スポンサーリンク

韓国が頭を悩ませるF-35の整備問題

韓国空軍
この記事は約9分で読めます。

何か唐突に記事になった感はあるけれど、記事の内容自体は取り立てて新しいモノでもないし、引用元のグローバルニュースアジアって、個人ブログの域を出ないレベルの記事が多い印象だ。

相手は三菱か~言い出せないF-35の整備問題ー韓国

2021年03月04日 06時00分

2021年3月、何かと三菱に対して、根拠のない気炎を上げる韓国。韓国軍の戦闘機F35の重整備について困っている様で、本音では頭を抱えて涙目らしい。

@niftyニュースより

引用しているのはニフティニュースなのだが、ニフティニュースも信頼性が低いニュースを多く採用する印象だから要注意だよね。

に、日本には頼らないニダ!

F-35戦闘機の整備は難しい

このブログではかなり言及しているので簡単に纏める感じで紹介しておくが、F-35戦闘機はアメリカのロッキード・マーティン社が中心となって開発した戦闘機で、開発パートナーとなったのは、アメリカ以外でも8カ国が参加している。その他にも保全協力パートナーなる2カ国がエントリーしている。

  • 主開発国:アメリカ
  • レベル1:イギリス
  • レベル2:オランダ、イタリア
  • レベル3:カナダ、トルコ、オーストラリア、ノルウェー、デンマーク
  • 保全協力パートナー:イスラエル、シンガポール

こうした開発に至った経緯として、F-22戦闘機開発で巨額の費用がかかり結果的に配備数を減らさざるを得なかったという失敗があり、F-35戦闘機のコンセプト的に同様にコストがかかることが予想されたことから、巨額の開発費を調達するために出資者を募った結果、この様な形になった。この事が後に足を引っ張ることになるのだけれど、そこはさておこう。

F-35戦闘機の開発は順調とは言えなかったが、高度な機能を持つ戦闘機として一応の完成を見た。しかし、複雑な整備が必要となることからFACOという施設が複数の国に置かれることとなった。FACO(最終組立・検査:Final Assembly & Check Out)は、以下の4拠点が存在する。

  • アメリカ:テキサス州フォートワークス工場
  • イタリア:ピエモンテ州ノヴァーラ県カーメリ工場(MRO&U拠点でもある)
  • 日本:愛知県小牧市三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場(MRO&U拠点でもある)
  • オーストラリア:ニューサウスウェールズ州ニューカッスル工場(ウイリアムズタウン空軍基地近く)

他にもイギリス、オランダ、ノルウェーにもMRO&U拠点が設置される予定である。

こういったF-35の整備の問題は、F-35が自己診断システムを採用しているために、各部品に専用のチップを組み込んである辺りにも起因していて、変なニセモノを組み込めないシステムになっている。それ故、専用の拠点、FACO拠点、MRO&U拠点を必要とするのである。

まあ、この整備に用いられるシステムが少々問題を抱えているのだけれど、ALISに見切りをつけてODINに置き換えることで解決を見る「らしい」のだけれども、この辺りを言及すると脱線してしまうので止めておこう。

何処で整備すれば良いのっ!

とまあ、こんな事情は買う前に分かっていた話で、導入前から様々な憶測は流れていた。報道でもあったようだね。

韓国防衛事業庁 F35導入後の日本での整備計画なし

2014.07.11 14:27

韓国防衛事業庁は11日、韓国はステルス戦闘機F35の導入後、補給整備を日本で行う計画はないと明らかにした。

同庁の白潤亨(ペク・ユンヒョン)報道官は同日、国防部の定例記者会見で日本がF35の国際的な整備拠点の誘致を推進中であることに関連し、「韓国がF35の補給整備が必要な際にどこでするかは政府の決定事項だ」と述べた。その上で、今のところF35についての補給整備の概念が確定していないとしながら、「約10年運営した後に補給整備が必要か検討することになるだろう」と説明した。

聯合ニュースより

この報道は、2014年3月にF35A戦闘機を次期戦闘機とすると決定した後に、「何処で整備するんだ!」と国内議論が盛り上がったために、敢えて韓国防衛事業庁がこういう説明をせざるを得なかったという事情があった。

とはいえ、この韓国政府側の説明はある程度は「無理も無い」話だとは思う。実は、日本のFACOが可動子始めたのは2015年12月のことで、オーストラリアは2021年2月のことである。韓国の発表があった段階で実動していたのはアメリカとイタリアのみ。「何処で整備を」と明らかにできる様な状況では無かったことは事実なのだ。

寧ろ、最初に共同開発国としてエントリーしていなかった日本にFACOが設置されるのであれば、韓国にも誘致可能だという根拠の無い計算が働いていたとしても不思議はない。

ところがアメリカは韓国にFACOを置くメリットを見出せず、首を縦には振らなかった。そりゃそうだろう。第7艦隊が駐留するのも日本だし、在韓米軍の規模は在日米軍の規模とは比べものにならない。確かに、在韓米軍が大韓航空などに一部の航空機のメンテナンスをお願いしていることはあるんだけど、F-35の整備となると色々と問題は出るんだよね。

騒ぎになったのは日本の報道

さて、こうした状況はずーっと宙に浮いたままになっていたのだけれど、韓国には順調にF-35Aが納入される。

韓国空軍、「F-35A」再来年までに40機導入

Write: 2019-10-11 13:24:48/Update: 2019-10-11 13:35:38

韓国空軍は10日、忠清南道・鶏竜台(キェリョンデ)で開かれた国会国防委員会の国政監査で、再来年の2021年までにアメリカ製の最新鋭ステルス戦闘機「F-35A」を40機導入することを明らかにしました。

空軍によりますと、 F-35Aは、ことし3月に2機が初めて韓国に到着した後、現在まであわせて8機が引き渡され、年末までにさらに5機が到着します。このあと2020年中には13機、2021年には14機が引き渡されるということです。

KBS WORLDより

2019年3月を皮切りに、ちょっと遅れ気味ではあるけれども今年中には40機全機が納入される予定になってはいる。

当然、整備の話は出てくるよね。

三菱重工「F35」の整備可能に 防衛省発表

2020年7月1日 21:30

防衛省は1日、最新鋭のステルス戦闘機「F35」の機体を整備する拠点の運用を始めると発表した。三菱重工の小牧南工場(愛知県豊山町)で機体整備の態勢が整った。2日以降、航空自衛隊三沢基地(青森県三沢市)所属の「F35A」を搬入し、整備を始める。

日本経済新聞より

この記事は日本経済新聞の記事だが、NHKでも報じられた。リンク切れだけどね。……何というか、NHKは公共放送機関なのだから、ネット報じた記事もしっかり残しておけよ。一部、地方記事などを含めて消えるのが早い記事があるんだよね。これも残ってはいないんだけど。

さておき、NHKの記事では、在日米軍、在韓米軍、そして韓国軍に配備されるF35の整備も受け入れる「予定」だと報じちゃったんだよね。当然、韓国側はこれに過敏に反応した。

[単独]「F-35の整備、韓国軍が判断…日本の三菱からオファーない」

入力2020.07.02 14:59

空軍が昨年から導入されているF-35Aステルス戦闘機が日本戦犯企業三菱重工業に渡って整備を受ける日本のメディアの報道を正面から否定しました。

空軍関係者は「韓国軍戦力の整備は完全に私たちの軍が判断して決定する事案であるうえ、日本やアメリカ側の正式なオファーもなかった」と、このような明らかにした。

先にNHKは防衛省を引用して、「今月からアジア太平洋地域のF-35の整備拠点で運用されている三菱愛知県の工場で、韓国軍のF-35A整備も行われる」と伝えました。

OBSより

時期的にも、三菱重工を応募工訴訟で訴えていた最中だったために、韓国政府側は否定せざるを得なかったというのが実情なのだろう。でも、これはちょっと過剰反応だったんじゃ無いだろうか。

韓国がオーストラリアに整備を頼むためには、F-35Aを船に積んで輸送するか空中給油機を随伴させて自分で飛んで行くしかない。まあ、現実的では無いよね。アメリカに搬送するのはもっと現実的ではない。だって、行って帰ってくるまでの時間、使える戦闘機が減ってしまうわけで。40機しか買っていないのに、数機でも整備に出したら数ヶ月単位で帰ってこない。これではF-35Aを作戦に組み込むというのにも無理があるよね。

半年以上放置

というわけで、既に去年の7月には韓国側でも報道していた。

それ以前にもこんなニュースがあったのだが、とにかく日本での整備はNGなのである。

F35公式パートナー国を狙う日本…韓国に悪影響の可能性は

2019.07.31 10:50

日本が米国のF35ステルス戦闘機事業に全面的なパートナー(full partner)として参加したいという意向を表した。米国はひとまず日本の要請を拒否する方針だ。しかしトルコがパートナー国家から抜ける可能性が高いため、日本がその空席を埋める可能性があるという見方も出ている。現在、日本と関係が良くない韓国に悪影響を与えるのではという懸念も生じている。

中央日報より

このニュースは、日本でFACOが可動し、一部の部品まで生産するという状況になって、「胴体も作って」という話が出たが、流石に三菱が「採算が合わない」と断った辺りの話がベースになっている。

つまり、後発とはいえ、開発国にエントリーできれば、もっと製造に積極的に関わる事ができるけどどうかな?と、日本側がオファーしたのである。

29日(現地時間)の米オンライン軍事紙「ディフェンス・ニュース」によると、防衛省の鈴木敦夫整備計画局長が6月18日付でエレン・ロード米国防次官 (取得・維持担当)に書簡を送り、日本がF35購買国からF35コンソーシアムのパートナーになることが可能かどうか公式的に問い合わせた。また、日本防衛省は米国防総省に「パートナー国の責任と権利、費用負担、承認手続き、所要期間などの条件の詳細情報を提供してほしい」と要請した。

中央日報より

日本としてはもうF35Aを日本で組み立てるだけじゃ無くて作りたいというのが本音だったのだが、流石にそれは断られた。水面下では色々あって、例えばカナダなどは共同開発国としてエントリーしていたにもかかわらず、カナダ空軍にはF-35Aを採用しなかった(予定していたがキャンセルした)。記事にも言及があるが、トルコ辺りもちょっと問題を抱えていて、ここにはアメリカがF-35を売らないという決定をしてしまった。

こうした国の代わりに日本が入るという話は、ちょいちょい出ていたので、このオファーそのものはあまりおかしなことではない。ただ、アメリカとしても特例でFACOは作ったけど、パートナーシップは2002年に締め切ったから無理と、公式に回答している。

本音はともかく、建前はそうだよね。

そんなこんなで、2020年7月にもこの問題は再燃したのだけれどそれでも放置され、F-35Aの訓練飛行は韓国空軍でも始まっているので、流石にちょっと何とかして欲しいという要望が軍からもあがっているのだろうと予想される。

そうした背景で出てきたのが冒頭の記事なのかなと。

なお、目新しい情報は1つも無かったので、どういう経緯で唐突にこの記事が出てきたのかはちょっと気になる。

コメント