フィンランドも本気なんだろうね。
フィンランド大統領「我々はロシアの安全保障圏ではない」…ウクライナ侵略の衝撃語る
2023/05/13 05:00
北欧フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領が11日、読売新聞の単独インタビューに応じ、長年の非同盟政策を転換して北大西洋条約機構(NATO)加盟を決断した理由について「ロシアは近隣の主権国家を攻撃する意思と能力があることを示した」と述べた。昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵略がもたらした衝撃の大きさを強調したものだ。
讀賣新聞より
大統領が「ロシアは隣国なんだから、協力しようぜ」って。これはまた、どこかで聞いた話だな。
次の大戦に備える
NATOに加盟したフィンランド
フィンランドといえばシモ・ヘイヘ……、この下りは前にもやった気がする。さておき。
フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を狙っていたいたのだが、フィンランドはNATO加盟を果たし、スウェーデンはトルコの同意が得られずにNATO加盟を果たせてはいない。
フィンランド、NATOに正式加盟 31番目の加盟国に
2023年4月5日
フィンランドが4日、北大西洋条約機構(NATO)の31番目の加盟国になった。ブリュッセルのNATO本部前で行われた式典で、フィンランドの国旗が掲げられた。中立を長く国の基本的な外交防衛方針としていたフィンランドは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにNATO加盟へと動いた。
BBCより
スウェーデンの事情はさておくとして、フィンランドとしてはスウェーデンと一緒にNATOに加盟したかったハズだ。スカンジナビア半島の3カ国のうち、フィンランドとノルウェーはNATOに加盟している状態である。
何れも隣国ロシアに苦しめられた国だね。
冷戦秩序は崩壊
で、冷戦秩序が崩壊してポスト冷戦時代が終わり、各国が自国の平和を求めてその立ち位置を変えようとしている。
特に、ロシアの影響力が下がり、アメリカの求心力も落ちている状況で、支那が台頭してきている。尤も、その支那も経済的に非常に危険な所を歩いているので、どうなっていくのかは予測が付き難い。
フィンランドは昨年5月、隣国スウェーデンと同時にNATOに加盟申請し、先月4日に31番目の加盟国となった。ロシアの侵略が冷戦後秩序の転換点となったことを示す動きだ。
讀賣新聞より
冷戦時代は、西側と東側の陣営に分かれて対立するという、比較的分かりやすい構図だった。西側トップのアメリカと、東側トップのソ連。
しかし、ソ連は崩壊(1989年)してしまって、冷戦も唐突に終了する。
冷戦時代は東側寄りの中立を保っていたのがフィンランドで、西側寄りのデンマークとノルウェー、中立のスウェーデン、東側寄りのフィンランドというグラデーションでスカンジナビア半島は色分けされていた。これがノルディックバランスと呼ばれる状態である。
EUを選択
で、冷戦が終わるとスウェーデンとフィンランドはEUに加盟(1995年)して西側寄りになる。
フィンランドが直ちにNATOへの加盟を選ばなかった理由は、独ソ不可侵条約(1939年8月23日)の時には、ナチスからソ連へ売られてしまい、冷戦時代にはアメリカ・イギリスによってソ連に売られてしまうという不遇な状況出会ったためだと思われる。
結果的にフィンランドはソ連へ従属・迎合せざるを得なかったわけだが、それでも強かに立ち回ったのがフィンランドという国である。
冷戦終結後の身の振り方は、経済的にはEUに属しつつロシアとの商売も続けるという蝙蝠的な立ち回りを選び、親露路線をとり続けていた。
続くポスト冷戦状況と呼ばれる時代を迎えると、対立構造は多極化して、イデオロギー対立が進む一方でグローバリズムが推進されるようになる。
「ポスト冷戦」は1年前に終了、世界は新たな軍拡競争の時代に入った
2023年2月18日 2:24 JST
ロシアがウクライナに侵攻した直後、隣国ポーランドは国軍の規模を2倍以上に拡大する法律を成立させ、兵器の買い付けに走った。
~~略~~
フランス政府の顧問を務めた国防専門家のフランソワ・エイスブール氏は、1991年のソ連崩壊に続いた地上軍の極端な縮小や再編から、脱却する動きが始まっていると指摘。「これはポスト冷戦時代の終わりを物語っている。それは2022年2月24日に終わった」と述べた。
「あらゆる軍がこの流れにある。米国を含めどの軍も大規模で激しい戦争に必要な軍備がないことは明らかだからだ」と、エイスブール氏は続けた。
Bloombergより
イデオロギー対立によって小規模な地域紛争などが活発化する一方で、軍隊を動員するような大規模な衝突は形を潜めた時代である。とはいえ、中東では相変わらず戦争が続いていたし、世界中から戦争の火種が消えたわけではない。テロリストもグローバル化して、イスラム社会と先進国との対立構図が目立つようになった。
しかしその時代も終わりを迎え、今や再び軍備を拡張して自国を防衛する時代が来たのだと、Bloombergの記事はそう伝えている。この記事の信憑性は疑わしい部分もあるが、明確に変わったのだと捉える指導者達が増えたのは事実だろう。
そしてフィンランドは日本へ
フィンランドの立ち回りが明確に変わったと思えるニュースはこんな所にもある。
ロシア隣国フィンランド「米軍駐留を希望」…ステルスF35配備も検討
2023.05.04 07:54
ロシアと国境が挟むフィンランドが国内米軍基地の建設を検討している。ウクライナ戦争で安全保障の不安を感じたフィンランドは最近、北大西洋条約機構(NATO)に加盟したのに続き、米軍駐留という安全弁まで確保しようとしている。
~~略~~
米軍基地の規模や配備兵力など具体的な内容は伝えられていない。ただ、アンテル副局長は米国のF35ステルス戦闘機が配備される可能性に言及した。フィンランドは昨年、老朽化したフィンランド空軍のF18戦闘機を入れ替えるため、米国からF35戦闘機64機を94億ドル(約12兆5000億ウォン、約1兆2640億円)で導入する契約を締結した。
中央日報より
何故、フィンランドの記事を中央日報から引用しなければならないのかはよく分からないが、フィンランドがNATO加盟と共にアメリカへの軍事協力・支援を求めて、アメリカ製の武器を購入するように画策しているのだと聞き及ぶ。
そして、アメリカへの軍事協力を求めると共に、日本にも協力を要請している。
フィンランド国防相、日本との防衛協力「もっと進められる」…「ともにロシアが隣国」
2022/10/27 17:09
フィンランドのアンティ・カイッコネン国防相は27日、都内の日本記者クラブで記者会見し、日本との防衛協力を「もっと多く進められる」との考えを示した。
~~略~~
その上で「両国の関係が将来もさらに緊密であり続けると確信している」と述べた。
讀賣新聞より
冒頭のニュースではフィンランドの首相の言葉を引用しているが、去年10月のニュースではフィンランド国防相であるカイッコネン氏の言葉が紹介されている。
林外相 フィンランド外相と会談 日本とNATO連携強化で一致
2023年5月13日 23時59分
林外務大臣は、先月NATO=北大西洋条約機構に加盟したフィンランドの外相と会談し、日本とNATOの連携を強化するとともに、ウクライナ情勢に引き続き、結束して対応することで一致しました。
NHKニュースより
冒頭のニュースに関係して、日本の外務大臣である林氏はフィンランドを訪れていて、日本との防衛協力について話をした。
連絡事務所を日本に
なお、先日、NATOの連絡事務所が日本に出来る話があった。
これは日本がNATOに加わるという衝撃的な話ではなく、連絡事務所を作りますよと言う程度の話。日本の国防に直接資する話ではない。
ニーニスト氏は、日本が大陸の東側でロシアと隣接していることを踏まえ、「我々は間に同じ隣国を共有し、同じ懸念と利益を抱える」と強調。日本との安全保障協力に前向きな姿勢を示した。
讀賣新聞より
ただ、少なくとも「安全保障協力はしてくれ」という強いメッセージが来ているように思う。
当然それを念頭に置いて日本も外交はやっていると思うが、じゃあ、今の法律でどこまでできますか?という議論は与党内部でも出来ていない。
フィンランドは、国防をしっかり考えて行動しているってのに、ね。
追記
記事の内容を考えていた時に、「日本はどうすべき」という話に少し触れるつもりだったんだ。所が書いているうちに忘れてしまった。
コメントで素敵な情報を教えて貰ったので、それと一緒に少し補足をしておきたい。
フィンランドで原発推進
フィンランドと言えば、フィヨルドを利用した水力発電で有名なノルウェー(9割が水力発電)と似たような電源構成だと思っていたが、実は原子力発電を活用する国である。
グラフに記載がないが、風力発電が16.7%と風力の利用も盛んなのだが、やはりメインは原子力発電らしい。これはフィンランドの厳しい冬でも安定的に電力を供給できる手段を目指したということが理由らしい。
フィンランドの新しい原子力発電所の稼働で電気料金が75%急落
2023 年 5 月 16 日
大幅に遅れていたフィンランドの原子炉が4月に通常の発電を開始したことで、同国の電力価格は75%以上下落した。
オルキルオト3(OL3)原子力発電所は先月、試験から通常出力への移行を完了し、40年以上ぶりのフィンランドの新規原子力発電所となった。同国の電力需要の最大15%を発電すると予想されている。
oilprice.comより
フィンランドに存在する原子力発電所は、このオルキルオト原子力発電所とロヴィーサ原子力発電所の2カ所。
原子力を除くフィンランドの発電能力は現時点では実質的に頭打ちで、電力の一部を輸入に頼る体制だったために原子炉を増やす選択肢は実に現実的。今回の原子炉の建設はフランスのアレヴァ(現オラノ)が受け持っているようだ。
尤も、このオルキルオト3号炉の建設計画は2000年12月に提出され、2009年には営業運転開始予定だったのに、欧州加圧水型炉(EPR)の建設に手間取り、2023年にまで営業運転開始がずれ込んでしまった。
フィンランドは、放射性廃棄物の処分にも積極的であり、原子炉本体を含む核廃棄物の地中処分をオンカロ処分場で行っている。元総理の活動家、小泉純一郎氏が視察にいって反原発に傾いた事で有名になった処分場である。莫大な予算を投じて固い岩盤を削り取り、大きな処分場を作っていることは、賛否両論あるのだろう。
運転開始は絶妙なタイミングだった
ただ、遅れに遅れた原子炉営業運転開始だったが、幸か不幸かタイミングはかなり良かったと思う。
ウクライナで続く紛争を理由にフィンランド政府が昨年隣国ロシアからの電力輸入を禁止したことを受け、スカンジナビアの国ではエネルギー価格が急騰していた。特にフィンランドが欧州連合の中で一人当たりの電力消費量が最も多いという事実を考慮すると、原子力発電の利用はフィンランドの消費者に歓迎されるだろう。
oilprice.comより
北欧で高騰する電気料金の緩和が期待でき、75%もの電気料金の値下げが実現するというのだ。
しかし、フランス、スウェーデン、ポーランド、ハンガリーはいずれも原子力エネルギー生産量の拡大を目指しており、多くのEU加盟国では引き続き原子力がますます人気の高いエネルギー生産源となっている。
ポーランドは先月、 2029年までに全国に 小型モジュール型原子炉20基の建設を支援するため米国から40億ドルの資金を確保し、一方ハンガリーはパクス原子力発電所の拡張に注力している。
oilprice.comより
実は、北欧では原子力発電は、再び「クリーンな発電方法」という位置づけになりつつある。安全性の高いSMRの開発が進めば、その需要は更に高まるだろう。
一応計算しておくと、1MWhあたり245.98ユーロ(約3万6,700円) → 60.55ユーロ(約9千円)という値下がりだとされているので、4人家族で1ヶ月平均450kWh程度なので、月1万6千円が月4千円程度に下がったというイメージとなる。おお、家計には大助かりだね。
フィンランドとの関係は
という感じの話があって、日本の国防的な観点から考えると、フィンランドとも友好な関係を築くことはメリットが大きい。
ロシアは伝統的に二正面作戦を嫌うので、イギリスやドイツ(ドイツと組んだ選択は大失敗だったが)との軍事協力ということを過去にも日本政府は選択をしている。
昨今もイギリスとの関係強化を図り、フィンランドも、という話になってきていることを考えると、日本でも小型モジュール炉(SMR)の開発を急いでイギリスやフィンランドに供給できるような体制を急速に整えるというのは、大きなメリットがあるのではないか。
また、クリーンな石炭火力発電という触れ込みで、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)や酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)の積極的な展開をすれば、フィンランドが未だに使っている石炭や泥炭を使った火力発電所の刷新は喜ばれるだろう。
フィンランドでは石炭は殆ど産出しないので輸入に頼っているが、泥炭は世界トップレベルの産出量を誇る。利用に制約はあるものの、燃料としては品質の低い泥炭も利用可能なIGCCの商用運転ができれば、安定した国産燃料発電が可能となり、おそらくは原子力発電よりも歓迎される。
ただ、あくまでIGCCは過渡期の技術なので、旧来の火力発電所の刷新という位置づけが望ましいと思う。天然ガス火力発電の方が二酸化炭素排出量は少ないし、ベストとは言い難い部分はある。
軍事協力という意味でも重要なパートナーとなり得るが、発電設備の供給という面でも関係強化出来るファクターになり得る。
日本政府にはもう少し戦略的な観点から政策を進めて欲しい。
コメント
おはようございます、
ついに来たか、というニュースですね。
おそらくフィンランドは、日米防衛協力体制を将来モデルとして考えているのでしょう。
また、日フ間のなんらかの防衛協力は、新しい地政学的可能性を感じさせます。
対ロシアのみでなく、極北地域に進出している支那をけん制する上でも、
両国間の防衛協力は大きな意義があるでしょう。
ほんとうなら、日本側から切り出してほしいテーマですね。
P.S. もうひとつ生産的なニュースがあったので追記します
「Electricity Prices Plunge By 75% As Finland Opens New Nuclear Power Plant」
https://oilprice.com/Alternative-Energy/Nuclear-Power/Electricity-Prices-Plunge-By-75-As-Finland-Opens-New-Nuclear-Power-Plant.html
これに関しては、追記で。
フィンランドは大きな国ではありませんが、イギリスとの連携を図るのであれば、アライアンスを組むという意味では、関係を深める選択肢はアリだと思います。
こんにちは。
>燃料としては品質の低い泥炭も利用可能なIGCCの商用運転ができれば、
なんと 褐炭持ってるドイツが なかまになりたそうに こちらをみている
なかまにしてあげますか?
はい
いいえ
▶絶対に拒否する!
冗談さておき。
二面作戦的にも、NATOへの影響力的にも、何より対ソで(対露か)やり合った過去があり、信用出来る相手という意味でも、スオミは仲間になって得はあれど損はなし!と思います。
国境接する国で仲良いのは滅多に無いので、ここは一つ、遠距離に親友を作っておいて損はないでしょう。
※その意味で、トルコともよい関係を保っておきたいところです。
ドイツはなかなか素直になれない国ですから。
そのうち独力でなんとかするんじゃないでしょうか。
フィンランドにトルコですか。
確かに、仲良くしておくことは大切ですよね。遠距離だからこそ、精強な国だからこそ、という事だと思います。