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ロシアの洪水と遅れる当局の対応

ロシアニュース
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ロシアで洪水発生という報道があった。

ロシア大規模洪水、一部被災者が地元当局の対応の鈍さに抗議

2024年4月9日午後 12:51

記録的な洪水に見舞われているロシア南部オレンブルク州のオルスク市で8日、被災した一部の住民が市庁舎前に押し寄せて地元当局の対応の鈍さに対する抗議の声を上げた。

ロイターより

この時期の洪水が珍しいのかどうかは良く分からないのだが、被害はかなり大規模に渡るようだ。

老朽化インフラ問題がロシアを襲う

オルスク市が水没

何故このニュースを取り上げたかと言えば、洪水が発生した原因がちょっと気になったからである。

ウラル山脈を源流としてカスピ海に注ぐウラル川における雪解けによる急激な増水のためにダムが決壊し、人口23万人のオルスクの幅広い地域が現在も水没した状態。国営タス通信がロシア非常事態省の説明として報じたところでは、オルスクは幾つかの地域で水位が低下し始めたものの、事態は依然として厳しいという。

ロイター「ロシア大規模洪水」より

ダムが決壊したというのが、洪水発生の原因のようだね。

先ずは、場所の確認をしよう。

地理的にはカザフスタンとの国境に近いロシア南部オレンブルク州オルスク市であるが、Google Mapにも洪水の表示が出ていた。

随分と広域にわたった被害のようだね。

街が水没しているようだ。

数年前にも似た事案が

ところで、画像検索をしていたらこんなニュースを見かけた。

<地球異変 迫り来る気候危機>(中)融雪 シベリア襲う洪水

2020年3月2日 02時00分

雪に覆われた平野に、傾いた家がぽつんと建っていた。人けはなく、少し離れた別の家も廃屋だった。

ロシア・東シベリアのイルクーツク州トゥルン。世界有数の寒冷地にある地を二月上旬、訪ねた。第二次大戦後、旧ソ連によるシベリア抑留で日本の将兵らが強制労働に就かされた炭鉱の街には、昨年六月の大洪水の爪痕が今も残る。

例年ならほとんど雨が降らない月にもかかわらず、大雨が二日続いた。街の中を流れる川の水位は十メートルを超え、堤防を越えた水で街が湖のようになった。全世帯の三割に当たる二千八百軒が浸水、二十六人が犠牲になり、四人はいまだ行方が分からない。

東京新聞より

これは2020年の記事なので、今回のニュースとは直接の関係がないのだが、やはり洪水で街が浸水したというニュースである。地理的には東シベリアなので、今回洪水が発生した街とは随分離れているのだが。

この記事によれば2019年6月に洪水が発生して街が浸水したということのようだが、東京新聞らしく「気候変動の結果だ」などと騒いでいた。

「気候変動の結果だ」。大洪水の一カ月後、国際環境団体グリーンピースが声明を出した。根拠は、ロシアの気象情報機関が三年前に出した将来予測。一九九九年と比べると、ロシアは豪雨など極端な気象現象の件数が三・五倍になり「今後もシベリアなどでは集中豪雨が予想される」と結論づけている。

多くの気象学者は、地球温暖化が異常気象の一因だと考える。大洪水について、シベリア連邦大のシャラフジノフ教授(環境地理学)は「直接の雨量に加え、温かい雨で上流域の雪が解けたのが増水の原因だ」と説明する。

東京新聞「地球異変 迫り来る気候危機」より

しかし、6月の洪水で「雪解け水が増えた」ことが原因というのは解せぬ。

サハ共和国でも

更に調べて見ると、洪水に関するニュースは幾つかあった。

ロシア・サハ共和国で記録的洪水…4つの集落が浸水

2022年7月14日 7:40

ロシア極東のサハ共和国で大雨による河川の氾濫で記録的な洪水となり、4つの集落が浸水するなどして救出活動が行われています。

11日に撮影された映像では、一面が沼地のようになり家屋は屋根だけが水上に出ている様子がわかります。また、別の映像ではショベルカーを使って、住民を救助する様子も。

~~略~~

サハ共和国は、ロシア極東にある地方自治体で日本のおよそ8倍の面積を持ち全土が永久凍土の上にあり、2004年、2017年にも洪水が起きています。

日テレNEWSより

こちらはサハ共和国というロシア北部の地域の話である。

なかなか広大な面積のある国で、インドよりやや狭い程度の国土があるものの、土壌は全て永久凍土で、主要産業は鉱業と木材産業であるそうな。地下資源は豊富で、ダイヤモンドや原油の産出が経済を潤しているようではある。

で、ここでも大規模な洪水が発生しているというニュースなのだが、こちらも原因は「地球温暖化」なんだとか。

随分と便利だな、地球温暖化は。

アパートに亀裂「大地が解けたせいだ」30万都市で傾く家 永久凍土との暮らしに異変

2022年1月6日 06時00分

アパートの部屋に亀裂が入り始めて2年がたつ。初めは天井から塗装がはがれ落ちた。次に壁が割れた。天井と壁の境は裂け、長さ5メートルの溝ができている。

「大地が解けたせいだ。引っ越すしかない」

東京新聞より

東京新聞はこのネタが随分お好きらしく、幾つか似たような記事を見かけた。「永久凍土が融けている-!」「地球温暖化が-」という内容になっている。

地球温暖化が原因は本当か?

ただ、こういった事象を集めていくと「地球温暖化が促進しているのでは」という不安を搔き立てるのだけれども、研究者の間ではサーモカルスト現象の影響なのではないかとという話も出ている。

サーモカルスト現象は、活動層とエドマ層との関係で起きています。レナ川中流域は、カラマツからなるタイガが広がる地域で、森林が健全にあるところでは活動層は1m程度しかありません。しかし、人間活動による伐採や森林火災などで耕地化、草原化した地表面になると、日射や気温などの熱が伝わりやすくなることで活動層は急速に深くなり、2m以上に達します。この2mの深さが凍土中に氷を多く含むエドマ層が眠る最上端に当たるのです。エドマ層の融解が始まると、氷が水となって夏の間に蒸発したり流出したりすることで、地下から失われていきます。その体積減少の分だけ地面が沈下していきます。

日経ビジネスより

温暖化が進んだから溶けたんだ!という結論に短絡する前に、落ち着いて文章を読んで欲しい。

図2:サーモカルストの発達による地形と景観変化
サーモカルスト現象を説明する図

サーモカルスト現象は、「人間活動による伐採や森林火災などで耕地化、草原化した地表面になると、日射や気温などの熱が伝わりやすくなることで活動層は急速に深くなり」「エドマ層の融解」が始まるとのこと。エドマ層は地下の氷層で、水分をふんだんに蓄えた場所である。

img
エドマ層の様子

こんな感じの凍結層が地下にあって、これが溶けることで地盤沈下などが起こるようだ。

つまり、原因は人間の乱開発に起因している可能性が高いのだ。実際にサハ共和国の主要産業は「鉱業」つまり地面を掘り返すことで得られる地下資源採掘と、「木材産業」つまり地表を覆う木材伐採を行い、これを販売することである。当然、地表が露出する割合が増えれば地下に熱が伝わりやすくなる。

河川の氾濫は、こうした地面から溶け出した水が影響しているという研究もあって、「地球温暖化」という便利な言葉だけで片付けて良い話ではないようだ。

オルスク市の洪水でプーチン氏は

さておき、こういった洪水がロシアは近年増えているようではある。そういった事象のウチの1つが今回のオルスク市の洪水という理解で良いと思う。

こうした中で市庁舎前にやってきた住民らが「恥を知れ」と地元当局をののしったり、「プーチン大統領よ、助けてほしい」と訴えたりする様子を現地メディアが伝えている。

ロイター「ロシア大規模洪水」より

そして、この洪水に対する当局の対応が鈍いので、市民達が騒いでいるというのが冒頭の記事なのである。

ロシア・カザフで記録的洪水 ダム決壊で6000人超避難

2024年04月08日14時22分配信

ロシアのウラル山脈から隣国カザフスタンのカスピ海に注ぐウラル川流域で記録的な洪水が発生している。ロシアの地元当局によると、7日までに6100人以上が避難し、少なくとも1万戸が浸水した。

~~略~~

プーチン大統領は被災地域の知事と電話で会談し、クレンコフ非常事態相に現地に向かうよう指示。カザフのトカエフ大統領は6日、過去80年間で最も大規模な自然災害だとの見方を示した。

時事通信より

そして今回の話、ダムの決壊が問題だったようなのだが……、ロシアではインフラ整備が随分疎かになっているのでは?という疑いも出ているだけに、ちょいと心配な部分もある。

プーチン氏は、「過去80年間で最も大規模な自然災害だ」と、自然災害である事を強調したようだが、いくつかの事実を付き合わせていくとどうやら「違うんじゃないの」という部分も見え隠れする。

ただその言い分を鵜呑みにしたとして、対応が遅れているのはいただけない。何故ならば、ロシア国民の命に関わる話なのだから。

とはいえ、こんな状態なので素早く対応出来ないのも仕方がない面はあるのだろう。が、この規模の災害が発生した時には軍隊が出て救助にあたるのが普通で、それが出来ていないところがロシアの窮状を感じるのである。

ダムの決壊も、ダムの老朽化が問題なのではないか?という疑いを持っている。

「増加する老朽化ダム」の脅威:検査・改修には巨額が必要

2009.08.27

8月17日(現地時間)、ロシアのシベリアにある水力発電ダムで大事故が起きた。多数の死傷者が出ており、6000メガワットの電力供給がストップしている。[事故が起きたのは、1978年に操業開始した同国最大の水力発電所。

WIREDより

ちょっと2009年の古い記事だが、この時点で「ソ連時代に作られて老朽化したダムの状態が問題視されている」と指摘されている。

まあ、ロシアだけが問題というわけではなく、日本でもアメリカでもダムの老朽化問題は出てきている。特に日本は世界で4番目にダムの数が多いから、インフラ整備のために巨額を投じる必要はあるだろう。なお、ダムの数や規模で突出しているのは支那なのだけれど、最近はあの国も洪水が多いね。

それはさておき、ソ連時代の遺産で食いつないでいるロシアにとって、こうした大規模インフラの老朽化は頭の痛い問題に違いない。そこを疎かにしたのが今回の問題に繋がったと僕は見ている。

そして戦争に全振りしているお陰で国内対応が疎かになっている実態が、ロシア国民の目にどう映るのか。

戦争にかまけているプーチン氏の足下を揺るがすような話に繋がりかねない。

ロシア皇帝の座を選挙によって補強したプーチン氏だが、ロシア経済の状況も含めて足下は随分と溶けてきているのではないだろうか。

これが直ちにウクライナへの侵攻作戦に関係するとは思わないが、ロシアでこういった話が散見されるようになると本格的に「分裂」なんて話を心配する必要が出てくるかも知れない。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    ジョージアとかアゼルバイジャン、カザフスタン、モンゴル、支那と国境を接するロシアの辺境地域には貧困エリアが多い。
    このことはウクライナ戦争に狩り出されるロシア徴集兵の出身地が、その辺りに割と集中していることから知られるようになった話です。
    貧困エリアなので、ソ連重工業発展時代に大量に造られたダムとか工場、鉄道などの地場インフラは、老朽化しても大して修繕もされず放置されてきたんでしょう。いよいよ錆びれたころに大雨・洪水でも起これば、それはダムだって決壊するでしょう。
    支那でも同様に、地方政府が予算を出さないので、あちらこちらで老朽化したダムが決壊していると耳にします。

    • 木霊 木霊 より:

      そうですね。
      そういった地域だからこそ、老朽化が進みやすいのかもしれませんし、今後一層そういった事案が増えるのかと思いますよ。
      そして、ご指摘の通り、支那でも同じ事が起こります。ロシアよりも変革のスピードは速そうですけれど。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ダム決壊、動画が出回ってますが、始めに見たとき「……マジ?」って思いました。
    お砂場の堤防みたいなに穴が空いて、水がじゃんじゃん漏れてるんですから。

    今のところ死人は殆ど出てないようですが、住宅地と耕地、そもそもの灌漑用水に対するダメージは、これから数年かけてじわじわとロシア経済圏を圧迫するでしょうね。
    少なくとも、ウクライナのダム壊して川沿いが水に浸かったのは、話の規模等方向性がダンチかと。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      ダム決壊の動画は(多分)見つけられなかったので、どんな状況だったのかは想像がつきませんが……、老朽化の影響っぽい印象をうけました。
      まだこの時期ですから、水没して寒い思いをしている住民は大変でしょう。早いこと解決すると良いんですが。

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