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エチオピアがデフォルト、アフリカ経済も不安定感が増す

中東
この記事は約11分で読めます。

エチオピアがデフォルトか。

エチオピアが債務不履行、利払いせず-ザンビア、ガーナなどに続く

2023年12月26日 6:45 JST

エチオピアは25日、猶予期間終了後に利払いを実施せず、デフォルト(債務不履行)に陥った。

Bloombergより

26日の記事なんだけど、遅ればせながら突っ込みを。本当は昨日取り上げたかったんだけど、色々と忙しかったので。……コレが今年最後の記事になるんだろうか。時間が許せば、あと1~2本は書きたいんだけど。

内戦の影響・武漢ウイルス感染症拡大などが響いた

アフリカ諸国で債務不履行

アフリカ大陸の国々は、様々な開発が行われていて、経済の伸びが大きい地域である。ただ、債務を積み上げすぎて利払いが出来ないケースが多発しているようだ。

借りた金を返すのは当たり前だが、この辺りの国々はマージンを小さく取っていたので、武漢ウイルス感染症の拡大に伴い大きなダメージを負ってしまったんだよね。

今回の債務不履行でエチオピアは、ザンビアやガーナ、スリランカなど、近年にユーロ債の債務不履行に陥った発展途上国に加わった。こうした国は増加傾向にある。

Bloombergより

で、色々な国が債務不履行に陥ったと。

ザンビアのユーロ債再編、暗礁に-仏中など債権団が修正案拒否

2023年11月20日 20:08 JST

中国とフランスを中心とするザンビアの公的債権団は、同国政府が債券保有者と交わした修正後の基本合意を拒否した。30億ドル(約4500億円)相当の発行済みユーロ債を巡る再編が暗礁に乗り上げた。

Bloombergより

先日はザンビアが債務不履行に陥ったという話をやっていたね。

ティグレ州の紛争

エチオピアの財政悪化を招いた理由は、他にもあったようだ。

コロナ禍に加え、エチオピアでは20年11月から2年続いた北部ティグレ州での紛争や、「40年で最悪」(国連)とされた干ばつへの対応も経済を逼迫した。今後は発展途上国の債務削減を図る、20カ国・地域(G20)の「共通枠組み」を通して再建を目指す。

産経新聞より

ううん?北部ティグレ州?

えーと、今回の主人公であるエチオピアの北部にはティグレ州という地域があって、ここで反乱があったのでそれを鎮圧したよという話だ。

米国の戦犯追及に反発 エチオピアとエリトリア―21世紀最悪・北部ティグレ州紛争

2023年03月24日07時08分

エチオピアとエリトリアがそろって米国に反発している。2020年から2年間に及んだエチオピア政府軍と北部ティグレ州の反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」の戦闘で、米国は戦争犯罪や人道に対する罪が繰り返されたと非難した。エリトリアはエチオピア政府と手を組んでティグレ州に軍を派遣していたとみられている。

エチオピア外務省は21日、米国の非難に対し「偏った内容かつ扇動的だ」と強く反論した。エリトリア外務省も数時間後に続き「根も葉もない話の上にわが国の名誉を汚している」と反発してみせた。

時事通信より

昨今ではイスラエル国内で「内戦」の様相を呈している深刻な問題が話題になっているが、エチオピアと隣国エリトリアの間に位置するティグレ州における内乱に関しては、日本国内で取り上げられた記憶がない。

簡単に触れておくと、ティグレ人解放戦線というのは、1970年代初頭にティグレ属の革命家によって結成された反政府勢力ティグレ民族機構が全身となる組織であり、まあ、ぶっちゃけるとテロ組織である。中東やアフリカにも割とありがちだね。彼らの理念とか、詳しいことは全く知らないんだけど。TPLF内に、ティグレ・マルクス・レーニン主義連盟(MLLT)が結成されてTPLFの主導権を握った時代があったようで、その事1つとってもまあ、ロクデモナイ思想の元に動いているような気がするね。

エチオピア、戦闘で数百人死亡=関係筋

2020年11月10日午後 3:00 GMT

エチオピア政府軍の関係者によると、同国北部ティグレ州を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)と政府軍の戦闘で数百人の死者が出た。

昨年ノーベル平和賞を受賞したアビー首相は9日、エチオピアが内戦状態に陥ることはないと主張したが、同国では2018年の同首相就任以来、民族対立ですでに数百人が死亡しており、国内情勢が不安定化する恐れがある。

アビー首相は先週、TPLFが政府軍の基地を攻撃したとして、TPLFに対する攻撃を開始。政府軍が武器庫などを空爆していることを明らかにしている。

ロイターより

で、紛争に発展した際に、エチオピア空軍が空爆作戦をやっているんだよね。イスラエルと同じ構図か?いや、あそこは構図としては国家間対立というべきかなぁ。

多民族国家エチオピア最大の民族はアビー首相らオロモ人。ティグレ州に住むティグレ人は人口のわずか5%に過ぎないが、アビー首相の就任前は政治の実権を握っていた。

ティグレ人は、アビー政権が過去の人権侵害や汚職を巡り、ティグレ人を不公平に標的にしていると主張している。

ロイターより

まあ、ここも民族対立という構図であるとも言える。民族対立というより部族間対立のような気はするけれども。

ただ、2021年11月には政府が非常事態宣言を出すまでになっていたので、かなり大変な状況になっていたのには違いない。エチオピア政府は「内戦状態」という認識を出していた気がする。

紛争時の人権状況

で、イスラエルの件に似ているというのは、何も部族間対立の様相や空爆実行という話だけではない。

米国務省は20日、各国の人権状況をまとめた22年版の報告書を発表する中で、エチオピアやエリトリアにも言及した。記者会見したブリンケン氏は「法と事実を精査した」結果だとして、エチオピア、エリトリア両国の戦争犯罪を糾弾した。「偶然とか単なる戦争の副産物とかではないのだ。計画的かつ故意に行われている」と訴えている。

これに対し、エチオピア外務省は「あふれるばかりの証拠があるのに性暴力をはじめ人権侵害の訴えから何か一つ罪を逃れていないか」と反論。今回の紛争で、エチオピア・エリトリアの連合軍によって粉砕された格好のTPLFに対する米国の批判が弱いことに不満を示した。

エリトリア外務省の声明も「TPLFによる犯罪の山が軽視され隠されている」と米国を非難。「米国はエリトリアに間違った敵意を抱き続けており、われわれを悪魔にしようとしている」と被害者意識をむき出しにした。

時事通信より

えっと、他の記事でコメントを貰った件と関わり合いのある話でもあるんだけど、西側諸国(アメリカ)が「口を出した」という案件でもあるんだよね。

人権というのは世界的に不偏なものとしてそこに存在するという西側の理屈というのは、意外に少数意見である。

TPLFはかつてエチオピアを支配したティグレ人が率いている。アビー政権は20年、TPLFが軍を攻撃したと主張して、軍事攻撃に踏み切った。2年に及んだ激しい戦闘で、米国は約50万人の住民が死亡したと推計している。ロシアによるウクライナ侵攻を上回る犠牲は、21世紀で最も凄惨(せいさん)な戦争の一つになることは間違いないと考えられている。

時事通信より

記事に紹介されるように確かに凄惨なことになっているのは間違いないんだけれども、これって「部族間対立」という見方をすれば、「もう、オマエらで勝手にやってくれ」と言うより他ない。西側の論理というのは案外、アフリカ諸国で嫌われている理屈なのである。

まあ、端的に言えば「人権で腹は膨れない」し「人権で面子は守れない」というわけだ。

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エチオピア、支那に救いの手を求めていた

なお、10月にはこんな記事があった。

「一帯一路」フォーラム、エチオピア首相が北京到着

新華社 | 2023-10-16 13:00:00

中国で開かれる第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席するエチオピアのアビー首相が16日午前、北京に到着した。

新華網より

一帯一路?エチオピアが?

この時はこんな感想を持っていたのだが、どうやらコレはそれなりに深刻な問題があったようなのだ。

焦点:「一帯一路」鉄道計画がエチオピアで頓挫、中国融資減速

2018年9月6日午後 5:02

エチオピアは、シルクロード経済圏構想「一帯一路」の「モデル国家」として、中国共産党の専門家から称賛されている。中国政府は一帯一路に1260億ドル(約14兆円)を投資して、自国とユーラシア、アフリカ大陸をつなぐ鉄道、道路、海路の構築を目指している。

しかし、「アフリカの角」に位置する人口1億人のエチオピアは債務返済で苦境に立たされており、同国の主な債権者である中国が、一部のインフラ計画の収益性に懸念を強めて融資を鈍化させる兆しが見えている。

ロイターより

あー、うーん。えと、債務返済には2018年頃から既に苦しんでいたのか。一体どの程度借りていたんだろうね。

米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)の中国アフリカ研究所(CARI)によると、エチオピアは天然資源に乏しいにもかかわらず、中国からの融資においてアフリカ諸国のなかでトップを占め、中国国有の政策銀行は2000年以降、121億ドル以上融資を拡大している。

1991年に軍事政権が崩壊後、同国を率いる与党エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)の連立政権は、2025年までに中所得国になることを目指し、道路や鉄道、工業団地の建設など製造業主導の産業国になるという野心的な構想を進めている。だがそれにより、債務は増加の一途をたどっている。

ロイターより

あー、2000年以降、121億ドル以上(1.7兆円規模)融資ですか。幾ら焦げ付いたんですかねぇ?

えーと、エチオピア政府、現政権はオロモ人の首相であるアビィ・アハメド氏が握っているんだけど、オロモ人自身はエチオピアでは少数派なんだよね。で、ティグレ人はそれが面白くないと。ザックリいってしまえばそんな構図である。

そして、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)が政権を握った1991年から「国内発展」の為にインフレ整備を金をかけてやってきた。その一環に一帯一路構想を組み込んじゃったんだな。

美味い話には裏がある、そういうことだね。

内陸に位置するエチオピアにおける交通整備プロジェクトの収益性に対する中国の懸念は、なかでもアディスアベバとジブチ港を結ぶ標準軌間の鉄道に集中している。

北京にある中国共産党中央党校の趙磊教授は6月、中国が融資するエチオピア首都アディスアベバ周辺の軽量鉄道とエチオピア─ジブチ間の鉄道プロジェクトを挙げ、「プロジェクトの持続可能性は低い」との見方を党機関紙の光明日報で示した。

「追加のインフラ整備やサービス、保守において十分な検討がされていない」と同教授は指摘した。

鉄道プロジェクトの主要部分は2016年に開通したが、ウォルディアからメケレまで北方に路線を拡張するための中国からの融資は度々遅れており、中国輸出入銀行からの完全な融資パッケージはまだ実行されていないと、清華大学のTang Xiaoyang教授は語った。同教授はエチオピアで実地調査を行っている。

ロイターより

支那経済が左前になるにしたがって、融資パッケージが滞るようになったと。いやこれ、「債務の罠に嵌まった」って事なんじゃないかな。

しかし、元はと言えば武漢ウイルス感染症も支那のせいで急速拡大してしまったという側面が否定できない。これ、支那に賠償を求めても良いケースなのでは?

ロシアからの支援も期待できない

なお、こうした構図はロシアからの支援が途絶えたという事も関係しているのだと思う。

ロシアのラブロフ外相がアフリカ訪問、穀物輸出など協力関係強化へ

2022年08月05日

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は7月24日から27日にかけて、エジプト、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアの4カ国を訪問した。同外相は、アフリカの食料危機は西側諸国による対ロ経済制裁の影響と強調し続けた。その上で、エジプトのサーメハ・シュクリー外相との共同会見では「ロシアの穀物輸出業者が全ての契約義務を果たすことを確認した」と述べるなど、アフリカ地域への穀物輸出を約束した。

JETROより

この地域に食料の輸出をしているロシアにとって、対ロシア経済制裁に荷担しないアフリカ諸国の存在は貴重である。

そりゃ、支援もするさ。ない袖は振れないという現実から目を背ければ、ということではあるんだけども。

そもそも軍事政権時代のエチオピアはソ連から軍事支援をガッツリ受けていた。こうした民族間紛争に関わったのは、何も西側勢力「だけではない」ということだね。

そしてそういった関係が大きかったからこそ、ロシアに対する経済制裁に加わっていないわけだ。まあ、そもそもロシア経済は小さく、工業製品の質は悪い。だから、経済支援を期待しているわけではないんだろうけれど。

ただ、軍事的支援については別だ。

中央アフリカ共和国以外のアフリカの国では、スーダン、モザンビーク、マリでワグネル社の存在が確認され、このうちモザンビークでは、ワグネル社が北部のイスラム武装勢力と戦う政府軍を訓練してきたとの情報がある。

GLOBE+より

エチオピアの隣国スーダンにはワグネル社の存在が確認されていて、エチオピアにも出稼ぎに来ている噂がある。まあ、それも今は厳しい状況なんだけど。

ソロモン王もガッカリ

しかしまあ、エチオピアというと過去にはソロモン朝が支配する地域(紀元前5世紀~10世紀)であったはずで、交易の中心地という部分もあったんだけども。現状を知ったら、ソロモン王とシバの女王はさぞやガッカリしていることだろう。

1859年にスエズ運河の建設(フランス主導での建設)が始まって、紅海の重大性が増大した結果、色々な国に目を付けられるようになった。1859年にフランスがタジュラ湾口のオポック港を租借。1884年にイギリスがソマリランドを建設。1889年にはイタリアが現エリトリアを割譲してもらっている。で、1977年にジプチ独立。1993年にエリトリアが独立。

要は、エチオピアはスエズ運河に面しているという利益を享受できなくなってしまったわけだ。

もしかしたら、そこにアクセス出来る鉄道の建設(アディスアベバとジブチ港を結ぶ標準軌間の鉄道)に手を出したら、痛い目をみちゃったということなのかな。確かにジプチとエチオピアを繋げる鉄道を通すことは、エチオピアがジプチ湾の活用できるという事を意味するので、国家事業として推進する意味はあるのだと思う。だけど、その技術や金を支那に求めたのが間違いだったかな。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    あけましておめでとうございます。
    さて、えれえ事になるてきましたね。
    ソマリアのプントランドの海賊が各国海軍の活躍でぶち殺されてザマァみろでしたが、エチオピアがガタガタになると、また災難が押し寄せますね。
    なんしろイエメンのあたまおかC連中のドローン攻撃で、スエズから来た船が太平洋へ出られない。
    世界トップ3の海運がスエズ通行を停止する決定を発表してます。てことは、アレですよね……ジブラルタル海峡から這入ったタンカーやが、紅海の奥で給油して、またスエズを通り地中海からジブラルタルへ、そしてアフリカ大陸西岸きら喜望峰を周ってインド洋へ……気が遠い道😮‍💨
    マラッカを通らずフィリピン諸島を南回りするだけで原油価格が10%あがるのに、
    紅海を使えなきゃ(出られなきゃ)
    マジでイライラ戦争時のホルムズ海峡と変わらない。
    そこへエチオピアのデフォルト……
    この地域って「今はなきソマリア政府の紙幣」が使われてるんですよね。
    それはソマリランドの通貨も、エチオピアの通貨も尻拭き紙と変わらず、
    むしろ増刷されない旧ソマリア紙幣の方が(希少価値による)信頼性が高いからです🤣🤣🤣
    そういう冗談みたいな経済圏なんですね。そこにきて、あの地域ではそこそこ大きな国であるエチオピアがデフォルトすると、そりゃ海賊のソマリアや、テロリストのイエメンに波及しない訳はないと想うんですよ。
    まぁイエメンなんかすでに生命の危険あるほどに経済崩壊してるから、いまさら……なのかも知れませんが。
    原油の97%を湾岸諸国に頼る我が国としては迷惑千万な話ですねぇ。

    • 木霊 木霊 より:

      あけましておめでとうございます。

      記事の扱いとしては小さいんですが、かなり厄介な事案だと思っています。
      あっちこっちに飛び火するんじゃないのかな?という事態になっていかなければ良いのですから。

  2. アバター 七面鳥 より:

    木霊様、皆様、寒中見舞い申し上げます。

    さて。
    本件。
    七面鳥は、人格や能力その他は『氏より育ち』だと思ってますが。
    思ってはいるのですが。

    アフリカに関しては、なんか遺伝的に欠陥でもあるんじゃないかと思えてしまいます……

    ※多分『氏より育ち』の育ちの部分が全く手つかずの未発達だから、氏の要因≒狩猟民族、他部族潰してでも自部族の食い扶持確保、が前に出てしまうのでは……

    • 木霊 木霊 より:

      あけましておめでとうございます。

      うーん、ノーコメント。
      ただ、「遺伝子的に」云々よりはやっぱり教育なんだと思いますよ。

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