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少子化対策強化の財源は本当に公的医療保険で良いのか

政治
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酷い話だね。岸田政権の成果を評価できる部分はあるけれど、こういった本質的な政策でケチがつくのは本当にダメだね。しっかりしろよ……。

少子化対策強化へ「支援金制度」法案 衆院特別委で可決

2024年4月18日 11時32分

少子化対策の強化に向け、財源として「支援金制度」の創設を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案は、衆議院の特別委員会で、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。改正案は19日、本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。

NHKニュースより

「少子化対策の強化」や「支援制度の創設」は悪い話ではないのだけれど、そもそもこども家庭庁のやっていることは意味不明だし、この改正案は重大な問題点がある。

少子化対策強化は必要だが

財源は公的医療保険?!

何が問題かと言えば、財源である。

少子化対策の強化に向けた子ども・子育て支援法などの改正案は、児童手当や育児休業給付を拡充し、財源として、公的医療保険を通じて国民や企業から集める「支援金制度」を創設することなどが盛り込まれています。

NHKニュース「少子化対策強化へ」より

ご存じ、公的医療保険といえば「健康保険」のことである。

公的医療保険制度とは、日本国民全てに加入が義務づけられている医療保険制度のことで、どの医療機関を受診したとしても、公的医療保険の保障対象となるので、患者は自由に医療機関や医師を選ぶことができる。

公的医療保険制度の財源構造は、被保険者や事業主が支払う保険料から約5割が賄われ、地方や国庫等の公費からも約4割が賄われ、患者負担の医療費は全体の1割となっている。

なお、実際の治療においては、自己負担率は義務教育就学後から69歳までが3割負担で、義務教育就学前が2割(ただし地方自治体による子供向けの医療費助成制度があるので、実質は無料になるケースが多い)、70歳から74歳までが2割負担、75歳以上は1割負担ということになっている。

社会保障費は歳出の3割以上を占める

ちなみに、日本の歳費における社会保証関係費は38兆円を超える規模で、歳出全体の3割以上になる。

社会保障関係費(私たちの健康や生活を守るために)

そして、その社会保険給付費は年々増加している。

社会保障給付費の推移のグラフ

うち、国民医療費の公費負担額総額は16兆円規模だ。一番負担の重いのは年金なのだけれど、そこは今回のターゲットではないのでさておこう。

しかし、医療費負担も年々増加しているのは間違いが無く、これは医療の高度化なども関係しているといわれている。また、このブログの読者には医療関係者もいるので、あまり不用意なことは言えないのだが、食事の量よりも薬の方が多いなどと揶揄されるほど薬をバラ撒くのが日本の医療の現実である。実際に、僕自身も病院で処方された薬の3割くらいは飲み残すように思う。もちろん、無駄がゼロになるなどとは思っていないが、見直す余地はあるだろう。

つまり、医療費の削減というのは重要なテーマであるはずなのだ。

ところが、「支援金制度」の財源として公的医療保険に目が付けられたという。

国民負担は増えない?!

このからくりについて、岸田氏はこんな説明をしている。

支援金制度 岸田首相 “国民に新たな負担求めることにならず”

2024年4月16日 14時11分

少子化対策の財源確保のための「支援金制度」の導入について、岸田総理大臣は、社会保障負担率が上がることはなく、国民に新たな負担を求めることにはならないとして、重ねて理解を求めました。

~~略~~

この中で、岸田総理大臣は「支援金制度」の導入について「社会保障負担率が上がることはなく、国民に新たな負担を求めないことを約束する。仕組みを国民に理解してもらえるよう、引き続き説明を尽くしていきたい」と述べました。

そのうえで、事業主からも集める支援金が企業側の賃上げに与える影響を問われ「実質的な負担を生じさせないのは事業主の拠出分も同様だ。あらゆる政策を動員して賃上げの促進を進めており、結果として支援金制度が賃上げを阻害することにはならない」と述べました。

NHKニュースより

不思議なことに、「支援金制度」の原資となるハズの社会保険料なのだが、どういうわけか「社会保障負担率が増えない」とし、「事業者拠出分も負担増にならない」としている。

どこにも負担を増やすことなく、お金だけ出てくる不思議説明で、誰がこれを理解出来たのかは不明である。

少子化対策強化の財源確保へ 「支援金制度」の概要案 政府

2023年11月8日 17時47分

政府は、少子化対策の強化に必要な財源を確保するため新たに創設する「支援金制度」について、医療保険を通じて幅広い世代や企業から支援金を徴収し、まずは妊娠・出産期から2歳までの支援に充てるなどとした、概要の案をまとめました。

少子化対策の強化に必要な財源について、政府は社会保障費の歳出改革などを行ったうえで、社会保険の仕組みを活用する新たな「支援金制度」を創設して確保するとしていますが、この制度の概要の案が明らかになりました。

それによりますと、企業や高齢者も含めた幅広い世代が支払う公的医療保険を通じて支援金を徴収し、拠出額は負担能力に応じて決める仕組みにするとしています。

NHKニュースより

過去の説明などと併せて理解すると、まず医療保険の歳出改革を行った上で、広く薄く負担をしてもらうと。つまり、改革すればお金が出てくるので、その分を「支援金制度」の原資とするという話になっている。埋蔵金かよっ!

確かに薬価の見直しや薬を出す量を減らす等の工夫があれば、日本の医療費の3割が薬剤費に使われている現実を考えると、多少の改善の余地はありそうだ。薬剤費は年間8兆円程度なので、1割でも改善できれば8000億円程度の拠出は可能だ。

そもそもの入り口が間違っているのでは

費用の捻出をどうするのか?という点についても、現時点では明らかではないので問題なのだが、それ以前に、何故、公的医療保険をターゲットにしてしまったのか?が問題だと思う。

何故なら、少子化対策強化って医療なの?という疑問があるからだ。

いや、出産一時金だとかの関係で、少子化対策が医療分野のサポートを充実させることで解決しうるという話であれば、何とか理解は可能だ。しかし、子育て支援にはどうなんだろう。

また、付帯決議が可決され ▽支援金の拠出を歳出改革などによる社会保険負担の軽減効果の範囲内に収めることや ▽支援金の効果などを検証し、適切な見直しを行うことを求めるなどとしています。

改正案は、19日開かれる衆議院本会議でも可決され、参議院に送られる見通しです。

NHKニュース「少子化対策強化へ」より

既に参議院を通過し、衆議院でも可決する見込みのようだが、予算の枠として医療費名目で子育て支援というのは大きな問題であると思う。

支援は必要だと思うが、予算の立て方には疑問がある。

この点、立憲民主党案では「日銀が保有するETF=上場投資信託の分配金を代替財源」とする現実を鑑みない駄案を出していたり、日本維新の会案では「国会議員の定数削減や国の資産売却」という凡そ実現不能な駄案をだしたりと、やる気が感じられない。

恐らくは野党も反対しにくいのだろう。

「増税」と言われるのが嫌だから、与党は財源を誤魔化しているし、野党は真っ当な財源の提案ができない。

話は逸れるが、再エネ賦課金だって、導入当初は0.35円/kWhだったが、今や1.40円/kWhとなっている。実質的な大増税だよね。支援金制度だって、最初は「負担させる予定はない」などと言いつつ、「予算が確保できなかったので負担をお願いする」に変わる可能性が高い。だって、財源が明確ではないのだから。財源が見つからなかったけど、支援金制度はやることが決まっているから増税しますなんて話になりかねない。

「少子化対策のために増税します」と、「歳出改革」は別々にやるべき話。トータルでは増税になりませんで良いのだが、そこは明確にしないと政治的信用を失いかねない。そして、行政に予算の名目とは違う予算執行なんぞやらせていたら次々と都合の良い解釈で予算の付け替えをするだろう。現実問題として今もやっているんだろうけれど。

しかし、法整備時点で分かっている問題は、国会議員として認めるべきではない。職務怠慢である。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    ども。割と評価するへきは評価してあげる木霊様すら、おいおい!なのだから謎すぎますなぁ。
    んで財源にならないのは一目瞭然なので、記事の別部分に。
    木霊様の仰る通りに、無駄にされる薬はあまたあり(訪問治療や訪問看護で接するケアマネやヘルパーさんの話で解る)、
    無駄が多いすよ。診療点数などの不具合の為もあるのだけれど、日本人は無駄に薬を欲しがり過ぎる!
    てか、お年寄りには「薬で病を治す」と錯誤してる人が多い。薬は治しませんって! あくまで自己免疫や自己治癒力で体は治るので、薬は補助に過ぎない。
    まず、そこを誤解してるお年寄り大杉。
    んで、ドクターも薬を処方し過ぎ。
    昔みたいに製薬会社の過剰接待は無くなりましたけれど、それでも多すぎ。
    私は東洋医学の免許も持つので、じゃあ鍼灸に頼れと言ってもムリなのは解ってます。東洋医学が替われるくらいなら、そもそも西医が世界の主流になってない。
    すると地味だが投薬に対する「教育」から始めて、保険制度を改革しながら無駄な投薬を減らしてゆくしかないんすね。
    じみ〜で効果の出にくい道ですけれど。

    なんかチューハイのCMで騒がれた経済学者いますけど、彼の意見はそれなりに正鵠を射てるんですね。ただ言葉と知性を武器に生きる人としては、言葉と例えが稚拙過ぎた。あの言い方じゃヒトラー扱いされても仕方ない。
    解決策を提案する知識人があそこまで拙いとね。

    • 木霊 木霊 より:

      政治的に「建前」と「実情」があるのは分かるんですよ。
      ただ、そこをしっかりと分けておかないと、なんでもありになってしまう。設計段階でコレでは駄目なんですよ。

      さておき、お薬の話に関しては流石に詳しいですね。
      医者も、「お薬を出してください」と言われて、出さないわけにも行かないようで。きっちりと「不要なので出しません」と言ってくれる医者もいるのですが、請われるママに出すほうが面倒がなくていいですからね。なお、近所の医師は漢方薬も出してくれるので、そういうオーダーを聞いてくれるところで重宝はしています。が、結果としてあれで良いのか?と、思うことはありますね。

      • アバター 山童 より:

        あ、漢方についてはシオノギ製薬とか、北里大と付き合いある製薬会社で良いのが出てますね。
        ただ…木霊様なら心配ないけど、漢方を誤解してる人が多いすよ。
        ケミカルより安心と思ってる方なのですが、それ誤解。
        薬と毒とは処方量の違いみたいなものですけれど、毒としてみた時に、
        ケミカルより生薬の方が毒性が強い。また漢方には鉱物由来の成分もあって「副作用がない」などという保証はない。というかあらゆる成分を薬として用いる限り、反作用としての副作用はあるんてすね。これもその反作用の程度による話なだけで。困った事に、看護師や鍼灸師にも「漢方は安全」とか考えている人がいます。ケミカルだろうが生薬だろうが、ようは処方の仕方と量の問題なのですけれど。

        • 木霊 木霊 より:

          あー、それは分かりますよ。
          人によっては「漢方薬なら倍の量飲んでも平気」とか言うんですが、倍の量飲んで効き目が良いのであれば、そういう処方になるわけで。
          身体に負荷がかかりにくいのは効き目がマイルドだからであって、安全とか安心とかはまた別の理論ですよね。

          なお、近所の医師の漢方薬の話は正確に書きませんでしたが、花粉症対策として飲んでいる薬が、漢方薬の方が自身に対して良い効果があるような実感があるので、そちらを選んでいる(医師が選ばせてくれる)という話ですね。選択の幅が広いので重宝しているという意味であります。

  2. アバター 山童 より:

    ああ、あと別に私が看護師資格もつから言うのでないけど、専門看護師のできる事のきる枠が当初より非常に狭められてる。医師会の圧力なんたけど、そもそも医師の過労死を減らすには、医学生の学費援助と、専門看護師の稼働率を上げるしかない。
    アメリカなどは、日本で専門看護師に充当する資格を修得すると、感染症予防や、簡単な診断まで行える。それはまともな健康保険が無く医療費がバカ高いから、高度な訓練を受けた看護師を利用するという制度なのだけれど。
    実際ねぇ、首都圏の開業医も半ば病院医局務めが当たり前の時代なのに、医師への負担が大きすぎるンですよ!!
    医者って戦闘機パイロットなみに育てるの大変なンスから。もっと負担を減らすしか無く、それならば薬剤師や栄養士、看護師、理学療法士などの医師いがいの権限を増やすしかないでないすか。
    どーも医師会の上層部は、若いドクターたちを耕運機か何かと勘違いしてる。
    というと「オレの若い頃は」が始まるけれど、今は医療行為に必要な諸手続きやら何やらの煩雑さが昭和とはケタ違いなんだよ! と想うすね。

    • 木霊 木霊 より:

      看護資格でもう少し出来ることの枠を広げようという動きがあるという噂は聞きますけど、医師会が反対しているんですかね。なかなか進まない。
      ただ、知り合いの看護師さん(複数人いる)に聞いたら、「わたしたちのほうがやれる」と言う一方で「責任を持った処置」というところまではなかなか行けない人もいるようで。
      あれも教育次第なんだろうけれども、やる気がある人にはお願いできる程度には枠を広げて欲しいところです。

      あと、今の医師は大変ですよね、診療機器の近代化は良いんですが、あまりに多岐に渡るので使い方を覚えるにも一苦労のようで。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    少子化対策は、理屈自体は簡単で、
    「片親が働いて、それだけで子育てに充分以上の収入があれば良い」
    だと思ってます。働くのは男女どっちでもOK。
    収入の問題と、女性が働きたい問題は分けて考えないとダメでしょうね。
    働きたい女性は、何やっても子供産まないし、言い方悪いけど産めなくなるから。

    補助金でどうこうできる問題じゃないと思ってます。
    社会的なパラダイムシフトがないと。
    ※逆に、そういう方向に社会が進化していった結果ですから。

    自慢じゃありませんが、子供のおしめなんぞナンボほども替えた七面鳥ですから、世の男性型は一体何をそんなに子育てを嫌がるのか不思議です。
    補助金云々より、そういう意識レベルの改革が必要で、それは政治家が同行出来る問題じゃないなと思う次第。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      少子化対策で成功した国って、前例がないんですよね。
      消極的でも女性に産んで頂ける環境を構築していくしかないのですが、なかなか二人目、三人目というのは難しいでしょうね。ヨーロッパで手厚く出産後にかかる費用負担を行う制度を運用しているのですが、その制度を利用するのは外国人ばかりという状況です。女性の社会進出は、少子化とセットになっていて例外が無いという状況ですから、最早避けて通れないのかも知れません。

      子供のおしめですか……。うっ、頭が(苦笑

      • アバター 七面鳥 より:

        「少子化する前提の政策」
        ってのも、あんまり聞かないのが謎ではあります。

        いわゆる先進国では不可避なんだから、むしろ多少色付けたそれをベースに政策決定した方が建設的なのに。

        ※とはいえ、いわゆる先進国以外で、すること無いから子供が増えて、そこに支援だなんだで金と飯が湯水のごとくに消えていくのは、個人的には反対したいところでもあります。無駄飯食い増やしても意味が無い。
        ※言えば、全地球レベルで、少し人は減った方がいいのかも……ブリティッシュ作戦……

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