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パレスチナ過激派組織ハマス、イスラエルに戦争を仕掛ける

イスラエルニュース
この記事は約19分で読めます。

とんでもないことになってきたな。

ハマスとイスラエルの大規模衝突、死者480人以上 米は襲撃非難

2023年10月8日午前 10:53 GMT+9

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日に行ったイスラエルへの大規模攻撃で、イスラエル側の死者は250人を超えた。ガザ地区でもイスラエルによる報復攻撃で230人余りが死亡した。

ロイターより

あっちこっちで戦争を始めないで欲しいと切に願う。勝手な願いではあるが。

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大規模な戦闘に発展

パレスチナの問題は根深い

とはいえ、この地域のハマスによるイスラエル攻撃は今に始まった話ではない。断続的なミサイル攻撃の話は数年前からあったし、イスラエル側もこれを迎撃し、時には報復したりという話があった。パレスチナを巡る問題である。

そもそもパレスチナ問題は、イスラエル建国(1948年5月14日)に起因する。イスラエル建国時に、パレスチナ人を追い出したことが、そもそもの問題の始まりだと言われている。

パレスチナ自治政府の前身であるパレスチナ解放機構(PLO)の設立は、設立は1964年1月で、パレスチナの開放を目指す組織である。イスラエル建国によって住む場所を失ったパレスチナ人たちをまとめ上げる組織、ということらしい。そしてPLOは1988年、パレスチナ国を建国。アメリカと共同歩調をとる日本政府は、パレスチナ国を国家として承認していないので、日本ではパレスチナ自治政府と称されることが多い。

ハマスはイスラム原理主義スンニ派を掲げている過激組織だが、PLOの影響力を排除した民衆レベルでの対イスラエル抵抗組織として設立されている。一節にはエジプト生まれのムスリム同胞団のパレスチナ支部がハマスだとも説明されている。が、その組織拡大を支援したのは、なんとイスラエルである。実は、イスラエルはPLOを潰すためにハマスを大きくしようとしたいんだよね。

ところが、1990年代にPLOがイスラエルとの和平交渉を開始したら、これに強く反対してイスラエルとの対立姿勢を強めちゃった。つまり、PLOとハマスの立場は逆転し、ハマスが反イスラエル組織となり、PLOはイスラエルとの平和的外交を目指した。そしてパレスチナでの市民権を得たハマスは、パレスチナにおいて主流派に。

パレスチナ自治政府の人材はPLOから輩出され、自治政府結成後はPLOの一部は地域の治安を担うパレスチナ国家警備隊に吸収されていったことで、PLOは形骸化して存在感は希薄化。一方のハマスは過激派政党として勢力拡大に成功し、パレスチナは次第にイスラエルとの対決姿勢を強める結果になり、今に至る。

だいたいイギリスが悪い

さて、イスラエルとパレスチナの対立は、謂ってみれば祖国奪還を目論むイスラム教スンニ派と、ユダヤ人たちの信奉するユダヤ教という宗教的な対立と、パレスチナ人とユダヤ人との間での争いである民族対立が複雑に絡み合った話だ。

厄介なことに、ユダヤ人の国を建国するにあたって西欧諸国(主にイギリス)が口出しをした形でイスラエル後を切り取っているので、イスラム教徒にとってはイスラエル国家そのものが目障りな存在なのだ。

イスラエル建国には、宗主国イギリスが深く関わっていて、ユダヤ人にもパレスチナ人にもいい顔をして、「君達の国を作ってあげよう」と甘い言葉をかけていた。そして、お金のあるユダヤ人がイスラエル後を勝ち取った。

そこでイギリスが強引に線を引いちゃった。「これが国境だね」と。

エジプトなんかもそうなんだけど、定規で切り取ったような国境が不自然に出来ているあたりが、その雑さを物語っている。

「ユダヤ人が金で領土を買った」というのが、中東諸国の認識だし、今は超軍事国家となっているイスラエルの金回りが良いことも妬まれる原因となっている。もともとはイスラエル全土にパレスチナ人が住んでいたんだけど、住んでいる土地を追い立てられて領土を切り取られた挙げ句、2つに分割した形になってしまった。今回、イスラエルに攻撃したハマスの拠点はガザ地区だという。

宗教的な問題は絡むが…

なお、本来は中東の抗争は、スンニ派とシーア派の対立と見ると分りやすかった。

これはNHKが説明に使用していた中東の国々の住人のうち、スンニ派の住民の割合がどれくらいかを示した図である。

こっちはシーア派の住民の割合を示した図で、イランは周辺国との対立が深い原因がこういったスンニ派とシーア派との派閥争いに起因すると言われている。尤も、宗教対立というよりは、部族対立といったほうが実態に近いらしい。部族間の利権争いが、中東戦争の正体なのである。その部族が掲げる旗がシーア派とスンニ派に色分けされるという感じらしいね。

ところがややこしい事に、パレスチナ側を代表する立場のハマスはイランが支持・支援している(正確にはハマスがパレスチナ代表というわけではなく、ファタハという穏健派と二大勢力を形成している)。イランは国教をイスラム教と定め、その国民の9割がシーア派である。本来は、シーア派とスンニ派は仲が悪いので、スンニ派過激派のハマスに支援というのはちょっと不自然だ。そして、イスラエルにも多数のイスラム教徒がいて、スンニ派もシーア派もいる。

結局、中東諸国にとってはイスラエルという国家の存在そのものが疎ましいということになって、敵の敵は味方などという様相なんだな。ただし、最近の流れはちょっと違う。

イスラエルとUAEが国交樹立で合意 トランプ氏が発表

2020年8月14日 1時09分

トランプ米大統領は13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交を樹立することで合意したと発表した。イスラエルによるヨルダン川西岸地区の一部併合の停止を条件にしている。

朝日新聞より

民主化運動から10年 対イランで結束 諸国、イスラエルと国交正常化

2021/1/27

2011年に中東各地へ広がった民主化要求運動「アラブの春」から10年が経過した。この間、対立を続けてきたイスラエルとアラブ諸国は接近し、敵・味方の構図は一変している。イスラエルの目に「春」はどう映るのか。

毎日新聞より

トランプ氏がアメリカ大統領であった時代に仕掛けたイスラエルとUAEの国交正常化を皮切りに、加速度的にイスラエルとアラブ諸国が接近し、対イランの構図を作り出したのである。

非常に大雑把に背景を説明したけれど、そんな感じのややこしい地域の話なんだね。

突然のミサイル攻撃

さて、で、今回の話は10月7日に突如としてガザ地区からロケット弾が3000発以上イスラエルに向けて発射され、200人以上の死者を出し、1000人以上の怪我人を出したことが切っ掛けとなっている。

ガザ地区からイスラエルへ相次ぐ砲撃、多数死傷 「これは戦争」とイスラエル首相

2023年10月7日

パレスチナ自治区ガザ地区から7日早朝、イスラエルに向けて大量のロケット弾が発射されたほか、ガザ地区から武装組織メンバーがイスラエル内に侵入した。イスラエルによると、国内で少なくとも250人が死亡。パレスチナ側では約230人が死亡したという。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「これは戦争」だと宣言した。ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの軍事部門トップは、「偉大な戦いの日」だとして、すべてのパレスチナ人に参加を呼びかけた。

BBCより

当然ながら、攻撃されたイスラエルとしては「戦争だ!」と熱り立つのも無理はないのだが、ハマスは更に武装集団をイスラエル内に送り込んだ。

これは航空万能論様のサイトよりお借りした図で、分かり易い。

現在は、イスラエル側の軍が押し返しているので勢力図は書き換わっているが、本来ならばこのような奇襲攻撃を受けないように、イスラエル側は警戒していたはずだ。

イスラエルにはイスラエル諜報特務庁(通称モサド)という諜報組織があって、ここは極めて有能かつ攻撃的な組織である。まさにスパイの名に恥じない創作に出てくるような工作活動を得意とする組織だ。イギリスのMI6やアメリカのCIAなどと並んで、世界的に見てもかなり優秀な諜報組織だと言われている。

しかし、今回、モサドはこのような兆候を掴むことが出来ず、そもそもガザ地区にコレほどの数のロケット弾が保管され、攻撃組織を有しているとは考えていなかったようだ。おそらくはイランの支援によって実現されただろうと、現段階ではその様に分析されている。

空爆による死者も

当然ながら、強力な軍事力を保有するイスラエルが、今回の事態を黙ってみているはずもなく、「戦争が仕掛けられた」との発言に恥じない報復攻撃を行ったようだ。

パレスチナ ハマスの攻撃にイスラエル報復 計400人以上死亡

2023年10月8日 16時19分

中東のイスラエルで7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがロケット弾を発射し武装勢力を侵入させるなど大規模な攻撃を行ったのに対し、イスラエルは「戦争状態にある」として空爆などの報復作戦を進めています。双方であわせて400人以上が死亡したとされ、暴力の応酬で事態がさらに悪化することが懸念されます。

NHKニュースより

イスラエル首相のネタニヤフ氏は、「われわれはハマスが活動する場所、隠れている場所をがれきに変える。ガザの人々にただちに去るよう呼びかける」と、ガザ地区をすりつぶす事を宣言している。

実際に、ハマスの拠点と思われる場所を空爆して回っているようなので、短期的にはイスラエルの優勢は揺るがない。

ガザ地区のビルが崩れ落ちる様子が報じられているが、こうした一般人を巻き込むと見られる過激な報復措置をいつまで続けるのか、ということが今後の焦点になるだろう。国連の安保理が招集されたと聞くから、第三国が水を差すことは確実だ。

ただ、国連の仲裁でこの問題の出口を模索するのは、歴史的な背景を考えるとシコリを残すような気がするんだ。結局、彼らの問題は彼らが解決するしか無いのだ。

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サウジアラビアとの国交正常化

ネタニヤフ氏のスタンドプレー?

さて、イスラエルはこうした情勢なんだけれども、政情は不安定らしい。その理由は、首相のネタニヤフ氏の独裁が進んでいるからだ。

イスラエル、極右政権の「司法改革」に大規模デモ 独裁国家と批判

2023/1/19 04:30(最終更新 1/23 18:12) 

イスラエルで昨年12月末に発足した右派のネタニヤフ政権が打ち出した「司法改革」を巡り、市民による大規模な抗議活動が起きている。政権側は「国民に選ばれていない司法が力を持ちすぎている」として、最高裁による法律審査の権限を制限する案を発表した。野党や司法界は「政権が絶対的な力を持ち、独裁国家になる」と批判している。

毎日新聞より

ネタニヤフ氏は、第1次ネタニヤフ政権(1996年6月18日 ~ 1999年7月6日)が比較的短命に終わった後、第2次~第5次ネタニヤフ政権(2009年3月31日 ~ 2021年6月13日)、そして、第6次ネタニヤフ政権(2022年12月29日 ~)とまあ、長らく政権トップの座に君臨している。

そして、最近評判が悪いのが司法制度改革だ。

イスラエルには「憲法」がなく、代わりとなる基本法が国の司法制度の根幹を築いている。議会の上院もなく、連邦制もなく、最高裁を除いては政府の権力をチェックするものがないという現状でネタニヤフ政権が進めているのが、「合理性」を基準に最高裁が政府の決定を無効化できるという既存の権限をなくす内容を含んだ司法改革法である。要は、今までは最高裁が政治のストッパーとして機能していたんだけど、この司法制度改革によってその制限から解き放たれるということになる。

評判が悪い理由は、ネタニヤフ氏が収賄、詐欺、背任の容疑による汚職裁判を受ける立場にあるからだ。

サウジアラビアとの接近

それともう1つ。

イスラエル、サウジとの関係正常化は近い=ネタニヤフ首相

2023年9月23日午前 3:11 GMT+9

イスラエルのネタニヤフ首相は22日にニューヨークでの国連総会で、サウジアラビアとの関係正常化が近づいていることを確信していると表明した。

ロイターより

国連演説でサウジアラビアとの国交正常化について自信を示しているニュースなのだが、どうもこのサウジアラビアとの関係改善の背景にあるのが核保有なのではないかという話が出ている。

サウジアラビアは以前からイランが核保有するのであれば、サウジアラビアもそうすると、そう発言してきた。実際にその実力を持っている。これに関与する気なのでは?というのが今回のイスラエルの動きということのようなのだ。

また、この演説の時に、こんな発言も。

一方、ネタニヤフ氏はパレスチナ人に拒否権を与えるべきでないと主張した。サウジや米国は、パレスチナ人を関係正常化のプロセスに参加させるよう求めている。

~~略~~

ネタニヤフ氏は、パレスチナ人との何らかの融和を模索する意向を示しつつも「アラブ諸国との新たな和平条約を巡ってパレスチナ人に拒否権を与えてはならない」と主張した。

ロイターより

ネタニヤフ氏のスタンスはパレスチナ人にとっては不都合な話ではある。これが理由だと言うつもりはないが、ネタニヤフ氏にとってパレスチナ人の事を軽視している姿勢は少なからず影響があった可能性はある。まあ、だからロケット砲を打ち込んでも良いという話にはならないんだけどさ。

追い詰められていたハマス

孤立が続くガザ地区

さて、気になるのはハマス側の事情だが……。気になる記事があったので紹介しておく。

見捨てられる恐怖に突き動かされたハマス イスラエルは甘く見ていた

2023年10月8日 19時30分

パレスチナとイスラエルの間で、激しい武力衝突が起きています。なぜいま、大規模な衝突が起きたのか。この衝突は中東和平の実現や、イスラエルとアラブ諸国との間で進みつつあった関係改善にどのような影響を及ぼすのか。防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。

~~略~~

 ――なぜこのタイミングで、こうしたことが起きたのでしょうか。

実は、パレスチナを巡って「何かが起きるかもしれない」とは思っていました。一つ目の理由は、ハマス側の事情です。この夏、ガザ地区でハマスに対する住民のデモが起きました。異例のことです。

世界銀行によると、ガザ地区の直近の失業率は46%で、15~29歳に限ると59%にのぼります。イスラエルによるガザ地区の封鎖は解かれる見通しがなく、可能性もほぼありません。自分たちの将来の展望が全く見えず、経済状況もよくない。こうした状況はこれまで、ハマスへの支持と、パレスチナ自治政府に対する批判につながってきましたが、一方で「ハマスを支持しても、先が見えない」という不満も高まりはじめています。ハマスとしても、この状況を「何とかしないといけない」と思っていたとみられます。また、イスラエル軍が今年7月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のジェニン難民キャンプを攻撃したことについても、ハマスは目をつぶれなかったのでしょう。

朝日新聞より

イスラエルとパレスチナの間の抗争が長年続いていることは既に説明した通りだが、ここへ来てハマスの支持が失われつつ有るという分析である。

ガザ地区でのハマスに対する住民のデモというのがこちらだと思う。

ガザ地区、電力不足でデモ 熱波襲来「天井なき監獄」

2023/8/22

今夏、世界各地で観測されている記録的な熱波が、イスラエルによる封鎖で「天井のない監獄」と呼ばれるパレスチナ自治区ガザ地区にも影響を及ぼしている。発電設備が足りず、平時でも電力不足の状況下で、エアコンなどの使用が急増。1日4時間しか電気を使えなくなった住民は7~8月上旬、2019年以来となる大規模な抗議デモを起こした。イスラエルに対してだけでなく、ガザを支配するイスラム組織ハマスへの不満も噴出し、今後のパレスチナ情勢に影響を与える可能性もある。

毎日新聞より

イスラエル軍によるガザ地区への物流封鎖は、数年前からロケット砲での攻撃などが頻繁に行われているために、イスラエル側が封鎖を強めていたという。ところが、この結果、住民たちは生殺与奪に関わるような事態に陥って、ハマスへの不満をぶちまけた。

いつもならこうした事態にアラブ諸国が待ったをかけるわけなんだけど、最近はイスラエルとの関係改善の方向に向かっていたので、パレスチナは相対的に見捨てられる方向に。

そしてハマスは増々先鋭化したということだね。だから、「このままハマスについて行っても未来がない」という住民たちの訴えは、ハマスにとってもかなり危機感を感じる出来事だったのだろう。

ジェニン難民キャンプ

一方で、ジェニン難民キャンプの方の話はこちら。

ジェニン難民キャンプ現地ルポ イスラエル軍が街を破壊、住民はさらなる攻撃におびえる

2023年7月6日

パレスチナ自治区のジェニン難民キャンプの雰囲気は、私が別の場所で感じたものと似ている。イスラエルと戦争をした後のガザ地区で感じたものだ。

しかし、ここはイスラエルが占領するヨルダン川西岸地区だ。力学は大きく違う。そして今、はるかに危険なものへと急速に悪化しているように思える。

イスラエル軍はこの難民キャンプに、ここ20年間で最大の攻撃を加えた。破壊の規模は甚大だ。

BBCより

これはイスラエル軍によるテロリスト殲滅キャンペーンの一貫だったようだ。

この地区には、パレスチナの武装組織「ジェニン大隊」と呼ばれる組織があった。ジェニン大隊には、ヨルダン川西岸を支配する「ファタハ」や、ガザ地区を支配する「ハマス」、武装組織「イスラム聖戦(PIJ)」などの戦闘員が所属している。

パレスチナ人の中には、国際的に承認されたパレスチナ指導部を拒絶し、武装抵抗を支持する人が増えている。一方イスラエルでは、史上最も過激な政権が続いている。その政権は、ユダヤ人の「排他的権利」を全土に拡大すると誓っている。

BBCより

結局、PLOではなくハマス支持という方向に流れが変わってきたことと、ネタニヤフ政権による対パレスチナ強行政策が続いたことで、今回の惨劇に繋がったということなのだろう。

後から調べてみれば、「ああ、あれが切っ掛けだったのね」と、なんとなく予想はできるものの、事態がどこまで進行していたかは、事件が発生してみないと分かりにくい。

こうして考えてみると、案外モサドの諜報能力も低下していたのかもしれない。

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追記

さて、このような事態を迎えてアラブ諸国がどう反応するか、なんだけど。

割れるアラブ諸国の反応 イスラエル、サウジの正常化に暗雲―ハマス攻撃

2023年10月08日20時31分

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日、イスラエルに大規模作戦を仕掛けたことについて、アラブ諸国内では、イスラエルとの距離感などを背景に、ハマスを全面的に支持する国から双方に自制を求める国まで、反応に違いが生じている。イスラエルとの関係改善に動くサウジアラビアは、バランスを取りつつ、パレスチナを擁護。専門家は今回の衝突で国交正常化に向け不透明感が増したと指摘する。

時事通信より

ハマスが過激な行動に出ても、未だパレスチナ側を擁護する勢力はいるようだ。それだけイスラエルが嫌われているということでも有るんだろうけれど。

今後、武闘派組織が動き始めれば、ますます中東は混乱していくんだろう。

バイデン氏「テロを決して正当化しない」とハマス非難…イスラエル支持は「揺るぎない」

2023/10/08 17:34

米国のバイデン大統領は7日、緊急演説を行い、「テロ攻撃を正当化することは決してない」とハマスを非難し、イスラエルを全面支持する意向を表明した。

讀賣新聞より

アメリカはパレスチナ国を認めていないので、「テロ」認定をして全面的にイスラエルを支援する姿勢を示している。

日本は……。

うーん、パレスチナの方にも気を使っているのか。

追記2

やっぱり過激派が動いているのか。

ヒズボラ、イスラエルを攻撃 大量の砲弾・誘導ミサイルで

2023年10月8日 16:21

イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派(Shiite)組織「ヒズボラ(Hezbollah)」は8日、係争地のイスラエル拠点に向けて「大量の砲弾と誘導ミサイル」を発射したと発表した。

AFPより

ヒズボラはレバノンの過激派組織で、イスラム教シーア派である。テロリスト同士のネットワーク互助会が動き出したってことかね。

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追記3

これは、ハマス側にとって不利なニュースだね。

イスラエル南部のタイとフィリピンからの労働者数人が人質に 「ハマス」が画像公開、タイ政府「この問題を深刻に受け止めている」

2023年10月8日(日) 07:04

パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」による大規模な攻撃で、イスラエルにいるタイ人やネパール人が人質にされるなどの被害が出ています。

イランメディアなどは7日、イスラエル南部に暮らすタイとフィリピンからの労働者数人がハマスの戦闘員によってパレスチナのガザに拉致されたと報じました。

TBSより

どうして外国人の労働者を人質にしちゃうかなぁ。国際社会を味方につけるという発想はハマスにはない模様。どういう理屈で外国人労働者を人質にとって、有利になると考えたのだろうか。イスラエル軍の行動を縛る結果になると考えたのだろうか。

また、複数のインドメディアは、イスラエルの大学で学ぶネパール人学生7人がハマスの攻撃で負傷し、ネパール人17人が監禁されていると伝えています。

TBSより

西側諸国は人権にうるさい国が多いし、こういった行動を取ればデメリットのほうが大きいと思うんだが、まあ、所詮テロ組織ということか。

イスラエルは宣戦布告したようだけど、この戦時体制への移行に対してお墨付きを与えちゃうのが、ハマスの無差別攻撃なんだよねぇ。

追記4

割と重要そうなニュースがあったんだけど、新しい記事に起こすほどではないと思ったので追記にしておく。

焦点:ハマス「奇襲攻撃」の狙い、イスラエルとサウジの正常化阻止か

2023年10月8日午後 2:20 GMT+9

イスラム組織ハマスが7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではない。この地域では、米国がイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しするなど新たな安全保障秩序の構築に向けた動きが活発化しており、ハマスにはパレスチナ国家樹立への希望を脅かしかねないこうした動きにくさびを打ち込む狙いがあったとみられる。ハマスを支援するイランも、警戒感を強めていた。

~~略~~

ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は、カタールを拠点とするテレビ局アルジャジーラで「(アラブの国が)イスラエルとの間で結ぶ正常化の合意により、この衝突が終わることはない」と述べた。

イランや同国が支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの事情に詳しい消息筋は、「これは、イスラエルにすり寄りつつあるサウジや、イスラエルを支援して正常化を後押ししている米国に対するメッセージだ。パレスチナ人が方程式から除外されている限り、地域全体に安全保障はない。今日の出来事はあらゆる予想を上回るもので、対立関係におけるターニングポイントになるだろう」と述べた。

ロイターより

ハマスの言い分を聞くことに意味があるのかは疑問だが、サウジアラビアやアメリカに対する警告と言う割には、民間人を無差別に攻撃していて、ちょっとチグハグな印象を受ける。

ワシントン近東政策研究所に所属する元米外交官のデニス・ロス氏は7日の攻撃について、「米国とサウジ、イスラエルの間で画期的な合意が成立するのを阻止する狙いがあった」と断言した。

ロイターより

確かに、イスラエルとサウジアラビアとの合意が成立すれば、パレスチナの過激派は困った立ち位置に立たされることにはなるだろう。だから今回の蛮行によってその勢いを止める効果があったという意味はわかる。

ハマスによるイスラエル攻撃、イランが準備段階から協力か 米紙報道

2023年10月9日 8時30分

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、イスラム組織ハマスがイスラエルにしかけた大規模な攻撃はイランの関係者が準備段階から協力し、最終的なゴーサインを出したと報じた。ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部の話として伝えた。

朝日新聞より

そして、イランは公式に今回の攻撃への関与、武器供与も否定しているが、どう考えても怪しい。イランの関与が確実だとして、ハマスに勝機があるとも思えないんだが。

コメント

  1. 河太郎 より:

    おはようございます。米国がサウジとイランの和平には必ず背後に動いていると想うんですね。んで、それを阻止したい側がハマスを焚き付けたか……。
    それが単純に反米勢力かというと解らない。だって、サウジとイランは共にBRICsに参加して協同歩調を取ってる。
    んで、サウジと米国の関係改善には、
    「核開発の援助」を、サウジは要求してる。それはいつか「サウジからイランに核技術が流れる可能性」をはらんでる。
    一方で核合意を棄てたイランに制裁を加え続けていて、そのもう一方で「遠回りな核技術輸出」になりかねない両国の「仲人」しようとしてる!!
    これ矛盾の塊でしょう?
    ある意味バイデン政権はもう、事象を把握できない程に混乱していて(おそらく82歳のバイデンの頭も)、そういう事をバラバラにやってしまうと。
    自らカオスを作ってるとしか思えない。

    • 木霊 より:

      こんばんは。
      僕にはアメリカの戦略の失敗と見る視点はありませんでしたが、なるほど、イスラエルとの関係の深いアメリカが関わっていないということはありえないわけで。一考の余地はありますね。
      ただ、アメリカは別の記事に書いたように随分と混乱していて、他国への干渉をしている余裕はあまりないと見ています。その消極策が悪影響を与えたという読みはできますが、世界の警察をやめたアメリカに、多くを求められない部分はある。逆に言えば、多くを求めたところで、ご指摘のようにトップがバイデン氏ですからまともに指揮を取れない可能性もありますね。

      一方で、誰が今回の絵を書いて、ハマスを動かしたのか。
      イランは否定しているようですが、さて、どうなんでしょうかね。イスラエルが混乱すれば、イランは得をする可能性はありますけど。イランにとってイスラエルとサウジアラビアとの接近も核開発の面などで困ることになる。なるほど、国際社会から犯人扱いされる可能性を差し引いてもメリットはありそうですね。

    • BOOK より:

      こんばんは!

      >米国がサウジとイランの和平には必ず背後に動いていると想うんですね。

      サウジとイランの和平の表向きの立役者は支那ですが、背後に米国とは!?
      支那と米国の密約?

      もう少し詳細プリーズ!

      知りたい理由:
       上記サウジと支那の急速接近があるので、日・英・伊 次期戦闘機共同開発協力(Global Combat Air Programme:GCAP)へのサウジの参加打診が、日本にとって困難事項と思ってるのですが

      サウジ・イラン仲裁をとりもった支那は実は米と握ってる、なら 変数かわるような気がするので。

      • 河太郎 より:

        失礼、ご返事は間違えて七面鳥様のコメへの返事欄に書いてしまいました。重ね重ね失礼をしました。

        • BOOK より:

          河太郎様 お返事ありがとうございます。

           要するに、大胆な密約があるわけではなく、利害の一致で米国噛んでいと。
           すなわち表向きのサウジ-支那接近は変わらず、日本タテマエGCAPへのサウジ参加は困る

           は、表向きは変わらず、米・シナと日本も裏で握る必要がある。

           安倍さんなら、、、岸田では無理だろなあ。

           (まあ個人的にはGCAP大幅遅延しても問題ない気は今はしてますが、(笑)

          ありがとうございました。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >だいたいイギリスが悪い
    まあ、これにつきますよね。
    あと、アフリカ方面のおフランスと。

    今回のロケット弾攻撃の一方に即し、真っ先に思ったのは「パレスチナがロシアに踊らされてイスラエルを攻撃、アメリカの手足を縛りに来た」でした。
    多分、それを立証する証拠を残すバカなエージェントはいないと思いますし、単なる陰謀論の邪推ですが……

    • 木霊 より:

      こんばんは。
      ロシア黒幕説ですか。
      イラク以上に動機があるのがロシアですから、適当に武器を横流しして焚き付けるくらいの情報工作をやっている可能性は考えてみるべきかもしれません。今のところ、「怪しい」だけですが。

      • 河太郎 より:

        憶測です。サウジはイスラエルとも正常化しようとしてますね。こっちは背後に米国があるのは異論ないと想うんです。で、サウジは核技術(いちおう軍事目的でない言うけれど)を求めてる。イランは制裁下。
        間を中国が取り持つ訳ですが、中東大戦争を求めないのは中国も米国も同じでせう?
        中国は日本同様にオイルの輸入と輸送路を荒らされると困る。
        米国はウクライナの着地が見えない。両国とも、どこかで誘爆して中東全土が火の海になると困のは同じ。すると、どこかで 両国が割り振りというか、背後で線引きをしていると考えます。むやみに対立を煽って中東大戦争になったら、双方とも困るですから。
        米国はオイル産出量が増したので、中東への興味が薄れてるって新聞は言うけれど、これ要はシェールガスの事ですよね。あれってウクライナ以前は、原油価格が落ちた時に、扱う企業がかなり撤退してます。いまこそ原油価格がバク上がりですが、
        開戦前までにコスト問題で、採掘をする企業が激減してたはず。その状況で中東への興味を失いますかね?
        ハマスの話はサウジがイランともイスラエルとも回復しようとしてる事と、頭ごなしに米国と中国が、対立関係をイジろうとしてる事への苛立ちと恫喝があるんでは?と想うからです。昔、廃棄タンカーに質の悪い原油を積んで、人民解放軍に売りつけるという商売に関わった事がありました。その時の関係者(引退してますけど)に聞いた話しに推測を当てただけで、これって確証がある話ではありません。混乱させる発言だったら謝ります。では。

        • 河太郎 より:

          七面鳥様へ。失礼しました。
          BOOK様へのご返事を、間違えてこちらに書いてしまいました。失礼いたしました。

    • BOOK より:

      わたしもソースレスですがロシア黒幕説に賛成

      こういう混乱状態の時は結局「ダレ得?」が黒幕な場合が多いような気がしますのでその方面から。

      まず現状、表の登場人物は全員「損側」ですよね。 特にハマス。

       ハマス今まではパレスチナ自治政府議会の過激派野党って立場をギリで保ててたわけですが、恐らく今後は欧米からはアルカイダやISと同じ扱い、パレスチナからもテロリスト扱いされる可能性もあり、一時的に領地を広げても殲滅される運命が待ってる。

       イスラエルや周辺アラブ諸国も結局迷惑被ってる。

      ロシアは欧米の注目や軍事力が中東に行くことで得こそすれ損はない。イラン経由で焚き付け?  

      • BOOK より:

        あ、「誰得」でひとつ大きな見逃し、それは「イスラエル」

         かの国の今までの行動パターンからすれば、このまま「ガザ地区全部」平らげても不思議じゃないと周りは考え、仲裁も入りにくい。千人を超える同国人を犠牲にした自作自演なんて考えたくもないけど、、、可能性としてはゼロではない。
         胸糞な予想を書いてしてしまいました。不快に感じられた方にはお詫び申し上げます。

        • 七面鳥 より:

          横合いから失礼、と言いますか当方から延びてますので。

          当方も、今回の動乱はガザ地域を更地にするまで収まらないと見てます。

          その事の是非は、もはや問えません。イスラエルも、相応の血を流していますから。さすがに自作自演とまでは思いませんが……白人含む外国人の犠牲も大きすぎる、そこを読まなかったとは思いたくないので(逆に読んで、利用する非情な判断もアリですが……)

          一つ言えるのは、ハマスは、ガザに住む民間人の命など、これっぽっちも考えては居ないだろうという事。事を起こせばこうなるのは火を見るより明らかなのに。
          結局、武装集団というのは、お題目は立派でも、無辜の人民の役に立つことは何一つしない、害悪でしかない、そういう事でしょう。
          だから、シビリアンコントロールの効く正規軍はともかく、そうでない武装勢力は、断固としてこれを七面鳥は唾棄するものであります(『党の軍隊』八路軍を含む)

          • 河太郎 より:

            ハマスの目的意識にガザ地区の人たちなど眼中になかろうと仰るのには両手で賛成です。
            何某かの求心力が衰えて、大国が頭ごなしに勢力関係を入れ替えようとしている。そこで自分たちの基盤が脅かされると感じて暴挙に出た。それはどこが黒幕だろうと、
            変わらない話しと思います。要はハマスは自分らの権威?が低下して、権力基盤が失われるのが怖いから野蛮な事をするのてしょう。

  3. 砂漠の男 より:

    中東は魑魅魍魎だね。相変わらず余所は国益のために中東の混乱を利用している。
    いま一番怪しいのはイランではないかな? 最近妙に大人しいからね。
    そろそろイランのウラン濃縮が兵器化レベル(90%)に達するのではないかな? 
    今春には、IAEAがあと1,2年という見通しを発表していた。
    https://www.bbc.com/news/world-middle-east-64810145
    ところが、先月の段階で米国はすぐにも出来るとの分析をしていたようだ。
    https://www.msn.com/en-us/news/world/iran-can-produce-fissile-material-for-nuclear-bomb-within-2-weeks-us/ar-AA1hvQw0
    イランがヒズボラを使ってハマスをけしかけ、攪乱戦術で注意を反らそうとしているのかも。米国の国務長官はハマスが複数の米国人も拉致したと発表しているので、まだ第2幕がありそう。この紛争が長期化すれば、イランにとってはいろいろ好都合だろうね。

    • 河太郎 より:

      ああ、たしかに。
      そろそろ起爆可能、実用可能なレベルに濃縮されるタイミングですね。
      するとやはり、そちらの線か……。
      何にせよハマスに大義名分もクソもない暴挙なのは間違いないですね。