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入管難民法改正を責め難民を受け容れよと叫ぶ矛盾

報道
この記事は約9分で読めます。

随分都合の良い解釈をするなぁ。

Twitterで流れてきた記事を見て、あんまりだと思ったので少し言及しておきたい。

入管を責め難民を拒む矛盾…入管法改正問題の根本は「国民自身」にある

2023年6月20日(火)13時40分

6月9日、改正入管難民法が国会で成立した。3回目以降の難民認定申請者が強制送還の対象となることから、メディアではこの法律が人権無視につながると懸念されている。また、参院法務委員会で採決時の混乱もあったため、世間の印象は非常に悪い。だが私は入管だけが悪者にされる世論には首を傾げてしまう。

Newsweekより

それが、この入管難民法改正に反対する側からの主張である。

矛盾する主張

何が非人道的なのか

このブログでは、入管難民法改正について以前に触れている。

「難民を救え」という趣旨について反対するつもりはないが、今回の入管難民法改正の趣旨は、難民を追い返すことを主目的としていないということを、割と丁寧に説明したつもりであった。

しかし一方で、「難民を主張する方々」が本改正によって祖国に追い返される可能性があるのも又事実である。その点だけをあげつらって、「改悪だ」と叫ぶ方々が多いようで。

このNewsweekの記事は、それとは又別のスタンスで綴られているのだと思って読み進めたのだが、どうも違うようである。

なぜこんなにも低いのか、入管当局が非人道的だからではないのか、という話の流れになることが多いが、私自身は入管のせい「だけ」にすることは考えものだと思う。ビザの更新のため行かないとならないので、入管は在日外国人にとっては善くも悪くも身近な存在だが、日本人はどのくらい入管のことを知っているのだろうか。

Newsweekより

先ずは「入管当局が非人道的だ」と断じている。

いや、違うし。

入管当局が苦労している原因の1つは、収容スペースに対して収容すべき人々が多数いて、法に準拠した対応では実情に合わなくなってしまっている事である。

難民であることを主張して、日本に難民審査を申請される方は、それが基準に満たなくても、何度でも繰り返し申請をすることが可能な法制度になっている。そして、現実的に何年もかけて申請を繰り返す方がいて、中には十数年日本に留まり続けている方も少なからずいる。

入管当局の立場にしてみれば、難民認定が通らないまま何年も何十年も日本国に居座る事が出来るシステムは害悪以外のなにものでもない。日本で難民認定出来なければ、他の難民認定のハードルの低い国で難民認定を受けて頂いたほうが彼らの人生の時間を無駄にしないという意味でも建設的である。

他国と違ってその数が少なくても、日本は難民を受け容れていないという主張は間違いであるし、受け入れ率が低いのには理由があることは以前にも説明した通りである。

したがって、どう考えても難民審査が通らない方は、3回目以降はお断りできるシステムにしたのである。これは諸外国でも採用している法制度であって、何もおかしな事ではない。寧ろ何年にもわたって何度も審査を受け続けている実態の方がおかしく、簡易な宿泊機能しかない収容所に居続けることこそが非人道的なのである。

厳格に難民認定するにも理由がある

そして、難民認定のハードルが高いことは本当に問題なのだろうか?

収容者の扱いだけではない。難民認定においても、日本は非常に厳格だ。皆さんは、今年3月に出入国在留管理庁がホームページで掲載した、「難民該当性判断の手引」を読んだことがあるだろうか。これは、難民条約を細かく読み込み、その一字一句を解説し、難民かどうかを判断するためのガイドである。全27ページのこの手引を頭に入れて審査することは、厳格にやろうとするほど迷いも多く、時間もかかり、認定は進まないだろうと思われる。

Newsweekより

たしかに、難民を主張する方々にとって、審査を容易に突破出来る方がありがたいだろ。

しかし、入管当局の資料によると本国で犯罪を犯して日本に入国しようとしている方々は相当数いて(送還忌避者3103人中994人が有罪判決)、日本国内にはスパイ防止法など外国から悪意を持って日本国内に入ってくる人々に対する法制度も整っていない。

img

全部が全部おかしなケースではないとは思う。寧ろ、送還忌避者の大半は善良な人なのかも知れない。だが、そうでないケースはしっかりブロックする必要があるのも事実なのである。

ただ多くの難民を受け入れている国でも状況は同じで、自分を証明するものを何も持たない難民申請者がたくさんやって来る。だがドイツの年間難民認定者は5万3973人、カナダの難民認定率は51.18%である。対して日本での認定者は44人、申請者のうちの0.29%しか認定されていない(いずれも19年の国連、法務省のデータ)。

Newsweekより

そして、ここに書かれているドイツやカナダは難民を安易に受け容れすぎて、移民や難民による犯罪が激増し、これに対してネオナチなどのような過激派の活動も激化してしまっている。

そういった事実に目を瞑って、「とにかく難民は可哀想だから受け容れろ」というのは違うだろう。

日本のイメージダウンは左派メディアの仕事

そして、殊更おかしな事例を取り上げて、日本のイメージダウンを図っているのは、メディアではないのか。

それなのになぜ日本は難民条約を批准しているのか。70年代のインドシナ難民流出が直接の契機ということだが、その背後には大国としてのメンツや体裁があったのだろうか。ならば海外メディアや海外NGOに批判されるような少ない難民認定数では逆効果であるし、ましてや収容施設での死亡事件は日本のイメージダウンでしかない。

Newsweekより

日本国内にも難民申請者に対する支援をする方々はそれなりの数いる。彼らは大半は善意で活動されていると思うが、ご活動家がビジネスとして動いている実態もあるのだ。

その活動を助長するために、殊更、特殊事例を騒ぎ立てるのがマスコミの仕事になっている様に思う。個人的にスリランカ人女性の事も調べたのだが、彼女の周囲には日本の入管法の弱点を突いて「粘れば日本に留まれる」と入れ知恵をする方がいたようだし、そもそも彼女は、当初は素直に帰国する意志があったとされている。

また、入管施設の内規に反して収容したという入管当局側の不手際もあったようだそ、付き合って同居していたスリランカ人男性からDVを受けていたという不幸な面はあったようだが、このケースではオーバーステイが発覚した早い段階で帰国できていれば、こんな結末にならなかった可能性は高かった。

つまり、入管当局が全て悪いという事例とは言い難い。

難民条約を読んでみよう

正確に条文を読むべきである

とまあ、色々と言及したのだが、この記事を取り上げる気になった最大の理由はここだ。

そうしないと、難民条約第33条の「難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない」という「ノン・ルフールマン原則」と、第31条の「庇護申請国へ不法入国しまたは不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」に違反してしまい、今以上に海外から非人道的な国だと批判を受けることになる。

皆さんには是非、難民条約をネットで検索してみるところから始めてほしい。

Newsweekより

どんなご大層な根拠があるのかと思って、難民条約を読んでみた。

先ずは該当箇所である。

第1条 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

第31条【避難国に不法にいる難民

1 締約国は、その生命または自由が1の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって許可なく当該締約国の領域に入国しまたは許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し、不法に入国しまたは不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。

第33条【追放及び送還の禁止】

1 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

他にもあるのだが、それは各自に読んでいただいてもらうことにする。

都合の良い解釈をしてはいけない

条約の都合の良い部分をつまんで解釈するのは、条文の読み方としては最もやってはいけないことである。

例えば、第31条の「庇護申請国へ不法入国しまたは不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」という部分を引用しているが、「締約国は、その生命または自由が第1条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって許可なく当該締約国の領域に入国しまたは許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し」という部分を意図的に読み飛ばしている。

オーバーステイを犯罪者扱いするなというロジックに結びつけたいようだが、その主張が成り立たない事の方が多い。

第33条も、追放及び送還の禁止とあるが、「難民」を、「その生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」と規定されているので、難民と認定できない、基準に満たない方々である以上は、その条約に違反するとは言えない。

スリランカ人女性の例で言えば、確かにスリランカは内戦などの影響で難民を多数出している状況ではあるが、しかし、件のウィシュマ氏は、彼女が死亡した後に日本を訪れて(今も滞在中である)、元気にデモに参加している親族がいらっしゃるところを見ると、とても難民認定が必要な例であったとは思われない。

そもそも彼女は日本語を学ぶために留学して来たケースであり、難民条約の話に絡めて話をしてはダメな事例だろう。

入管難民法改正の事例として取り上げるのだとしたら、上述した通り、速やかに送還できていれば命を救えた可能性があるのだ。

難民認定審査は厳しすぎるのか

つまり、難民条約は難民を保護する規定であって、何処の国でも難民としては扱って貰えない事例にまで当てはめるべき条約ではない。

確かに、日本の難民認定基準は厳しすぎるのかもしれない。人道的見地から、もう少し緩和しても良いという意見はあっても当然だろう。

一方で、受け入れ体制が不十分であることも実態としてあって、そこの整備をしないまま、改正前の入管法を維持することはとても適切な判断とは言えないのだ。

つまり、今回の入管難民法の改正の是非は、難民認定審査の厳しさとは無関係に考えるべき事案であって、実情にあってないまま放置して良いものではない。

そして、意図的に両者を混ぜて議論しているメディアなどの意見を鵜呑みにすべきではない。難民条約にも入管難民法にもしっかり目を通し、実情を踏まえて判断すべきなのである。

追記

コレに関連した記事として扱うのが正しいのか。

「死ぬ」「病院連れて行って」…ウィシュマさんの監視カメラ映像を法廷で上映

2023/06/21 23:33

名古屋出入国在留管理局で2021年3月、収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡した問題を巡って遺族らが名古屋地裁に起こした国家賠償請求訴訟で、地裁は21日、収容の様子を記録した監視カメラの映像を法廷内で初めて上映した。

国は昨年12月、約5時間分の映像を証拠として地裁に提出。原告側はウィシュマさんが死亡した経緯を広く知ってもらいたいと法廷での上映を求めていた。

讀賣新聞より

不思議なことに、原告として裁判を起こしているのは遺族である。遺族、まだ日本にいたんだね。そして、その費用は誰が負担しているんだろう?

不思議な話である。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    少し前に、こんな面白いエピソードを聞いた:
    難民救済に熱心に取り組むとあるNPOに所属する人物[実名は伏せる]が、
    実際に法務省の難民審査官になって、難民認定を希望する人々を聴聞したところ、
    彼らはとても難民に認定できるような状況下にはなく、ほとんどが日本での出稼ぎ
    のために来たことが判り、(難民などいないのだが)難民問題の根本的解決には、
    彼らの母国での経済支援が必要と痛感したとのこと。

    米国も欧州も大量の難民流入で社会が崩壊しかかっているが、日本が彼らと同じ轍を
    踏む必要はない。
    おかしな法案には、国民の反対の意思表明が必要だ。
    黙っていたら、政治家たちに日本を壊される。

  2. アバター みみこ より:

    でも「日本は難民に厳しい国だ」との評判が海外に広がるのは悪いことではないのかも。
    「命からがら必死で逃げ出した」はずの人達ですが、
    日本にまでたどり着けたなら、別の「難民に優しい国」にも行けるでしょう。
    日本は徒歩で来られないですからね。
    飛行機に乗れるなら、日本以外にも行けますよ。
    (ボートピープルだって、もっと近い国がありますよね。)

    • 木霊 木霊 より:

      きっちり矛盾なく制度を運用していれば、最初から日本への難民申請を避けてくれる可能性はありますね。
      厳しい審査をすることと、受入数が増えることは必ずしも矛盾しないのですし。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >件のウィシュマ氏は、彼女が死亡した後に日本を訪れて(今も滞在中である)、元気にデモに参加している親族がいらっしゃるところを見ると、とても難民認定が必要な例であったとは思われない。

    これ、どこから金が出て、誰が支援してるんですかね?
    自前だとしたら、とても難民とは思えないですからね。
    公安とか、そろそろ動かして欲しいですね。

    • 木霊 木霊 より:

      遺族が裁判をやっている話を追記しましたが、長らく日本に留まっていられるのです。
      支援があるとしか思えません。自前でやるにせよ、拠点の確保や弁護士費用が必要なので、莫大な資金が必要だと思うのですよね。公安案件かは分かりませんが。

  4. アバター 河太郎 より:

    実はスゥェーデンに嫁いだ昔の同僚(20代です)が帰国していて、御主人の元へ向う時に世話したので礼にきました。
    その時に移民について聞いたのですが……
    婚姻と出産(純粋スェーデン人男性の子供)で国籍習得した私が言うのもアレなのですが……とかなり苦しい表情で言うんです。

    移民政策で、かなり体感治安は(都市部では)悪化していて、国民の全てがリベラルではないので、どんどん鬱積しているのが感じられると。
    良い悪いの前に、これはヘイトが双方で活発になり、かなりな暴力沙汰へ発展するのでは?と心配している。
    自分の子供はハーフと言え、産まれながらのスェーデン人なので、その衝突に巻き込まれるのが怖い。
    モノには限度というものがあって、一定数以上、習慣の違う人たちが国や共同体に入ってくれば、摩擦は避けられないのではないかと。

    まぁ月並みな話で恐縮なのですが、たしかに同化する努力をして、その国の人と婚姻した方でも、そう考えるという話であります。
    やはり知人に仏外人部隊で実戦まで経験し、仏国籍を取得した人がいるのですが、彼はこう言ってました。

    我々は共和国に兵役期間、命もかけて任務を果たしてきたのであり、そのような義務を果たさない人に国籍を与えるのは如何なものか?と。
    外人部隊が多国籍出身で多文化とはいえ、軍隊という組織の中で、一つの色に染められ、また新しい国籍の国家への忠誠は叩き込まれてきている。全ての移民に軍務に服せなどは言わないが、他国の国民になりたいならば、産まれながらのネイティブよりも、より忠誠と貢献が求められるのは当然であり、そうした通過儀礼を通さずに受け入れるのか如何なものか?と。どちらも正論と思えるのですが。そういう事を文句つける方々は考えた事があるのでせうか?

    • 木霊 木霊 より:

      文化の違いは少なからず軋轢を生みますから、移民として暮らしている方にしてみれば、不安な面も多いんでしょうね、移民が増えて不安定さが増すというのは。
      社会に同化していってくれる移民達は歓迎すべきなんですが、それにしたってその比率には限界がある。

      ロシア軍が仕掛けた戦争によって、欧州は非常に大きく揺れている。
      経済的な側面だけでなく、移民の増加による不安定化もあって、社会そのものが不安定になっています。

      日本は同じ轍を踏むことなく、しっかり準備し対策しなければならないと思います。

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