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流動性危機が見て取れる支那経済

中華人民共和国ニュース
この記事は約8分で読めます。

融資平台ネタも軽く触れておこう。

中国、融資平台の短期外債発行を禁止 規制抜け穴ふさぐ=関係筋

2024年1月9日午前 1:36

中国当局が、多額の負債を抱える地方政府の投資会社「融資平台」に期間364日のオフショア債券発行の停止を指示した。複数の関係筋が明らかにした。資金調達規制の抜け穴をふさぐ措置という。

ロイターより

過去にも融資平台ネタには触れているのだけれど、今回のこのニュースは単に融資平台の短期外債発行を止めたよという視点で見るべきではないと思う。

資金繰りが悪化する企業・地方政府が多数

借金で首側回らないから更に借金を重ねた

これは去年9月に書いた記事である。

簡単に要約すると、融資平台と呼ばれる金融機関組織が支那各地にあって、その債務が積み上がっちゃった。その債務は2027年には2,000兆円規模になると予測されているよという話である。

2023年6月時点の債務残高は1,320兆円(66兆元)規模だったというのだから、順当に増えればそうなるだろうという話だけど、現状でも十分ヤバイ。何がヤバイかというと、1,320兆円規模でコレの大半が焦げ付くだろうと予測されている点である。

なお、この現時点での債務残高はあくまで把握できている範囲での額なので、実際の債務がどの程度あるのかは明確ではないことに留意頂きたい。隠れ債務は他にもある可能性があるのだ。だが、概ねこの程度はあるという前提で話を進める。

で、冒頭のロイターの記事では融資平台の負債が9兆ドル(1300兆円規模)となっているが、支那当局としてはこの債務残高を少しでも圧縮したい。

インフラ整備資金を調達するために地方政府が設立した融資平台は深刻な債務問題を抱える。債務総額は9兆ドルに膨れ上がり中国経済の大きなリスクとなっている。当局は地方政府の債務リスク対策を打ち出し、融資平台の新規の債券発行も厳しく規制されている。

ロイターより

しかし、融資平台としては資金調達しないと首が回らない。そこで、当局の許可が必要な1年以上のオフショア債発行を避けて、364日物の債権発行を増やしたということだ。1日減らしただけで規制をすり抜けたところは素晴らしい。

だが融資平台としては、止むに止まれぬ事情があるのだ。

地方政府の財源となる融資平台

先ずはこちらの記事を一読願いたい。

融資平台とは 中国地方政府の資金を調達

2023年6月15日 2:00

▼融資平台 中国の地方政府が傘下に置く投資会社。「平台」はプラットフォームを意味する。地方政府は認可された債券発行以外の資金調達ができない。地方債の発行は省別発行額の割り当てなどで、中央政府が強い権限を握っている。実際には融資平台が「別動隊」として資金を調達し、公共事業などで地方経済を支えてきた。

日本経済新聞より

支那皇帝として君臨する習近平氏にとって、地方政府を中央政府のコントロール下に置いて、支那経済の活性化をというのが、現在の方針である。

しかし、そもそも支那の中央政府には、地方政府を押さえつけるだけの強い力はあれど、様々なケースに目を配るだけの人材を保有していない。これまでの地方政府は、中央政府の指導に従うものの中央から結果だけを求められることが多い。だから、数字の誤魔化しを行って業務を進めているとされる。これが汚職の温床になっていたりするんだな。

とはいえ、記事にある様に地方政府の資金調達の方法は限られている。企業からの税金を充てにすることも難しいので、多くの地方政府は土地の使用権を販売して利益を得ていたようだ。

この業務を担っていたのが融資平台である。

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支那経済の成長のエンジン

では、どのような理屈で融資平台は地方政府の財源となっていたのだろうか。僕の力不足で言葉で上手く説明するのが難しいので、三井住友DSアセットマネジメントが作成した図表を元に説明する。

支那では、土地は支那共産党の所有物なので売買はできない。だから使用権が販売される。

  1. 不動産業者は建設用地を確保するため、地方政府から土地の使用権を購入
  2. 不動産業者は、確保した土地にマンションを建設し販売する
  3. 地方政府は、土地使用権売却資金をインフラ整備に充て、地域経済の成長につなげる
  4. 融資平台は銀行融資や社債発行で資金を調達し、橋や道路などのインフラ整備を行う

こんな循環になっていて、融資平台がインフラ整備をするほど、不動産業者が開発を進めやすくなり、マンションがどんどん建つということになる。

支那の土地は広大なので、ガンガンインフラ整備をしてガンガンマンションを建てた。しかし、不動産業者はマンションを買ってくれる人がいないと成り立たない。人口のうちマンションが購入できる層は限られるので、マンションが行き渡ればこのループは成り立たなくなる。なので、支那共産党は不動産バブルを煽ってマンションが値上がりするように誘導した。そうすると、マンションが投機的に取り引きされるようになって、経済成長に繋がる。

このトレンドにしたがって、融資平台もどんどん借り入れを増やした。

このループは、GDP比5%以上の経済成長が続いている間は成立すると見込まれていたし、支那の高度成長期は確かにコレが成り立っていた。

システム破綻

とはいえである、このやり方は日本が失敗したように、長期的には破綻することは目に見えている。何故ならば、青天井でマンションの価格が上がっていくと、購入できる層がどんどん減っていくのだ。

購入層を増やすためには支那人の賃金を増やさねばならない。しかし、支那の貿易モデルは低性能低価格で世界中に商品をばらまくスタイルだったので、賃金が上がるとこのモデルは崩壊する。

このモデルでの商売を続ければ続けるだけ、購入層が減るのだ。

当然ながらそんなことは支那共産党とて十分理解していたハズだ。そこで、ある時から習近平態勢は、高付加価値商品の販売モデルに切り替えた。技術は近隣諸国から盗んでこれば良いので、これもそこそこ成功したと思う。実際に、日本の家電業界は支那・台湾・韓国勢に軒並みやられたし、韓国の自動車、半導体産業も喰われた。

しかし高度な技術を扱える人材を確保する為には、やっぱり賃上げを余儀なくされるし、途切れなく高度な技術を導入しなければならない。結果、賃金格差は大きくなった。そして、労働格差が広がると共産主義のモデルが崩壊してしまう結果となった。

支那はとっくに市場経済態勢に移行していたが、社会主義市場経済と呼ばれる社会主義の元で市場経済を導入する形にしたことで、支那共産党の指導力を維持していた。しかし、支那共産党は資本が膨れあがって発言力が強くなった巨大企業のトップを極端に恐れなければならなくなるのである。

で、巨大企業に発展したところのトップを次々と狙い撃ちするようになって、相次いでトップが失脚することになった。

まあ、このやり方もかなり上手くいったとは思う。世界のトップに君臨するアメリカが恐れる程に成長したのだから。

だが、支那はやり過ぎて各国から経済的に睨まれる状況になった。

支那の経済モデルでは、そこそこ成功した企業が世界中に製品を売ることで稼ぐパターンで、不動産投資をしてくれると不動産の方も発展するよということになっていたのだが、どちらも限界があって、指導者がコントロール出来なくなった。

こうした様々な要因に、武漢ウイルス感染症蔓延がトドメを刺してしまったのである。

ザックリ説明すると、支那経済の破綻はそんな構図になっていると思う。

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弥縫策

で、ここで支那共産党が大胆な手を打てれば良かったのだが、どうにもハッキリできない。

地方政府の救済をしないという態度を示しつつ、完全に切ってしまうと大混乱を招きかねない。何しろ、資金を出している物の大半は、共産党員なのだから。

で、手をこまねいているウチにも融資平台は首が回らなくなったと。

天風証券のデータによると、23年に融資平台が発行した364日物のオフショア債は27銘柄で大半は10月以降に利回り6%超で発行されている。最大の発行体は山東省で12銘柄で10億ドル余りを調達した。

ロイターより

資金調達をしなければ破綻してしまうような資金力のないところから、積極的に債権を発行。

しかし、債権乱発がなされないように中央政府に見張られているので、その穴をついて364日物のオフショア債が登場してきた、ということになる。

ある証券会社の関係者は「融資平台の364日物オフショア債発行はすでに止まった」と述べたうえで、規制をかいくぐった発行は政府の債務問題への取り組みに逆行すると指摘した。

ロイターより

その穴を塞いだというニュースなんだけど、コレって問題解決になるのか?ということになるだろう。

中国製造業PMI、12月49.0に予想外の低下 3カ月連続50割れ

2023年12月31日午後 3:34

中国国家統計局が31日発表した12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0で11月の49.4から低下、予想の49.5も下回り景況拡大・縮小の分かれ目となる50を3カ月連続で下回った。

ロイターより

稼ぐ力がどんどん減っているのに、債券発行の道も塞いでしまった。資金流動性が悪化するのは不可避なんだけれども、これ、どうするんだ?

カウントダウンは始まっているぜ?

中国恒大、清算審理1月末に再延期 債務再編案の調整続く

2023年12月4日午後 7:48

中国不動産大手の中国恒大集団は4日、自社の清算申し立てに関する審理が来年1月29日に延期されたと明らかにした。債務再編計画を調整する時間を得た。

ロイターより

1月末に恒大集団の精算申し立てが延期された。これを延々と延期できるかといえば、まあ、無理でしょう。

きょう4日の審理で恒大側の弁護士は、会社清算を「積極的に求めている」債権者はいないとして、審理の延期を求めた。

申立人の弁護士は、延期に反対する主張を「一切行わないよう指示された」と述べた。

ロイターより

しかし、時間を稼いだからといって恒大集団の状況が改善するとも思えない。仮に、1月29日に債務再編を実行したとすると、支那国内の大半の不動産業者が相次いで焦げ付きが表面化してしまう。

再編しなくても、信用を失って立ち行かなくなるんだが……。

いつまで引き延ばせるかのチキンレースの様相だと思うんだが、どうなんだろうか。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >支那の中央政府には、地方政府を押さえつけるだけの強い力はあれど、様々なケースに目を配るだけの人材を保有していない

    このへん、「科挙で官吏を集め、知事として地方に配し、地方の施政に関係なく税収のみカウントして評価する」前世紀的な封建制度から基本的に一歩も進歩してないんですよね。

    「同志閣下、民主主義、資本主義は崖っぷちです!」
    「我が党は?」
    「偉大なる我が党は、彼らより一歩進んでおります!」
    ですね。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      「偉大なる話が党は~」なんて言っちゃうから、「成果」を報告しなければならないんですよ。
      独裁国家は大変ですね。

      • アバター 七面鳥 より:

        >独裁国家は大変ですね。

        本当に「崖っぷちの一歩先」で無ければいいのですけどね。

  2. アバター 匿名 より:

    前世紀見たいに人民服と自転車移動で良いんじゃないw
    あれだけ支那の狗的な経済学者様が日本のバブル崩壊を研究してるから日本の様には絶対ならないって仰っておられたのでこれからウルトラC的な解決策を見せてくれるはずw

    • 木霊 木霊 より:

      人類は、利便性を知ってしまったらなかなか知る前には戻れません。
      それは有史以来、アダムとイブが(云々

      ともあれ、何か解決策がばばーんと発表されるのを待ちたいと思います。

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