ちょっと面白いニュースである。
ロシア機撃墜、味方の誤射の可能性 ロシア独立メディア「暗黒の日」
2024年1月16日 1時34分
ウクライナ軍は15日、ロシア軍の早期警戒管制機「A50」と空中指揮機「IL22」を撃墜したと明らかにした。これに対し、ロシアの独立系メディアは、空中指揮機は帰還したとしたうえで、ロシア軍の防空ミサイルによる誤射の可能性を伝えた。撃墜が事実ならロシア軍にとって「新たな暗黒の日になる」との声も出ている。
朝日新聞より
味方の誤射で虎の子の早期警戒管制機A50と空中指揮機IL22が失われてしまった、朝日新聞はそう伝えているのだが……。
ロシア軍の探知能力が低下
ウクライナ軍側は、「アゾフ海で撃墜した」と主張
ロシア側の主張とは違う話になっている。
ロシア早期警戒機を撃墜 アゾフ海でウクライナ軍
2024年01月16日00時33分
ウクライナ軍は15日、南東部に広がるアゾフ海上空で、侵攻を続けるロシア軍のA50早期警戒管制機を撃墜したと明らかにした。ザルジニー総司令官は通信アプリ「テレグラム」で、今回の作戦を計画・実行した空軍に「感謝する」と述べた。
時事通信より
どちらの言い分が正しいのかはハッキリしないが、「撃墜した」というウクライナ側の主張は厳しい様に思われる。
もちろん、厳しいところにまでアプローチして攻撃した可能性は否定できないのだけれども、今のところ攻撃手段も明らかにはされていない。分かっていることはロシア軍は早期警戒管制機A50と空中指揮機IL22の何れも失ってしまった、そういうことなのだろうと思う。
こちらはロシア側の情報で、アナパ空港で撮影された空中指揮機IL22の尾翼なのだけれど、修理が出来ればまた飛行可能なのかも知れない。
こちらは別の角度。結構被弾している様子が分かる。
他方の、早期警戒管制機A50の方は失われてしまったようだ。
早期警戒管制機A50は8機だけ?
で、今回問題とされるのは、早期警戒管制機A50がロシア軍において、偵察にはかなり有用で重要な兵器である点と、使えるA50が少ないのでは?という点である。
ウクライナ、露早期警戒機など撃墜と発表 事実なら露軍に大打撃
2024/1/15 20:56
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は15日、アゾフ海上空でロシア軍の早期警戒管制機A50と空中指揮機IL22Mをそれぞれ撃破したと交流サイト(SNS)で報告した。事実であれば、露軍の制空能力に大きな打撃となる。ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に「A50は撃墜された。IL22Mは大きな損害を被りつつ緊急着陸した」と指摘した。
~~略~~
ブダノフ氏はFTに「露軍は良好な状態のA50を8機しか保有していない」と指摘。A50を喪失することで、戦闘地域での露軍の活動能力や通信能力が低下するとの見方を示した。
産経新聞より
本当に8機だけなのかは不明ではあるが、早期警戒管制機A50のトータル生産数は40機であり、うちロシア空軍が運用出来ているのは4機のA-50Uおよび15機のA-50を運用しているとされている。一部はインド空軍が使っているようだね。
そうすると、部品不足・メンテナンス不足で飛べないA50がそれなりにあったとしても不思議はない。良好なのが8機だけという可能性も納得できる話ではある。
3月にも攻撃される
この話の前にも早期警戒管制機A50が攻撃されたような事案はあって、この時はウクライナ側は攻撃をしたことを否定している。
ウクライナ、露管制機「A50」攻撃への関与否定
2023/3/8 08:37
ベラルーシのルカシェンコ大統領が7日、同国内の飛行場でロシア軍の空中警戒管制機「A50」がウクライナの治安機関が関与する「テロ攻撃」を受けたと主張したことに対し、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は同日、ツイッター上で、A50攻撃へのウクライナの関与を否定した。ポドリャク氏は「テロ」を行っているのはロシアのウクライナ侵略を支援しているベラルーシだとも指摘した。
産経新聞より
この時は、ベラルーシの首都ミンスクの近郊のマチュリシチ飛行場で駐機していた早期警戒管制機A50が爆発で損傷した件なので、他国でテロをした扱いをされるのは困るからウクライナ軍は否定したという経緯ではある。
ああ、早期警戒管制機A50が今回撃墜された機体と同じかはわからない。
ただ、狙われるだけの能力があることは事実だろうから、そうなると今回の早期警戒管制機A50の喪失はロシア軍にとって結構痛いということになるのかも知れない。
そして、アゾフ海の西部で攻撃されたということであれば、この海域での運用が難しくなったことを意味する。何より、貴重なパイロットを失ったことが大きなダメージになるんだろうと思う。
同士討ちのケース
では冒頭に紹介した朝日新聞の言及した「ロシア軍の防空ミサイルによる誤射」が原因だった場合は、どういうことになるのだろうか。
S-400防空ミサイルが運用されていることは知られているが、これが「誤射」してしまって、味方の偵察機を2機も撃墜してしまったとすると、敵味方識別装置が問題なのか、或いはウクライナ側の何らかの兵器が誤射を誘発したのか。
いずれにせよ、ちょっと拙いことになりそうだ。
ウクライナの指揮官は「ドニエプル川の報復だ」という趣旨のことを主張しているようだが、同士討ちだったとするとロシア空軍の内部での不安を増大させることになる。味方から撃たれるのは士気にも関わるからね。
まあ、続報に期待したい。
コメント
こんにちは。
IL22は、相当な至近距離で対空ミサイルが炸裂、直撃はしなかったものの散弾をたらふく食らった感じですね。
で、A-50ですが、最初「HIMARSで撃墜した!」とかのタイトルの記事も見かけて、どんな神業だよってなりましたが。
推測するにも、距離的にウクライナから手出しするのキツいですから、何やらかして墜ちたんだか皆目ワカランですね……
「そしてここからが本題ですが、ウクライナはここまで届くミサイルを装備していない」
ってヤツですね……
「キーウの幽霊」でも出張ってきたのかな……
※既に当該パイロットは死亡報道流れてるので、マジの幽霊かも。
こんにちは。
本件はウクライナ側の主張というのはかなり怪しい感じなんですが、ウクライナ軍としても具体的な攻撃方法を明かすわけには行かないし、ロシア側も何が問題だったかを明らかにすることは難しいと思います。
だから、「何が起こったのか」は推測の域を出ないので、ロシア側の「誤射」の方がまだ分かるかなというスタンスであります。ただ、ロシアはそれを認めるのもまた業腹だったと思いますが。
まあ、2機使い物にならなくなった、ということは確定ですね。