラリンクの被験者がWEBでマリオカートを遊ぶ姿が発表されましたね。驚くのは上手い!
単にハンドル操作だけでなく、赤甲羅活(妨害アイテム)を投げつけて競合プレイヤーに命中させている。しかし脊髄損傷で四肢麻痺になる前はとくにゲーム好きではなかったそうで。さらに彼が脳波でパソコンにクリックした回数は、普通にオフィスで作業する人より多いそうです。8時間ずっとマリオカートを続けた事と言い、ひょっとすると生身の手で入力やゲームするよりも、脳内インプラントと脳波で行う方が効率的なのか?
同調できる外骨格サイボーグを装着したり、さらに脳波で無人機を操縦できると、本当に「戦闘妖精雪風」に「結末まで」同じになるかも。
これは理工系の訓練受けた木霊様の感想を是非にお聞きしたいものです。
毎度のおねだりですが、今回はガチで貴兄の感想をお聞きしたいです。ある意味に人類史を変えるかもしれません。
私はイーロン・マスクは、仮想空間に人を転送するか(彼はもともとシミュレーション仮説を信じる人で、我々の世界がリアルな世界だと思っていない前提がある)、宇宙に進出するか…いずれかを可能にしないと1世紀以内に人類が滅亡すると考えている……と推測してますが。
まさか短期的にも成功させるとは。
お願いいたします。
ニューラルリンクですか。
個人的には色々思うことがありますが、なかなか取り扱いにくいネタではあります。
記事にするトライはしてみます。
太陽光発電は趣味の範囲で、と言うのが私の持論であります。
初期投資をペイできないのが現状のシステムなので、欺されてやるのは宜しくありません。自家消費という意味では悪くないのですが、売電を前提とすると途端に宜しくない状況になりますからね。
気軽に手を出すべきではない話で、自宅の屋根に載せる程度に留めておくのが望ましいと思いますよ。
こんにちは。
燃焼の要素は熱と可燃物と酸素、これが揃えば水中だろうと宇宙だろうと……
で、リチウム電池は短絡すると化学反応で熱と可燃物と酸素を自分作っちゃうという……
※これが恐いので、手元の電動エアガンをリポ化出来ない七面鳥であります。
リチウム電池も、長い目で見れば(≒後世の歴史家が見れば)過渡期の徒花なんじゃないでしょうかね。
こんにちは。
小規模であればリチウム電池の利便性は高いと思うのですよね。
ただ、大出力のものとなると、なかなかに困ったことになるように思いますよ。
新しい蓄電池が出てくるのが望まれます。
いや、どう考えたって「LG化学社製のリチウムイオン蓄電池」が問題でしょ。
(責任問題としてLGは悪くないかも知れないが)
、
自動車用等の超大容量リチウムイオン電池は燃えたら最悪8時間は消せず水没させるしかない。てのは2022年のポルトガル沖自動車運搬船ポルシェの例も含め数年以上前から常識。
ならば更に大容量の「インフラ用システム」なら「万一に備え、注水水浸」等消化可能な構造設置をするのが、他のインフラなら、石油タンクでも原発でも–アタリマエ–だし法規制もある。
災害に備えるならそうした構造か、あるいは本質安全なNiMHや鉛、揚水発電、とするのがインフラ事業者の本来の責務でしょう。
どこかにあったけど、こうした他じゃアタリマエの安全対策義務を課す法規制ナシで 再エネが最も安価なんて試算はサギ以外の何物でもない。
LG化学社製のリチウムイオン蓄電池が、そこにあった。それが消火の妨げになった事は間違いないでしょう。
法規制は、事故が発生した後で必要性があると判断されたものに行われるため、どうしても後出しになってしまいがちではありますが……。必要だと思いますよ、今後、大容量の蓄電池を利用していくのであれば。