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融資平台のリスクが表面化した支那

中華人民共和国ニュース
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はいはい、「融資平台はセーフ」とか言われていたのに、ここもヤバいのか。

中国「暗黙の保証」のツケ 融資平台、債務2000兆円の山

2023年9月3日 17:00

中国で地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台」の債務が膨張している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、2027年には100兆元(約2000兆円)の大台に乗る見通し。政府の「暗黙の保証」にタダ乗りし、債務を膨張させてきたツケが、住宅不況をきっかけに噴出しかねない状況になっている。

日本経済新聞より

政府保証があるという噂になっている融資平台の債務が膨張している。そりゃ、膨張するだろうさ。

2027年には債務2,000兆円

融資平台が危ない

えーと、このニュースに先立ってこんな報道があった。

中国、融資平台の社債利回り低下 暗黙の政府保証見込み買い殺到

2023年8月18日11:51 午前

中国の債券市場で、地方政府のインフラ投資会社である融資平台(LGFV)が発行する社債の利回りが低下している。LGFVの投資対象である中国の不動産業界は債務危機が深まっているが、中央政府が地方政府の債務問題に取り組む方針を示したことから、投資家は暗黙の政府保証を見込んでLGFVの社債に殺到した。

調査会社ディーリング・マトリックスのデータによると、8月に発行されたLGFV債の利回りは平均約3.9%と、年初来で最低となった。

ロイターより

この「融資平台(LGFV)」というのは、地方政府のインフラ投資会社で、半官半民の地方銀行的な存在である。

融資平台とは 中国地方政府の資金を調達

2023年6月15日 2:00

▼融資平台 中国の地方政府が傘下に置く投資会社。「平台」はプラットフォームを意味する。地方政府は認可された債券発行以外の資金調達ができない。地方債の発行は省別発行額の割り当てなどで、中央政府が強い権限を握っている。実際には融資平台が「別動隊」として資金を調達し、公共事業などで地方経済を支えてきた。

日本経済新聞より

地方政府の資金源であり、地方政府が金策する上では必須の存在だったと言えるのだが、ここが無理な金策をしたところで、最終的には中央政府が救うのではないか?とされていた。

制御不能?

実際にそんな不安が噴出したのが4月。

中国、地方融資平台2社で「制御不能」債務発覚 是正措置講じる

2023年4月12日1:32 午後

中国東部の江蘇省揚州市にある2つの経済開発区は、現地の地方融資平台(資金調達プラットフォーム)企業の債務が「制御不能」であることが検査で判明したため、是正措置を講じたと発表した。中国政府は地方政府債務リスクの抑制に努めている。

ロイターより

この記事を読んでも、どのように制御不能なのかはハッキリしないのだが、多分、やたらめったら開発事業をやったり、理財商品を売ったりしたことの影響のでは?と疑っている。

そもそも、地方融資平台に流れ込む資金の大半が、銀行や信託会社が販売する理財商品と呼ばれる個人向けの運用商品であった。そして、地方政府のトップを務める幹部は全てが共産党員で、担当する自治体の経済発展の実績が出世に大きく影響する。そのための指標がGDPで、GDPをどれだけ高めたかが重視された結果、経済成長につながらない無駄な投資を続けた。

例えば、リーマンショック(2008年9月)時に中央政府が4兆元相当の経済対策を打ち出して、支那経済をいち早く回復させたが、その資金のうち3兆元は地方政府が負担した。その原資になったのが理財商品の販売だというが、コレが焦げ付いてしまったんだよね。

この問題に対処するため、同経済開発区は債務抑制規則案を作成し、資金調達コストの上限を6%に設定。ファンド商品への無謀な投資や、現在は破綻した新エネルギー車スタートアップ企業への出資を巡る損失の回復に努めるとしている。

一方、高郵経済開発区でも、昨年の検査により融資平台の債務が「急速に増加」していることや、一部借り入れでの規則違反が判明。同経済開発区は債務の伸びを厳しく制限し、資金調達コスト上限を6%にすると宣言したほか、税収の拡大などを通じて隠れ債務を減らすことになる。

ロイターより

一応、今年4月の段階では制御する方向での報道がなされていたんだけれど、不動産バブル崩壊に伴い、不動産業者が一気に地方融資平台からの融資に飛びついた。その結果、不良債権が膨らむという悪循環に陥ることになる。

中国地方財政の信用収縮阻止へ-「融資平台」に25年ローン供与

2023年7月4日 13:01 JST

中国最大級の国有銀行は地方政府の資金調達事業体(LGFV)に超長期の融資と一時的な利払い緩和策を提供している。事情に詳しい関係者が明らかにした。9兆ドル(約1300兆円)規模のLGFV債市場では信用収縮が起きかねないとして緊張が高まっている。

Bloombergより

で、超長期の融資と一時的な利払い緩和を実施して、なんとか事態打開に乗り出したんだけど。

国際通貨基金(IMF)は今年2月、2022年末時点で中国全土にLGFVの隠れ債務が66兆元(約1320兆円)あり、19年の40兆元から増加したとの試算を示した。急速な債務増加は地方政府が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)中に簿外借り入れと支出をいかに大きく増やしたかを浮き彫りにしている。

Bloombergより

どうにも中身は真っ黒っぽい。

土地バブル崩壊のツケ

そもそも、理財商品は元本保証のされない高利回り商品であるケースも多く、その商品の中身は韓国の不動産PFみたいなシロモノだ。

2013年時点で13兆元、2016年時点で29兆元の規模の理財商品があったようだが、現在は少し減って2023年6月末時点で25兆3,400億元の規模感らしい。どうやって減らしたのかは謎だが。

習近平の「遅すぎる通達」では中国の不動産バブル崩壊ドミノは止まらない…1320兆円の債務残高を抱える企業と「隠れ借金」

9/4(月) 7:03配信

足許、中国不動産バブルの崩壊に歯止めが掛からない。不動産市況の悪化の影響を受け、地方政府の財政悪化の懸念が高まっている。

特に、地方融資平台(LGFV)と呼ばれる政府傘下の企業の資金繰りは厳しいようだ。2022年末、地方融資平台の債務残高は66兆元、1元=20円として1,320兆円程度(2019年末から5割増)に達しているという。

融資平台が抱える借金はいわゆる“隠れ借金”で、通常、地方政府の借金とカウントされないことが多い。

Yahooニュース

これがまた、「通常、地方政府の借金とカウントされないことが多い」とか書かれると、不安しかない。

そしてもう一つ不安を煽る記事を紹介しておこう。

中国地方政府、経済苦境で公務員頼み 借金で債券購入も

2023年5月29日 0:00

中国の地方経済が苦境に陥っている。地方政府がインフラ整備のために設立した投資会社「地方融資平台」の資金調達が難航し、公務員が自ら銀行などから資金を借りて融資平台の発行する債券を購入する動きが広がる。その一方、中央政府からの採用拡大の指示を受け、地方政府は財政悪化の中で職員の採用を増やしており、地方経済の「公務員頼み」が強まっている。

日本経済新聞より

公務員が自ら銀行などから資金を借りて融資平台の発行する債券を購入するって、いやそれどうよ。

しかし、こういった形で表面化してきた融資平台の実態だが、ちょっと前までは1,300兆円規模の債務だとか言う話だったんだけど、2027年には2,000兆円達する見込みらしい。

いやはや、「隠れ」が表面化してきたことで、負債の実態が分かってきたということなんだと思うが、不安なのは、コレが果たして本当に全部なのか?ということだよね。

実際に、このIMFの予測は借り換えの話が織り込まれているかが怪しい。融資平台からの債務に切り替えてきている実態が反映してコレなのか、そうではないのか。

追記

コメント頂いて気がついたのだが、どうやら融資平台という言葉をしっかり定義せずに使ったために1社だけのトラブルだと見られているようなので、少し解説しておきたい。僕も調べて見てこんなにあるとは思わなかったんだが。

先ずは、関係性について図解したものを紹介しておきたい。こんな関係になっている。

地方政府がLGFV(融資平台)に出資、LGFVが銀行など金融機関から資金を得て、返済をする。一方で公共インフラに投資をして収益を回収する構造になっている。

イメージとしては、地方政府傘下の投資事業をやっている子会社(証券会社的な役割を果たす)である。

で、各地方政府にそれぞれLGFVを持っている(1社とは限らない)ので、実は支那には沢山ある。

LGFVが存在するかを明らかにした政府統計はなく、LGFVの全容は分からない。民間シンクタンク中建政研集団は、2022年7月時点で1万1,477社のLGFVがあり、その内訳は省レベルが約2,500社、地級市レベルが約6,000社、区・県レベルが約2,700社とする。

日本総研のpdf資料より

というわけで、1社だけで1,300兆円規模の借金を抱えているわけではなく、支那国内に点在するLGFVがそれぞれ負債を抱えていて、地方政府はコレを把握していない。だから、負債の全体像が見えにくい。とまあ、そんな構造になっている。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    支那は、いたるところで無残、悲惨な財務状況だね。
    紹介頂いた融資平台の債務が、IMF推計で66兆元(2022)から100兆元(2027)に跳躍とは呆れるが、同IMF推計で支那の政府総債務残高(国・地方の基金、公債、借入金の総計)も、60兆元(2019)、72兆元(2020)、82兆元(2021)、94兆元(2022)、107兆元(2023.Apr)と増加傾向にあり、韓国同様に「赤字体質」が定着している。
    それではあるにせよ、融資平台という1会社が政府総債務の7割相当の負債を抱えている(2022)って何なのよ? 借金で馘が回らないとはこういうことだろうね。

    • 木霊 木霊 より:

      額が天文学的になってきていますね。
      支那の地方政府は「最終的には中央がケツを拭く」と考えているのでしょう。
      なお、融資平台に関しては追記させていただきました。書き方がよくなくて1社ではなくて1万社以上あるようです。「農協」のような巨大組織があるのではなく、「地方銀行」みたいなイメージの方が近いかも知れません。

      • アバター 砂漠の男 より:

        追加の解説を有難うございます。
        1つの地方政府の下に、随分沢山の融資平台がぶら下がっているね。同一社名でも1万社以上もあるなら、66兆元の累積債務も可能だろうね。ただ、不良債権処理はどうかなぁ。

  2. アバター who より:

    こんにちは。
    まるで住専問題のようですね。
    支那は日本のバブルを研究し対策してると牽強付会してましたがどうなるんでしょうね。

    • 木霊 木霊 より:

      まさに住専のような話です。
      そして、似た経緯を辿ることでしょう。
      この問題は上念氏が詳しくて、良く解説を聞いていますが、解決策はとにかく不良債権を償却することです。ところが支那は何処までが不良債権かを突き止められていない状況にあるので、そのことがこの問題の解決の難しさを物語っていますね。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >例えば、リーマンショック(2008年9月)時に中央政府が4兆元相当の経済対策を(略)コレが焦げ付いてしまったんだよね。

    リーマンショックだけない(鉄道とか)ですが、要するに、ここ三十年かそこらのツケが今、制御不能の大怪獣に育ちきってさあ大変!って事ですね。
    しかもこの怪獣、「中央に一匹」ならまだしも、ありとあらゆる地方に中ボス~大ボスクラスがナンボほども居るという……終わってんな、中国。

    • 木霊 木霊 より:

      まあ、以前からずっと言われていましたからね。
      北京オリンピック(夏:2008年)の辺りで「もう無理」と言われていました。
      あのとき処理していれば、傷口は浅くて済んでいたはずなんですが。

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