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崩壊した韓国のマンション、コンクリートに未承認の骨材使用

ビルディング
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コレは酷い。

崩壊した韓国のマンション、使っていたのは「穴だらけの未認証循環骨材」

2023.10.24

今年4月に地下駐車場が崩壊した韓国土地住宅公社(LH)の仁川黔丹マンションが、未認証の循環骨材を生コン原材料として使用していたことが明らかになった。これが原因でコンクリートの強度が低下したとみられ、17の住居棟のうち3棟が再建築マンションの安全性評価で「D等級」を受けていた。

日経XTECHより

こんなことだろうとは思っていたが、この話はシャビコンとは違うベクトルの話である。

骨抜きだけが問題じゃないマンション

コンクリートと骨材

えーと先ずは関連記事のリンクを。

……嫌な事件だったね。

さて、一般人にとって「コンクリートの骨材」と言われても、ピンとこない人の方が多いと思う。僕自身は辛うじて仕事で関わる事があるので、何とか分かるのだが、そうでい人のために少し説明しておこう。

セメントは、そのほとんどがコンクリートとして使用されています。コンクリートは、下の図のようにセメント、水、細骨材、粗骨材、混和材料から構成されます。これらをコンクリート中に占める体積でみると、もっとも多いのが粗骨材で、次いで細骨材、水、セメント、混和材料の順になります。

セメント協会のサイトより
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一般的に「コンクリート」と呼ばれるものの中には「骨材」として砂利や砂が混ぜられている。重量比で砂利:砂:セメントを6:3:1の割合で混ぜる。「骨材」となるのは「砂利」「砂」なので、全体重量の9割は骨材になりそうなものだが、実際には水を加える必要があるので、体積比で7割~8割くらいが骨材ってことになる。

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再生骨材・循環骨材

では、この骨材に何を使うのかというと、天然物の砂や砂利を採取するのは案外大変で、日本でもコレの確保が出来なくて海外から輸入するような事態も起こっている。

一方で、固まる前のコンクリートは「生コン」とか「レミコン」とか呼ばれるんだけれど、加水したモルタルの再使用は困難であるうえ、加水すると硬化反応が発生するので消費期限がある。よって、使う前に作った生コンは多めに作って置いて一部を破棄するという運用実態になっている。「勿体ない」と思う反面、仕方がない面があることは理解が出来る。

更に、コンクリート構造物を解体すれば、コンクリートの欠片が多数出るので、これも処分に困ることになる。

これを砕いて骨材として再利用しようというのが「再生骨材」とか「循環骨材」とか呼ばれるものになるんだね。

建築物の解体現場で出てきた瓦礫は、そのままコンクリート再生工場へ運ばれ、金属くずや木くずなどを除去し、粉砕機で徐々に小さくしていく。破砕された骨材は、必要に応じた大きさにふるい分けをされ、また新たな現場へと運ばれていく。結構手間がかかるんだけど、それでも瓦礫を再利用をする方がコストが安いという矛盾が発生する。逆に言えばそれだけ骨材が高騰しているということでもあるんだな。

そんなわけで、廃材利用によってコスト面のメリットと、廃材が再利用できるので埋め立てが必要な量を減らせるメリットがあるわけだ。

資料1■ コンクリートは「循環」へ

SDGsを推し進めるという意味ではなかなか有力な素材ではある。

じゃあ、デメリットは?というと、もちろんある

廃材に混入するモルタル分が増えることで、コンクリートの材料比に偏りが生じたり、異物の混入を招いて品質低下に繋がったりというリスクがあることだね。

問題の多い循環骨材を多用

日本でも研究が続けられているが、現状では道路の施工などに使われるのが再生骨材(循環骨材)で、建築物に使われることには二の足を踏んでいる状況である。

循環骨材は廃コンクリートを破砕・加工し、その中に含まれている骨材を抽出、再び建設用骨材としてリサイクルするもので、主に道路工事の路盤材として使われる。

LHの報告書によると、コンクリート圧縮強度を評価するためマンション表面素材のサンプルを分析した結果、生コン原材料として循環骨材や一部風化岩が使われていた。

日経XTECHより

韓国でも似たような状況らしいんだけど、どうもマンションの生コン材料に再生骨材(循環骨材)を使ってしまったようだ。

それでも品質が良ければ良かったんだけどね。

不良コンクリート材料(写真:ホ・ジョンシク議員提供)(c)NEWSIS

なかなか酷い状況らしい。ご覧の通りの空洞がある。

これ、形状からしてコンクリート試験片だと思ったんだけど、どうもそうではない模様。

コンクリート供試体

「コンクリート供試体」と呼ばれるテストピースだが、通常は建物を作る際に、色々条件を変えて作られるのが常である。

なんだけど、おそらくはダイヤモンドカッターなどでサンプル検体を抜き取る、コア抜き調査と呼ばれる手法によるピースなのだろう。

採取コア

こんな感じで抜き出したコンクリートの柱を使って、建物のコンクリートの健全性を調べたりするんだけれども、おそらくはソレ。

レミコン原材料として使われた太い骨材には粒子形状が良くない、発破作業によってできた発破石が多数使われ、コンクリート内に直径20ミリ以上の穴やすき間が肉眼で確認できる部位もあった。

日経XTECHより

コンクリートの中にボイド(空間)が在ると何が不味いのか?というと、1つは中に水が入り込む事が考えられる。コンクリート内に水分が溜まるような状況だと、中の鉄骨が錆びてしまうのだ。

見る限り、試料には循環骨材がかなり多く使われている印象なので、より問題は深刻だと思われる。

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引っ張り強度・圧縮強度

コンクリート内部は基本的にアルカリ性なので、コンクリートに囲まれた鉄骨・鉄筋は錆びない。よって、その引っ張り強度を維持できるのだが、中の鉄骨・鉄筋が劣化すると一気に引っ張り強度が低下する。一方で圧縮強度はコンクリートそのものが担当するのだけれど、ボイドの存在で圧縮強度も低下してしまう。

つまり、建物を支えるコンクリートの強度が低下するので、結果的に安全性に問題のある建物ということになるんだね。

鉄筋が抜かれて強度に問題があると指摘されていたけれど、この場合の強度は引っ張り強度や曲げ強度などに影響する話。それがボイドがあるってことは圧縮強度にも問題があるってことなので、全般的に強度が低いことを意味する。

これは表面にクラックがある場合のトラブルの模式図なんだけど、基本的には内部にボイドがあった場合でもヘアクラックがボイドから表面まで繋がっていれば同じ問題が起き得る。

だからこそ、再生骨材(循環骨材)の利用には慎重だし、バイブレーターなどを使って空気を抜く作業が必須と言うことに。

何というか、基本的なことがやれていない部分が結構ありそうな感じもしているのだが、これ、未だ未だ問題は後から出てきそうだな。

マンション問題はまだまだ終わりそうにない。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    ども。あー、そうですね。再生骨材は色々と問題ある……昔、フロント団体でロシア沿海州に、埋立資材として産廃(再生した骨材)を売ってたから解ります。
    あれ、きちんとやると手間とコストが結構にかかるんですよね。廃木材をチップにするような程度の破砕や、選り分け作業では済まないですから。
    ぶっちゃけ、利益率で言うと、マクドナルドなどのファーストフードから出る廃棄油脂を偽ディーゼル油に偽装する裏稼業の方がよほと良かった。
    それに流石に事故原因になって訴訟は嫌なので(ロシアだと消される)、道路の基礎地盤とか、埋立用の資材としてしか売らなかったなぁ。

    • 木霊 木霊 より:

      なるほどー。
      再生骨材を扱われていましたか、そうですか。似たような話でフェロシルト事件が過去にありましたが、「技術的には可能だがコストに見合わない」という話は結構あると思います。
      廃油をディーゼル油風にする仕事は、友人の父がやっていましたね、そういえば。
      かなりきつい仕事(油が重い)になると聞きましたが、儲かるんですねぇ。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    先日、「なんということでしょう!」の番組で、匠が、運ばれて来た生コンの品質検査やってるのを詳細に放映してました。もう、目からウロコ落ちまくりでした。

    自分でもDIYで駐車場の床打ちとかするのですが、業者から生コン買うと手間とコストがかかるので、少しずつ、鉄網の上からセメント(粉)ぶちまけて上からシャワーで……という「固まるけど強度は保証出来ない」素人作業をやってます(やはり適度な水量で練らないと強度が出ない……)。

    コンクリは、バカに出来ないけど、出来上がってしまうと素人(玄人にも?)には何もわからない(サンプル抜けば話は別ですが)し、何なら作業中だって素人には何もわからないのですよね。
    その意味で、納品された生コンが指定した規格に合ってるかを現場でキチンと計測している匠の姿を放映した例の番組は、凄い事やってくれたなと思いました。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      その番組は見ていませんが、スランプ検査でもやっていましたか?バケツにコンクリート詰めてひっくり返すヤツです。

      しかし、DIYで駐車場の床打ちですか。なかなか本格的ですね。
      ただ、コンクリートを練るのはバイブレーターがないとなかなかキビシイ。昔はあれが出来て一人前という話だったらしいのですが、今だと機械でやれるから楽になった、と、家を作るときに来ていた基礎屋さんは言っていましたね。

      • アバター 七面鳥 より:

        >スランプ検査でもやっていましたか?

        やってました。
        あと、含有空気量測定して、塩分も測定してました。

        ガチやん、って思いました。

        ※悪徳リフォーム業者の心胆寒からしめたであろうと、ほくそ笑みました。

        • 木霊 木霊 より:

          うへぇ、スランプ検査は案外簡単にできるんですが、含有空気量測定や塩化物イオン濃度測定は専用の道具が必要なので、完全にガチですね。
          小規模の業者では、含有空気量測定は辛うじてやるけれど、塩化物イオン濃度は図らないことも。
          あとは、テストピース作ったら完璧?(苦笑

          • アバター 七面鳥 より:

            塩分は、リトマス試験紙みたいなの突っ込んでましたから、簡易検査なのかな?

            テストピースも作ってた気が……

          • 木霊 木霊 より:

            なるほど、そういう検査方法も。
            ただ、塩分濃度がそれで測れるのかというと、疑問ですな。とおもって、調べたら塩分調査するための検知紙が存在するみたいですね。

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