駆逐艦は、多様な作戦任務につく重装備・高速の水上戦闘艦である。まあ、多くの国の海軍で主力艦として活躍している船舶である。
近年は艦種の違いに余り意味は無いといわれているようなのだが、一般的にはコルベット<フリゲート<デストロイヤー(駆逐艦)<クルーザー(巡洋艦)という様な感じで大きさが大きくなる傾向にある様だ。
なお、海上自衛隊の護衛艦(Destroyer)は軽空母と同じ大きさでも護衛艦、フリゲートサイズでも護衛艦という状況なので更に名前の区別に意味がない。あ、区別していないと言うべきか。
ちなみに、駆逐艦はそこそこ大型の艦船である事が多いので、重量のあるイージスシステムを搭載することが多いのもこの艦種のようだ。
広開土大王級駆逐艦
韓国の主力級駆逐艦と言えば、この広開土大王級駆逐艦である。

韓国初の国産駆逐艦とあって、それはもう誇らしげに(笑)
ただ、この艦も韓国伝統のトップヘビー構造である。その結果、復元力なんかに問題があると指摘されている模様。
とはいえ、次級の忠武公李舜臣級駆逐艦の建造が決まってから、9隻作られる予定だったこの広開土大王級駆逐艦は3隻しか作られなかった。だからこそ、問題も色々置き去りらしい(苦笑
停電する駆逐艦
まずは、この問題。
韓国駆逐艦が5時間停電、その間に北が攻撃していれば…
2013年10月23日08時59分
西海(黄海)の北方限界線(NLL)を守る西海第2艦隊の主力駆逐艦「乙支文徳」で昨年12月未明、ブラックアウト(大停電)が発生し、於青島付近の海上で5時間ほど立ち止まっていたことが確認された。
「中央日報」より
停電したら当然ながら艦は動かない。実際、停電してしまった2番艦の「乙支文徳」は、於青島付近の海上で5時間ほど停電のために立ち往生していたそうな。
駆逐艦が停電で動かなくなるのも大概だが、発電機のトラブルで動かなくなるなんてことは、考え得ることではある。しかし、大抵は予備発電機を積んでいる。システムの多重化は、軍では当然だからね!
ところが、この「乙支文徳」の凄いところは、予備発電機すら動かなかったところだ(笑)
更に非常バッテリーすら充電されておらず(後でバッテリー更新が行われていなかったことが発覚する)、通信さえ出来ない状況に陥る始末。
結局、予備発電機の一部(ガバナー)を壊して発電し、再起動したようだが、お粗末な話だね。
シャットダウンを繰り返す
ところが、お笑いエピソードはそれだけに留まらない。
[単独]ドイツで買い付けた中古のパトリオット」の部品がない」
記事入力2014-10-13 20:34
「2千億ウォンをかけて乾燥した広開土大王艦も送受信システムの機器が老朽化して、月に一度の割合でシステムがシャットダウンされていることが分かりました。
「NAVER」より
意味がよく分からないが、どうやら戦闘システムが予期せずにシャットダウンする病気が発生している模様。
広開土大王級駆逐艦の戦術システムは、なんとC4Iを積んでいるのだが、これを動かしているのがIntel486でメモリが16MBだというのだ。
何ともレガシーな仕様なのだが、設計が古いので仕方が無い部分はあるだろう。ただ問題は、お粗末なCPUとメモリで、無理にソフトウェアを動かしていることらしい。
そりゃ、メモリ不足でシャットダウンするわ(苦笑
ちなみに、その対策としてシステムを毎日リセットするんだとか。いやもう、流石に戦闘システムのアップグレードしろよ。
日本と問題を起こした時に発覚した疑惑
さて、そんな船ではあるのだが、日本の哨戒機と問題を起こしちゃった。このブログでも触れている。
簡単に説明すると、韓国の駆逐艦である広開土大王級駆逐艦が、上空を飛ぶP1哨戒機に対して、FCレーダーを照射(いわゆるロックオンである)したという話。
この行為は、海洋上の国際的な取り決めである海上衝突回避規範(CUES)に違反する行為であり、とても友好国に対する行動と言えないモノなのだけれど、この事件で疑われるいくつかの点が問題になっている。
- FCレーダーの照射はCUES違反だが、艦長以下、乗船していた乗組員の誰も処分された形跡がない。→ 上層部がやらせた事が示唆される
- 自衛隊側から発した無線に返答できず、「聞き取れなかった」と言い訳をしたが、本当だとすれば韓国の通信機器は共同作戦がやれないレベルで悲惨である
- レーダー照射の事実を否定する材料がお粗末すぎて、自らの主張を客観的に判断出来る軍人が上層部にいない
性能に関わる話で無ければ良いんだけど。
韓国版イージス艦 「世宗大王級」
お待ちかね、笑いのデパート、世宗大王級駆逐艦「世宗大王」である。
ちなみに、韓国にはこのほかに「栗谷李珥」と「西厓柳成龍」が同型艦として配備されているぜ。……名前が読めねーよ!
重武装型の「盾」
で、世宗大王級駆逐艦は、上に紹介したミサイル類の殆どを搭載した「攻撃型イージス」と揶揄されるシロモノ。
「イージス」はギリシャ神話のゼウスが娘アテナに与えた盾(胸当)の意味で、あらゆる邪悪なモノを払うとされている。
つまり、韓国のソレは「攻撃する盾」ってことに。矛盾を感じるが仕方がない(笑
まあ、呼び名はともかく、この「世宗大王」には大きな欠陥がある。
1つは、イージス艦というのはイージスシステムを中核とした防衛機能があってこそ、なのだが、何故かがこの「世宗大王」は、アメリカ海軍の制式品ではなく、部分的に代替システムを導入している。それも、独自開発(自称)である。
なお、イージスシステムのキモである僚艦や僚機との識別をするために必要なデータリンク機能は備えられていないっぽい。だめじゃん。

それだけでも問題なのだが、この世宗大王級駆逐艦が問題なのは、重武装過ぎるってことだ。
例えば、似たような大きさの日本のイージス艦「あたご」と比較すると、どれほど重武装かがよく分かる。
「あたご型護衛艦」 | 「世宗大王級駆逐艦」 | |
搭載VSL | Mk.41VLS(64+32セル) 合計96セル | Mk.41VLS(48+32セル) 国産VSL(48セル) 合計128セル |
対艦Mランチャー | SSM-1B対艦誘導弾 4連装2基 | SSM-700K対艦ミサイル 4連装4基 |
対空機関砲 | ファランクス2基 | ゴールキーパー1基 |
短距離対空ミサイル | ー | RIM-116 RAM 1基 |
艦載機 | SH-60J 1機 | スーパーリンクス2機 |
その他の兵装は似ているので省略するが……、ちょっと重武装過ぎないか?
重武装艦の概要
VLSは32セルほど増やしている模様。
だが、Mk.41VLSと互換性の無い国産VSLを積んでおり、うち16発は紅鮫なんだとか。何故そのチョイスなのかは理解に苦しむぜ。
ついでに韓国産VLSは実はSM-2やSM-3を発射できないビックリ仕様である。
対艦ミサイルランチャーは4基も積んである。上で紹介した海星の事なのだが……、718kgの海星が4連装4基ということは16本は積んである計算に……。
対空機関砲のファランクスは後期型で6,200kgだが、ゴールキーパーは、9,902kgなので、ファランクス2基12,400kgよりちょっと軽い程度。ゴールキーパーの方が後発で高性能ではあるが、ファランクス2基に代替できるほどの性能があるかは疑問だ。ただ、これに追加して短距離対空ミサイルは1基備えているが、ファランクスと合わせて運用するつもりのようだな。
トップヘビーの伝統
そして、これ程までに重武装であるが故に、船の取り回しに支障が出るなどの問題が生じているようで。
そもそもの船体の設計が重心が高くなるトップヘビーの設計となっており、これと相まって舵取りに不安が出るとか。直線番長か、固定砲台に徹するなら、アリだね。
鈍足な固定砲台
世宗大王級駆逐艦の最大速力は、公式報道の値を見る限り、海上自衛隊の保有するあたご型護衛艦と殆ど変わらない。
「あたご型護衛艦」 | 「世宗大王級駆逐艦」 | |
排水量(満載) | 10,000t | 10,290t |
速力 | 30ノット以上 | 最大:30ノット以上 巡航:16ノット |
カタログスペックは十分にあるって事だね。
ただ、どちらかというと「巡航16ノット」と言うところが問題で、世宗大王級駆逐艦の最大速力は、武装を全て外した場合だとかいう噂も(苦笑
多分、韓国理論では、イージス艦の機動性を犠牲にして、海に浮かぶ固定砲台として使うのだろう。
多用途なイージス艦を求めたツケ
イージス艦はそもそも空母などの護衛を目的として設計されたもので、データリンクを駆使して、「盾」や「矛」の役割分担をするシステムだ。
だが、複数用意出来ないがために、単体としての「矛」の性能を求め、コノザマである。機動力を犠牲にしてまで単体戦力を高めてしまった、韓国型イージス艦がどんな風に役に立つのやら。満載している兵器はネタ兵器ばっかだしね。
更に、この世宗大王級駆逐艦には船体に木材を多用していることが確認されており、火器満載で燃えやすいとか、どんな設計思想だ、と言わざるを得ない。
次々と起こる問題
当然、他にも問題はある。
お決まりのパクリ疑惑発覚!ちょっとは自重しろと。
防衛事業庁「その場しのぎ」の対応
記事入力 : 2012/10/11 11:04
韓国海軍にとって3隻目となるイージス駆逐艦「西厓・柳成竜(リュ・ ソンリョン)」(7600トン)のソナー(音波探知装置)保護装置が水中の浮遊物にぶつかり破損したが、軍はその対策として、 海上のごみなどの浮遊物を避けて航行するよう指示していたことが分かった。
リンク切れ
そう言えば、停泊できる港が少ない問題は解決したんだっけ?韓国周辺海域は、地形的にも複雑な場所が多い様だが、港の水深が浅く大型艦は色々と苦戦するようだ。
ちなみに、韓国は海洋投棄を未だに行う希有な国でもある。ゴミは大量に海に漂っているね。
この記事のイージス艦は「世宗大王」ではなく、「西厓」・「柳成竜」なのだが、ソナーの保護装置が壊れるって、どんなけちゃちな装備なのかと。まあ、保護した結果破損したと考えれば、装置は機能していると、言えるかも知れないが。
停泊できる港は無いわ、海に浮かぶゴミでソナー保護装置は破損するわ、なかなか苦難続きですな。
更に襲う様々な問題
なお、この3隻の誇るべきイージス艦は、これ以外にも色々問題があるようで。
- 迎撃用のミサイルが搭載されていない
- 搭載しているSM-2の発射失敗
- 魚雷防御システムも錆びて動かず
- 騒音問題
よくもまあここまで問題が出てくるな。
SM-2が足りないとか、撃っても目標にあたらないとか、重武装をメインに考えられているにもかかわらずこの有り様なのが何とも……。
魚雷防衛用のチャフが射出できなかったり、スクリューから出る騒音が大きかったり、潜水艦に狙ってくださいと言わんばかりの仕様なのも、笑うべきか、哀れに思うべきか。
特にプロペラの騒音はどうかと思うぞ。
去る2008年12月に実戦配備された海軍の最初のイージス艦世宗大王艦です。配備費用だけで1兆ウォン台の最新鋭艦艇が実戦に配置される三ヶ月前の問題が発見されました。プロペラの水中騒音が基準値を超過したのです。トラップの水中放射雑音は通常URNとCIS、二つに測定するために、CISすべて基準値を超えている「不満」の結果が出ました。
「daum」より
技術が無いから仕方がないね。
それでもイージス艦は増やす
計画では、未だ作る気みたいだけど、大丈夫なのか?
海軍、2020年半ばイージス3隻の追加建造推進
入力 2013.10.16 14:46
私たち海軍の最新鋭イージス駆逐艦3隻を追加で導入する案を推進しています。ますます先鋭化すると予想される領土紛争に備えて対北抑止力を確保するためです。
「Daum」より
夢を語るだけならタダだし、計画するだけなら誰でも出来るよね。
しかし、実はこの韓国型イージス艦「盾」の性能すら微妙なのだという話も。ま、簡易のC4Iを積んでいるツケですな。
イージス艦を増やす前に、ミサイルを装備しような! 噂では資金不足で予定の半分しか積まれていないらしいぜ?
コメント
木霊さんこんにちは
>イージスシステムのキモである僚艦や僚機との識別をするために必要なデータリンク機能は備えられていないっぽい
、、、唖然、、、、もしや近寄るもの全て攻撃するパーカーサー艦ですか(苦笑)
自衛隊P1の公開映像のパイロットさん達はずっと淡々としてるように見えますが、恐らく軍事機密部分はカットされてて,そこにはロックオンアラート、緊急回避、パイロットさん達は一瞬死を覚悟、などという箇所がカットされてると想像してますが
ところが韓国国内演習だと、味方役艦からロックオンされることなど日常茶飯事で、日本はなに過剰反応してる?という異常反応なのかも知れませんね。
流石に、今はデータリンクの話は改善されていると信じたいのですが、数年前までの記事を総合すると、まともにデータリンクを搭載しているのは、韓国版イージスと、F-15K、FK-16あたりだけっぽいんですよね。
ただまあ、あくまで報道ベースの話です。
ただ、報道ベースの話であれば、「F-15Kは、搭載する対地ミサイルを誘導する電波の周波数が、韓国内の一部携帯電話の周波数と被っている」なんてことが発覚する事件もありましたから、僕は何があっても驚きませんよ。