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航空自衛隊のF-15Jの大幅アップグレードが承認される

安全保障
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日本の航空自衛隊の保有するF-15Jも、流石に老朽化対策をしないと不味い状況で、数年前から改修する話は出ていたんだよね。

大幅アップグレードへ 自衛隊F-15「イーグル」最新電子戦システム搭載に米国防総省が認可

2023.09.15

アメリカ国防総省は2023年9月7日、大手航空機メーカーのボーイングに対して航空自衛隊のF-15戦闘機向けとなるEPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)の販売を、対外有償軍事援助(FMS)に基づき認可したと発表しました。

EPAWSSは、その名称からもわかる通りF-15「イーグル」シリーズ用の電子戦システムで、安全保障関連大手のBAEシステムズが開発・製造しています。

乗り物ニュースより

平成30年12月18日に公表された中期防衛力整備計画に盛り込まれていた航空自衛隊の運用するF-15J/DJのJ-MSIP機の近代化改修の話、とっくに終わっていたと思っていたのだが。

F-15J-近代化改修は

EPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)

今回報道された中でEPAWSSという単語が出てきて、「その名称からもわかる通りF-15「イーグル」シリーズ用の電子戦システム」などと言われても、さっぱり分からない。

電子戦といえば、敵による電磁周波数帯域の利用状況を検知、分析した上で妨害や逆用する活動と自軍の電磁波の円滑な利用を確保するための活動の事を指すようだが、F-15Jに搭載されるシステムは、どうやら電子的なステルスを実現する装置らしい。いわゆるデジタルステルスと呼ばれるシステムらしい。

同じものはアメリカ空軍のF-15「イーグル」戦闘機用として採用されており、BAEによると敵が発する電磁信号の収集を通じて、搭載されたハードウェアが瞬時に周囲360度の戦闘空間に関する電子戦領域を構築。敵の電子戦攻撃から味方を守るだけでなく、必要に応じてジャミングなどの電子戦攻撃を行うこともできるそうです。

乗り物ニュースより

ステルス機は物理的にレーダーの反射を攪乱することで見つかりにくくする技術なんだけれども、EPAWSS搭載機はレーダーなどを電子的に妨害することで結果的に見つかりにくくする技術のようだ。

こうした機能は、F-15EXに実際に搭載されていて、F-15EXのEPAWSSは、自分だけでなく戦術的な編隊を組んだ僚機との協調によって別の僚機のサポートをする機能を持っているようだ。

こうした機能をF-15Jに搭載することで、F-35Aとは別の進化を果たすことになり、日本の防空防衛にとってはメリットだろう。

テスト済み

なお、EPAWSSの能力に関しては既に確認が為されている。

英BAE、米空軍F-15向け電子戦システムEPAWSS生産開始

2021年3月3日 22:50 JST

航空宇宙防衛大手の英BAEシステムズは現地時間3月2日、米空軍のF-15「イーグル」向けEPAWSS(Eagle Passive Active Warning Survivability System)の低率初期生産(LRIP)について、ボーイングから5800万米ドル(約60億円)の契約を受注したと発表した。EPAWSSは攻撃と防御双方の電子戦に対応し、F-15の作戦有効性と生存率を最大化させる。

Aviation Wire より

Eagle Passive Active Warning Survivability System (F-15E, EX) In a complex electronic attack environment like Northern Edge, EPAWSS was put to the test in the F-15E Strike Eagle and F-15EX Eagle II.

While at Northern Edge, the first-ever four-ship of F-15E Strike Eagles equipped with EPAWSS flew on May 14, 2021, employing EPAWSS as it would be used in a tactical formation.

Lt Col Reade Loper, F-15E test director, Operational Flight Program Combined Test Force, shared the significance of four F-15Es flying together with the most current version of EPAWSS in a large force, dense threat environment, explaining that operating in an environment like Northern Edge uncovers opportunities for growth in the program that might otherwise take months to reveal during home station flying. It was also a chance to exercise the utility of the entire system working together.

Though designed as a self-protection system, at Northern Edge, testers also explored using EPAWSS to support the WEPTAC TIP of fourth-to-fifth and fifth-to-fourth gen EA effectiveness.

Loper also explained that while at Northern Edge, BAE Systems was able to rapid reprogram the mission data files for EPAWSS to improve its ability over just 1-2 days.

~~対訳~~

イーグル・パッシブ・アクティブ・ウォーニング・サバイバビリティ・システム(F-15E, EX)

ノーザン・エッジのような複雑な電子攻撃環境において、EPAWSSはF-15Eストライク・イーグルとF-15EXイーグルIIで試された。

ノーザン・エッジでは、2021年5月14日にEPAWSSを搭載したF-15Eストライク・イーグルの史上初の4機編隊が飛行し、戦術編隊で使用されるようなEPAWSSが採用された。

リード・ローパー中佐(F-15Eテスト・ディレクター、オペレーション・フライト・プログラム複合テストフォース)は、4機のF-15Eが最新バージョンのEPAWSSを搭載し、大規模な戦力、密集した脅威環境で一緒に飛行することの意義を共有し、ノーザン・エッジのような環境での運用は、ホームステーションでの飛行では明らかにするのに数カ月かかるかもしれないプログラムの成長の機会を発見すると説明した。それはまた、システム全体が連携して機能することの有用性を実践する機会でもあった。

自己防衛システムとして設計されたとはいえ、ノーザン・エッジでは、第4世代から第5世代、第5世代から第4世代のEAの有効性に関するWEPTAC TIPをサポートするためにEPAWSSを使用することも検討した。

ローパー氏はまた、ノーザン・エッジでBAEシステムズがEPAWSSのミッション・データ・ファイルを迅速に再プログラムし、わずか1~2日でその能力を向上させることができたと説明した。

53RD Wingより

色々書かれているが、要は狙い通りにその機能が確認されたというようなことが書かれている。

そして、このEPAWSSのF-15Jへの搭載については、以前から話し合いが行われてはいた。

ボーイングがF-15 JSI向けシステム開発の契約を獲得

31.12月2021

ボーイングは、米国国防総省から、F-471,3 JSI (Japan Super Interceptor) 用の統合システム スイートを開発する 15 ドルの契約を獲得しました。

木曜日(30)に公開されたペンタゴンからの声明によると、 「契約アクションは、日本の航空自衛隊F-15MJ航空機の改造をサポートするための統合された一連の航空機システムの設計と開発、およびXNUMXつの武器システムトレーナーの開発、テスト、および提供を提供します。」

労働者は USAF ライフサイクル管理センターによって監督され、31 年 2028 月 471,313,000 日に失効する予定です。契約の総額は XNUMX 億 XNUMX 万 XNUMX 米ドルです。

AEROFLAPより

随分と時間がかかったような印象だが、アメリカ国防総省からもOKが出たというのが今回の報道の趣旨のようだね。

対象はJ-MSIP機

さて、そんなわけなんだけど、F-15Jの近代化改修の話が出てから随分とのんびりしているなぁ、というのが僕の印象だ。

もちろん、色々都合があって、今日決めたら明日全機改修修了なんてお手軽な話出ないことは理解しているんだけど、日本のF-15Jは約100機のPre-MSIP機と、約98機のJ-MSIP機があって、対象になっているのはJ-MSIP機の方である。(注:令和5年3月31日時点で200機を運用しているので計算が合わない点はご了承を)

航空自衛隊のF-15Jを対象とした能力向上改修作業は、すでに2020年7月に主契約社である三菱重工業がボーイングとの間で、前述の能力向上改修作業を支援する契約を締結しています。今回のアメリカ国防総省の認可はそれを後押しするものといえるでしょう。

乗り物ニュースより

既に、2022年度は2機分の改修と関連予算約520億円が予算に計上され、2023年度は18機分の改修と初度費約816億円が予算に計上されている。だから、近代化改修プランは進んでいることは確かなんだけど、追加改修をするという話になりそうである。

いろいろと搭載する必要があるので、1機改修するにもそれなりのコストと時間を要するはずなんだけど、既に改修済みのものは追加で改修されることになるのか、どうなるのか。

F-15Jの能力が向上する点は歓迎したいのだけれど、F-35Aの配備も余り進んでいないので、戦力維持の観点から改修の時間を要するというのは、喜ぶべきなのか。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    まずは、改修のゴーサインが出たことを祝いましょう。

    >戦力維持の観点から改修の時間を要するというのは

    戦闘機に限らず、航空機は製造ブロック単位で細かい仕様が違うし、なんなら同じブロックでも仕様過程で差がついたりするので、ある意味一品ものですから多少は仕方ないかと。
    そもそも、部品も歩留まりと量産効果が期待出来ない特注品みたいなものですし。
    ※その意味で、空自の分を巻き込んで少しでも量産効果上げたいボーイングの思想か?

    Pre-Mshp機は放置プレイですが、これも基本同じ理由で仕方ない(新造した方が早くて安い)ことなので、後は用途を分けて運用でどうにかしてもらうしかないですね。
    F-15の空中での性能そのものは、未だに第一線級なんですから。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      Pre-Mshp機の話を書くつもりですっかり忘れていました。
      Pre-Mshp機はバラしてエンジンだけ外国に売りつける方向で話が進んでいますね。これがうまいこと嵌まるかは分かりませんが、悪くない選択肢だと思います。
      ただ、戦闘機は全体的に見て「足らない」んですよね。パイロットも足らないので、バランスが採れているとも言えますが……。

  2. アバター BOOK より:

    F-15EXと段階的な近代化改修?の話が出てきたので戦闘機メカに関してはニワカのBOOKにお教え下さい。

     F-15EXはこの自衛隊機の改修と、他インドネシア(&ポーランド?)新規らしいですが、今から後50年も保守部品入手可能なのでしょうか? 

    具体的にはCIP,IDP(=メインプロセッサ?)の話です。電子戦コンピュータならともかくFBWコンピュータ(現代機はバグれば落ちる)は実機テスト・認証に膨大な時間と費用がかかると思うので、おいそれと最新CPUに置き換えなんて無理なのでは?と、、、それとも「段階的な近代化改修」って テスト・認証込み?

     IDPは例えば最新戦闘機であるF-35でさえ「PowerPC G4」です。1999年出の古~い32bitCPU、Apple Macintosh大量採用で低価格,IBM サーバ、ワークステーション採用で高信頼(ピンと来ない人向け、同時代のインテルCPUはPentium3~4 Windows2000時代)

      で、このF-35「PowerPC G4」の最小線幅180nm vs現在2023年最先端3nmの
         「11世代前」のオールドテクノロジーです。
      https://www.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/logic
     これを後50年使おうってんですから、工場維持費用だけでも膨大なものが、、、ベストセラー機F35ならではでしょう?(苦笑)

     F-15のCIP,IDPは?見つけられなかったのでF-22のWikipedia記述・仕様から類推するに、多分こんなのの軍用カスタマイズボード
       https://www.pdp-11.nl/vaxsystems/mVAX3300/mVAX3300-info.html

     これ相当品をあと50年維持するのって無理な気がする。

     より心配なのは、以前書いたGCAPのサウジ参加問題。外務大臣の資質でくくれるような卑小な問題でなく、内閣・政府・日本政治力量の問題で(笑)、、、2035年のF-15JのGCAPへの更新は多分無理(苦笑)

     とすると代替機、、、上で書いたようにF-35(Block4以前)もF-15EXも2035年に入れても保守部品メインプロセッサ!が手に入らなくなり、設計が非常に新しい「KF-21」は非常に有力な候補となりえる(日本が買ってもバグ入り機回されるだろうけど、米国に無茶言われそうで困る)

    脱線

     平時多用する戦闘機の「スクランブル」用途では「ステルス性」は不要だしメンテコストに合わないので、半島製ってことを除けば設計の新しい4.5世代機って以外と潜在需要はありそう。(インド機は、日本の用途:長航続距離:に合わないし)

    追記

     妙なコメント罪滅ぼし(笑)?に、

      「SKハイニクスのチップが支那企業に横流しされた?」

     テーマに「SMICの7nm、機密漏洩疑惑? は多分そうじゃない根拠」を書いときます

    • アバター BOOK より:

      すみません。自己解決 「F-15J近代化改修」は電子戦用だけでなく「航法制御用のプロセッサーもアップデートする」すなわち

      「F-15J近代化改修」すれば、電子部品も新しい規格のモノに置き換わり 1980年代のICを維持する(ほぼ不可能)の心配は不要!

       ・・・恐らく近代化改修ってこんなもの。そりゃテスト等、手間・費用、凄くかかりますね。
       ・・・そもそも改修前F-15はFBW(フライ・バイ・ワイヤ)でさえない。

        https://www.aviationwire.jp/archives/206910  EPAWSSする以前の前提 ↓ そのひとつ 
        https://w.atwiki.jp/jp-summons/pages/201.html セントラルコンピューターをCP-1075C(P)/AYKへ換装 

      お騒がせしました。

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