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フィンランドはNATOに加盟しスウェーデンは取り残される

北欧ニュース
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去年辺りに、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟の見通しという記事を書いたんだけど、結果からするとフィンランドが先に加盟という運びになったようだ。

フィンランド、4日にNATO加盟 ロシア北西部戦力増強を表明

2023年4月3日11:41 午後

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は3日、フィンランドが4日付でNATOに加盟すると表明した。ロシアによるウクライナ全面侵攻を受けフィンランドと共に加盟申請したスウェーデンについてはトルコとハンガリーが承認しておらず、NATOはスウェーデンの加盟実現も急ぐ。

ロイターより

北欧三国のフィンランド、スウェーデン、ノルウェーのうち、ノルウェーはNATOの設立メンバーに参加している。フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するというのは、歴史的にも大きな出来事になるだろう。ロシア軍のウクライナ侵略から、勢力地図は大きく書き換わろうとしている。ロシアの凋落を見るようだね。

対ロシア政策の一環

フィンランドとスウェーデン

先ずは、地図を。

ロシアと長く国境を接するフィンランドがNATOへの加盟をする。ロシアにしてみれば衝撃的な出来事だろう。

そうした動きは前からあったが、大々的に宣言したのは2022年の春のことで、そこからNATO加盟への動きを加速させて、実現させたのはフィンランドの方だった。

この話を持ち出した時には、両国ともトップが女性だったことで、日本国内にもセンセーショナルに取り上げられた。

が、トップが女性だろうと男性だろうと関係なく、これは西欧の勢力図が書き換わる大事件なのだ。ロシアにとっては、ウクライナがNATO加盟へ動いたのと同じくらい、大事件だったのだと思う。

バルト海への出口

ロシアからはサンクト・ペテルブルグから海に出るのが、ロシアにとっての重要拠点であり、サンクト・ペテルブルグにはレニングラード海軍基地という基地がある。

いや、正確に言うと、個々に海軍を設置するためにサンクトペテルブルグという都市を建設し、バルチック艦隊の拠点としている。ロシアにとってバルト海は戦略的に重要な海である。限られた不凍港の1つであるサンクト・ペテルブルグも重要拠点ということなんだよね。

当然この周辺地域には気を配っているのだが……。

ストルテンベルグ事務総長はブリュッセルで記者団に対し「4日にフィンランドを31カ国目の加盟国として迎え入れ、NATOはより強固になる」と表明。フィンランドの加盟は「歴史的」な動きだとし、「ロシアのプーチン大統領はNATOを縮小させるという明確な目的を持ってウクライナ侵攻に踏み切ったが、その正反対の結果になった」と語った。

フィンランド大統領府は、ニーニスト大統領が加盟式典に参加するためブリュッセルを訪問すると明らかにした。

ロイターより

このサンクト・ペテルブルグの周辺にある国、バルト三国であるエストニア、ラトヴィア、リトアニア、そしてフィンランドがNATOに加盟する運びとなった。

バルト海に浮かぶ対ロシア最前線の離島、緊迫の防衛訓練…2児の母「愛する島は私たちが守る」

2022/05/21 14:00

約200年にわたり軍事的な「中立」を維持したスウェーデンが、ロシアの脅威の高まりを受け、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請した。欧州の安全保障を取り巻く状況が大きく変わる中、バルト海の離島では住民有志で作る「郷土防衛隊」が軍とともに訓練を行っていた。

讀賣新聞より

記事に出てくるゴットランド島は、バイキングの拠点になっていた歴史があって、その後、デンマークの領土になったりスウェーデンの領土になったり、ロシア軍に占領されたり、なかなか戦略的価値の高い島である。

フィンランドとロシアの密接な関係

で、フィンランド、ロシアとの国境を接する国であるから、これまでは親ロシア国という立ち位置であった。ところがNATOへの加盟から一転して敵対関係になる。

ロシアはフィンランドの脅威ではない ロ大統領府

2023年3月16日 21:25

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ加盟問題でフィンランドのサウリ・ニーニスト大統領がトルコを訪問するのを前に、ロシアはフィンランドの脅威ではないとの考えを示した。

AFPより

こんなん言われてもねぇ。

ロシアから「君の敵じゃないよ」「驚異じゃないから」と言われても、困るだろう。

フィンランド、ロシア国境にフェンス建設開始 全長200キロ

2023年3月1日

フィンランドは2月28日、ロシアとの国境で全長200キロにわたるフェンスの建設を開始した。安全保障強化のため。

フィンランドはロシアと全長1340キロの国境を接しており、欧州連合(EU)加盟国の中で最も長い。現在、その国境は主に、軽量の木製フェンスで守られている。

フィンランドは今回、ウクライナでの戦闘のための徴兵を逃れようと国境を越えて入国するロシア人が増えているため、フェンスの設置を決めた。

BBCより

そりゃ、フェンスの建設もするさ。

とはいえ、経済圏が重なる部分のあるロシアとフィンランドである。ビジネスだってするさ。

フィンランド、「ロシアビジネス」大打撃 客足激減、遠のく「共存」―ウクライナ侵攻1年

2023年02月18日07時11分

北欧のフィンランドは、隣の大国ロシアの存在を警戒しつつ、ビジネス面では地の利を生かして国境を越えた活発な交流を続けてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻が始まった後、そうした関係は途絶え、ロシア人観光客を当て込んだ「ロシアビジネス」は大打撃を受けている。侵攻1年を前にした2月上旬、フィンランドの国境の町を訪れるとどこも閑散とし、侵攻の影響が如実に表れていた。

~~略~~

トミネン氏に再開の見通しを聞くと「戦争後か、もっと先か、全く分からない」。欧米による対ロ制裁の影響が響いているほか、フィンランド政府が観光目的のロシア人入国を禁じたため国境は事実上閉鎖。侵攻が終わってもすぐに物流や人的交流が通常に戻る可能性は低い。トミネン氏は「隣人同士としてうまく共存していくには時間がかかる」と表情を曇らせた。

時事通信より

都市によってはロシアとの経済交流を密接に行ってきただろうから、フィンランド政府の方針に驚き、困ったのだろうと思う。

マリン首相の社民党敗北 フィンランド総選挙 NATO加盟影響なし

2023年4月3日 8時00分

北欧フィンランドで2日に投開票された総選挙(一院制、定数200)で、中道右派「国民連合」が第1党になった。公共放送YLEが伝えた。フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を主導するなど知名度の高いマリン首相(37)が率いる社会民主党は第3党に沈んだ。

朝日新聞より

その余波を受けて、フィンランド首相のマリン氏は選挙で敗北。敗北した理由は財政問題がやり玉に挙げられたということのようなんだけど、おそらくフィンランド経済は誰が担当しても同じだぞ。EUから抜け出さない限りは、政府債務は膨らむ一方だ。

経済状態はさほど悪くないんだけど、突出した強みがないことと高福祉政策を維持していることが、現状の悩みだろうか。ノキアが覇権を握っていた時期は良かったのだけれど。

そして一番大きく影響したのは、おそらくエネルギー資源の高騰によって、電気代やガス代が高騰したことだろう。国内経済を悪化させた要因となったのは他の国もそうなのだろうが、ロシアから買っていた安価な天然ガスを買わなくなったことが大きく足を引っ張っている。

ともあれ、ロシアとの距離を置くことで、フィンランド国内の経済構造は変わらざるを得ないだろう。その影響は政治にも大きく出る。

とはいえ、当面はNATOやEUに加盟することで経済と安全保障の両立を目指すしかなく、ロシアからの脅威を、国を挙げて対処する必要がある。

スウェーデンのNATO加盟はトルコの承認待ち

一方のスウェーデンだが、トルコの反対にあってNATO加盟は実現できていない。

スウェーデンのNATO加盟をトルコが受け入れない一つの要因は、昨年9月のスウェーデン総選挙で右派の民主党政権が発足したことにある。

民主党は移民受け入れ反対、EU反対が鮮明で、北欧最大の極右団体「ノルディック抵抗運動」(NRM)との結びつきもしばしば指摘されてきた。NRMメンバーは2017年、スウェーデン第二の都市イエーテボリで難民キャンプ爆破テロ事件を引き起こした。

~~略~~

この事件はトルコ国内でも広い反発を呼び、エルドアン政権はスウェーデン政府に「イスラーム嫌悪」の取り締まり強化を要求してきた。

こうした背景のもと、スウェーデンに厳しく接することは、エルドアンにとって政権を維持する手段ともいえる。

Yahooニュースより

この辺りは、テロリストの擁護をしているスウェーデン側の問題とも言えるのだが、トルコとはどうしても人権的に相容れない部分がある。

そして、この話はトルコのエルドアン政権にとっても、内政に関わってくるので容易ではないのだろうね。トルコはロシアとの関係もあるので、安易に妥協できないという事情もあるのだろう。

国防に関する懸念

と、そういった事情もあって、フィンランドとスウェーデンは別の道を行かざるを得ない状況になっていくかも知れない。

NATO加盟急ぐフィンランド ロシア隣国、「単独」模索か―北欧の結束にひび・ウクライナ侵攻1年

2023年02月13日13時31分

ウクライナ侵攻を続けるロシアと長い国境を接する北欧のフィンランド。昨年2月の侵攻開始後に軍事中立政策を転換し、隣国スウェーデンと共に北大西洋条約機構(NATO)へ加盟を申請した。だが、スウェーデンとNATO加盟国トルコの関係悪化で手続きは進まず、「目の前の脅威」にさらされるフィンランドでは、スウェーデンを待たずに単独加盟を模索する動きも出ている。侵攻1年を前に「揺れるフィンランド」の状況を探った。

~~略~~

フィンランドとスウェーデン両政府は、公には一貫して同時加盟の方針を示し、「単独説」の火消しに躍起だ。しかし1月下旬、フィンランドのハービスト外相は地元メディアのインタビューで「スウェーデンの申請が長期間行き詰まるようなら状況を判断しなければならない」と述べた。後に改めて同時加盟を強調したものの、「単独容認を示唆する発言」と一部で受け取られた。

国民の間でも、脅威に対抗するには先行して集団防衛の枠組みに入ることが最善と捉える向きが多い。最近公表されたフィンランドの世論調査で、「トルコの反対でスウェーデンの批准に時間がかかった場合スウェーデンを待つべきか」との問いに53%が「先行加盟」を支持。「待つべきだ」の28%を上回った。

時事通信より

同時加盟を目指していたが、フィンランドは先に加盟する流れになった。

共同歩調を取ってきたスウェーデンを置き去りにすることが、今後のフィンランドの防衛関係にどのような影響をもたらすかは不明だが、二カ国の間にヒビが入ると得をするのはロシアだというのは、ちょっと皮肉な話だ。

スウェーデンはNATO加盟国に囲まれる国となるという格好になるのだが、しかし、いずれにせよロシアから距離を置く姿勢には変わりがない。

北欧各国は国防に不安を抱えNATOに駆け込んでいるのだが、そうなるとロシアは焦るだろう。今後もこの辺りでの駆け引きは活発になりそうだが。

追記

追記するほどのことではないんだけど、正式加盟のニュースがあったので。

フィンランド、NATOに正式加盟 31番目の加盟国に 

2023年4月5日 08:20

フィンランドが4日、北大西洋条約機構(NATO)の31番目の加盟国になった。ブリュッセルのNATO本部前で行われた式典で、フィンランドの国旗が掲げられた。中立を長く国の基本的な外交防衛方針としていたフィンランドは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにNATO加盟へと動いた。

BBCより

早かったと言うべきか。

フィンランドと共にスウェーデンも加盟を申請したものの、トルコとハンガリーがまだ認めていない。トルコは、自分たちがテロ組織とみなすクルド武装勢力をスウェーデンが支援していると非難している。

フィンランドの加盟文書をブリンケン長官に手渡したハーヴィスト外相は、加盟国として真っ先に「スウェーデンの加盟を承認する文書を(アメリカに)渡すこと」が自分の重要な役割だと話した。

フィンランドのニーニスト大統領はNATO本部前の国旗掲揚式で、スウェーデンが加盟するまで「フィンランドの加盟は完全なものにならない」と述べた。

BBCより

フィンランドはスウェーデンに気を遣っているモノの、先に加盟することを選択したようだ。トルコとの交渉は難航しそうなんだけど、どうなんだろうね。

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