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支那のシャドーバンキング問題がクローズアップされる

中華人民共和国ニュース
この記事は約11分で読めます。

コメント頂いたし、少し触れておきたいニュースである。おそらくは、コレから幾つものシャドーバンキングがこんな感じになる(注:シャドーバンクという表現とシャドーバンキングという表現があるが、当サイトではシャドーバンキングに統一する)。

中国シャドーバンク大手、中植が破産申請-不動産危機で急転落

2024年1月5日 19:29 JST 更新日時 2024年1月6日 4:58 JST

中国のシャドーバンキング(影の銀行)大手、中植企業集団が破産申請を行った。ピーク時の運用資産が1400億ドル(現在の為替レートで約20兆2600億円)を超える巨大企業だったが、深刻化する不動産危機にのまれ、急激に転落し破綻した。

Bloombergより

「支那、シャドーバンク、パンク!」簡単に言えば、そんなニュースだ。

メッセージ性が高い

高利貸しなどが含まれる

影の銀行(シャドーバンキング)というとちょっと格好いい気もするが、要は高利の金融業である。

通常の銀行は銀行法のような法律に縛られ、その範囲内での業務を行う。つまり、預金者からお金を預かり、それを企業などに貸し出して利子を取ることで利益を得ることと、その利益の一部を預金者に還元するのが銀行の機能である。そういう意味では、日本の銀行は銀行の体をなしていないわけだが……、そこはさておこう。

一般の銀行に対して、シャドーバンキングは銀行法のような法律の規制の外にある貸金業を営む企業のことを指す。日本で言うと消費者金融やノンバンク、或いは証券取引業者などまで含む広い概念ということになる。彼らは「法律の外」にあるとはいえ、違法な存在ではない。銀行規制に縛られない代わりに、自由な金融取引が可能であり、預金者保護というセーフティが整備されていない存在である。

こうした組織は世界各国にあり、意外なことに最大のシャドーバンキングを抱えるのは支那ではなくアメリカであると言われる。尤も、支那の数字は余りあてにならないので、参考程度の話ではあるが、2018年の世界のシャドーバンキングの国別割合のデータによれば、アメリカは全体の26%で、支那が10%であることを鑑みれば、2倍以上の規模であるとされている。

ちなみにイギリスは8%なので、支那と同程度の規模であったという事になる。

尤も支那のデータが正しいのかは不明なので、この規模感が正しいのかに関しては何とも言えない。だが、支那のシャドーバンキングが特に注目される理由は別にある。

さて、シャドーバンキングについて最近特に注目されているのが中国です。

金融システムの規制の外にあるという意味で、意外なところでは「質屋」もシャドーバンキングの一種とされていますが、実は中国国内では質屋の存在感が非常に大きいことが特徴です。

日本に住む私たちは、企業が質屋から事業の資金を調達するなど考えられませんが、実は中国では中小企業が質屋から運転資金を調達しているケースが珍しくありません。当然融資額も多く、不動産を担保にするケースも多くあります。中国では質屋がシャドーバンキングの一角を占める重要な存在となっているのです。

また、中国語で資産運用を「理財」といいますが、高利回りで取引されている資産運用商品は「理財商品」と呼ばれます。高利回りのため「理財商品」には多額の資金が集まりやすく人気が高いのですが、これがシャドーバンキングの資金源になっています。

中国ではこうしたシャドーバンキングの規模が急ピッチで膨張しており、例えば「理財商品」には半年程度の短期で出資者にお金を返さなければならないものが多いことから、融資を受けた業者が業績悪化などで利息を払えなければ、たちまち崩壊してしまう危険性をはらんでいるのです。

キャタリスより

記事にある「理財商品」というのが、不動産開発と深く関係していることが問題なんだよね。

去年8月にも

なお、支那のシャドーバンキング問題は今に始まった話ではない。数年前から理財商品についての問題は指摘されていたし、去年にもこんなニュースがあった。

深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題

2023/08/18

中国の不動産不況が、金融セクターに波及し始めている。現在、その中心にあるのが、銀行ではない金融機関・商品、「シャドーバンキング(影の銀行)」である。その中でも、現在特に注目を集めているのが信託業界だ。中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団の傘下にある、信託会社・中融が組成した高利回りの信託商品でデフォルト(債務不履行)が生じたと、顧客3社が11日に明らかにした。中融は中国で9番目に大きな信託会社である。

その後、中融が明らかにしたところでは、同社は8月8日に信託商品の支払いができなかっただけでなく、7月下旬から少なくとも他に10件の支払い遅延が生じている。少なくとも30商品の支払いが滞っているという。

~~略~~

信託商品に富裕者や金融機関のお金が集まった背景には、庶民が保有する傾向が強い投資信託の一種である理財商品と同様に、「暗黙の保証」という問題がある。多くの信託会社は地方政府や国有企業が株主になっており、一部の融資は地域のインフラ計画を支えている。そのため、信託商品には政府による暗黙の保証が付いている、とみなされることが多い。

そのため、信託商品の投資家は、高い運用利回りを享受する一方、投資リスクを十分に把握していないことが考えられる。このことが、信託商品の価格を歪めている面があるだろう。また信託商品の価格が元本割れをし、またデフォルトを起こした際には、それが社会問題化しやすい背景にある。

NRIより

色々書いてあるんだけど、要は連鎖倒産が起きかねないことを懸念していて、おそらくは不動産開発業を巻き込む可能性が高いことが問題として指摘されていると思う。

この「連鎖倒産」の規模が確定できないところが、今回の問題の根の深さを示している。どこまでが腐っているのかが不明なのだ。腐った部分を削れば健全な部分を活かせる可能性はあるが、それが確定出来ないところが深刻さを示している。

シャドーバンキング破綻、中国は迅速処理目指す-リスク許容できず

2024年1月8日 21:35 JST

中国指導部はシャドーバンキング(影の銀行)大手の中植企業集団の経営が行き詰まった後、異例のスピードで処理手続きを進めており、中国経済が苦境に陥る中で、金融リスク抑制に当局がますます力を注ぐ状況を浮き彫りにする。

Bloombergより

流石に支那共産党もこの状況にかなり危機感を覚えているようで。そりゃそうだろうねぇ。

こちらの記事でも言及しているが、理財商品や不動産開発業関連に積極的に資金を投入「させた」のは、支那共産党で、「した」のは支那共産党員なのだ。

これで「債務不履行です」「後は知りません」などとやろうものなら、支那共産党のトップの首が飛ぶ。前日にこちらの記事を紹介したのだが……。

軍部の不祥事を暴く話は、憶測ではあるが支那国内向けに「引き締め」の意味で効果が大きい。今回は見せしめ的にやっている感じがする。まあ、ロケット軍も腐っていたというのはかなり問題なんだけどさ。

こうした迅速な対応からは、不動産危機が金融システムの機能を損なう事態を防ごうとする指導部が、リスクをほぼ許容しない様子がうかがえる。中植の債権者は金融機関でなく主に裕福な個人だが、同社の破綻は、既に脆弱な消費者や投資家のセンチメントをさらに圧迫する危険がある。

Bloombergより

債権者には支那共産党の党員やその支持者が多いので、積極的に支援をする姿勢を見せることと、「悪者を粛正」という構図を作り出すことが必要なのだ。

もちろん、逆説的に言えば、習近平体制を支える上で「不要な人」が切られているという構図であるとも言える訳なんだけど、これはタコが自分の足を食べて生き残る話に似たことでもある。

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資金不足

さて、メッセージ性の話を指摘したものの、メッセージを撃ち出したら問題解決するのかと言えば、残念ながらそうはいかない。

申請を受理した北京市第一中級人民法院は5日、中植は「明らかに」債務返済能力を欠いていると文書で指摘した。昨年11月の投資家向け書簡によれば、監査の結果、中植の債務は最大4600億元(現在の為替レートで約9兆3100億円)で、資産は2000億元だった。

Bloombergより

債務が4,600億元なのに、資産は2,000億元である。資産を取り崩しても返済することは不可能ですな。

中国当局は昨年11月、中植系の資金管理事業について刑事捜査に着手したと発表。中植はその数日前、バランスシート上で364億ドルの資金不足に陥っており、「深刻な支払い不能状態」にあると投資家に説明していた。1月5日の営業時間外に同社にコメントを求める電子メールを送ったが、返答はなかった。

Bloombergより

気になるのはこの部分で、「バランスシート上で364億ドルの資金不足に陥った」ということなんだけど、何故「ドル」のかと。

こうした企業への規制は緩く、競合する信託会社がここ数年リスクを縮小する中でも、中植とその関連会社、特に中融国際信託は経営難に陥った不動産開発会社への融資を拡大。中国恒大集団などの企業から資産を買い取っていた。

Bloombergより

記事がBloombergの記事だからドル換算なのかとも思ったが、もしかしたらドルベースの負債もあるのかもしれない。単純に人民元だけならば、資金注入して助けるということも出来るんだろうけど、そういう段階ではもはやない。

そういえば、犯罪可能性についても調査されていたっけ。

北京市当局、債務超過の資産運用会社を刑事捜査

2023年11月27日午前 10:17

中国北京市警察は同国の資産運用会社、中植企業集団による犯罪の疑いを捜査している。同市の公安局がソーシャルメディアの25日付投稿で公表した。

同社は投資家に宛てた22日付の書簡で、最大640億ドルの債務超過に陥っていると明らかにした。

ロイターより

これは去年11月の話だが、逮捕者が出たという話は今のところ聞かない。いや、逮捕されたのかな?

中国当局、中植企業関係者逮捕か 投資商品がデフォルト

2023年11月25日 23:37

中国北京市の公安当局は25日、同国の民営複合企業、中植企業集団の資産運用会社で違法行為があった疑いで、複数の関係者に対し拘束や逮捕を意味する「刑事強制措置」を執ったと発表した。

日本経済新聞より

どうやらグループの主要役員が槍玉にあがって逮捕されている模様。具体的な話は出ていないらしいが、恒大集団や碧桂園の経営危機にも関連した話が中植企業集団絡みのニュースなので、「犯人捜し」の一環である可能性もある。

詐欺に遭ったので、恒大集団や碧桂園を救うとか、そんな展開も今後あるかも知れない。

単純に中植企業集団がデフォルトしたという話に纏めて良いかどうかは、なかなか言い切れないようだ。

追記1

そういえば、ちょっと前にNHKがこんな特集をやっていた。

“経済失速”が叫ばれる中国 相次ぐデータ公表停止の謎

2023年11月17日 18時36分

経済の動向をみる上で欠かせない統計データ。中国では、過去最悪となっていた若者の失業率が7月分から公表停止になるなど、不都合ともいえるデータの更新が止まっている。

~~略~~

失業率の公表停止をはじめ、最も知りたい情報が簡単には入手できないという現実に直面した一方で、各地の統計年鑑や書籍を活用してデータを集積し、分析していけば、中国の各都市の現状とその未来像に迫ることができる可能性も感じた。

NHKニュースより

データ捏造の噂は前々から指摘されていたが、捏造だけではどうしようもないレベルなんだろうね。若年失業率が5割程度に迫っていたという報道もあって、データ蓄積そのものが問題となる事態なのだろう。

中国の若年失業率、46.5%に達した可能性 研究者が指摘

2023年7月20日午後 7:02 

中国で若者の失業率が3月に50%近くに達した可能性が研究者によって指摘され、公式統計を巡る議論が再燃、労働市場の低迷が改めて注目されている。

ロイターより

この研究者の指摘が正しいのかは分からないが、悪化しているのは確かだろう。そして、公式統計が信用出来ないというのも事実っぽい。

中国労働市場がデフレの元凶、初任給も引き下げ-公式統計より悪化か

2023年11月24日 13:41

中国の労働市場低迷が景況感の足を引っ張っている。

インターネット上の求人情報や公式の経済・家計調査に対する独自分析に基づくと、中国の労働市場は7-9月(第3四半期)に悪化し、10月と11月も軟調な動きが続いた。消費者心理は依然として冷え込んでおり、企業は新入社員に低めの賃金を提示している。

中国公式の都市部失業率は年初の5.5%から低下したものの、10月は前月から横ばいの5%だった。

Bloombergより

経済失速の犯人捜しは続く。

追記2

うん、うん。他人のせいにするのは楽だよね。

台湾に武器売却の米企業制裁 中国、総統選前にくぎ

2024年01月07日19時16分

中国外務省は7日、台湾への武器売却に関与したなどとして、米国の防衛関係企業5社に制裁を科すと発表した。13日の台湾総統選を前に、米側にくぎを刺す狙いとみられる。

時事通信より

支那が何故こんなことに手を出したのかは良く分からないが、彼らのロジックでは正義が行われたことになるのだろう。

制裁対象は、戦闘車両などを手掛けるBAEシステムズ・ランド・アンド・アーマメンツや無人機製造のエアロバイロンメントなど。

時事通信より

良く分からないが、戦闘機関連や潜水艦関連企業は良いのか?

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >単純に中植企業集団がデフォルトしたという話に纏めて良いかどうか

    今頃、普段は鉛筆舐め舐めシナリオ書いている奴が、上からも下からも矢のような催促で花びら大回転してるんじゃないでしょうか?
    どこの誰を吊せば、政治的にも経済的にもダメージ最小で、世論も納得するか、その落とし所探しで。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      記事を書いていて思ったのですが、陰謀論を盛り込みたい放題ですよ!
      記事を書くときにおかしな表現にならないように気をつけなければ……。

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