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支那が住宅ローン基準金利0.25%引き下げ

中華人民共和国ニュース
この記事は約8分で読めます。

ついにLPRの引き下げに踏み切ったか。でもこれ、大丈夫なんですかね?

中国が住宅ローン基準金利0.25%下げ、予想より大幅 不動産市場下支え

2024年2月20日午後 2:15

中国人民銀行(中央銀行)は20日、銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の5年物を25ベーシスポイント(bp)引き下げた。低迷する不動産市場と経済全体を下支えする。

ロイターより

支那の住宅ローンはLPRの5年物が影響を与えるといわれており、コレを引き下げたことで住宅市場を活性化しようという狙いなんだろう。

そうそう、経済関連の記事を書くときにはいつもお断りするんだけれども、あくまで簡単な内容にしか踏み込んでいない。僕自身も経済理論には不案内だから、他の分野よりも殊更簡単な部分にしか言及していないことを、ご容赦願いたい。

長引きそうな不動産業界の不況

0.25%は「大幅」なのか

さて、支那の最優遇貸出金利(LPR)だが、時事通信で図解されていたので、こちらが参考になると思う。最優遇貸出金利(LPR)は、支那の政策金利だと理解頂ければ良い。

一時期は5%近くに設定されていたLPR(5年物)は、今回の引き下げで3.95%となった。

金利引き下げ、効果に限界も しぼむ「不動産神話」―中国

2024年02月21日07時07分配信

中国人民銀行(中央銀行)が住宅ローン金利の基準となる最優遇貸出金利(LPR)5年物の大幅な引き下げに踏み切った。金融緩和で不動産市場のてこ入れを図った形だが、住宅価格が値上がりし続けるとの「不動産神話」はしぼんでおり、実需は弱い。効果には限界がありそうだ。共産党政権は市場低迷の長期化に危機感を強めている。

時事通信より

しかし、時事通信が指摘する通り、そもそも住宅価格が中間層でも手を出せない価格にまで値上がりしてしまって、需要が弱い状態にあるので、LPRの引き下げが実施されたところであまり意味はない。

コレまでの傾向から見ると0.25%引き下げは大きな変化だと言えるのだろうが、正直、大した意味はないだろう。

需要と供給のバランス

なぜなら、そもそも市場原理は需要と供給のバランスによって成り立つので、供給過剰の状況が続いていた支那において、これの回復を図るのは並大抵のことではない。

中国国内の空き家、14億人の人口でも全て埋めるの不可能=元高官

2023年9月25日午前 9:15

中国国家統計局の元高官は23日、現在国内にあるマンションの空室や空き家について、中国の人口14億人でさえ全てを埋めることは不可能かもしれないとの見方を示した。

~~略~~

統計局の元高官は中国南部の都市東莞で開かれたフォーラムで「現在どの程度の空き家があるのだろうか。専門家はそれぞれ非常に異なる数字を出しており、最も極端なものは現在の空き家の数が30億人分だと考えている」と述べ、「この推計値は多少多過ぎるかもしれないが、14億人では恐らく埋められないだろう」と説明した。

ロイターより

供給過剰の状態が続いていたのに住宅が次々と売れた背景には、住宅価格が青天井で上がり続けていたからという理由による。

彼らにとって住宅購入は、貯金のようなものであった。銀行にお金を預けるよりも住宅を購入しておいた方が利率が良かった時代があったのだ。

しかし、貯金と違って住宅は「物」の取引である。実際には建築された住宅は老朽化によって劣化する。本来的には価値は目減りするはずなのだ。ところが、彼らの「新築」の概念は「内装」を行った段階であり、それに至らない状態であれば、何時まででも価値が減退しないというものだった。

こうした現実との乖離があってこその住宅バブルだったのだが、ついにその幻想が打ち破られる時が訪れた。バブル崩壊を迎えたのだ。不動産取引がGDPの3割を占めていたので、住宅バブル崩壊は支那経済にも大きな影を落とす。ザックリ説明するとそんな状況が支那経済の実態なのだ。

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既に実施済みの政策

そもそも、今回のLPR5年物の引き下げ政策は、コレまでも定期的に試してきたことだ。上のグラフでもその点は見て理解して頂けると思う。

中国当局は昨年6月にもLPR5年物を小幅に引き下げ、秋以降は住宅購入制限の緩和などを相次いで打ち出すなど、需要喚起を図ってきた。ただ、不動産市場は冷え込んだままだ。調査会社の中指研究院によると、今年の春節(旧正月)連休の主要25都市での1日当たり新築住宅販売面積は、前年の連休と比べ約27%落ち込んだという。

時事通信「金利引き下げ、効果に限界も」より

不動産市場に活を入れるために、小幅引き下げはずっとやってきているけれども、傾向は殆ど変わらない。

恒大集団や碧桂園の問題はこのブログで色々と扱ってきたけれども、まあ、救いようのない状態である。

これらの不良債権を山ほど抱えた企業をゾンビのように存続させていることも、不動産市場を冷え込ませている原因でもある。

中国当局は不動産部門への支援を強化してきたものの、断続的な対応にとどまり、経済の4分の1をけん引する同部門や株式市場への重しになっている。

ロイター「中国が住宅ローン基準金利0.25%下げ」より

以前は経済の1/3を牽引していたが、今や1/4に下がっているのも健全な方向に向かっているという評価をすべきか、ヤバイ方に冷え込んでいると評価すべきか難しいところだ。

新たな5年物LPRは直ちに発効するが、住宅ローン金利の見直しは年単位で行われることから、既存の住宅ローン利用者は来年まで引き下げの恩恵が受けられない。

ロイター「中国が住宅ローン基準金利0.25%下げ」より

そして、直ぐには効果が出ないところも苦しいところだね。

デフレ傾向にある支那経済

なお、支那経済は現在デフレ傾向に進んでいる。

中国経済、今年はデフレ回避となるか

2024年2月21日 7:30

国家統計局(NBS)のデータによると、昨年通年の「消費者物価指数(CPI)」は0.2パーセント上昇、「コアCPI(生鮮食品除くCPI)」は0.7パーセント上昇した。一方で「生産者物価指数(PPI)」の方は3.0パーセント下落した。

AFPより

一般的なデフレ下における金融政策は、金融緩和と利下げである。ただ、利下げをやると外貨獲得に深刻な影響がでてしまうので、支那当局としては出来るだけ利下げをしたくない。

中国への直接投資 前年から80%以上減少 30年ぶりの低水準

2024年2月19日 20時15分

中国の去年1年間の外国企業からの直接投資は、前の年から80%以上減少し、30年ぶりの低い水準となりました。不動産市場の低迷の長期化で、景気の先行きに不透明感が強まる中、投資の落ち込みが鮮明になっています。

NHKニュースより

ただでさえ、支那への投資が落ち込んでいて、前年から82%減少して330億ドルになってしまった。

img
Money1さんのサイトより

一方の支那から外国への対外直接投資は?といえば、1,855億ドルであったそうで。結果的には収支がマイナスになってしまったようだ。

中国富裕層、資産数十兆円を海外へ 東京では4億円高級マンション
中国人の富裕層が今年、数千億ドル(数十兆円)規模の資産を海外に移転させている−。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は11月下旬、こう報じた。

投資ではなく資産流出という形で記事になっているが、支那からの富の流出という意味では同じだよね。

まあ、つまり、安易に政策金利引き下げもできないと言うことなんだよね。だからこそ、「大幅に下げたから住宅を買って!」というアナウンスをしたんだけど、実態は伴っていない。効果が出るとも思えない。

そしてこういった小出しの政策を出し続ける弱気の姿勢を続けることは、支那当局にとってあまり良いことに繋がらない。それは日本も通ってきた道だからね。それこそ、戦力の逐次投入はアカンパターンですな。

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追記

あららー。

中国新築住宅価格が1月は主要都市の8割で下落 下落都市縮小も不動産不況続く

2024/2/23 11:55

中国国家統計局が23日発表した1月の新築住宅価格指数によると、前月比で下落したのは主要70都市のうち56都市だった。前月比で下落した都市数は昨年12月から6都市減ったが、全体の8割に相当する都市で下落が続いている。

産経新聞より

指数を見ても傾向しか分からないんだけど、全体的に不動産価格の下落傾向が続いている様だね。下落幅に関しては言及されていないけれども。

上昇したのは11都市で、昨年12月から4都市増えた。直轄市の上海市や天津市、重慶市のほか、遼寧省大連市、陝西省西安市などで、横ばいは3都市だった。昨年12月は全体の約89%に相当する62都市で下落していた。

産経新聞より

12月にも、11月の時点で5ヶ月連続で下落という報道があったと思う。

中国新築住宅価格、11月は5カ月連続下落 70都市中59都市マイナス
中国国家統計局が15日発表したデータによると、11月の新築住宅価格は5カ月連続で下落した。不動産セクターは需要や投資に対する信頼感が損なわれ、低迷している。

梃子入れに梃子入れを重ねても、住宅価格の下落傾向は止められないっぽい。ただ、支那当局の梃子入れが全く効果がないかというと、おそらくはかなりの効果を上げているのだと思う。でなければ、需要に対する供給のバランスがおかしな支那にとって、ここまで価格維持出来ている理由が説明できない。

これは支那の実質住宅価格指数の推移を示すグラフなのだが、現状では未だ2018年時点での価格に戻っただけである。

「住宅」という概念が投機的に扱われた結果であり、「住宅価格」と名前は付いているが、実際に居住できる空間を手に入れられる話とは乖離した話である。これが実態に近づけば近づくほど値段の付かない住宅が出てきて値崩れを起こす(注:鬼城に値が付けられているという意味)。

そうならずに軟着陸させるためには、アクロバティックな手段が必要なんだと思う。

コメント

  1. アバター who より:

    こんにちは。

    中国の男性は求婚するときには家と車がないと対象外になってしまうそうです。
    なので家を買えない、又は家を買ったとしても建築が中断してしまっている状態なので婚姻率が下がり少子高齢化がますます進みそうです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      そうでしたね、支那では結婚する条件として家が必要なんでした。男性の比率が女性よりも多いのが問題なんでしょう。
      そりゃ、寝そべりたくもなるというもの。
      少子化は加速しそうですね。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >戦力の逐次投入はアカンパターンですな。

    とはいえ、「いまの痛みに耐えて明日を云々」という、小泉構文の(文字通りの)産みの親の発言もあって、その結果がコノザマですよ!という感じなので、大胆な改革もよくよく考えて行動してもらわないと……まあ、支那のことですから、何やっても下々の得になるとは思いませんが。
    なんにしても、何やってもこっちに火の粉が飛んでくるでしょうから、その覚悟だけはしておかないといけませんね。

    ※小泉のやったことで、何が腹立って、郵便改革とやらのおかげで無駄に窓口だけ別になって小口の小包とか使いづらいったら……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      支那における大胆な改革とは、文化大革命のような行きすぎな事態を招きかねませんから、マイルドな方が平和なのかもしれません。

      小泉氏の「郵政民営化」は、悪い面も結構出ちゃいましたからね。中の人に聞いたら、随分と業務のスリム化が図られたし、使えない上司が消えていったので良い面があった反面、人手不足で業務が回らなくなるような状況が散見されるので、デメリットもかなりあったのだとか。
      端から見ると、不便ばっかり増えた印象は否めませんよね。

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