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ロシアの戦争経済でGDP増加

ロシアニュース
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経済のニュースを見ていて「面白いなー」と思うことがある。先日のこのニュースもなかなか面白かった。

ロシア、内需改善でインフレ再燃 人手不足が経済の重荷

2023年11月16日 18:07

ロシア連邦統計局が15日発表した2023年7〜9月期の国内総生産(GDP、速報値)は前年同期比で5.5%増だった。ウクライナ侵攻の軍需や小売りなど内需が拡大し、インフレが再燃しつつある。兵員の確保などで人手不足が深刻になっており、経済の重荷になる可能性がある。

日本経済新聞より

GDPは分かりやすい経済指標である。これが、前年同月比で5.5%増だったのだから、日本よりも遥かに良いではないか!と思えるんだけれども、日本経済新聞はそんなことは欠片も考えていないような記事に仕上がっている。あ、この記事は会員限定記事だけれども。

見せかけは好調だが

ロシアのGDP

グラフを見ていただいたほうが良いだろう。あ、このグラフは4-6月期の数値までしか載っていないので、冒頭のニュースの数値、5.5%増というのは7-9月期は更に良くなったよという読み方をして欲しい。

確かに、増えている。増えているね!経済は好転しているように見えるね。

さて、半月前くらいにもロシア経済の話には言及したことがある。

この時は大幅利上げをやったけど、インフレ圧力が凄いよ、どーすんの?という記事だったんだけど、どうにもこのときにも軍事費にかなりの予算を割いていて、そのおかげで民需が弱っている。あと、労働力不足が出ているというようなことは書いた。

調べてみると、似たような論調が産経新聞にも出ていた。

土田氏はまた、ロシア経済のマイナス成長が一定程度に押しとどめられているのも「軍需産業への支出が大きく貢献している」と見る。ただ、たとえば兵器を生産しても、産業用の機械と違い、長期間、新しい製品を生み出し続けることができない。このため、軍事支出は「(中長期的で継続的な)成長への寄与度は低い」と推測する。

ロシアはまた、撤退した外資に代わり、自国企業が部品や製品を生産する「輸入代替政策」を強化している。ロトボの中居孝文ロシアNIS経済研究所長は「海外企業と比べ品質が劣るロシア企業の部品などを使って製品を作り続ければ、結果的にロシアの産業の国際競争力を押し下げかねない」と分析。「ウクライナ侵攻が終わり再び外資がロシアに流入すれば、競争力が落ちたロシアの産業は、極めて厳しい打撃を受けるだろう」と警告している。

産経新聞より

この記事は9月2日のものなので、今回のGDP速報の話は分析に入っていないのだが、やっていることに変化があるわけではないので、今も似たような結論となるだろう。

インフレ再燃

が、内需の方は色々な要因で変動する。

ロシア経済、5四半期ぶりプラス成長 軍需・消費けん引

2023年8月12日 19:37

ロシア連邦統計局は11日、4〜6月の国内総生産(GDP、速報値)の伸び率が実質で前年同期比4.9%になったと発表した。前年同期に4.5%減だった反動で、5四半期ぶりにプラスに転じた。軍需品の増産や個人消費がけん引したが、景気刺激に巨額を投入するロシアの財政状況は厳しさを増す。

経済発展省によると、4〜6月のGDPの増加に寄与したのは工業生産で、6.3%の高い伸びを示した。

日本経済新聞より

8月の段階ではプラス成長について評価するような表現だったが、冒頭のニュースでは更に数字が良くなっているのにインフレ懸念をしている。

実際にロイターの記事ではこうだ。

ロシアで物価高深刻、多くの家庭が生活切り詰め ウクライナ侵攻や西側制裁で

11/17(金) 10:54配信

ウクライナ侵攻と西側諸国からの数多くの制裁を背景にロシア経済が大きく変化し、ロシアでは何百万もの世帯が生活の切り詰めを余儀なくされている。

~~略~~

公式統計によると、1500万人以上のロシア人が貧困レベル以下で生活している。ただロシアのエコノミスト、イーゴリ・リピッツ氏は、状況は政府の報告よりもさらに悪いと指摘し、約2000万人が貧困状態にあるか、貧困寸前だと推定している。 リピッツ氏は「所得の状況を示す間接的な指標は、負債比率の高さだ。多くの国民が2つも3つもローンを抱えており、月収の50%ではなく80%近くを出費に回している家庭がいかに多いかを見れば分かる。月収の105%を手放さなければならない地域もある。105%だ。これが現実の人々の収入であり、ロシア国民の貧困の深さだ。ロシア人は深刻な問題を抱えている」と語った。

Yahoo!ニュースより

ロシア国民は困窮している人々も多くいるというわけだが、負債比率がかなり高くなっている点を懸念している。

インフレの要因は供給不足なのだが、外国から物が買えなくなって困っているという構図ではない。どちらかと言うと人件費が高騰していて、物価を上げざるを得ない状況になっている。

GDPが伸びているのは、兵器を作って消費していて、その予算はロシア政府が出している構図になっているからだ。いわゆる戦争経済である。戦闘そのものでも労働力は消費されるが、兵器産業にかなりの人手を食われているので、民間で消費するための物資生産に手が回らないようになってきているのだ。

構図的には支那経済にも似ている。あちらは、不動産開発に金をつぎ込んで経済を回しているんだけども。

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国防費は更に増加

しかし、それでも軍事費にお金を回さないという選択肢はない。何しろ、戦争中だからね。

ロシア “2024年の国防費1.7倍に” 軍事侵攻継続見通してか

2023年9月30日 16時13分

ロシア政府は、来年・2024年の国防費について、ことしと比べて1.7倍に増額させる予算案を明らかにしました。GDP=国内総生産に占める国防費の割合は、6%になる見通しで、ウクライナへの軍事侵攻の継続を見通したものとみられます。

ロシア政府は29日、議会下院に来年2024年から2026年までの3年間の予算案を提出しました。

このうち来年の国防費については、10兆7754億ルーブル、日本円でおよそ16兆円余りと、ことしの当初予算と比べておよそ1.7倍に増額するとしています。

NHKニュースより

ただ、予算をつけるためには原資が必要なわけで。今までは原油を掘って売るなど地下資源を活用して経済を回していたのだけれど、他の集金手段を考えざるを得なかったようだ。

アングル:ロシア政府、株式の「強制収用」を計画 西側投資家に不安

2023年11月18日午後 3:18

ロシア政府は西側投資家からロシア企業株を強制的に収用する新たな大統領令の検討を進めており、西側投資家の間では、大幅な安値での株式売却を迫られるのではないかとの不安が広がっている。

ロシア政府は新たな大統領令により、外国人株主から戦略的企業の株式を買い取る「超先買権」を手に入れる可能性がある。

~~略~~

アドバイザー2人は、ロシアには財政ひっ迫を肌身に感じているらしい兆しがあり、株式の強制収用は資金調達手段だと説明した。

ロシアのアナリストによると、政府は軍事に予算を投入する一方、事業活動の課税を強化しつつ、政府予算は楽観的な収入予測に依存している。またロシア中央銀行はインフレ抑制のため政策金利を2桁の水準に維持する。

ロイターより

未だ始まっていないものの、ロシア企業株を強制的に収用する計画があるらしく、これが始まってしまうと西側投資家はかなりの損害を被ることになる。

いつまでも続けられないやり方なのだけれど、いつまで続けられるのかが焦点となっている。戦争経済は終わらせるのもかなり難しいらしい。戦争が終わっても、ロシアは経済的にかなり苦しい戦いを強いられることになりそうだ。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    うひゃー。軍需に人手を取られ、若者は戦地、民需品を作る方に資本も人手も回せない故の生活苦……なんかソビエト崩壊直前みたいな。
    そこをロボット技術で乗り越えちやった結果、ロボットが暴走して……ちうのがプレステの新作ゲームであったなぁ。
    まぁソビエト崩壊前に似た感じかと。
    んが、そうは言っても、もともと生活レベル低いの慣れてますからねロシア人は。
    どっちかってーと、ガザが長引いて、ウクライナなんかに構ってられず、ゼレンスキーが折れるのが先でないすか?
    露骨にもうウクライナはNEWSの中心から外れてきてますし。ロシアは何だかんだ言って息が長い。あの独ソ戦を耐え抜いている国ですからねぇ。

    • 木霊 木霊 より:

      流石は共産主義を掲げてきた国だけはありますね。
      戦時体制に移行してこんな無茶が出来るというのは、独裁政権か共産主義くらいだと思います。いや、民主主義のアメリカでも過去には結構無茶をやった気はしますね。

      さておき、こうした体制が何時までも続くとは思えません。
      一方で、ウクライナ政府の内情もかなり怪しいという噂が絶えないのですが……。何処までが情報工作かは分かりませんから、何が本当で何が嘘かの見極めは難しいです。
      ウクライナの方が先に戦う力を無くしたとしても、不思議はありませんね。外国からの支援が続いたところで、結局は内政次第のところがありますから。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    戦時経済体制に移行してからGDPアゲを語られても、違和感しかないね。
    国内経済が”別の”需要と供給で動いているわけだから。
    いまのロシア政策金利が15.00%(前月比+2%)なので、国民生活も台無しだね。

    最近、面白いデータを診たので紹介しておきます。
    ロシア レヴァダ・センターの最新世論調査結果(10/31発表)
    https://www.levada.ru/2023/10/31/konflikt-s-ukrainoj-otsenki-oktyabrya2023-goda/

    主要なポイントだけあげると:
    ①若年層(18-24)より、高齢層(55+)のほうが、政府支持率が高く、戦争肯定感が強い
    ②戦争肯定派は、国民全体の3/4を占める
    ③国民の1/2が、(10月末時点で)戦争はさらに1年以上続くと考えている
    ④同時に、国民の1/2強が、和平(停戦)交渉を支持する(若年層の7割、高齢層の5割弱)

    国民はプーチン独裁政権に何を言っても無駄なので黙っているけど、そろそろ止めておけと言いたいはず。ただ、言っちゃうと治安部隊が乗り込んでくるようだ。
    「ロシアは有害で虐待的」プーチン政権批判したバンドのライブ会場に“治安部隊”突入
    https://news.yahoo.co.jp/articles/c20ef57b56718a78e067f32d20903a7035c235a5

    • 木霊 木霊 より:

      レヴァダ・センターですか。
      https://gendai.media/articles/-/100668?imp=0
      こちらの記事を読んだことがあります。若者よりも高齢者層の支持率が高いことは、この時から傾向としてあまり変わってはいないのですね。そして、戦争を支持する層も半数はいるのだという事実は、なかなか衝撃的でもあり、ロシア国内と国衙では違うのだなと納得もあり。
      恐怖による統制はいつまで続けられるんでしょうね。国民が飢えていない状況では、未だ続くのかもしれません。

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