支那も苦しいのだろうけれど、韓国方面からの悲鳴が聞こえる(空耳である)。
中国株の売り加速、当局措置でも下げ止まらず-H株は年初来11%安
2024年1月19日 22:06 JST
中国株は再び惨めな1週間を終えた。香港上場の中国企業株で構成するハンセン中国企業株(H株)指数は、年初来のパフォーマンスが世界の主要株式指数のうち依然最低にとどまっている。
Bloombergより
H株指数が怒濤の勢いで下がっているのだ。
経済悪化に歯止めがかからない
H株指数が下がる、下がる
こんな感じである。

下げ止まらない。
中国の投資信託、自社の株式商品購入相次ぐ 市場に安定化の兆し
2023年11月6日午後 1:17
中国の投資信託が相次いで自社の株式商品を購入している。激しい資金流出や景気低迷に見舞われている株式市場に安定化の兆しが出てきた。
華夏基金、南方基金、富国基金、広発基金など中国の資産運用大手は今週、各社がそれぞれ2億元(2730万ドル)を投じて自社の株式ファンドを購入すると発表した。
ロイターより
去年11月には自社株買いの話も出ていて、「株式市場に安定化の兆し」とか言っていたのだけれど、焼け野原である。
ELSの呪い
ちなみに、悲鳴が聞こえた理由はこちら。
韓国当局、H株指数連動商品の販売巡る金融機関への調査拡大へ
2024年1月7日 14:35 JST
韓国の金融監督院(FSS)は、中国株に連動する株価連動証券(ELS)を販売した国内の銀行や証券会社に対し、より広範な調査を開始する。同証券で投資家が大きな損失を被った可能性があると懸念されている。
Bloombergより
この話は前にも触れたんだけど、まあまあヤバイ話ではある。
こちらの記事の一番最後のところで、同じ記事を引用している。株価連動証券と呼ばれる商品で韓国の民間人投資家が大火傷をしそうなのだ。
来年上半期に満期8兆ウォン…「香港ELS」爆弾爆発するか=韓国
2023.11.27 10:45
香港ハンセン中国企業株指数(香港H指数)の下落傾向が続き、これと連係した株価連係証券(ELS)商品の大規模元金損失の可能性が大きくなっている。
中央日報より
きっと今頃、「それでもELSなら、ELSならやってくれる」と願っているのだろうが、これがかなり厳しい。
特に最も多くのELS商品を売ったKB国民銀行は元金損失が相対的に大きい「ノックイン型」を主に売っており懸念が大きくなっている。ELSは大きくノックイン型とノーノックイン型商品に分かれる。ノックイン型は契約期間中に基礎資産指数が加入当時より50%以下に一度でも下がる(ノックイン)と、これに連動して元金損失が出る商品だ。元金を回復するには満期時までに指数が加入時より通常70%以上に回復しなければならない。ノーノックイン型は契約期間に指数がどれだけ下がるかに関係なく、満期時の指数が加入時より65%水準以上なら元金と約定利子を受け取ることができる。
中央日報より
……この説明は分かりにくいんだが。Money1様のところの記事が分かり易い。

というか、ELSは前から「ヤバイ」と言われ続けていたのだけれど、H株指数連動型のELSが「安全」だとして韓国市場で良く買われていたのだとか。


損失額が広がっているという記事も出てきているんだけれども、ここを深く掘り下げても仕方がないので、まあ「そういうこともあるよ」ということで。まあ、H株指数が下がると韓国も一蓮托生だと言うことで。
空売り防止
で、支那としてもH株指数が下がって貰っては困る。
中国最大の証券会社が空売りを制限、相場急落後-関係者
2024年1月19日 12:54 JST
中国株への売り圧力が一段と強まる中で、中国最大の証券会社が一部顧客による本土株の空売りを停止させる措置をとった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
Bloombergより
で、支那当局が「空売り制限」を出していたんだけれども、これがまた。
関係者が匿名を条件に述べたところによると、国有証券会社である中信証券は規制当局からのいわゆる窓口指導を受けて今週、個人投資家への株の貸し出しを停止し機関投資家への貸株要件を引き上げた。
Bloombergより
個人投資家への株の貸し出し停止をすることで、空売り制限をする他、自社株買いの推進や銀行株の買い入れなど様々な消極的な手段を講じてきたのだけれども、不発。
株価を押し上げようとする当局の試みのもう一つの兆候として、18日にはいくつかの主要な上場投資信託(ETF)の取引が急増。政府系ファンドによる買いの臆測を呼んだ。
Bloombergより
ETF取引も増やしたんだけれど、これも不発。
H株指数は今週1週間で6%余り下落し、1月として過去8年で最低のパフォーマンスとなる方向だ。本土株の指標であるCSI300指数は過去10週のうち9週で下落した。国家ファンドが上場投資信託(ETF)を買った兆しや、中国最大の証券会社による空売り停止措置も、本土株の指数下落を食い止めることができていない。
Bloombergより
そう簡単にはトレンドを覆すことは難しいようだ。というか、株の貸し出し停止って、証券会社の仕事を奪うような話である。つまり、流動性に打撃が出るんだが、それは良いのだろうか?
長期戦の様相
そんなわけで、H株指数の下落は止められないのだが、支那が苦しんでいるのは株価全体の下落である。
中国・香港株式市場・前場=下落、中国株は約5年ぶり安値
2024年1月10日午後 2:29
前場の中国株式市場は、投資家心理を上向かせる材料に欠ける中、下落して2019年2月以来の安値を記録した。香港株式市場も売られ、7営業日連続の下げとなる見通し。
上海総合指数前場終値は6.0691ポイント(0.21%)安の2887.1822。
上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数前場終値は5.116ポイント(0.16%)安の3287.384。
ハンセン指数前場終値は67.35ポイント(0.42%)安の1万6122.67。
ロイターより
全体的に株価が下がっているのは、外国からの投資が殆どないという所が問題なのだと思う。
ジュリアス・ベアのアジア調査責任者、マーク・マシューズ氏は「中国は根比べで、持久戦だ」と述べた。同社は中国株への投資をほぼ避けている。
Bloombergより
持久戦といっても、支那当局の打つ手がショボすぎて外国人投資家にメリットが感じられない。だから外資が支那に入ってこないという状況なんだけど、それ以外にも外資が逃げる原因は色々あって、もはや、ちょこっと手を打ったら投資家が戻ってくる状況とは思えない。
支那がどこまでこの状況に耐えられるのかは知らないが、少なくとも株価の状況はどんどん悪化していくだろうと思われる。
高齢化対策
なお、こんな話も出ている。
焦点:中国の高齢化、新たな経済成長モデルへの転換に暗雲
2024年1月20日午前 7:29
中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。
2023年の出生率が過去最低となり、新型コロナウイルスによる死亡が相次いだ結果、2年連続で人口が減少。労働人口も大幅に減ることなどにより、政策当局者が懸念する構造的不均衡が悪化する。
ロイターより
コメントにも頂いているのだけれども、支那のセーフティネットというのは極めて粗い網になっている。年金制度もあるにはあるが、これが機能するのかはまた別の話。少なくとも今の高齢化のスピードには対応出来ないと予想されている。
中国の国家財政を揺るがす年金問題
2023年01月26日
中国では、人口高齢化が想定を上回るスピードで進んでいる。公的年金保険の一つである都市職工基本年金保険基金は2035年より前に残高がマイナスに転じる見通しで、国家財政を揺るがす問題となる。
~~略~~
年金財政の悪化が懸念されるのは、「職工」と呼ばれる国有企業や大規模民営企業の就業者を対象とする都市職工基本年金保険である。公的年金保険の一つである同保険は賦課方式と個人積立方式を合わせた設計で運営されているため、高齢者扶養率が上昇すると年金財政は必然的にひっ迫する。労働力の流出と出生率の低下により高齢者扶養率が急速に上昇した黒竜江省では、2013年から同基金の支出が収入を上回るようになり、2016年には積立金も底を突き、基金残高がマイナスとなった。足りない資金は省財政で補てんされているとみられるが、高齢者扶養率のさらなる上昇を考慮すれば、同省の都市職工基本年金保険は制度として維持不可能といえる。
日本総研より
一部の省では、既に赤字転落している年金制度だが、こうした地方政府はどんどん増えていくと予想される。
あとは、失業率の発表が停止されてしまっているが、仕事が減っていることもかなり大きな問題といえるだろう。
中国の失業保険基金、6月の支出が過去最大 雇用情勢悪化
2022年8月24日午後 7:35
中国の失業保険基金の支出が6月に過去最高を記録した。新型コロナウイルスの流行や不動産危機を背景に雇用情勢が悪化していることが浮き彫りとなった。
ロイターが中国人力資源・社会保障省のデータを基に算出したところによると、6月の支出は前年比256.6%増の371億9000万元(54億2000万ドル)と、データを遡れる2013年1月以降で最大となった。
ロイターより
2022年の時点で赤字転落になったと報じられているのだが、今はどうなってしまっているのやら。
5.2%成長は本当か
以前の記事で少子化も問題になっていると書いたが、とにかく明るい材料が無いのが現状である。
中国の5.2%成長は本当か-公式統計への疑念で独自推計まとめる動き
2024年1月19日 15:40 JST
中国の公式国内総生産(GDP)統計の正確性に対する長年の疑念は、政府統計とは別の独自推計の取りまとめに拍車をかけてきた。今週、当局発表の2023年の経済成長率が政府の年間目標である5%前後と一致したことで、こうした動きが活発化している。
Bloombergより
まあ、「本当か」と書いたけれども、支那のGDP統計は昔から詐称されているというのは常識であって、「誰も信じていない」という風に言うのが正しい。だが、ソレを踏まえつつ、このところの公式統計は「更に怪しい」というニュースである。
支那のGDP統計は、1週間もかからずに集計されると言われている。あれだけ巨大な国家なのに、GDP集計がそんなに直ぐにできるわけがないというのが西側諸国の認識なのだが、記事を読むと「そこそこ合っているよ」という話も出ているとか。
ただ、何れにしても傾向を把握する資料として使うしかないのも事実なので、2023年の経済成長率が年間目標の5%を達成。来年は不動産不況が足を引っ張る予測が出ている。……予測を立てるまでもなく、分かりきった話だが。
それでもまだまだプラス成長である事は間違いなかろうと思う。不動産開発業の不調を乗り切れれば、だが。
碧桂園、豪住宅プロジェクトの権益売却で合意
2024年1月19日午前 9:32
債務問題で経営難に陥っている中国不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)は、オーストラリアの住宅開発プロジェクトの権益売却で合意した。豪からの完全撤退に近づいた。
~~略~~
香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、権益は別の不動産開発業者アバントースに1億5700万ドルで売却されるという。
ロイターより
海外資産を切り売りして泡銭を手に入れつつ、利払い期限を何とか乗り切る積もりらしいのだけれど、どこまで耐えられるのやら。耐えられなくなった時にどんな影響が出るのか?という話もあるのだ。
集計方法によっては既にマイナス成長ではないか?という指摘もあるのだけれど、ソレが本当かは誰も分からない。ただ、実態経済との乖離が進むと、その修正をどのようにするのか?という部分も問題視されるようになるので、支那当局はかなり頭が痛い思いをしているのではないだろうか。
そして香港株は支那当局による介入により株価が操作されている疑いが強く、H株指数の実態はもっと低いのでは無いか?という懸念もあるようだ。これが曝かれると更にH株指数の低下に拍車がかかってしまう。
そうなると思っているよりも動きの速い展開になる可能性もありそうだ。
追記
Money1様のところでもっと分かり易い記事を見つけたので、参考までに。

全般的に支那の株価が下落している様子が見て取れる。
追記2
もう1つニュースを追記したおきたい。
中国の社債償還140兆円 24年過去最高、地方に火種
2024年1月22日 17:00
中国で企業の債務返済負担が増している。2024年に満期を迎える社債は6兆8000億元(約140兆円)と前年より2割増え、過去最高を更新する。特に地方政府系の投資会社「融資平台」の増加が目立ち、野放図な調達のツケが回っている。政府の支援による問題先送りを続けるほど金融システムにリスクは蓄積し、経済の停滞を長引かせる要因になる。
日本経済新聞より
支那の地方政府の大変ねー。
どうするんだろうな、これ。
コメント
こんにちは。
下記リンク先、少しお門違いかもですが、木霊様にも、他の方にも是非見ていただきたく、ここにリンク貼るものであります。
ITmedia ビジネスオンライン 日中自動車メーカーのASEAN争奪戦:池田直渡「週刊モータージャーナル」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2401/01/news007.html
※自動車業界に身を置くものとして、池田氏の記事は注目しております。
こんにちは。
紹介頂いた記事は興味深く拝見させて頂きました。
なるほど、BEV全振り戦略はリスクが高かろうと。ただ、日本人はマーケットを作り出す技術には長けていないので、やられっぱなしになっていた面はあったと思いますから、「上手くしてやられた」ということなんでしょう。
ただ、利益だけ追求した結果が今の支那経済の崩壊を招いたのですから、なかなか皮肉な話であります。