スポンサーリンク

オランダ沖で火災を起こした日本船籍の自動車運搬船、EVから発火か

北欧ニュース
この記事は約8分で読めます。

これは……。

日本企業所有貨物船で火災、高級車など約3000台積載-オランダ沖

2023年7月27日 9:39 JST 更新日時 2023年7月27日 10:26 JST

ドイツのメルセデス・ベンツグループ製の自動車約300台を含む3000台近くを積載した貨物船がオランダ沖で火災を起こし、オランダの沿岸警備隊が消火活動に当たっている。

当局などによれば、正栄汽船(愛媛県今治市)が所有する自動車運搬船「フリマントル・ハイウエー」で現地時間25日深夜(日本時間26日午前)に火災が起き、乗組員1人が死亡した。負傷した数人と死亡者を含む乗組員23名全員がヘリコプターと救命ボートで船から降ろされたという。

Bloombergより

うーん。

EVの搬送方法が問題となるニュース

ドイツからシンガポールへ

パナマ船籍の正栄汽船(愛媛県今治市)が所有する自動車運搬船「フリマントル・ハイウエー」も不幸だったね。

船内に2857台の車両を積んで、ドイツから日本に向けて輸出される運びだったようなのだけれど、どうもそのうち25台がEVで、このうちの1台が燃えたらしい。

正栄汽船は、現地当局と協力しているとし、死亡した乗組員に哀悼の意を表明。車両の最終目的地はシンガポールだと説明した。同社は26日の発表文で、「引き続き鎮火に向けて全力を尽くし、事態の早期解決に向けて取り組む」とした。

沿岸警備隊の報道官によると、積まれていた2857台のうち25台が電気自動車(EV)だった。オランダ通信社ANPは匿名の沿岸警備隊当局者の話を引用し、EVの1台で出火した可能性があり、火災が数日続くかもしれないと伝えた。

Bloombergより

燃えた理由は不明だけれど、自動車会社は騒然としているだろうね。

当局などによれば、正栄汽船(愛媛県今治市)が所有する自動車運搬船「フリマントル・ハイウエー」で現地時間25日深夜(日本時間26日午前)に火災が起き、乗組員1人が死亡した。負傷した数人と死亡者を含む乗組員23名全員がヘリコプターと救命ボートで船から降ろされたという。

Bloombergより

乗組員1人が死亡、数人が負傷という事故になってしまったが、他の乗組員は救助された状態である。だから、燃えながら海上を漂っている状況だという風に考えられるね。

運搬船沈没の可能性も

なお、火が出た場所も良くなかったようだ。

近くにはドイツ、オランダ周辺の沿岸に広がる地球最大規模の干潟「ワッデン海」がある。1万種を超える生物がおり、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている。オランダのメディアは、運搬船が沈没すれば「大惨事になる」と報じた。正栄汽船によると、運搬船はドイツからシンガポールに向かっていた。同汽船は「この事故による油濁の情報はない」としている。

産経新聞より

このワッデン海だが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている。

ドイツのブレーマーハーフェン港はブレーメンの近くにある港で、ワッデン海はオランダのデン・ヘルデルからデンマークのエスビャウ北部まで繋がる海岸線に広がる場所なんだけど、その中ほどのオランダ沖で火災が発生したらしい。

つまり、ドイツを出航して直ぐに出火したということになる。

EVの消火は難しい

よく知られるようになった話だが、EVの消火というのはなかなか難しい。

EV火災が恐ろしい理由。最新消火システムで日本もEVシフトに備えよ!

2023.07.05

リチウムイオン電池を搭載しているBEVやPHEVなどは、事故などで損傷するとショートを起こして発熱する。さらに、熱は他のバッテリーにも次々と伝わり、発熱が連鎖する”熱暴走”状態になる。熱暴走が始まると、火が消えていても自己発熱が続き、やがて発火してしまう。これが理由で、EV火災の消火には大量の水で長時間の放水を要することが問題となっている。

くるくらより

原因は二次電池として主力になっているリチウムイオン電池の熱暴走が始まると、酸素がなくて燃え続けてしまうのである。

リチウムイオン二次電池の熱暴走対策については、各社かなり悩んでいて、例えばトヨタもホンダも多数の特許を出している程重視していたが、外国製の二次電池はどうなんだろうね。

リチウム電池からの発火で火災増…携帯扇風機の過充電など

2023/05/16 11:20

モバイルバッテリーや携帯扇風機に使われるリチウムイオン電池から発火し、火事になるケースが増えている。神戸市内では昨年まで年間1~7件で推移していたが、今年はすでに6件発生。市消防局は「異常を感じたらすぐに使用をやめてほしい」と注意を呼びかけている。

讀賣新聞より

自動車に限らず、火災の原因になっていて困ったことになるケースが多々あるようだ。

問題は、火災が発生した時に燃える二次電池の大きさが大きいと、燃える素材を沢山抱えているという意味なので、鎮火にも時間を要する。燃え続けていると、温度を下げることも難しいしね。

そういえば過去にも

えーと、ネットを探していたら過去にも似たような事件があったようだ。

ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニなど4,000台が海の藻屑に。貨物船で火災→沈没

2022.03.06 08:00

EVのバッテリー炎上で消火が難航(火元かどうかは不明 )。

ドイツからVWグループの高級車・電気自動車・一般車をたらふく積んで米国に向かう途中、ポルトガル沖で火災が発生して全乗組員が緊急避難し、無人で洋上を漂っていた自動車運搬船「Felicity Ace( フェリシティ・エース)」がとうとう海に沈んでしまいました…。

gizmodoより

またドイツだよ。

The Driveの取材でわかったのは、アウディ多数とベントレー189台が積まれていたことです。さらにInsiderの取材で、ポルシェおよそ1,100台が混じっていたこともわかっています。

WSJが伝えた保険会社の見積もりでは、 運搬船の価値は3,000万ドル(約35億円)、積載車両はおよそ1億ドル(約115億円)。合計すると、単純計算でざっと150億円相当の被害となります。

船内には電気自動車(EV)も多数積載されていました。最寄りのホルタス港のJoao Mendes Cabecas船長がReutersに当初語ったところによれば、そのリチウムイオン電池も燃えていたそうですが、冒頭でも触れたように、別の火元から燃え広がった可能性も考えられますので、EVのリチウムイオン電池が出火原因かどうかはわかりません。

gizmodoより

運航会社は三井商船(MOL)シンガポールだったらしいんだけど、この時はEVが火元じゃないか?くらいの話だったみたいだね。

今回もハッキリはいっていないけれど、EVが原因であることはほぼ確定。

今後問題になるEVの輸送

で、このニュースで頭を抱えているであろう自動車会社だが。

メルセデス以外でどのメーカーの車両が積まれていたかは、現時点で不明。フォード・モーターと日産自動車の広報担当は、自社製品は積載されていないと述べた。ステランティスとトヨタ自動車、ルノーの担当者は積まれていた可能性は低いと話した。

フォルクスワーゲン(VW)の広報担当者は、この件について鋭意調査しているが、それ以上の情報は提供できないと語った。

ゼネラル・モーターズ(GM)とBMWはすぐには情報提供できないとしており、テスラは取材要請に応えなかった。

Bloombergより

特にテスラは真っ青になっているだろうね。

実際にEVを使っている人が「自動車が燃えた」と騒ぐニュースや、支那で駐車中のEVが燃えたという話が聞かれるようになって、不安視されがちだ。

だけど、今回のは新品の車が輸出される際に燃えたというケースなのだから、これまでの問題とは一線を画す話になりそうである。

追記

さて、コメントを頂いたので、続報を追記しておきたい。

Fire Onboard Ship Carrying Thousands Of Cars Finally Burnt Out After Nearly A Week

August 2, 2023

The Dutch Ministry of Infrastructure and Water Management has reported that the fire that had engulfed the cargo ship “Fremantle Highway” carrying thousands of new cars has been extinguished after almost a week of relentless flames. The vessel had transported 3,783 new vehicles, including 498 electric ones, from Bremerhaven, Germany, to Singapore when the fire broke out on late July 25.

~~対訳~~

新車数千台を積んだ貨物船火災、約1週間後にようやく鎮火

オランダのインフラ・水管理省は、数千台の新車を積んだ貨物船 “フリーマントル・ハイウェイ “を包んだ火災が、執拗な炎に包まれた約1週間を経て鎮火したことを報告した。同船は7月25日深夜に火災が発生した際、498台の電気自動車を含む3,783台の新車をドイツのブレーマーハーフェンからシンガポールへ輸送していた。

なんか電気自動車がふえとる……。いや、搭載された車両の代数も増えているな。どうやら、詳細がハッキリ分かっていなかったが、続報によって修正されたと言うことだろう。1台500万円と想定しても190億円分くらいは燃えてしまった計算になるな。

実際にはもっとお高い車が乗っていたのだろうから、この倍くらいの損害額は出ているだろう。

しかし、EVの消火は大変だったようで、環境への配慮もあって燃えるに任せて放置したらしい。これは仕方ない話だね。

船体の概形は残っているので、見た目には曳航するのには問題なさそうだけど、どんなダメージを負っているかもよく分からないので、慎重に運ぶんだろうな。

ともあれ、鎮火した事は喜ばしいことである。

コメント

  1. アバター ゆまはる より:

    文献によると、
    現在自動車に搭載されているリチュームイオン電池は、電解液として、6フッ化リン酸リチューム液が使われている。
    80℃を超えると電解液と負極材が反応 → 140℃を超えるとセパレータがメルトダウンして全面短絡 → 200℃を超えると正極材が熱分解して酸素を放出する。こうなったらもう熱暴走は止められません。
    こうならない様に、色々な安全対策がされているようですが、現状では止められない場合があるのでしょう。
    例えば、100%近くに充電されている状態で、セパレータに穴があると正負が短絡状態になりますので、セパレータの穴の部分で発生する熱からセパレータのメルトダウンが進行して熱暴走します。この過程で安全装置が働かなければ大事故になります。
    電池の初期不良からの発火とも思えますので新品であれば安全とも思えません。
    リチュームイオン電池を個体型にすると熱暴走する危険が原理的に格段に少なくなるので、トヨタが開発を急いている理由と思ってます。 

    • 木霊 木霊 より:

      トヨタはリチウムイオン電池の特許を大量に出していますが、車に採用しているのはニッケル水素電池が主流だったのですよね。これまでリチウムイオン電池を採用した車もあるのですが、どうしても製造工程で異物混入などの問題が起きて歩留まりが上がらない。日本の車で発火に至ったケースが少ない理由は、そうした厳しい品質検査をやっているからだとされていますが、それでも事故はゼロにはならない。
      で、全個体電池の開発を急ぐことになりました。
      全個体電池にたどり着くまでにはまだ4~5年はかかりそうですけどね。

  2. アバター けん より:

    おはようございます、

    今後、EVを積載する自動車運搬船の保険料率が上がることは不可避な状況ですね。
    とばっちりを受けた正栄汽船は補償を受けても大損失でしょう。
    リチウムイオン電池が改良されるまで、EVの積載を拒絶する船舶所有会社や運行管理会社が出てくるでしょうね。

    • 木霊 木霊 より:

      おはようございます。

      「とばっちりをうけた正栄汽船」という点は、若干アレな気がしますよ。
      https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/07/436e13cb844937c9.html

      真っ先に思い浮かんだのが、スエズ運河で座礁させたアレです。台湾船社エバーグリーンが運航する「Ever Given」が、スエズ運河を通行止めにした事件は、ご記憶かと思います。
      https://www.nhk.or.jp/matsuyama/insight/article/20210531-1.html

      これもとばっちりといえばそうかもしれませんが、「何か問題がある」という気もしますよね。海運業のことは調べてないので、完全な言いかかりかもしれませんが。
      今回のことで、補償次第では正栄汽船の経営存続に関わる話かもしれません。

  3. アバター 砂漠の男 より:

    こんにちは

    いつもヨタ話に話が逸れてしまい申し訳ないね。すべて暑さのせいです。
    フリマントル・ハイウェーの火災事故は、EVからの出火が原因と見積もられているけど、それが事実なら、EV製造元は青ざめるしかないだろうね。

    この事件も含めて、リチウムイオンバッテリーはまだまだ”未完成品”であることが明らかになったと思うけど、昨日は↓のようなニュースもあった。
    https://www.reuters.com/investigates/special-report/tesla-batteries-range/

    そのロイター記事によると、テスラがマスクCEOの指示で、自社製EVの公式走行可能距離を水増ししていたことが発覚した。さらに、多数のオーナーたちからクレームが殺到したため、特別対策チームをつくってクレームを封じ込めていたそうな。消費者の歓心をくすぐるようなバッテリー消費アルゴリズムを使っていることも同記事は指摘している。悪どいね。

    いろんな意味で、EVは成熟していないくるまということだろうね。

    • 木霊 木霊 より:

      EVの最大で最も重要な部品はバッテリーなのですが、これが性能的に問題アリだと。
      紹介いただいた記事の真偽について若干不安な面もありますが、興味深く読ませていただきました。
      確かに、外気温によってバッテリーの性能が変化するのは事実です。寒い日に走行距離が半分になるというのも、無理はないでしょう。此れの対策にバッテリーを温めるためのヒーターを搭載しているという話もあって、何というか、ガソリン車とは異なる部分で問題の多い車なのでしょうね、EVは。
      これが全個体電池になったら解消するかというと……、どうなんですかね?やっぱり使ってみないことには。

  4. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    燃焼の三大要素のうち、燃料は自前だから仕方ないとして、
    ・熱か酸素を遮断すれば消火出来る、化石燃料
    ・自分で酸素出して発熱もするリチウムイオン電池
    どっちが怖い?って聞かれれば……

    ※製造時は問題なくとも、時間経過で電池内部でデンドライトが析出してセパレーター突き抜けるんでしたっけ?
    ※国産品は、潜水艦に積むくらい安定してる(はず)ですが……欧州メーカは目先の「安物買い」に目がくらんで特亜製品積みまくりですからね、これから「銭失い」のターンでしょうか。
    ※テスラも、やっぱ山師の域を出ないんですよね……

    • 木霊 木霊 より:

      EVにとっては、次の二次電池が出てくるまで、なかなか気の休まらない……、開発メーカーに頑張ってくれとしか。
      デンドライトの析出はなかなか厄介な問題のようで、特に製造工程で不純物が混じると、後に大問題に発展することがあるのだとか。

      日本製の二次電池は大量には出回っていませんし、そもそもトヨタも及び腰なんですよね、未だにリチウムイオン二次電池に関しては。
      暫くは色々問題が出そうですよ。暑さにも寒さにも色々問題が出てしまう電池は、まだまだ開発の余地があるようです。

  5. アバター けん より:

    おはようございます、

    EV用リチウムイオンバッテリーは、現段階では技術的にまだまだ難しいようですね。
    これからの改善に期待しましょう。

    以前にトヨタが4兆円をかけて全方向で動力装置を開発していくと宣言しましたが、すでに独自技術による全固体電池や水素エンジン、ハイブリットエンジンの改良で開発成果を出しているらしいです。(リチウムイオンバッテリーについては聞かないですね。)

    さて、事故を監督しているオランダ当局によると、フリーマントル・ハイウェイ内の車輛は全焼した模様ですが、火災は鎮火され、いまは被災した運搬船の牽引先を探しているそうです。
    https://www.marineinsight.com/shipping-news/fire-onboard-ship-carrying-thousands-of-cars-finally-burnt-out-after-nearly-a-week/

    • 木霊 木霊 より:

      おはようございます。
      トヨタ本体はリチウムイオン二次電池の開発は殆どやっていないみたいですね。合弁会社のPEVE(パナソニックEVエナジーからプライムアースEVエナジーに社名を変更)にて開発をやっている様です。
      水素エンジンは水素を保存する方法が確立できれば市場に出せるようですが、水素吸蔵合金の方はイマイチですし、液体で保存することも現実的ではない(35MPa程度の高圧で保存するか、-253℃の極低温で保存するしかなく、どちらも安全性に問題がある)ので、当面は研究開発の域を出ないでしょう。全固体電池は期待値が高いのですが、コストの面でもうちょっとブレイクスルーが必要という感じでしょうか。

      燃えてしまった船の続報を探していましたが、ありましたか。情報ありがとうございました。
      なるほど、燃え切るまで待ってたのか。これは、積み荷はもうダメでしょうね。安全に運ぶことが出来ることを願っております。

タイトルとURLをコピーしました