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ポスコ・クラカタウ製鉄工場の爆発事故の話とその後

輸出建造物
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懲りずにアーカイブシリーズのサルベージ記事である。

このシリーズ、以前好評だったものだ。あ、先に断っておくが、このポスコ・クラカタウ製鉄工場は、順調に稼働中だそうである。事故発生時は「もうダメか」とは思ったが、報道によって随分騒がれただけで、ダメージは大きくはなかったようだ。無事に復旧できたようで何よりである。

さておき、騒ぎの顛末について触れていこう。

「国際的な恥」 ポスコ一貫製鉄所、稼動2日で全面停止 工期短縮が原因か

2014/01/20

韓国の鉄鋼最大手、ポスコがインドネシアに東南アジアで初めて建設した大型一貫製鉄所が、稼働開始から2日で故障し、3週間以上も全面操業停止に陥っていることが19日までに分かった。

朝鮮日報:リンク切れ

この時期から、インドネシアでは経済発展に伴って重工業にも力を入れ始めていた。

インフラの整備のためにも、国内に製鉄所がある方がありがたいわけで、外資の協力をえて製鉄所などさまざまな工場を作っている。ただ、これがまた別の問題を引き起こしているんだけどそこは割愛する。

  • 韓国ポスコとインドネシア国営クラカタウスチール合弁で建設した製鉄所の立ち上げ時のトラブル
  • 軍を投入する騒ぎにはなったが、結果的にはダメージは少なかった
  • 第2高炉建設の話は出たが、ポスコの業績悪化によって実現するかは不明

韓国の協力を得て製鉄所を作ろう!

ポスコが海外進出

韓国企業ポスコが如何なる企業かは調べて頂くと解ると思うのだが、簡単に言うと韓国最大の国策鉄鋼メーカーである。そして、その成り立ちは日韓基本条約(1965年)に関係してくるというから、韓国としてはそれなりに老舗企業であると言えよう。

1968年3月に浦項製鉄として誕生したポスコは、日本から巻き上げた金を資本金にして八幡製鉄、富士製鉄、及び日本鋼管から技術導入を受けている。

八幡製鉄と富士製鉄は後に合併して新日本製鐵(現日本製鉄)となっている。日本鋼管はJFEスチールになっているね。

この浦項製鉄がポスコと名を変えたのは2002年のことで、2000年10月に民営化されているので、現在は民間企業として企業活動をしている。

ところがこの会社、新日本製鐵から盗み出した技術を使って世界に安価に鋼材を売ったことで訴えられ、日本やアメリカなど複数の国で訴訟に発展した。現在は和解に至っているんだけどね。

さておき、ポスコが海外展開するにあたって目を付けたのがインドネシアで、インドネシアとしても願ったりのチャンスであったため、クラカタウ・スチールと合弁会社を設立して工場を作るに至った。

ポスコ、インドネシアで高炉一貫製鉄所を稼働

2013/12/23付

韓国のポスコが23日、インドネシアで高炉一貫製鉄所を稼働した。鉄鉱石から高炉で鉄を取りだし、製品化する一貫製鉄所が東南アジアで初めて稼働する。ポスコは日欧大手に先駆けて現地の旺盛な需要を取り込む。

インドネシア国営のクラカタウスチールと共同で建設を進めていた。東南アジアでの本格的な高炉時代の幕開けで、今後も同地域で高炉の稼働が予定されるが、供給過剰を懸念する見方も出ている。

日本経済新聞より

ポスコがダンピングの疑いで各国から叩かれ始めた時期であったが、ポスコとしてはより安い粗鋼の生産をし、国際的な競争力を高めようと考えていたといわれている。

完成イメージ図

だからこその建設だった。これはイメージ図のようなんだけど。

操業2日目で操業停止

そして、2013年12月23日にインドネシアの大統領立ち会いの下、鼻息荒く操業開始したこの製鉄所、2日後にとんでもない状況を迎えてしまった。

なんと、全面停止してしまうのである。冒頭に紹介したニュースもこの話を取り扱っているモノ。

「国際的な恥」 ポスコ一貫製鉄所、稼動2日で全面停止

記事入力 : 2014/01/20 08:07

韓国の鉄鋼最大手、ポスコがインドネシアに東南アジアで初めて建設した大型一貫製鉄所が、稼働開始から2日で故障し、3週間以上も全面操業停止に陥っていることが19日までに分かった。

ポスコが2010年10月からインドネシア国営企業のクラカタウ・スチールと合弁で総額30億ドル(現在のレートで約3100億円)を投じて建設したこの製鉄所は、ポスコにとって海外で運営する初の一貫製鉄所でもある。ポスコの出資比率は70%。

一貫製鉄所とは、高炉で鉄鉱石と有煙炭を溶かし、これに高い圧力を加えて自動車や船舶などの材料となる鉄鋼材を生産する製鉄所を指す。

朝鮮日報:記事削除済み:アーカイブ

頑張って作った製鉄所だったのだけれど、稼働2日目に停止しそれから3週間以上操業できなくなってしまった。

鉄鋼業界の関係者は「一度故障した高炉が全面的に再稼働するには、通常3カ月ほどかかる。ひとまず今月23日に再稼働を予定している」と語った。ポスコの関係者はこれについて「一部設備には問題があるが、現在正常化に向けて作業している」とコメントした。

朝鮮日報:記事削除済み:アーカイブ

何が起こったかはハッキリ解らないのだが、この手のトラブルというのはプラントを作っていれば希にある。設計上で何らかのトラブルがあったのだろう。

この時にしっかりと対応すれば良かったのだろうが、復旧を急いだポスコは1月23日に再稼働を予定していた模様。実際に、再稼働はさせる事ができたようなのだ。が、随分無理をさせたようで2月22日に火が出る騒ぎになる。

手前にいるのがインドネシア陸軍の兵士なのだそうで、見た感じ製鉄上の通常の操業に見える気がするが、インドネシアの新聞では「火災発生」と、大きく取り扱われたようだ。日本はこの報道に関してスルーしたようだが。

韓国企業の高炉建設 日韓分ける体験の違い

2014年2月15日00時24分

昨年末、韓国の鉄鋼最大手ポスコがインドネシアで製鉄所を稼働させました。東南アジアでは石炭と鉄鉱石から粗鋼をつくる高炉を兼ね備えた初の製鉄所です。実は日本の高炉メーカーも過去に何度となく東南アジアでの高炉建設を検討してきましたが、結局断念しています。

朝日新聞より:リンク切れ

それどころかこんな記事を書いていた模様。

コークス炉爆発

しかし、この2月22日の出火から、更に事態は悪化してしまう。

燃えちゃった。どうやら備蓄してあったコークスに引火してしまったようなのだ。原料炭破砕工場が全焼してしまい32時間燃え続けた模様。

製鉄所を巡る住民デモ

流石にこうした事故を受けて、周辺住民も心穏やかではいられなかったようだ。

クラカタウ・ポスコへのデモで騒動

2014年3月8日10時40分

スラン(SERANG)-3月7日金曜日、数千人のチワンダン市民が、クラカタウ・ポスコ社の操業停止を求めてデモを行なった。周辺の環境を汚染したと主張している。このデモはクラカタウ・ポスコ社の正門と鉄鋼校以上の東ゲートの2カ所で行われた。

:リング切れ

大規模な爆発によって鉄粉が巻き上がられたようで、周辺住民にはたまったものではなかったようだ。

  • 2013/12/23 インドネシア製鉄所(ポスコ・クラカタウ合弁)火入れ式 → 本格稼働
  • 2014/1/1 高炉の出銑口に亀裂発生 運転停止
  • 2014/1/7 暫定的な修理を終えて部分的に再稼働
  • 2014/2/中旬 本格操業開始
  • 2014/2/22 高炉内で水蒸気爆発 火災発生で操業停止
  • 2014/2/23 コークス炉に引火 
  • 2014/3/3 一部の爆発で被害が出たことは認めたが、鉄鋼の生産は正常で、2月28日までに4万トンの鉄を生産していると報道がでる
  • 2014/3/9 クラカタウ・スチールはクラカタウ・ポスコから初めてのスラブ供給を受ける

時系列で整理しておくとこんな感じだ。この事故の影響かどうかは定かではないが、粉じん問題が発生してトラブルになる。

クラカタウ・ポスコの粉じん、周辺住民の脅威に

2014年3月7日金曜日12時11分

チレゴン-チワンダン地区の住民数百名が呼吸器官の健康障害の危険にさらされている。クラカタウ・ポスコ社の工場から出た鉄鋼の溶解や焼却の際の煙が終日、近隣住民の住宅を覆っているからだ。

:リンク切れ

まあそりゃ周辺住民も困るよね。

この写真は2014年3月6日頃の写真に掲載されたモノのようで、住民が集めた鉄粉が掌の上に載せられている。記事には「空から降ってくる」とあるので、爆発炎上した工場からの「灰」であることは確からしい。

砂鉄が空から降ってきたら、流石にチョット笑えない。

クラカタウ・ポスコ社での製鉄生産はすでに開始されているとハスビは付け加える。だが、その後、製鉄工場から排出された粉塵がここ数日になって初めて感じられるようになったという。「ここ3日ほどのことです。以前は普通の埃だと思っていたのですが、よくよく見てみるとおかしな点に気が付きました。まるで鉄のような埃だったからです」とハスビは付け加えた。複数の住民がすでに工場側へ不満を訴えていますが、よくあることだという対応だったとハスビは強調した。

:リンク切れ

このデモがどのように収められたのかは追跡できなかったが、それなりのお金が支払われたとは思う。国営の工場だから、それなりの補償はするだろう。

支那マネーが入っていたようだ

ところで、こんな気になるニュースもあった。

クラカタウ製鉄は、中国からのシンジケートローンの米200ドルを確保

2012年8月24日21時01 | 1809再生回数

ジャカルタ(アンタラ通信ニュース) -株式公開鉄鋼メーカーのPTクラカタウ製鉄Tbkの(KRAS)は、中国の銀行の数からRp1.899兆円(200百万米ドル)のシンジケートローンを確保しています。

antaranewsより

時期的にはこの工場が建てられる前の話。色々なところからインドネシアの製鉄業界が目を付けられていた形跡がある。

インドネシアとしてはヤバいところから金を引っ張ってでもクラタカウに製鉄所を建てるつもりだったという風にも理解出来る。

ポスコは、東南アジアの鉄鋼需要が拡大基調にあると判断し、高炉などの上工程から一貫で生産する製鉄所の建設を2008年から検討してきた。2010年にはポスコが70%、インドネシアの国営鉄鋼メーカーであるクラカタウが30%出資する合弁企業「クラカタウポスコ」を設立し、建設に向けて動き始めた。

東洋経済ONLINEより

出資比率はポスコが7割、クラタカウが3割だったということなので、インドネシアが前のめりになっていた面ももちろんあったようだが、それ以上にポスコも頑張っちゃっていたと、その様にも読める。

結果的には大きなトラブルではなかった

このような初期トラブルは色々あったものの、結果的にはそれなりに順調に生産が進んでいるようだ。

関連ニュースは殆ど見かけていないが、後のニュースではこんな写真が。

2022年に報道されたクラカタウ製鉄工場の様子

写真を見る限りは、無事だったようだ。インドネシアとしても、クラカタウスチールは国営企業であるため、威信にかけて正常稼働させたいところだったろう。

だから、少々のトラブルであれば乗り越えられる。そんな力業だったのではないか?と、そのように思う。製鉄所の立ち上げの際には、時々トラブルが発生することがあるので、そういったトラブルの延長線上にあった話であったと推測される。

ただ、初めての製鉄所ができたと思ったら、こんな煙が出てしまい、消火にはインドネシア軍まで動員されたのだから、住民は不安に思うのは無理もない。それで騒ぎが大きくなったというのが、この話の実情のように思われる。

第2高炉建設の話

韓国ポスコ・出資できるか

さて、こういったトラブルがあったとはいえ、おそらくは順調に生産が出来ていたために、2022年には第2高炉建設の話が持ち上がった。

韓国ポスコ、インドネシアに第2高炉 4700億円投資

2022年7月28日 16:52

韓国鉄鋼大手のポスコは28日、インドネシア国営のクラカタウ・スチールと合弁で運営する製鉄所に2基目の高炉を建設すると発表した。今後5年間で両社が計35億ドル(約4700億円)を投じる。粗鋼生産量を倍増させてインドネシアをはじめ東南アジアでの建設用鋼材や車両鋼板の需要増に対応する。

インドネシアのジョコ大統領の訪韓にクラカタウの社長が同行しており、ポスコ幹部とともにソウル市内で第2高炉建設の覚書を交わした。ポスコが70%、クラカタウが30%を出資する合弁会社クラカタウポスコが主体となって建設計画を策定する。具体的な稼働時期は明言しなかった。

日本経済新聞より

「具体的な稼働時期は明言しなかった」というところに少し不安を覚えるが、2027年頃までには第2高炉に対する出資をして建設をする予定になっている。

ただ、この直ぐ後で、ポスコの浦項製鉄所で火災が発生してしまうんだな。

韓国ポスコ製鉄所の火災鎮火、台風通過まで操業停止

2022年9月6日10:34 午前

韓国南東部のポハンで6日、鉄鋼大手ポスコの製鉄所から火災が発生し、敷地内の2工場が影響を受けたと広報担当者が発表した。火災は鎮火し、死傷者は確認されていないという。

現在、被害状況を調査している。

韓国南東部に接近する台風による停電で、午前に工場で副生ガスの放出があったと説明した。

ロイターより

この出火騒ぎで、韓国の海兵隊までかり出されることに。

韓国海兵隊の上陸突撃装甲車、水火も辞さず浦項で大活躍

登録:2022-09-06 19:15 修正:2022-09-07 07:04

慶尚北道浦項の海兵隊第1師団の韓国型上陸突撃装甲車(KAAV)などが6日、台風被害を受けた人命の救助とポスコ浦項製鉄所の火災鎮圧に投入された。台風11号の影響で浦項市内のいたるところが浸水し、海兵隊は同日午前6時から人命救助作戦と被害復旧作戦に乗り出した。

ハンギョレより

工場敷地内が浸水してしまって、消防車が製鉄所の構内に入ることが出来なかったことが要因だと思われるが、迅速な行動によって火は鎮火出来たらしい。

2022年9月6日に報道

ただ、経済的なダメージはかなり大きかったようだ。

営業利益半減

この火事の影響か、浸水の影響か、或いは他の要因かは不明だが、同年の決算報告は残念な結果だったようなのだ。

ポスコの純利益半減、22年12月期 台風被害と価格下落で

2023年1月27日 19:30

韓国鉄鋼大手のポスコホールディングスが27日発表した2022年12月期の連結純利益は、前の期比51%減の3兆5600億ウォン(約3750億円)だった。主力の浦項製鉄所での台風被害で損失が発生したほか、景気後退による鉄鋼製品の価格下落が響いた。

売上高は同11%増の84兆7500億ウォン、営業利益は47%減の4兆8500億ウォンだった。

ポスコは台風被害による機会損失や復旧費用などで1兆3400億ウォンの損失を営業利益ベースで計上した。9月に韓国南東部に上陸した台風の豪雨で浦項製鉄所の圧延工場などに浸水し、完全復旧までに4カ月ほどを要したためだ。

日本経済新聞より

完全復旧に4ヶ月もかかったのでは、そりゃ純利益が減るのも無理はない。ポスコの利益は支那との関係にも随分影響を受けるらしく、石炭の価格高騰や鉄鋼需要の減退など、様々な要因があって生産量も振るわなかったようだ。

建設できれば儲けが出る可能性の高い、インドネシアの第2高炉の話に着手できればいいのだが、韓国経済が弱含んでいるので、見通しは暗いのかもしれないね。

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