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イエメンのフーシ派拠点を英米軍が攻撃

中東
この記事は約7分で読めます。

これ、先週末のニュースの続きなのだが、ちょっと嫌な展開になってきた。

“フーシ派 アメリカの貨物船をミサイル攻撃”米軍発表 報復か

2024年1月16日 9時07分

アメリカ軍は15日、中東イエメンの反政府勢力、フーシ派が紅海を航行していたアメリカの貨物船を弾道ミサイルで攻撃したと発表しました。フーシ派もアメリカの船への攻撃を認めた上でさらなる攻撃を示唆していて、地域の緊張が高まることが懸念されます。

NHKニュースより

「やられたらやり返す」は、中東において重要な考え方らしいのだが、「目には目を」とばかりに、アメリカの貨物船を攻撃とは恐れ知らずだな。

抵抗の枢軸

紅海周辺でのトラブル

スエズ運河へと繋がる紅海の周辺で、ここ数年、きな臭い空気が漂っていたのだが、イスラエルの騒ぎでこれに更に油を注いでしまった感じになってきている。

直近の話はこちら。

米英軍 イエメンのフーシ派拠点攻撃 フーシ派側“5人死亡”

2024年1月12日 19時24分

アメリカ政府は11日、アメリカ軍とイギリス軍がイエメンの反政府勢力フーシ派の拠点に対し攻撃を行ったと発表しました。紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返すフーシ派への報復措置だとしています。

NHKニュースより

アメリカとしてもやられたら黙っているわけには行かない。イギリスとしても放置できないと言うことのようだが、フーシ派の拠点をアメリカ軍とイギリス軍が合同で攻撃しちゃった。

また、今回の攻撃を受け、フーシ派は12日、SNSにビデオ声明を投稿し「アメリカとイギリスはイエメンの首都サヌアやホデイダなどを目標に73回攻撃を行い、イエメンに対する侵略を行った。わが軍で5人が死亡し、6人がけがをした」と明らかにしました。フーシ派の報道官は「今後さらに、厳しい軍事的報復を行う」と明らかにし、対抗する姿勢を強調しました。

NHKニュースより

フーシ派はイエメンにおいては反政府テロ組織なのだが、イエメンを標的にされたからと言って「侵略された」と言い掛かりをつけている。

近年、フーシ派が紅海に向けて弾道ミサイルを飛ばすので、周囲を航行する船舶の安全が脅かされたとして問題になっている。

イスラエル問題

こうした活動が活発化した背景には、シリア問題やイスラエル問題がある。

面倒な話ではあるが、この地域の紛争は第一次世界大戦(1914年~1918年)以前から燻っていた。大航海時代から20世紀後半にかけて、強国が盛んに植民地を獲得して虐げられた人々からの反発を喰らうという状況があったのだが、これが徒党を組むようになって、部族単位で植民地支配国に噛みつくようになった。

第一次世界大戦の時代にも、アフリカ戦線で随分と激しい戦闘が行われたようで、現地の人々にとっては良い迷惑であった。ヨーロッパで戦火が拡大すると共に植民地同士での戦争が拡大した。第一次世界大戦の終息の後には植民地支配は崩壊して、独立統治が加速していくのだが、経済的基盤の弱い新独立国は、旧宗主国などから経済支援をうけ、これが更に地域の混乱を招いた。経済的支配は新植民地主義などと揶揄された。

第二次世界大戦中はナチス・ドイツの反ユダヤ政策が行われたために、ヨーロッパからユダヤ人難民が「約束の地」パレスチナを目指すことになる。これが中東の戦乱を引き起こす切っ掛けになる。

そして、イスラエル建国(1948年5月14日)を切っ掛けに第一次中東戦争が勃発するのである。それ以降、何度も中東戦争が勃発するのだが、勢力図が書き換わっても争いはなくならないような状況が続いている。イスラエル問題は正にその縮図であり、かつ各国に波及する可能性のある深刻な問題でもある。

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アメリカとイランの対立

さて、このような状況が続いていて、西側諸国と対立する「抵抗の枢軸」とよばれるグループが出来上がってしまった。

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イランを旗頭とするグループである。

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司令官の背後には、ずらりと旗が並べられていました。イランと関係が深いとされる各組織の旗です。

その中には、今、イスラエルと戦っている「ハマス」や、レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」、イエメンの反政府勢力「フーシ派」、「カタイブ・ヒズボラ」などのイラクやシリアの民兵組織などが含まれていました。

NHKニュースより

西側諸国ではテロリスト扱いされる人々が、ここでは英雄なのだ。民兵組織レベルでも近代武器を保有して、テロ活動を起こす。しかし見方を変えれば「正義の鉄槌」になる。反政府組織として国内の枠を超えてテロ活動を行っている彼らに誰がお金を出しているのか?という話は、「英雄にお金を出す」という気分でいる方々がいることを考えると、さほど不思議でもない。

日本にいると感じないのだが、反欧米の旗には思っている以上に多数の人が集うのである。

「抵抗の枢軸」に対しては、イランの革命防衛隊の中でも、国外での工作活動などを担う「コッズ部隊」が支援にあたっています。支援内容は兵器や資金・資材の提供、それに軍事顧問による訓練など、多岐にわたるとされます。

NHKニュースより

何とも皮肉な話だが、原油が高騰しているためにイランから輸出される原油により潤沢な資金が得られている。この原油高騰の引き金を引いたのがロシアのウクライナ侵攻なのだから、何とも皮肉である。

アメリカの対イラン原油制裁

そして、年末にあったこのニュース。

米が対イラン原油制裁、エネ特使「輸出減少へ」=BBG

2023年11月16日午前 10:13

米政府の国際エネルギー問題担当特使を務めるアモス・ホッホシュタイン氏は15日、中東での新たな紛争勃発を受けてイランに対する制裁として原油の禁輸措置を発動すると、ブルームバーグ・ニュースに明らかにした。

ロイターより

そして年始にはこんなニュースが。

イラン軍が石油タンカー拿捕 「米の原油差し押さえに報復」

2024年1月12日 7時44分

イラン軍は去年アメリカ政府に原油を差し押さえられたことへの報復として、オマーン湾を航行中の石油タンカーを拿捕しました。 両国の対立が深まるとともに、中東地域の海運がいっそう不安定化することが懸念されます。

NHKニュースより

まあ、原油の扱いで争いが起こるのは避けられないんだけど、利権争いという側面はあるからどちらも簡単には引けないんだよね。

今回の拿捕について、イラン海軍は「このタンカーがアメリカ政府の指示に従い、イランの原油を盗んだため報復を行った」と主張していて、両国の対立がさらに深まることが予想されます。

NHKニュースより

イラン海軍が主張していることは、かなりメチャクチャなんだけど、これが罷り通る程度には拗れているんだよね。

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イエメンのフーシ派との対立の話が取り上げられているのだけれど、結局のところはアメリカとイランとの対立が問題なんだよね。

話がこれ以上混乱しなければ良いけれど。

誰が悪い、というレベルの話じゃないから、困ったものだ。何しろ日本にとっては、この話が過熱すると正に存立危機自体に突っ込みかねない。もう、世界では原油価格に大きな影響が出始めていて、日本政府としても対応を迫られる自体になりつつある。

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追記

アメリカ、「効果無かった」と認めちゃったよ。

バイデン大統領、空爆はフーシ派抑止できていないが継続と表明(1)

2024年1月19日 2:52 JST 更新日時 2024年1月19日 7:11 JST

バイデン米大統領は18日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する空爆が紅海を航行する船舶への攻撃を抑止できていないことを認めつつ、今後も空爆を継続すると表明した。

Bloombergより

でも、作戦は継続するようだ。

米メディア “米軍がフーシ派に対し追加の攻撃”

2024年1月13日 12時16分

アメリカメディアは、アメリカ軍が前日に続いて12日も中東のイエメンで反政府勢力フーシ派に対して追加の攻撃を行ったと伝えました。

~~略~~

これについてアメリカ軍の高官は12日、攻撃した場所は、合わせて28か所に上ったと明らかにしたうえで「フーシ派がこれまでと同じように攻撃を実行できるとは思えない」と述べ、攻撃は成功したと強調しました。

NHKニュースより

空爆は成功しているという論調だったのに、効果が上がっていないことを認めたと。

うーん、既に海運業に大きな影響が出ているのだけれど、世界経済への影響はこれからということになりそうだ。そして、長引く可能性が高いな。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    中東は、米国が常に空母打撃群を貼り付けている戦略的要衝ではあるものの、
    近年は米国のグリップが弱くなっている感がありあり。
    その理由は、米国内の混乱、サウジの離反、イランとの対立あたりだけど、
    本質的には、中東を顎で動かそうとする米国の戦略的失敗なんだろうと思う。
    米国が変わらなくても、中東が変わっていくし、支那がその隙を突いて食い
    込んできてもいるしね。
    いまじゃイエメンにすら翻弄されている具合いだから、手打ちの頃合いだね。

    • 木霊 木霊 より:

      中東へのプレゼンスが弱くなってきているのは、融和政策が舐められているのか、イラン核合意から離脱したのに再び建て直しを図ろうとしているアメリカ政府の姿勢が舐められているのか。
      アメリカの押しつけがましい態度が鼻につくのは分かるんですが、力を付けてきた中東が我を通そうとしているという風にも映ります。
      支那の戦略も相まって、混沌としてきていますね。

  2. アバター 山童 より:

    フーシ派の背後はイランでしょう。こいつらがペルシャ湾のホルムズ海峡を封鎖したら…て飛び火の可能性に気が重くなる。カタールの天然ガスはイランと共同開発だから船舶攻撃はないだろうけど、出入りを許すかは不明。
    紅海側にパイプラインを伸ばしているのはサウジだけで、そのサウジも積出し港で出荷できるのは、全体の2割弱に過ぎず。それすらスエズ→地中海→ジブラルタル海峡→喜望峰……とクソ長い道を要される。空爆するしかなかったろう?というのが私の見解ですが……どーも日本の報道とアルジャジーラの映像が違う。
    あくまで軍事拠点への爆撃とあるが、アルジャジーラの観ると、結構に、市街地も爆撃してる。
    またムダに恨みを買ったか……。事がさらに燃料へ点火してゆかねば良いが。

    • 木霊 木霊 より:

      フーシ派にやらせて様子見しているイランという構図だと思うんですよね。
      とにかく嫌がらせをしてアメリカに手出しをさせないような立ち回りを考えている節があります。

      アメリカが空爆した点は否定するつもりはないんですが、「効果絶大」でなかったところが頭が痛いですね。
      「無駄に恨みを買った」という構図になった感じですよ。

  3. アバター 山童 より:

    たしかペルシャ湾にはカタールだかに、
    米空母と駆逐艦やら何やら派遣されているはず。戦力的にはアメリカ有利?
    ただ、ホルムズ海峡……あそこは8つの島があり(7つをイラン占拠)、推進の浅い海域が広がっていて、大型タンカーの通行できる海域は狭いんですね。
    なので航路を二つにわり、それぞれで片側通行してるはず。
    現況、駐カタールのアメリカ艦隊にイランは敵わないですが、前述した通りタンカーの通り道は狭いので、挫傷させるだけで封鎖できちゃいかねない。
    ある意味に、イランを引きずり出して、この機に徹底的に叩きたいのかも知れないですが、そろそろイランの核物質の純度が搭載可能な域まで純度あげてる時期ですからね、下手すると核戦争?
    とうにかならないもんなのか中東は?

    • 木霊 木霊 より:

      イランが中東の盟主として君臨したいという思惑がちらちらと見えるわけですが、アメリカが横槍を入れるからイランとしては業腹なんでしょう。
      民主党は結構気が短い人が多いから、一気に開戦に傾くなんてリスクもあるんですよね。
      核戦争にまでは至らないと思いますが、アメリカとしては手を引くわけには行かず、手を抜くわけにも行かず。
      イスラエルが頑張ってくれるウチは未だ良かったんでしょうが、あの状況ですからねぇ。

  4. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    結局のところ、
    ・紅海、ひいてはスエズを国際輸送が忌避するとなると、沿岸諸国に落ちるお金は減るので、結局「無辜の人民」が悪影響をかぶることになる
    ・責任は、過激派を国内で良いようにのさばらせたアラブ諸国の政府にある
    ・なので、政府が責任持って清浄化対応しなければならない
    ・とはいえ、政府と過激派とのパイプがなければそもそも成立しないので、過激派のケツ持ち政治家は腰が重かろう
    ・そもそも論として、アラブ諸国の政治を、日本や西側基準で見てはいけない
    でしょうかね。

    結局は宗教対立であり(もちろん経済もですが)、そこにキリスト教がいっちょ噛みして問題をややこしくする構図が繰り返されてますね。
    アフリカ同様、ここいらへんも「地ならし」して良いような気がします。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      中東としてはオイルマネーを握っているという強みがありますから、かなり強硬な態度で臨んでも西側としては譲歩しちゃうんですよね。
      それが分かっているから、アラブ諸国としても「西側に手を出させる → 西側がヘイトを被る」という状況を放置するし、西側も積極的に関与してしまう。

      どこが落とし処なのか良く分からないけれども、あの辺りと付き合いを減らすわけにも行かない。困ったモノですよ。

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