ちょっと掘り起こしニュースという感じになるけれども、シリーズ的には「ヤバイ建物」シリーズである。この話は結構有名だね。相変わらずサルベージ記事で申し訳ないけれども。
マレーシアの競技場、築1年で屋根がらがら
入力2009.06.04 17:46 | 修正2009.06.05 11:23
去る2日午前9時40分(現地時間)、マレーシアで完成されてから1年しかならない最新式競技場の屋根が崩れる事故が発生したと、アジア員ニュースなど、マレーシア現地メディアが伝えた。この競技場の屋根の建設には、韓国人が東南アジアで運営する中小建設業者も参加したことが分かった。
chosun.comより
マレーシアの競技場の話だ。韓国の建設企業にお願いして建設しちゃったんだよね。
マレーシアはどうして韓国にお願いしてしまったのか
ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム
マレーシアの「ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム」は、収容人数5万人の総合スポーツスタジアムで、2008年に州対抗のスポーツ大会の開催会場になった。現在はトレガンヌ・フットボール・クラブのホームグラウンドなのだとか。
ところが完成の1年後(2009年)にその競技場の屋根が崩壊してしまう!正式オープンが2008年5月10日だったので、1年あまりで崩壊したということになるらしい。
あ、先に完成予想図を載せておこう。
何故かマレーシアは、このスタジアムを作るにあたって、どうやら韓国人が経営する小規模企業に施工をお願いしてしまったようだ。
マレーシア「ザ・スター」紙の正確な会社名を確認していない韓国メーカーが競技場の屋根構造を請け負い施工したと報道した。このメーカーは、サムスン、現代、双龍のようなメジャーの建設会社ではなく、シンガポールに本社を置く韓国人が運営する中小建設会社であるS社が分かった。
政府関係者は、「下請けを受けて運営する小規模建設会社の中でS社の施工をしたことが分かった」とし「崩壊事故の責任がどちらにあるのかは確認がうまくいかない」と伝えた。
chosun.comより
疑うまでも無く、選定理由は「価格」だな。
ところが、あっという間に屋根が崩落してしまうのである。
トレンガヌ州立スタジアムの屋根が崩落
2009年6月4日
6月2日午前9時ごろ、トレンガヌ州ゴン・バダクにあるスルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアムの東ウィングの屋根が突然崩落した。当時、約19人の労働者がスタジアムの清掃などをしていたが、けが人は出なかった。屋根部分の60%が崩壊し、メイン・エントランスや表彰台、客席などに大きな被害が出た。被害総額は2,500万リンギ(約6億9,000万円)に上るという。3日に、公立高等教育機関によるスポーツイベントが開催される予定だった。
同スタジアムはゴン・バダク・スポーツ・コンプレックスの一部で、トレンガヌ州が所有。3億リンギ(約83億円)をかけて建設され、昨年5月10日に正式オープン。マレー半島東海岸地域最大のスタジアムで、アジアで初めて屋根部分が柱で支えられていないスタジアムだという。収容人数は5万人で、昨年5月のスポーツ・イベント「第12回マレーシアン・ゲームズ(SUKMA)」の会場にもなった。当初の建設費は2億5,000万リンギ(約69億円)だったが、建設材料価格の高騰などを受け、3億リンギに膨張したという。
「AsiaX」より
マレーシアにとって勉強代は高くついたみたいだね。
どうなったのか?
記事にある通りこのスタジアム、屋根が崩落してしまったのだけれども、屋根部分の60%が崩壊というのがどう言う状態かというとこの通り。
まあ、無残としか言いようがないが、怪我人が出なかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。
ところで、上の記事で気になる部分があった。
マレー半島東海岸地域最大のスタジアムで、アジアで初めて屋根部分が柱で支えられていないスタジアムだという。
ダメなんじゃないの、この構造が。事故当時、約19名の労働者がスタジアムの清掃などをしていたが、死傷者はゼロだったとのこと。その事は喜ばしいが、なぜこんな業者に頼んでしまったのか。
そもそも、「アジアで初めて」の構造を、小規模の韓国業者に任せるということそのものが信じられない。
屋根崩壊、マレーシアスタジアム、韓国の建設会社が作った
入力2009.06.05 14:12
マレーシアで競技場の屋根が崩れる事故が発生した。この競技場工事に参加した韓国の建設会社は、海外建設工事を行うという申告をしていないことが分かった。
~~略~~
Sは機械、鋼構造物分野の建設会社に資本金12億ウォン規模だ。海外建設業申告せずにこの工事をしたことが明らかになった。海外での建設工事をするには、国土部に海外建設業者として登録しなければならない。
Sの瑕疵担保(ソウル保証)期間は、昨年4月から今年3月末までに、すでに有効期限が切れた状態だ。S側現地調査に誠実に応じるという態度だ。
chosun.comより
わーお、瑕疵担保期間が切れているよ。これ、損害賠償無理っぽくないかい?
屋根は再建されたが再び崩れる
再び崩れる
さて、こうしてスタジアムの屋根が崩れてしまい、スタジアム側はどうしたかというと、この屋根部分は施行し直しといいうことにしたようだ。まあ、施工業者に屋根の撤去と施工のやり直しを求めるのは当然の措置ではあるんだけど、再び崩れる運命に。
マレーシア トレンガヌでまた公共施設崩落事故、今年で3件目 手抜工事に批判の声
2013年9月30日(月) 20時41分
トレンガヌ州で9月29日、今年3件目となる公共施設の屋根の崩落事故が発生。手抜き工事への批判の声が高まっている。
~~略~~
同州では、今年2月にクアラ・トレンガヌの「スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン」スタジアムで天井を支える鉄骨の構造物が崩落する事故が起き、作業員5人が骨折などの重軽傷を負った。現場では屋根を支える構造物の取り外し作業が行われていた。また5月にはフル・トレンガヌの「カンポン・ビンジャイ・ケルタス・モスク」で屋根が崩落した。
Responseより
屋根、崩れすぎだろう、マレーシア。
あ、この記事は「別の公共施設の屋根の崩落」を伝える記事なのだが、「同州では、今年2月にクアラ・トレンガヌの「スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン」スタジアムで天井を支える鉄骨の構造物が崩落する事故が起き、作業員5人が骨折などの重軽傷を負った。」との記載がある通り、前出のスタジアムの屋根が2013年2月に再び崩落したことにも触れられている。
2009年6月2日に屋根崩落、2013年2月に再び屋根崩落と、まあ悲惨。現在はどうなっているかというと、日差し避け無しで運営されているそうな。
まあ、それが良いだろうよ。
構造的に無理があったのだと思うのだが、その辺り、ハッキリしたことは分からない。ただ、現状で左右の屋根が外されていることを考えると、少なくとも「信用できない」という判断になったんだろうね。
そしてそもそも、頼んだ相手が悪かった。
悲運のトレガンヌFC
なお、上でも紹介したが、トレンガヌFCというマレーシアサッカーリーグシステムの1部であるマレーシア・スーパーリーグで競う名門チームがホームグラウンドとして使用しているのだとか。
トレガンヌFCは2008年7月からこのスタジアムを本拠地として使い始め、2009年6月2日にスタジアムの屋根構造が崩壊したために練習場所をスルタン・イスマイル・ナシルディン・シャー・スタジアム(旧スタジアムとする)へ移転。実は、旧スタジアムはスルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアム(新スタジアムとする)が建設されたことで、別の目的に利用するために取り壊しが行われている最中であったようだ。このため、トレガンヌFCは劣悪な環境での練習を余儀なくされることに。
慌てて旧スタジアムの改修工事が急ピッチで行われたが、2万人あった収容人数は15,000人まで減ってしまい、経営的には痛手だったようだ。それでも、2011年にはトレガンヌFCは2011年マレーシアFAカップで優勝。悲運に関わらず実績を残す事が出来て何よりだ。
ところで、新スタジアムの方の屋根の補修はどうなったのかという話なのだが、トレンガヌ州の市長が屋根のデザインを新しくして建設することにしたらしい。
トレンガヌ州、観客席の屋根を新しいデザインに交換へ
2011年12月19日月曜日
クアラ・トレンガヌ:スルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアムの崩壊した屋根の修復が来年初めに始まる。
~~略~~
アフマド氏は、構造の大部分が損傷しており、新たな設計が必要なため、修復作業には時間がかかるだろうと述べた。「普通の屋根は採用しません。より軽い素材で作られた国立競技場(ブキット・ジャリル)の屋根に似たものに決めるかもしれません」と彼は語った。アフマド氏は、競技場が完成すればサッカーの試合をスタジアムで開催できるが、照明に問題があるため日中のみとなると述べた。
同氏は、公共事業局が近々、修復工事の入札を行う予定だと付け加えた。
アーカイブより
ところがこの新デザインの屋根が良くなかった。
スルタン・ミザン・スタジアムの屋根が2度目の崩落、3人が重傷
2013年2月21日木曜日午前2時45分
クアラ・トレンガヌ:ゴング・バダックにある現在再建工事中のスルタン・ミザン・ザイナル・アビディン・スタジアムの屋根を支える鉄骨構造物が昨日午前11時30分に倒壊し、作業員5人が負傷、うち3人が重傷。
~~略~~
トレンガヌ州の最高責任者であるスリ・アフマド・サイード氏は、ここスリ・イマンで面会した際、この事故は再建工事を担当した請負業者の過失によるものだと語った。
アーカイブより
どこだよ、再建工事を担当したのは……。まさか?!
再建工事をした業者は判明しなかったが、設計担当者は初回も2回目もマイケル・K・C・チアなる人物であった。何故同じ人物を選んでしまったのか。だが、流石に3回目は設計担当を外された模様。で、屋根なし構造が採用されて、再建され、2015年5月にはトレガンヌFCは新スタジアムに戻ることが出来たのだという。
……まあ、不安なニュースもあるのだが。
新しい屋根を作る計画である。いや、止めとけ?
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