上川外交唸って光る……。岸田氏が外交やるわけにも行かない時期だし、良いんじゃないでしょうか。
上川外相とスウェーデン外相 ウクライナ支援継続へ連携で一致
2024年1月11日 9時51分
上川外務大臣は訪問先のスウェーデンでビルストロム外相と会談し、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの支援を継続するため、緊密に連携していくことで一致しました。
NHKニュースより
実に積極的に外交を展開している。ブログの読者の中には日本のウクライナ支援について否定的な方もいるのだが、日本の立ち回りとして正しいのか?ということも含めて考えてみたい。
国益のための外交
ロシア側につくべきかウクライナ側につくべきか
ウクライナという国が不幸な状況にあるという点は、恐らく多くの人々との共通認識であると思っている。
しかしながら、日本の国益と天秤にかけて外交を行う必要があるので、ケースによってはウクライナを切り捨てる決断も必要になるだろう。冷酷だろうが何だろうが、それが日本外交である。
歴史的な背景はさておき、現時点においてウクライナという国家はロシアほど国際的な影響力を持つ国ではない。そして、国家同士の単純な力比べではロシアがウクライナを飲み込むのは火を見るよりも明らかである。
ただ、国際社会の「建前」として、侵略行為をやらかしたロシアの行為を許容するということは、第二次世界大戦後の世界秩序を否定することに他ならない。現代においてアメリカ主軸の西側諸国と、連携が出来ているかどうか怪しいロシア・支那の含まれる東側諸国に与するのか。或いは、グローバルサウスと呼ばれるところに軸足を移すべきなのか。
将来性を考えると、恐らくは一番継続性が怪しいのがロシアと支那。その理由は何れも少子化である。支那の人口統計はイマイチあてにならないのだが、出ている数字が「盛ってある」という前提でも、1.09に下がっていて、一人っ子政策が長く尾を引く困った状況である。ロシアは一時期少子化に歯止めがかかっていたのだが、戦争で若者を消耗したのでこれからの出生率低下は避けられない。故に国力は何れの国も一気に下がる。
欧米諸国も色々と困った状況ではあるが、ロシアや支那ほど尖っていない。つまり、ある程度長いスパンで考えた場合に東側の更なる弱体化は避けられない。国際社会のイニシアチブを握るのは引き続き西側諸国であり、敢えて日本が東側に軸足を移すメリットがないのである。
その西側の「建前」でウクライナを支援する方につくというのであれば、日本としても西側に寄り添う方が国益に叶うというのは、強ち間違った考えではないだろうと思う。
じゃあ、グローバルサウスは?というと、こちらは話にならない。確かに将来的に見れば、人口統計の話を踏まえても伸びしろはある。あるのだが、インドが盟主となってアフリカ諸国を一纏めに力を発揮するとはとても思えないし、今現在で成功する要素はない。コレから更に関係性を発展という話ならばともかく、今は無理だろう。大体、アフリカ諸国は始終仲間内で民族紛争をやっていて、ここをとりまとめることの出来る偉大な指導者というのは見当たらない。誰と話をしたら良いか良く分からない状況なのだ。
そうすると、日本の結論としては、当面は西側に寄り添うという方針になるだろうと思う。これは、善とか悪の話ではなく、国益になるかならないかという話なのだから。
グローバルサウス+東側諸国
なお、ロシアや支那はインドやアフリカ諸国、イスラム諸国にも影響力を広げる工作を随分前からやっていて、かなり浸透している状況ではある。
だから、西側諸国 vs グローバルサウス+東側諸国という展開も想定すべきではあるが、個人的な見解としてはこれも難しかろうと思う。何故ならば、主軸となれる国がいないからだ。
ロシアにせよインドにせよ支那にせよ、一国主義で独裁国家である。え?インドは違う?インドは確かに民主主義的な手続きでトップを選んでいるけれども、歴史的にもトップダウンの傾向が強く、他国と組んで何かをやろうという方針を選ばない国である。
BRICSの枠組みを作って色々と画策をしているようではあるが、成功しているようには思えない。
中国外相「BRICS協力を新段階に」 ロシア外相と電話
2024年1月11日 9:58 (2024年1月11日 10:17更新)
中国の王毅共産党政治局員兼外相は10日、ロシアのラブロフ外相と電話協議した。中ロやインド、ブラジルなどでつくるBRICSについて「国際的な影響力を高め、BRICS協力を新たな段階に引き上げたい」と述べた。
日本経済新聞より
反西洋思想で結束しようという思惑もある様に思われるが、足並みが揃うとはとても思えない。
アルゼンチン BRICSに加盟しない方針 前政権の決定から一転
2023年12月30日 7時19分
南米・アルゼンチンの政府は、前の左派政権下で決定していた中国、ロシア、インドなど新興5か国でつくるBRICSへの加盟について一転して加盟しない方針を決め、関係国に伝えました。中国などとの関係強化を進めてきた前の政権からの方針の転換が鮮明になっています。
NHKニュースより
BRICS加盟国は24年から10カ国に拡大、アルゼンチンは非加盟決定
2023年12月30日 2:43 JST
有力新興5カ国で構成するBRICSに2024年1月1日からサウジアラビアとイラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、エジプトの5カ国が新たに加盟国として加わる。南アフリカのBRICS代表が明らかにした。
Bloombergより
これらの国々の強みとして、豊富な資源やエネルギーを抱えていることが挙げられるのだが、逆に言えばそれだけなのだ。
早くも脱落したアルゼンチンに加え、エチオピアも政権がかなり不安定である。サウジアラビアも、UAEとの関係悪化で足並みを揃えることができるのか?という不安がある。
よって、「グローバルサウス」という言葉を作ってみたものの、新興勢力としては未だ未だ弱いし結束力もないのが現状なのだ。反欧米の狼煙の下に集まっても、「同床異夢」「船頭多くして舟山に上る」の状態の解消は極めて困難だ。
上川氏のウクライナ訪問
で、そういう状況から考えて、前提条件として日本がウクライナ支援を当面続けるとの方針は妥当という話を置くと、今回の上川氏の外交はかなり力の入ったものだった。
上川外相がウクライナを訪問 ゼレンスキー大統領と会談で調整
2024年1月7日 19時38分
ウクライナを訪問している上川外務大臣は、首都キーウでゼレンスキー大統領と会談する方向で調整していて、欧米の「支援疲れ」も指摘される中、日本として支援を継続する姿勢を伝える方針です。
NHKニュースより
先ずはウクライナ訪問で、ゼレンスキー氏との対談まで実現したこと。
こんなポストが上川氏から出されていたが、地下シェルターの中での外交交渉というのはなかなか見られる光景ではない。
上川外相 ポーランド外相と会談 ウクライナへの支援継続で一致
2024年1月9日 6時35分
上川外務大臣はウクライナを訪問後、先月に政権交代した隣国ポーランドを訪れてシコルスキ外相と会談し、ウクライナへの「支援疲れ」が指摘される中、支援を継続するため緊密に連携していくことで一致しました。
NHKニュースより
日本がウクライナの求める物をどの程度提供できるのかは分からないが、積極的な支援姿勢を見せることで西側を繋ぎ止める材料とはなるだろう。
ポーランド訪問
続いてポーランドを訪問しているのだが、ここ1年ほどでポーランドのウクライナ支援姿勢は大きく変化している。
ポーランド政界に漂う「ウクライナ疲れ」の影 支援の論調はなぜ変わったのか
2023年9月22日
ロシアのウクライナに対する全面侵攻が始まった当初から、ポーランド政府はウクライナ政府の強固な支持者だった。
軍事援助や装備を率先して送ることも多かった。ロシアの侵略からポーランド自体を守るには、こうした支援が不可欠だと、熱弁を振るってきた。
しかしいま、突如として、ウクライナ政府に政治のナイフを突きつけているように感じる。
BBCより
ウクライナが2023年の夏期反転大攻勢に失敗したことが、ポーランド国内政治にも大きな影響を与えたようだ。
ウクライナへの強力な支援をしていた、ポーランドの与党「法と正義(PiS)」だが、去年の半ば頃には腰砕けになってしまい、総選挙の結果敗北した。
ポーランド総選挙、野党勢が過半数 政権交代も=出口調査
2023年10月16日午後 3:23
ポーランドで15日、総選挙が実施された。出口調査によると、右派与党「法と正義」(PiS)が下院で第1党となる見通しだが、野党勢力が合わせて過半数を制する見通しで、8年続いたPiS政権に終止符が打たれる可能性が出ている。
ロイターより
そして、政権交代が起こったので、ウクライナ支援継続が危ぶまれる事態になっている。もちろん、ウクライナの事案はポーランドにとっても他人事ではないので、「支援を止める」とは言わないだろう。が、リソースは大きく下がると思う。上川氏はそこに釘を打つように外交を行ったのだ。有効かどうかは分からないが。
スウェーデン訪問
で、冒頭のニュースに繋がるわけだが、スウェーデンにも訪問して外交交渉を行ったということである。
上川外務大臣は、日本時間の10日夜、スウェーデンの首都ストックホルムでビルストロム外相と会談しました。
会談で、上川大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻などを念頭に「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が揺らぐ中、同志国との連携はこれまで以上に重要になっている。スウェーデンがNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請した決断を支持する」と伝えました。
NHKニュースより
スウェーデン側は「NATOと連携する」という表現に留めたものの、今のところNATOはウクライナ支援の方針であるので、なんとか言質を取ったという風にもとれる。
このスウェーデン訪問の前にフィンランドも訪問しているので、キーになりそうな北欧国家を重点的に攻めているのが分かるね。
上川外相 国際司法裁判所を訪問 “法の支配強化へ日本も貢献”
2024年1月11日 21時02分
オランダを訪れている上川外務大臣はハーグにあるICJ=国際司法裁判所を訪問し、国際社会における法の支配を強化するため、日本としても貢献していく考えを伝えました。
NHKニュースより
そして、オランダ外相と会談をした後、ICJの訪問をしている。なお、記事にはなっていないがイタリア外相との電話会談も行っている。まあ、詳しくはこちらを。なかなかのハードスケジュールであるが、ウクライナに乗り込むあたり、上川氏は中々の傑物だね。
この後も、アメリカ、カナダ、ドイツ、トルコと外交日程は目白押しなのだが、主軸にしているのはウクライナ支援の話だ。アメリカなどを始めとした西側諸国が腰が引け始めているウクライナ支援に繋ぎ止めたい思惑が見えるのだが、日本だけが努力してもどうしようもない。
日本が国際社会の主軸になって活動というのはなかなか困難ではあるが、「主体的に動くのが国益に繋がるのか」という話は議論すべき話だとして、こうした動きが出来ること自体は評価したいところである。
追記
そもそも上川氏が何故このような動きをしているのかというと、2月に予定されている会議の下準備だと思われる。
日ウクライナ復興会議、24年2月に開催 両首脳が合意
2023年11月8日 21:30
岸田文雄首相は8日、ウクライナのゼレンスキー大統領とおよそ30分間電話で協議した。両首脳は日ウクライナ経済復興推進会議を2024年2月19日に東京で開催すると合意した。会議で官民を挙げた協力を打ち出す。
首相は8日まで都内で開いた主要7カ国(G7)外相会合の内容を伝えた。ロシアによる侵攻が続くのを踏まえ、G7でロシアへの制裁やウクライナへの支援を継続すると強調した。日本は23年のG7議長国を務める。
日本経済新聞より
これまで3回ほど準備会議が開催されていて、今年2月に東京開催する準備をおこなっている。
- 第1回:令和5年5月15日 議事要旨(PDF/114KB)
- 第2回:令和5年6月19日 議事要旨(PDF/114KB)
- 第3回:令和5年10月5日 議事要旨(PDF/117KB)
ただ、議事要旨を見ても何が話し合われたかはサッパリ不明で、本当に実りの在るモノになるのかは不明である。
そもそも復興推進会議って、戦争終わった後でやることのような気はするんだけど……。
コメント
来月キエフか欧州のどこかで、ウクライナ復興支援会議が行われるとか。
そのコアとなるのは、岸田首相がゼレンスキー大統領とバイデンに約束した
“莫大な”復興支援金ですね。
またひと騒動起こりそうな予感がしますね。
あー、済みません。日本が主導して東京で会議するんでしたね。
失念しておりました。
とりま、どのように決着するか日本政府のお手並み拝見です。
何というか、難しい舵取りが必要なんだとは思います。
ウクライナとも話し合っておく必要があるのは分かりますが、なかなか。
コレが吉と出るのか凶と出るのか。
こんにちは。
>故に国力は何れの国も一気に下がる。
一人っ子政策で男余りの中華と、戦争で男が減ってるロシア……
ピコーン!余計な事ひらめいた!
……まあ、主にロシア側が絶対に首肯しないでしょうけれど。
>西側を繋ぎ止める材料とはなるだろう。
EUの中枢は良いのですが、周辺の元東欧小国が、どうにもロシアに利する行動を取り始めているのが何とも……ポーランドの国境封鎖なんて、国内事情を利用した親露行為にしか見えないのですが……
何にしても、川上外相には頑張っていただきたいところです。
※ちゃんと「女性閣僚」が仕事してるじゃないですか>声の大きい方々へ
こんにちは。
その「ひらめいた」は冗談ではないのですよ。
http://j.people.com.cn/n3/2016/1013/c94475-9126400.html
支那の広報的なところがコレを出していますから、前からこんな感じだったようですが、侵攻後にはロシアの国営TVが支那人と結婚しようという宣伝を流して物議を醸しておりまして。
https://www.shikoku-np.co.jp/feature/hasegawa_column/20230327.htm
何というか、支那はロシア侵略も随分とやっているようですよ。
上川氏は外務大臣経験を積むと、後は官房長官ポストを経験することで、日本初の女性総理大臣に大手がかかりますね。
>冗談ではないのですよ
うわぁ……(絶句)
リンク先の
>中国はロシアを事実上、自分の従属国に収めつつある。
これが事実なのか、中国の思い込みなのかは熟考を要するところですが、「カネと力があれば何でも出来る!」を地で行ってますね……
支那にしろ露助にしろ、ちょっとでも調子良い時は、相手も人間であって選ぶ権利がある、というのをはなっから無視しますからね……そして調子悪い時は卑屈になり、被害者仕草始めるし。