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空自の次期練習機は日米共同開発へ、と報道される

安全保障
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そーきたかぁ。

空自の次期練習機、初の日米共同開発へ ブルーインパルス「T4」後継

2024/3/23 18:00(最終更新 3/23 21:39)

日米両政府が、航空自衛隊の戦闘機パイロット用の練習機「T4」の後継機を共同開発することで調整していることが分かった。岸田文雄首相が国賓待遇で訪米し、4月10日にワシントンで予定されているバイデン大統領との首脳会談で合意し成果文書に明記することを目指している。

毎日新聞より

とはいえ、このニュース。若干だが、ガセ情報では?と疑っている面はあるんだけど。

確かに練習機の更新が必要な、我が国の航空自衛隊ではあるんだけど、じゃあ、本当に共同開発して貰えるのか?というとね。アメリカの次期練習機はT7Aレッドホークで、問題点があって運用開始は遅れているらしいのだけれど、納入されたばかり。だから、おそらくT7Aの開発に一枚噛むという話ではないだろう。とすると、一体、アメリカ側はどんな用途の物を求めているのだろうか?

本当に共同開発?!

レッドホークは未完成

さておきまずは、アメリカの最新練習機の話から。

ボーイング、「T-7Aレッドホーク」米空軍へ納入!T-38タロン練習機更新へ

配信日: 2023/09/26 11:45

ボーイングは2023年9月16日、アメリカ空軍向けの「次期高等ジェット練習機」T-7Aレッドホーク初号機を納入したことを発表しました。初号機は今後、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地へ配備される計画ですが、当面はボーイング工場のあるミズーリ州セントルイスで、アメリカ空軍による飛行試験を継続して行います。

T-7Aレッドホークは6月、開発開始から約3年で初飛行に成功。

Fly Teamより

2023年9月に納入が始まった練習機T7Aレッドホークだけど、未だ運用開始には至っていないようだ。

空軍、T-7 IOCをさらに1年延期、2025年の生産を削減

2024 年 3 月 13 日

空軍は2025年度にT-7A練習機の量産購入を開始する予定だが、その割合は以前の計画の半分である。予算文書では、このサービスが計画されていた初期運用能力 (IOC) を2027 年から 2028 会計年度の第 2 四半期に延期することも明らかになりました。IOC は通常、エンドユーザーが新しい機器の運用と保守を開始できる時期です。

空軍は2018年にボーイングにT-7の契約を初めて発注し、2022年に派手にロールアウトした。空軍とボーイングの関係者は、T-7をデジタル設計の先駆けとして歓迎した。しかし、翼の揺れ、射出座席、欠陥部品などの問題が航空機の運用を遅らせている。

air&space forcesより

アメリカ空軍に納入されたレッドホークは、「翼の揺れ、射出座席、欠陥部品などの問題」が発覚。

この完成の遅れによって、アメリカ空軍は訓練にも支障をきたすような状態らしいのだけれど、流石にこれを共同開発しようという話ではないだろう。もしやるとすれば、共同改良ということになる。

空席はまさか海軍機?

では、アメリカ海軍の練習機だろうか?

アメリカ海軍の運用する練習機T-45ゴスホークも、老朽化によって更新が必要で、そのプログラムが動き出している。

米海軍予算、T-45後継機計画の詳細を発表

March 13, 2024

米海軍は、老朽化したT-45ゴズホーク練習機の後継機の購入を開始するようだ。予算文書によれば、契約締結後の2026年に調達が開始される。海軍はここ数年、T-45の後継機となる可能性のある航空機について、大規模な市場調査を実施してきた。

Aviation weekより

既にボーイングとロッキード・マーティンが動き出してはいるが、T-7A練習機がボーイングの取り分になったので、おそらくはロッキード・マーティンが獲得するのではないかと言われている。

ただ、ロッキード・マーティンもF-35のブロック4が上手いこといっていないのもあって、余裕があるわけではないんだよね。

じゃあ、日本との共同開発で艦載練習機を作るかと言うと、その可能性も低いような気がする。

上級戦術訓練機

……と思っていたのだけれど、どうやら枠としては上級戦術訓練機(Advanced Tactical Trainer=ATT)という選択肢もあるようだ。

まあ、詳しくはこちらへ。

日米はT-4後継機を共同開発する方向で調整、自衛隊だけでなく米軍も採用?
防衛装備庁は2021年「T-4後継機調達を検討するため情報提供に応じる企業を募集する」と発表していたが、毎日新聞は23日「日米がT-4後継機を共同開発する方向で調整を進めている」「自衛隊と米軍が訓練段...

うーん、でもT4練習機の後継としてATTの開発をやるかな?僕はその可能性はあまり高くないように思っている。そうそう、航空万能論さまのところでは、ATTに関する記事も詳しく紹介していたので、そちらもリンクを。

米空軍、T-7Aレッドホークとは異なる「高度な訓練機」を最低100機調達する計画を発表
米空軍は今月12日、T-7Aレッドホークとは異なる高度な戦術訓練機を100機調達するためのRFI(情報提供依頼書)を発行して米防衛産業界に衝撃が広がっている。

なるほど、ATTは結構欲張りな機体らしいな。

共同開発には、自衛隊と米軍が連携して作戦を遂行する「相互運用性」向上への期待がある。人工知能(AI)や通信技術の進化で航空戦闘の様相も複雑化し、パイロットに求められる技量も一層高度化している。空自は現在、米国から調達したF35やF15などを運用しているが、パイロット養成段階から共通化を進め、課題対処につなげる考えだ。日米は次期戦闘機を支援する無人機の開発を視野に入れ、昨年12月に無人機用のAI技術に関する共同研究で合意するなど、航空装備分野での協力強化を進めている。

毎日新聞より

日本側の立場で言えば、部品の共通化とか量産効果による生産コストの低下など、色々メリットは有ると思うんだけど、果たしてアメリカは乗ってくるのかな。アメリカも訓練機として採用しないとほとんど意味はないわけで、だからこそATTの枠か?という話にはなるんだと思う。

でも、アメリカが果たしてT-7Aと競合する機体の共同開発などやるのかという疑問はある。

防衛省が公募(情報収集)を出したときは、確実に自衛隊もT-7A導入の流れだと思ったんだけど、どうなることやら。

追記

アメリカメディアがこの件について報じているようだ。

Japan Wants T-7 Red Hawk As Its Next Trainer: Report

MAR 26, 2024 12:58 PM EDT

Recent reports from Tokyo suggest that Japan is looking to acquire the Boeing/Saab T-7A Red Hawk, or a derivative of it, as its next-generation jet trainer. Indications are that the Japan Air Self-Defense Force (JASDF) wants the successor to its current Kawasaki T-4 to be the same platform as used by the U.S. Air Force, to enhance commonality and cut costs compared with building a new trainer on its own.

~~対訳~~

日本、次期訓練機にT-7レッドホークを希望: レポート

3月 26, 2024 12:58 pm edt

東京からの最近の報道によると、日本は次世代ジェット練習機としてボーイング/サーブT-7Aレッドホーク、またはその派生型の取得を検討しているようだ。航空自衛隊(JASDF)は、現在の川崎重工製T-4の後継機として、アメリカ空軍が使用しているのと同じプラットフォームを望んでいるようだ。

The War Zoneより

毎日新聞の内容とは随分と違うようだが……、共同開発はどこに行ったんだ?

Japan buying into the program — which would likely lead to a large-scale order — would be a considerable vote of confidence in the aircraft.

~~対訳~~

日本がこのプログラムに参加することは、大規模な発注につながる可能性が高いが、航空機に対するかなりの信任投票となるだろう。

The War Zoneより

記事全体を読む限りは、何か決まったことがあるわけではないけれども、T-7練習機の開発プログラムに参加してT-7練習機を航空自衛隊が採用する流れになるだろうという予想らしい。

一連の流れは分かりやすかったが、何か新しい事実があるかというと、そうではなかったみたい。ただ、T-7練習機の完成が遅れているから、日本の産業が協力してくれると嬉しいなぁ(要約)ということが書かれている。

個人的な感想としては、おそらく航空自衛隊がT-4の後継機にT-7を選ぶ可能性が高いとは思っていたから、この報道にはそれなりに説得力を感じた。だが、今から日本がT-7の開発に加わるメリットがアメリカ側にあるのかは疑問である。日本用にカスタマイズするという話だと、日本としては開発費の節約にはなるんだろうけど。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    この話は、T-50潰し以外にメリット無さそうな話でどうなんだろう?って思ってますが、本当なら嬉しくはあります。
    ※韓国さんはATTにもT-50を推してくるらしいですが、さすがに、ねぇ……
    T-7はスペックは悪くないけどボーイングがミソ付けまくってるし、海軍のT-45後継は空自にはオーバースペックの上に今更入り込む隙がなさそうだし、となるとATTかも、というのはありですが、米軍、このクラスの機体を三種類も揃えてどうするんだろう?

    T-7ベースの魔改造機、というあたりが落とし所かと思ってますが、どうでしょうね?

    • アバター 七面鳥 より:

      セルフレスです。
      航空万能論GFさんの所の、この話題
      https://grandfleet.info/japan-related/japan-and-the-us-are-coordinating-to-jointly-develop-a-successor-to-the-t-4/
      のコメント見てたら、
      「米空軍はT38後継機とATTをT7Aで統一する事でランニングコストを抑制する利を得ながら、日本の資本(T4後継機導入確定)でボーイングを救済しようとおう目論見ですかね
      このスキーム考えた人は天才か悪魔か」
      なんてのがあって、なるほどそれが真相かとストンと腑に落ちました。
      ものすごく、説得力あります。

      • 木霊 木霊 より:

        このコメント、拝見させて貰って「なるほど」とは思いました。
        ですが……、そもそもT7Aの問題点は結構色々あるので、あそこに色々詰め込むよりは新規設計した方が良いという流れのように思うんですよ。
        ATTとT7統合をやるのかなぁ?という感じはしています。T7の要求基準を下げて早く実践投入させ、他の部分をATTに担わせるので、何かベース機体に色々詰め込む様な気もしています。何より、ATTだとエンジンの発電量不足が問題になりそうなんですよね、今F-35が抱えている問題ですが、恐らくはかなり電力を喰う練習機が求められている気がしています。
        そうなると、イギリスの練習機問題あたりを喰ってしまって、日米英で合同の練習機開発をやるなんて話の方が、説得力が出そうなんですよね、個人的には。
        https://grandfleet.info/european-region/hawk-t2-unable-to-meet-british-militarys-pilot-training-needs-begins-consideration-of-successor-model/

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      T-50潰しですかぁ。しかしそれだとロッキードマーティン社にメリットが薄いんですよね。
      いや、完全に1から設計しなおした方が冗長性の高いシステムになるという考え方は、ありかな?
      とはいえ、ATT構想はかなり欲張りなシステムなので……、どうなんでしょうか。T-7魔改造路線は「あり」だとは思いますが、そうするとボーイング系になっちゃうんですよね。

  2. アバター 匿名 より:

    これが日本の次期戦闘機の練習機になるとしたら、イギリスやイタリアなどGCAPを使う国にも売れます。他国への輸出を見越してのことでしょう。そのために次期戦闘機のスペックを知っている日本との共同開発が良いと踏んだのでしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      別の記事にもコメントしましたが、イギリスさんが練習機不足で現在進行形で悩んでいる模様。
      英AERALISが提案している独自の高等練習機「AERFLEX」あたりが出てくる可能性もありますが、どこにどう絡むのかは注目しています。

  3. アバター 匿名 より:

    これ実は相互運用性観点から見るとgcap以上に今後の国防への影響大きそうですね

  4. アバター 匿名 より:

    恐らく原文を解釈する限り第六世代機のパイロット養成プログラムの開発だろうと思われるので

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