スポンサーリンク

【支那経済カウントダウン】碧桂園が建設中のマレーシアの理想郷

中華人民共和国ニュース
この記事は約10分で読めます。

支那経済の続報で、特に大きな出来事ではないんだけど。

ゴーストタウンか理想郷か-碧桂園の1000億ドル事業、先行き見えず

2023年8月30日 9:26 JST

マレーシア南部の沖合にある「フォレストシティー」に行くには、郊外を縫うような道路を走り、ヤシの木が生い茂る農園を通り抜ける。

Bloombergより

これまでとの違いは、碧桂園がマレーシアで建設中の案件があるよという話だ。

ゴーストタウンの海外輸出

土地バブルは弾けた

このブログでは支那の土地バブルが弾けてしまって収拾がつかなくなってしまっているというような話を書いている。

関係記事はこちら。

既に触れているように、恒大集団も碧桂園もヤバイという話なんだけど、これが企業の経営手腕が悪くて経営が傾いたって話ではなくって、支那での不動産開発に関するルール変更で、経営が成り立たなくなったという話なんだ。

そもそも、支那では不動産の売買は出来ず、不動産開発企業は土地の利用権を地方政府などから購入し、マンションなどを建てて部屋の使用権を販売するスタイルとなっている。

中国で不動産を購入する外国人が知っておくべき規制の話

2018-07-12

この10年ほどで中国の国内経済は大幅に様変わりし、不動産市場も中国の経済発展に伴い、これからその需要円熟期に入っていく傾向にあります。

中国国内の大都市部の中高級の不動産価格はすでに 天井が見えてきたような節があり、これから中国国内の不動産投資を検討する人は、少し地方に目を向けることで早期の投資チャンスを得られる時期に突入したと言っていいでしょう。

そんな中、中国で外国人が不動産を購入する際に、かつてはあれこれと規制や制約が厳しかったところがありましたが、近年は外国人の不動産購入への規制が大幅に緩和され、以前に比べると外国人でも非常に物件を購入しやすい環境になってきたのです。

SEKAI PROPERTY より

支那の不動産販売は、北京オリンピック(2008年)の時にピークを迎えたと言われていたのだけれど、不動産価格が頭打ちになったので、2018年頃には外国人にも門戸を開いた。

img
img

そのお陰でガンガン不動産価格は上がった。これが人民の「投資対象」となったという意味で、言ってみれば貯金みたいなモノだったわけだ。

投資が過熱しすぎた

ところが実態経済と乖離しすぎて、これにブレーキをかけたいって事になった。随分とザックリした説明なんだけど、これくらいの方が理解がしやすいと思う。

中国の習主席、不動産市場の投機抑制をあらためて強調-党会合で

2016年12月22日 17:01 JST

中国の習近平国家主席(総書記)は21日、国民の住宅需要をより良く満たすために中国は不動産バブルをしぼませ賃貸住宅市場を規制すべきだと述べた。先週の中央経済工作会議で概略を示した方針をあらためて強調した。

Bloombergより

こうした不動産バブルについて習近平氏なりの危機感があったと思う。だが、彼が一番嫌がったのは恐らくは自分がコントロール出来ない状況になることなんだろう。

中央経済工作会議は16日の閉幕後、慎重かつ中立的な金融政策を来年採用する方針を示すとともに、資産バブル回避のため金融リスクを防ぎ、コントロールすることが優先課題になるとの声明を発表。「家は住むためのもので、投機対象ではない」との文言を盛り込んだ。

Bloombergより

結果、不動産価格の高騰は、支那経済にとってリスクだという判断になったんだけれども、じゃあ、今の現状が「予定通り」かどいうと、これが怪しい。

確かに、不動産が投機に用いられることは宜しくない。だからそれを抑制する政策を行った。ただ、不用意に膨らました不動産開発業界の影響が多岐にわたる事を認識しながらの政策だったかどうか。

経済成長のエンジンとして人民による投資を煽ったのは、大きく経済成長を遂げる為に必要だったかも知れない。けれども、それが制御できると思っていたらとっくに制御不能に陥っていた。ブレーキをかけたけれども、止まれるスピードじゃなかったって事なんだな。

そんなわけで、支那の不動産開発業界は風前の灯火で、それに付随する産業にも大きな打撃が。更に、莫大な債権を引き受けている銀行にも影響が出るし、国内製造に関しても外貨による投資が行われなくなってしまったことで勢いがなくなってしまった。特に半導体産業は、外国から新たな技術や設備技術が入ってくる目処が立たなくなってしまったことで苦境に立たされている。

支那の経済的な立て直しが可能であったとしても、相当時間が掛かる話だろう。

マレーシアでも土地開発

バブルの海外輸出

んで、冒頭の件はマレーシアでの話。

中国の不動産ブームに賭けた大胆なギャンブルの産物がこの奇妙な都市で、中国の不動産開発大手、碧桂園が手がけている。ここはまだ1000億ドル(約14兆6000億円)が投じられるとみられる開発プロジェクトの第1弾に過ぎない。ただ、住宅市況が大きく悪化する中で、中国の不動産市場は危機的な状況に陥っている。

Bloombergより

手堅い商売をするとされていた碧桂園なんだけど、外国でこれほど大規模な投資をやって開発しちゃっているとかなかなかギャンブラーだね。

そもそも、発想がバブリーなんだって。

碧桂園の構想は、マレーシアとシンガポールの間の狭い海峡に4つの人工島を建設し、国際的で裕福な市民が集まる環境に優しい都市を開発するというものだ。建設には巨額の費用と数十年の歳月がかかり、最終的には70万人の住民が住むことになるとしている。同社のこの計画が実現すれば、フォレストシティーは面積と人口の両面でニューヨーク市マンハッタンの約半分の規模になる。

フォレストシティーの住人は、セカンドハウスや投資先、あるいはその両方を求めているというのがコンセプトだ。この人工都市の魅力は1年中気候に恵まれていることや比較的安価な生活費だ。シンガポールに近いこともあり、アジアの他の大都市へはすぐに飛べる。

Bloombergより

巨額の費用を投じて、裕福な市民の集まる巨大都市を建設する。発展途上のマレーシアの国状にマッチすれば、案外当たりそうな感じはする。

ただ、コンセプトが「セカンドハウスや投資先、あるいはその両方を求めている」というのが宜しくない。既に都市計画の枠から外れている。

碧桂園は2014年前半に埋め立てを開始した。ほどなく同社は主に中国から見込み客を連れてきた。その多くが建設途中の高層住宅を購入。中国の不動産ブーム絶頂期には、完成前の物件を購入するのが一般的だった。2ベッドルームの物件は16万5000ドルほどで売られている。一般的なマレーシア人世帯の年間所得が1万6400ドル程度であることを考えるとかなり高いが、上海や北京に比べれば割安だ。

Bloombergより

ターゲットが、これから成長するマレーシアの国民(富裕層)というのであれば、或いはアリだったかもしれないけれど、明らかに支那人の投資ブームに乗っかった発想。支那経済にブレーキが掛かった現状で、果たしてこれが継続できるのかどうか。

マレーシア規制当局からストップがかかる

実際に、計画は結構杜撰だったようで、必要な手続きが為されていなかったということで、マレーシア規制当局からのストップがかかる。

碧桂園は、マレーシアの規制当局がプロジェクトが環境に与える影響を同社が適切に調査していないと指摘したため、わずか6カ月で人工島の建設を一時中断。その後、シンガポール政府はマレーシア当局に報告を受けていないと苦情を申し立て、フォレストシティーがシンガポールに及ぼし得る影響について懸念を表明した。

Bloombergより

それどころか、隣国のシンガポールからも物言いが付いた。

このフォレストシティーの地理的条件が、マレーシアとシンガポールの間の狭い海峡の一部を埋め立てて建設するという話だったから無理もない。

確かに、マレーシアに建設されているとは言え、シンガポールにほど近い環境である。何故こんな場所に……。

計画では、この年には支那から100万人の移住を進めるとしている。

こんな完成図も紹介されているが、全体の15%程度しか完成していないという話もあって、本当に完成するか危ぶまれている。

住める人がいない

マレーシア当局から横槍が入っている理由は、計画がデタラメだという理由よりも、フォレストシティーにマレーシア人が住むことが難しい状況にあるという理由の方が強いのだろう。

18年にはマレーシアのマハティール首相(当時)がフォレストシティーは「外国人のために建設された」ものであり、ほとんどのマレーシア国民には手が届かないと批判。現地の報道によると、マハティール氏は「不動産を購入することはできるが、ここに来て住むためのビザ(査証)は与えない」と当時発言。このため、碧桂園はマレーシア人向けの住宅を建設する方法について政府と協議を開始した。

Bloombergより

マレーシアとしても、安易にストップをかけるのが正しいのか悩んでいる感じらしいけれど、そもそも許可を出すべきではなかったのでは。

碧桂園の計画は、中国政府が海外不動産を購入しようとする自国民を締め付けたことからさらに難しくなった。すでにフォレストシティーの物件を買った一部の人々の間に、中国人顧客を見込んだこのプロジェクトが失敗に終わるのではないかという懸念が浮上した。

Bloombergより

支那人を頼みに建設されたこの土地、今になって購入者が居なくなり、プロジェクトは頓挫の危機に瀕している。支那人は資金的にも政府の締め付けという意味でも不動産購入が難しくなり、マレーシア人では高すぎて購入できないという状況だ。

成功の定義が違うのでは

そんな惨状ではあるが、碧桂園は「失敗した」とは考えていないらしい。

碧桂園の地域副社長であるチウ・リポン氏は、人工島の居住用物件2万6000戸のうち80%が売却され、地域に多くの雇用を生み「成功には多くの意味がある」と話す。

Bloombergより

碧桂園の地域副社長も、「8割が売れたのだ」「成功だ」と胸を張っている。だが、碧桂園にとっての成功は、都市の完成を意味しないと思う。売れた時点で成功であり、その後地域経済が回っていくのか否かは、余り気にしていないのだろう。だから、周囲に食品や生活用品を買うことに出来る店に乏しくても、街の出入りが不便であっても、そんなのは関係ないのだ。

そして残念なことに、碧桂園の資金繰りはかなり厳しいことになっているのは、お伝えした通りである。

そんなわけで、碧桂園の推進するこのプロジェクトが完遂でき、「理想郷」が稼働し出す可能性はかなり低くなってきている気がするが、それは些細なことなのかも知れないね。支那経済崩壊の暁には、マレーシアはもっと巨大な災禍に巻き込まれるのだから。

追記

関連記事である。

中国碧桂園の元建て債6本、償還3年延長案を債権者が承認=関係筋

2023年9月12日午後 12:13 GMT+93日前更新

中国不動産開発大手の碧桂園がオンショア債6本の返済を3年間延長することについて債権者から承認を得たと、事情に詳しい関係筋2人が明らかにした。

ロイターより

碧桂園の社債権者、法律事務所と協議 債務不履行に備え=関係筋

2023年09月13日(水)20時26分

複数の関係筋によると、中国の不動産開発大手、碧桂園のオフショア債を保有する債権者の一部は、同社が債務不履行に陥った場合の選択肢を検討するグループを結成するため、ロンドンの法律事務所アシャーストと協議を進めている。

協議に参加しているのは、ディストレスト債投資や事業再編を専門とするヘッジファンドなど。

Newsweekより

紹介した記事は2本。1本目はもうちょっと別の記事で、9本中8本の元建債の支払い延期が決まったという報道があったので、おそらくは現時点で9本の元建債の支払い延期を実現していると思われる。

ただ、財務状況の改善の見込みがないので、延期したところで状況が好転するとも思えない。

もう1つはドル建てのオフショア債がデフォルトを迎えた場合にどうするか?という協議を進めているというニュース。

次々と不味いニュースが出ているね。

碧桂園を格下げ デフォルト寸前に―ムーディーズ

2023年08月31日23時33分

米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは31日、経営危機に陥っている中国不動産開発最大手の碧桂園の信用格付けについて、「デフォルト(債務不履行)に近い」との評価の「Ca」に引き下げた。既に投機的とされる「Caa1」から、さらに3段階引き下げた。

時事通信より

まあ、アメリカの格付け会社は全く信用がおけないんだけど、とうとうムーディーズも評価の引き下げを行っているね。もはやデフォルトは避けられないのだろう。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    こんばんは。先ずは完成予想の絵に笑いました。階段状のテラスに樹木とかの緑地化した高層ですが、これって……本国の江南で人が住まなくなったマンションにそっくり。下手にベランダとか緑化し過ぎて藪蚊が大発生して、とても不快で住んでられないって奴です。だからって居住建物に農薬を撒くわけにも…(笑)
    地図を観ると湾内ですが、狭い所だと幅が1キロとかのシンガポール海峡に、人工島なんか作られたら海運の邪魔では?
    あの辺りGPSで分刻みの航路進行が求められる海域があり、場所によるけどパナマ運河やスエズ運河なみなんてすね。そりゃ文句出るでしょ。
    さらにマレーシアは華橋によるシンガポール独立された恨みがある。中国人の富裕層ばかりが住む人工島都市とか、シンガポールの二の舞いになりそうですね。
    良くも悪くも緩かった(その代わりに汚職ばりばりの)胡錦濤時代に比べて、習政権になってから、金と軍事力を背景にした、出先の国の事情を考えない外交が目立ちます。まぁ、それがシナ離れを招いておる気がします。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。
      なかなか素晴らしい完成予想ですよね。
      実物は全く違うわけですが、それでもあっちこっちに緑化政策を進めているようで、緑は多いみたい。
      そうすると、どこかで聞いた「藪蚊が大変」ってな話には繋がるかもしれませんね。

      地理的条件についても、なかなか厄介な場所です。
      まあ、基地を作られるよりはマシなんでしょうけれど。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >支那経済崩壊の暁には、マレーシアはもっと巨大な災禍に巻き込まれるのだから。

    ああ、怖い怖い(棒)

    今の経済規模の中国がどっ潰れた日には、間違いなく歴史の教科書に残りますね。
    そしてその影響は計り知れない。
    経済的にも、軍事的にも。

    普通に考えると「そんな事は起こりえない」「起こりえる事には対策を考えてある」はずですが、大体こういう事は「あり得ない」事が斜め上に起きると相場が決まってますから。

    我々も、枕元に批難用品セットして寝た方がいいかもしれませんね。

    • 木霊 木霊 より:

      マレーシアは良くも悪くも支那にべったりの状態で経済を回していますから。
      支那経済悪化でかなりのダメージを食らうんじゃないでしょうか。
      実際に、第二四半期は景気が減速している傾向が見られたようで、「今後改善」という予測も出てはいますが、実際どうなりますことやら。

  3. アバター 砂漠の男 より:

    支那経済が傾いていることは世界に周知されて、その余波がジワジワと波及していることが伝わり始めている。(ウチの取引先には冴えない顔が多くなった。さもありなん。)

    昨日更新されたロイター記事は、早くも日本の景況感悪化を伝えている。
    https://www.reuters.com/markets/asia/japan-corporate-mood-sours-fears-china-led-global-downtown-2023-09-12/
    内需が弱く、支那頼みの外需部分が腰折れになって、悲観論が出てきた。

    支那市場に安住してリスクヘッジを怠っていたところが多いのだろう。日本企業はなにより安定を好むけど、もう支那は世界経済の成長エンジンではない。

    • 木霊 木霊 より:

      そうですね、経済的にも随分市場に影響が出始めています。
      とはいえ、支那から別のところに切り替えるところが多く、寧ろ取引先としては「楽になった(意味深)」というところもチラホラ。
      日本経済全体で見るとさほど悪化していないので、対支那の部分が痛んでいる感じですね。

タイトルとURLをコピーしました