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ロシア経済が結構危ない?!強気の利上げでインフレ対応か

ロシアニュース
この記事は約17分で読めます。

ロシアが利上げする狙いはなんとなく分かるんだが、この局面での利上げが良かったのかは怪しいな。

ロシア中銀、予想以上の大幅利上げ-インフレ抑制とルーブル安定重視

2023年10月27日 21:49 JST

ロシア銀行(中央銀行)は27日、予想を大きく上回る利上げを実施した。資本規制再導入で通貨ルーブルへの圧力は沈静化したが、インフレリスクはなお強まっていると指摘した。

Bloombergより

「通貨ルーブルへの圧力は沈静化した」という評価をしているんだけど、そうなのかねぇ。

ロシアの経済的な戦い

ピーキーな金利政策

ちょっと前のデータだが、これがロシアの政策金利の動きである。

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これ、2022年4月のグラフなんだけど、2月11日に政策金利を8.5%から9.5%に引き上げ、インフレ圧力の抑え込みを実施した。そして、ちょうどロシアがウクライナに侵攻したタイミングでルーブル大暴落に向かったので、更に、通貨防衛目的で9.5%から20%への緊急大幅利上げを行った。

上記の20%への急激な利上げには、市場で投機的なルーブル売りがかさむのを抑止する効果がある。空売りの目的でルーブルを調達すると、非常に高い金利が課せられるので、その市場参加者はルーブルのショートポジションを長く抱えているわけにはいかない。

日経ビジネスより

これで、ロシア政府はルーブル防衛に成功したという風にしているんだけど、通貨の取引量が減少しただけで経済的なメリットがあったかどうかは怪しい。

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これは新宿会計士さんが作成したロシアの政策金利の動きで、ここ1ヶ月くらいで再び大幅な引き上げをしたことが分かる。

中銀は政策金利を15%と、これまでの13%から引き上げた。エコノミストは14%への利上げを予想していた。

Bloombergより

大胆な決断だと言えよう。

インフレ圧力

ただ、ロシア経済にとってはここのところの大きなインフレ圧力はかなりのダメージになっているようだ。

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率

ニッセイ基礎研究所のデータを見ると、2022年2月、つまりウクライナ侵攻直後に20%のインフレ率を記録し、金利政策によって押さえ込んだ実績がある。

ところが、4月頃から連続したインフレ率の高まりが見られたために、これに対応するために更に金利を引き上げたということなんだな。

9月のロシアのインフレ率は前年比で6.00%となり、8月の5.15%から上昇した。5か月連続で上昇し、ベース効果で3月以降の伸び率が低下して以降では最も高い伸び率となった。ロシア中銀のインフレ目標(4%)は3か月連続で上回ったことになる。

なお、ルーブル下落やインフレ圧力の高まりを受けて、ロシア中銀は8月15日の臨時会合を含めて、7月以降で政策金利を5.50%ポイント引き上げている(7.5%→13.0%)。

ニッセイ基礎研究所のサイトより

おそらくはこれから冬季にかけて更にインフレ圧力の高まりが予想されるということなんだろう。だからこそ、成功体験のある金利引き上げで対応した、と。

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しかし、このグラフを見ると分かるようにインフレ率もインフレ期待も高まりを見せている。

インフレ率を大分類別に見ると、9月の前年比伸び率は食料品が4.87%、財(非食料品)が4.56%、サービスが9.66%となっている。食料品および財は6月には前年比0%台であり、足もとで急上昇している。サービス物価の伸び率は10%前後の高い伸び率が維持されている。前年比寄与度ではサービスが2.6%ポイント程度、食料品と財(非食料品)がそれぞれ1.6%ポイント程度となっており、9月のインフレ率の上昇は食料品と財が押し上げている(図表1)。

ニッセイ基礎研究所のサイトより

特に食料品やサービスの高騰が影響しているようだ。

品目別の上昇率を見ると3(図表6)、9月は前年比で海外旅行サービス(40.38%)、青果物(25.87%)、その他サービス(23.25%)の伸び率が高い。一方、テレビ(▲12.36%)、穀物・豆(▲11.28%)、植物油(▲6.77%)の下落が目立つ。

ニッセイ基礎研究所のサイトより

海外旅行サービスの高騰はある意味仕方がないとして、青果物の値上がりはどういうことなんだろうか。

ともあれ、全体的に見ればロシア経済の苦境を示している。こういったインフレ圧力は利上げで対応出来るようなものではない可能性が高い。後述するが、おそらくは「物不足」や「労働力不足」がインフレ圧力に繋がっている。

新宿会計士さんは国際収支のトリレンマを絡めて説明されていて、参考になるので一読いただければもっと深く理解出来よう。僕はなんとなくしか理解出来ないが。

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プーチン氏の演説

ただ、こんなニュースを見ると、ちょっと面白い感想を抱くのである。

ロシア経済、国防費増大に「耐え得る」=プーチン大統領

2023年10月6日午前 9:31

ロシアのプーチン大統領は5日、同国経済が数年にわたりウクライナでの戦争に伴う国防費増大に耐え得ると指摘し、西側諸国による制裁の影響は大きくないとの見方を示した。

政府が先月示した予算案によると、ウクライナへの「特別軍事作戦」に一段の資金を振り向ける中、2024年国防費は歳出全体の約3分の1を占める見通し。

ロイターより

国防費が歳費全体の3分の1を占めるって、なかなかの数字だ。

プーチン氏は南部ソチで開いた内外有識者の会合「ワルダイ会議」で、ロシア経済は昨年2.1%のマイナス成長になったが今年は回復する見込みで、制裁がもたらした課題を克服したと語った。

その上で、財政収支は第3・四半期に6600億ルーブル(66億9000万ドル)を超える黒字を記録したと明かした。

ロイターより

去年はマイナス成長だったが、今年はプラスになるって?

プーチン氏は国民を鼓舞して、挙国一致で頑張ろうというメッセージを送ったのだと思う。実際に、努力の跡は数値にも見られる。

8月のGDP成長率は前年同月比5.2%、製造業の堅調が続く

2023年10月05日

ロシア経済発展省は9月27日、2023年8月の実質GDP成長率(推計値)を前年同月比5.2%(前月伸び率より0.1ポイント増)となった(添付資料表参照)。前月に続き、建設業が堅調だったことや、小売り、製造業が好調に推移したことで成長が持続した。

8月の鉱工業生産は前年同月比5.4%増だった。鉱業の伸び率は前月から0.3ポイント増のマイナス1.2%となった。このうち、石炭採掘が1.4%増(前月より3.0ポイント減)、金属資源採掘が3.2%減(前月より1.3ポイント減)、その他の資源採掘が0.8%減(前月より8.7ポイント減)、鉱業分野のサービスが4.4%増(前月より1.3ポイント増)だった。

製造業の伸び率は前年同月比10.3%増(前月より0.8ポイント増)となった。機械製造業が自動車、コンピュータ・電子機器の回復を背景に34.0%増(前月より11.5ポイント減)と好調に推移したことが製造業全体の伸びに寄与した。

JETROより

結構、ロシアの同志が頑張っているのか、成長率だけ見ればかなりのものである。なお、IMFの予測でもプラスになる予想だ。

IMF、24年ロシア成長率予想を1.1%に下方修正

2023年10月11日午前 9:26

国際通貨基金(IMF)は、10日に発表した最新の世界経済見通しで、2024年のロシア国内総生産(GDP)伸び率予想をそれまでの1.3%から1.1%に下方修正した。

ロイターより

ただ、IMFの予測はロシア経済発展省の出す数値に比べて随分渋い。大規模な財政出動を行うから、成長するだろうというのがIMFの予測の根拠だが、それでも下方修正したのはインフレ圧力の高まりが確認されたからだろう。

そして、政府債務は凄い勢いで増えているので、ロシアの地下鉱物資源の状況によってはかなり危ういことになるかもしれない。

プーチン氏の自信がどこから来るモノなのかは知らないのだけれど、なかなか綱渡りの運営を続けているようだ。ウクライナ侵攻で相当なコストを支払っているので仕方のない面はあるのだが、ロシア経済はかなりキビシイ局面にきている。

スタグフレーションの様相

というのは、労働力の不足が経済に影響を及ぼしているようなのだ。

労働力不足でスタグフレーションの様相を強めるロシア経済

2023/08/21

ロシア連邦統計局が8月11日に発表した2023年4〜6月期のGDPは、前年同期比で+4.9%となった。5四半期ぶりのプラス成長である。しかしこれは、ウクライナ侵攻直後であった前年同期に、ロシア経済が大幅に落ち込んだことの反動によるところが大きく、ロシア経済が本格回復に転じたことを示すものではない。

ロシア経済にとって差し迫った問題は、歯止めがかからないルーブル安、それによる物価高、さらに通貨防衛のための大幅利上げによる景気抑制の三重苦である。物価高や経済の悪化は通貨安に跳ね返り、それが物価高をさらに促すという悪循環に陥るリスクもある。

~~略~~

ウクライナ侵攻後は、ロシアで労働力不足が深刻化している。5月の失業率は3.2%の低水準となった。ロシア中央銀行の企業調査によると、労働力不足は過去25年で最も深刻とされる。もともとロシアは、出生率の低下や高齢化、死亡率の高さなどの人口動態の要因から、労働力人口は減少していた。そこに加わったのが、ウクライナ侵攻の影響である。昨年秋の30万人の動員や動員逃れなどのための出国によって、ロシアの労働力不足は一気に深刻になったのである。

NRIより

既に軍需経済に移行しているロシアだが、賃金上昇率は高止まりしており、企業は頭脳の流出によって競争力を失いつつある。更に徴兵によって労働力が不足がちになっているので、軍事産業による下支えがロシア経済を支えているのではないか?というのが、NRIの分析である。

ロシアは戦争継続をしている理由は、こんな所にもあるのかも知れない。ただ、軍需経済が破綻した時にはどのような歪みがでるのだろう。日本の例で行けば、戦争後には急激なインフレがやってきて、それをかなり乱暴な方法で解決している。プーチン氏がそれを解決できればいいが、下手するとロシア崩壊の引き金を引くことになりかねない。

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ロシア経済は死んでいない

崩壊しなかったロシア経済

さて、こういうネガティブな記事とは別に、ポジティブな記事も出てはいる。

ウクライナに侵攻したロシアへの制裁、結局は中国・インドが漁夫の利を得た 崩壊しなかったロシア経済、なぜ制裁は抜け道だらけとなったのか

10/27(金) 10:02配信

ロシアのウクライナ侵攻から1年8カ月となるが、日本や欧米諸国が科した対ロシア制裁が期待された効果を上げていないことが明らかになってきた。制裁に参加していない中国など第三国が逆に漁夫の利を得ている構図も浮かび上がる。どこに抜け道があったのか。

Yahooニュースより

共同通信名義で出ているこの記事だが、「ロシア経済はまだまだ大丈夫」というような記事を書いている。上に紹介したように経済成長率という指標で見ると、割と大丈夫な感じの印象を受ける。

今年はプラス成長が確実視される。昨年10月に23年のロシアの実質成長率を2・3%減としていた国際通貨基金(IMF)は、今年1月には0・3%増とプラス成長予想に変更。4月0・7%増、7月1・5%、10月2・2%と期を追うごとに予想値は上昇。

ロシアのシルアノフ財務相は8月、今年の成長率は2・5%以上になるとの見通しを明らかにした。世界銀行による23年の世界全体の成長率2・1%と比べても「好調」と言って良い数字だ。IMFは24年のロシア経済についても1・1%増とプラス予想をしている。

Yahooニュースより

ここの下りは上でも紹介した。プラス予想が出ているのは事実で、その理由が政府負債の積み上げと大掛かりな財政出動を行うからだという事になっている。

なんだけれども、内容をよく読んでいくと、ちょいちょい不穏な内容が書かれている。

民生品が足りない

例えば、上で紹介したように、ロシアは今、軍需経済になっている。だから、作った兵器が消費されることで見かけ上のGDPは上がる。

戦争に伴う大量の兵器生産が特需を生んでいるのに加え、年金や最低賃金引き上げなどの景気刺激策も寄与。主要輸出品の原油収入も大きな減少を見せていない。

Yahooニュースより

記事の印象はともかくきちんと「大量の兵器生産が特需を生んでいる」と言及していて、恐らく共同通信もこれが不味いことは分かっている。

「最低賃金引き上げ」と書いているが、これ、人手不足がその実態なのであって、あまり喜ばしいことではない。人手不足で賃上げ要求が高いレベルで発生している。特に、働き手として重要な若手の男子が不足しているのである。

そして、ロシアを支えているのはやっぱり原油の収入によるところが大きい。

原油価格上昇で薄れる対ロ制裁効果で先進国に危機感:中東情勢悪化もロシアを利することに

2023/10/16

昨年12月に先進7か国(G7)、欧州連合(EU)、豪州は、ロシア政府の収入減とエネルギー価格の安定を狙って、ロシア産原油の輸出価格に1バレル60ドルの上限を設定し、この上限を超える価格で取引された原油については船舶保険を引き受けないよう、欧米の保険会社に義務づけた。

この制裁措置の効果で、米財務省は今年前半のロシア政府の原油収入が、前年比で50%近く減少したと説明している。またロシア中央銀行は、1─9月の石油・ガス収入は前年同期比34.5%減少し、1-9月の経常黒字が前年同期比79.1%減の409億ドルになったと発表した。

しかし、夏場以降の原油価格上昇によって、ロシアの石油輸出額、政府の原油収入は再び持ち直している。そのため、制裁効果が薄れているのである。ロシア中央銀行は、石油輸出額は緩やかに持ち直しているとして、2023年の経常黒字見通しを260億ドルから450億ドルへと引き上げた。

ロシア財務省が発表したロシア産ウラル原油価格は、6月に1バレル55.3ドル、7月に64.4ドルであったが、9月には平均で83.8ドルまで上昇している。

~~略~~

ただし、ハマスによるイスラエル攻撃によって生じた足もとでの中東情勢の不安定化は、対ロシア戦略の観点からも先進国にとっては大きな懸念材料である。

NRIより

その価格上昇の裏にはハマスのテロ攻撃があるのだから、ロシア黒幕説が囁かれるのも無理はない。おそらくは、トリガーを引いたのはイランとか別の国なのだが、ロシアがこの機を逃さずに商売していることは確実である。

ルーブル安に加え、制裁による輸入物資不足が国内の旺盛な消費需要を満たしていないとの指摘もあり、懸念材料となっている。

Yahooニュースより

ただし、民生品など一部の商品は品薄感が増しており、これがインフレ圧力の高まりに手を貸している状況になっているのも事実である。おそらくは共同通信も分かって書いている。

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幽霊船団

そして面白いと思ったのはここ。

今年8月時点で、こうしたタンカーの数は156隻に上り、日量210万バレルの原油を輸出している。非正規であるため「影の船団」「幽霊船団」と呼ばれており、必要なメンテナンスを受けておらず、十分な保険にも加入していないため、原油流出時の回収コストや補償を負担できないとの懸念が強い。

Yahooニュースより

どうも、ロシアは形振り構わず原油輸出にかかっているようで、「影の船団」とか「幽霊船団」とか呼ばれるタンカーを使った輸出を行っている。

ロシアのタンカーは必要な保険に加入できない状況が続いていて、トラブルが引き起こされれば莫大な損害賠償を要求されかねない。何より、ノーメンテナンスで運用しているような状況なので、長くは続けられないことになる。

いや、支那の造船会社が遊んでいるので、案外その辺りでメンテナンスを受けている可能性はあるが、その辺りはちょっと分からないな。

航空機のメンテナンスは第三国からの部品輸入

更に、ロシアの航空機はメンテナンス不足で飛べなくなる!といわれていたが、これも何とか回避している模様。

ラトビアを拠点としロシアに関する調査報道を手がける独立系メディア「バージヌイエ・イストリイ(重要な話題)」によると、ロシアは昨年3月から今年3月にかけて、ボーイングとエアバスの部品180億ルーブル(約270億円)分を並行輸入したことが税関資料から裏付けられた。購入先企業所在地は上から順にアラブ首長国連邦(UAE)、中国、トルコの順だった。

Yahooニュースより

当初から分かっていたことではあるが、正規のメンテナンスはともかくとして、こうした部品供給ルートに関しては止めることが難しいだろうとは言われてきた。

「重要な話題」が調査したモスクワに本社のあるプロテクトル社のケースでは、同社は侵攻が始まった22年、ロシア航空会社への転売のためUAEの企業からボーイング社製部品を輸入、収益を前年比200倍増加させた。

Yahooニュースより

ボロ儲けしている企業もあるようだが、恐らくこういった企業は、ボーイング社などとの取引が停止となり、以降はまともな商売ができなくなる可能性が高い。

こうした輸入に関与した企業や経営者は当然、制裁や刑事罰の対象となる。しかし、反汚職運動を続ける非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナル・ロシアのイリヤ・シュマノフ事務局長は「重要な話題」に対し「サプライチェーン(供給網)を下れば下るほど、制裁が守られる可能性は低くなる。刑事罰が科せられるケースはとても少なく、(制裁の危険を察知すれば)すぐ会社を閉鎖し、別の会社を立ち上げればいいだけだ」と指摘する。

Yahooニュースより

記事では、対策は効果が無いだろうというような印象の内容を書いているのだが、どうなんだろうね。そんなにいつまでも同じ手口を続けることができるのだろうか。

構造的な欠陥はその通りだが

最後に、記事はこのように結んでいる。

さらに「ロシアが(拒否権のある)国連安全保障理事会常任理事国であることから、安保理決議による制裁ができず、いわば有志国による制裁となってしまった。制裁に有志国以外が加わっていないことに、そもそも大きな問題があった」と現在の制裁体制の構造的欠陥を強調した。

Yahooニュースより

しかし、第三国経由の部品調達というのは、流石に限界がある。

確かに安保理の決議の構造的欠陥があるのは事実だが、経済制裁に意味が無いということではない。実際に、ロシア政府は国内リソースをすり潰しながら戦争を続けているのだから。割高な部品を買いつつ何とかメンテナンスを続けているが、これがまたインフレを招く要因にもなるという悪循環である。

今回の政策利上げは恐らく近視的な対応なのだろうけど、長期的には利下げをどこかでやらざるを得ない。今の金利のままだと、借金の額も雪だるま式に増えちゃうからね。2024年には金利4%位に下げると予告しているんだけど、さあ、できるんだろうか?

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追記

コメントで密造酒の話を頂いたので、少しニュースを漁ってみた。確かに、そんなニュースを見かけたような気がする。

アルコール飲み29人死亡 メタノール混入か―ロシア

2023年06月07日14時14分

ロシア中部ウリヤノフスク州で、毒性のあるアルコール飲料を飲んだ90人の体調が悪化し、うち29人が死亡した。当局が6日明らかにした。

時事通信より

この手のニュース、ロシアからは良く出てくる印象が強い。

「メタノール入り密造酒」ロシアでなぜ今の時代に?

2021/10/11 19:22

ロシアで販売された「密造酒」を飲んで、34人以上が死亡したという出来事がありました。ネットでは「なぜ、今の時代に密造酒が出回るのか」と不思議に思う人が続出しています。

捜査員が調べているのは、密造酒が入っているとみられるドラム缶です。

~~略~~

ロシアでは、過去にも酒の代わりとして「メタノール」を含んだ製品を飲んで死亡するケースが相次いで起きていました。

捜査当局は、密造酒の販売に関わった疑いで10人を拘束し、そのうち5人を逮捕したということです。

テレ朝ニュースより

アルコール飲料がドラム缶に詰められている様子はシュールだが、こういったニュースは定期的に出てきて、最近もそうなのだということだ。

ロシアにおける「アルコール問題」の歴史とは?
「ロシア人はウォッカばかり飲んでおり、アルコール中毒がとても多い」というステレオタイプが存在します。そんなロシア人が抱えるアルコール問題の歴史について、世界のさまざまな不思議を取り扱うYouTubeチ...

このGigazineの記事が興味深いのだが、ロシアとアルコールの関係は深く、男性の平均寿命を縮める程度には大量のアルコールが飲まれている。しかし市販のアルコールは高くて買えない。だから、ダーチャ離れの小屋サマゴン密造酒を作る、それがロシア・スタンダードなのである。

ロシアにおける最近の砂糖事情

最終更新日:2013年4月10日

ロシアは世界有数の砂糖消費国かつ輸入国である。近年は国際砂糖価格の上昇を背景に生産量が大幅に増加し、輸入量は減少してきたが、最近の国際価格下落でてん菜の生産意欲が低下しており、今後輸入量が増加に転じる可能性もある。政府は関税制度により国内生産者を保護しているが、2012年のWTO加盟に伴い、粗糖の上限関税の引き下げが合意された。将来的にさらなる輸入関税の引き下げなどが求められる可能性もあり、動向が注目される。

alicより

古い記事だが、ロシアの砂糖の消費量は多く、世界有数の砂糖消費国であるという内容になっている。当然、果物などを砂糖煮にするなどの保存方法がメジャーなため、食生活の特徴として砂糖の消費量が多いのは事実だ。が、お酒を密造するにも砂糖が必要なんだよね。

ところが、この夏にこんなニュースが。

北朝鮮経済が活発化か、ロシアとの秘密取引で財政潤う

2023年7月26日 21:23 JST

これまでになかった種類の砂糖が市場に出回るようになった。衛星写真が国境を越える列車を捉えた。トランスポンダー(応答装置)をオフにした貨物船が出航した-。北朝鮮の不透明な経済を見極める際に専門家が注目するのは経済データではなく、こうした兆しだ。

~~略~~

北朝鮮を脱出し、現在は韓国で北朝鮮経済を調査する会社を経営しているカン・ミジン氏は、ここ数カ月にロシアの砂糖が北朝鮮の市場に出回るようになったとの情報を受けたと明らかにした。北朝鮮で見慣れた砂糖よりも粗く色が濃かったため、市民はけげんな反応を示しているとカン氏は述べた。

Bloombergより

大切な砂糖を輸出の商品にする程度には、ロシアは武器を欲しているという風に解釈すると、なかなか不穏な内容である。

ロシアでは今後、メタノール入り飲料を飲んで体調を悪化させる、または死亡するニュースが増えていくのかも知れない。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    うわぁ…コレは書かなきゃならないゆだろうな経験者として( ´Д`)=3
    「幽霊船団」ですがね、そりゃ出てきますよ。国が後押しせんても出てくるのたから、後押しされてりゃね……
    儲かるんですよ。スクラップ同然の廃タンカーに質悪スポット原油を積んで運ぶだけで。戦火の盛んな時は、交戦国たけでなく、遠隔の非交戦国も燃料足らなくなるんですね。私の所属していた会社は、クソみたいな夾雑物だらけの原油を
    人民解放軍に売りつけてボロ儲けしてましたから。こういう時は危険手当付きなので売り手市場なんてすね。質が極端に悪くても。特に汚職と腐敗が進んだ軍隊や国にはね。
    んなもん買ったせいで、軍の上層が何人か粛清されたみたいですけど、んなこと知ったこっちゃない!
    銃殺されるの俺たちじゃないもん。
    んで、カルロス・ゴーンを楽器ケースで運んだみたいな冒険軍人と、私みたいな食い詰めた若造(当時)に、年収数年分の金で釣っても、儲けに比べりゃ芥子粒。
    船はお役御免になったらテキトーに沈めて保険金を…と二度おいしい!
    そういう事を頼めばやってくれる海賊とかいたそうですし。たぶん、ソマリアあたりには今でもいるのでないすか?
    しかし、それを大挙してやるのがロシアらしいと言うか……奴らも図太いすね。

    • 木霊 木霊 より:

      それはまた、得難い知見をお持ちで。
      食用油をディーゼル用の似非軽油に改質する話は別のコメントで頂きましたが、なるほど売り手市場ですか。
      ロシアという国が出て来れば、そりゃ本質はヤクザ国家です。金の為なら、何でもやるでしょうね、何でも。いや、金より面子なのかもしれませんが。「アメリカなんぞに経済制裁食らっても、屁でもない」とそう云う事を言うためだけに、やっているのかもしれません。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    ロシアが経済的に苦境にあることは疑いないと自分も思っている。
    記事やコメのように、お得意の”地下経済”がフル稼働しているようだからね。

    最近のロシア主要紙にアルコール関連記事が出ていて読みながら笑いが出た。
    ここ数年ロシアでのウォッカやコニャックなどアルコール度数の高い酒の生産量・消費量が年々減っているらしい。
    ただ情報は錯そうしていて、明確な理由は”わからない”。このあたりはさすがロシアだ。
    もっとも、消費量減少の推測は簡単につく‐その原因は恐らく『密造酒』だね。

    木霊さんの記事のとおり、いまのロシアは軍需経済に移行して、民生品の輸入制限があり、国内生産が不足していて、その上高インフレによる生活圧迫がある。
    現在のロシア人の平均月収は大雑把に2000ドル前後らしいけど、国民の3分の1以上が月収300ドル以下とのこと。年金生活者はその半分の平均150ドルくらいだね。

    低収入の人々がせっせと『密造酒』造りに励む様子が目に浮かぶ。ロシアの『密造酒』は砂糖とイースト菌から造るソ連時代から定番だ。蒸留の手間はあるけど、みんな、ダーチャ(鶏小屋のような別荘)で造って飲んでいるでしょう。
    カネはなくても『密造酒』は造れる。飲めれば彼らは幸せですよ。

    • 木霊 木霊 より:

      密造酒に目を付ける話は思い至りませんでした。
      ちょっと調べたら面白いことが。追記させていただきました。

      • アバター 砂漠の男 より:

        以前にロシア専門商社に勤める方から伺った話。
        ロシア人曰く、「ロシアでの生活にウォッカと食肉は欠かせない」
        理由は単純で、「冬の寒さが厳しいから」本当だろうか?
        で、以前にロシア人から聞いた話①「ウォッカは生きるためのエネルギーだ!」
        さらに別のロシア人から聞いた話②「ソ連時代、食事を取らずウォッカだけで生きていたやつが(職場に)いた。」これは、いまも信じられない。

        • 木霊 木霊 より:

          ウオッカと食肉ですか。
          引用したニッセイのレポートに、食肉の取り引き価格が高騰している旨の記載がありましたから、その話が本当であれば冬にかけてロシア人が食べる肉が不足することになりますね。国内消費を賄う程度の肉の生産量があったハズですが、ハテ。
          ウォッカの方は、常飲しているので無くなると困るのでしょう。ただ、彼らは酒に味を求めず、アルコール度数を求めるそうなので、日本人がイメージする飲酒とは異なる概念かもしれませんよ。

          • アバター 砂漠の男 より:

            食肉については、武漢ウィルス騒動の前に、豚コレラのパンデミックがあったから、それの影響かもしれないね。
            豚コレラは、欧州で発生して、ロシアを経由し、支那・朝鮮まで感染が蔓延。当時の支那では、養豚3億頭のうち1億頭以上が処分されて困っていたけど、ロシアでも似たり寄ったりだったらしい。ロシアではいま食肉の輸入も難しいから不足気味なんだろうね。
            因みに、武漢ウィルス前には、支那は毎年ロシアから数百トンの生きた食肉豚を輸入していた。

  3. アバター 河太郎 より:

    ロシアが力尽きるのと、ウクライナ支援打ち切りとどっちが早いのでせう? 
    解らないのは、本気でウクライナを勝たせたいなら、なんでネタニヤフに、ありったけのバンカーバスターを譲らないのてせう?
    ハマスのトンネル網は総延長ン100kmと豪語してますが、んな長さならば各所に給排気施設か必要なんですよ。これは営団地下鉄のトンネル内空調装着のプリーリー交換した事あるから断言てきます!
    地下鉄は電車が空気を押し出すポンプ役も果たすのに、それでも大型の空調が必要。これマリリン・モンローのスカートがめくれる映画みりゃ納得します。
    それらはトンネルの結節点に設置されますから、そこバンカーバスターで狙えば
    、いずれ炭酸ガスやCO2が溜まって戦闘など出来なくなる。人質の一定数もぎせいになるが、過去の対テロでも被害は出ている事で、仕方ないでせう。
    本気でロシアを撃退したいなら、やれば良いのに。ウクライナやガザ地区で何万人も死なせるならば、200人くらいの人質が犠牲になっても想定内だと想うです。
    やらんのは、結局は兵器の在庫を処分して売らないと、米国経済がまわらないから、あえてやらないのては無いですかね? どうもバイデン政権は胡散臭い。

    • アバター 河太郎 より:

      私はトロッコ問題なら、1人か6人なら、
      迷わず一人の方に舵を切る派ですので。
      人質の人命を軽視する気はありません。
      ただ、人質重視なら、その間にウクライナ、パレスチナ市民、イスラエル兵の人命は「人質200人より軽い」てことになりませんか?
      それポリコレと人権がどうこう言うバイデンのやる事としては矛盾してると思います。

    • 木霊 木霊 より:

      ロシアの自力が尽きるのが先か、ウクライナ支援打ち切りが先か。なかなか難しい答えの出しづらい問題ですね。
      前に書いたように、アメリカの内政要因が関わってくる話なので、そこ次第でしょうか。

      ご指摘のようにバンカーバスターを提供することである程度の損害緩和が期待できるのでしょうが、問題は何処に地下道があるのかが不明であることが攻撃を躊躇わせているのでしょう。おそらくは、周辺海域に空母が展開しているので、位置の特定ができればやるのではないでしょうかね。
      敢えてやらないメリットは、アメリカにはあまりないような気がします。

  4. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >作った兵器が消費されることで見かけ上のGDPは上がる。

    中国の鬼郷とどっこいどっこいの経済対策ですね(違
    ※兵器だけに、まさに消費材か。笑えねぇ。
    ※中国の方は建物は残る……と思ったけど、どっちみち人が住めるような代物ではないなら同じか。

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