弱いなぁ。
中国 利下げを発表「LPR」1年もの金利0.1%↓ 景気回復鈍化で
2023年8月21日 13時02分
中国の中央銀行、中国人民銀行は事実上の政策金利を引き下げると発表しました。景気回復の勢いの鈍化が鮮明になる中、景気を下支えするねらいがあるとみられます。
NHKニュースより
僕自身は支那の一層の金利引き下げを予想はしていなかったけれど、それにしても0.1%の引き下げか。効果あるの?これ。
狙いはどっち?
政策金利引き下げを選択
先日書いた記事で、人民元安に苦しんでいる支那の状況を説明したのだが、今回の政策は内需拡大を狙ったものだろう。
人民元は多少反応したのか、という感じだけれども。
ドル・円は145円前半、ジャクソンホール待ち-中国懸念がドル下支え
2023年8月21日 7:41 JST 更新日時 2023年8月21日 15:29 JST
21日の東京外国為替市場のドル・円相場は1ドル=145円台前半を中心に推移。世界の中央銀行総裁らが集うジャクソンホール会合を24-26日に控え投資家の様子見姿勢が強く、小幅な値動きにとどまった。米国金利の時間外取引での上昇に加え、中国経済への懸念を背景とした人民元安はドルを下支えした。
~~略~~
一方、中国の利下げが市場予想より小幅なものにとどまり、人民元の失望売りを受けてドルが買われる場面もあった。中国人民銀行(中央銀行)は21日、1年物ローンプライムレート(LPR)を7月の3.55%から3.45%に引き下げた。市場では3.4%までの利下げが予想されていた。5年物の同レートも予想に反し据え置かれ、中国株は軟調に推移した。
Bloombergより
えーと、市場の方は支那の政策金利にあたるローンプライムレート(LPR)の利下げを織り込み済みだったらしいけど、予想外に利下げ幅が低かったので失望売りが成されたらしい。
まあ、株価も軟調に推移したというし、利下げによる影響は良い意味でも悪い意味でも無かったという風に理解した方が良さそうだ。それでも、人民元はちょっと安くなっているんだけどね。
大手国有銀行が流動性を吸収
で、更にこんなニュースが。
中国国有銀、オフショア人民元の流動性吸収 人民元安阻止か
2023年8月21日7:21 午後
3人の関係筋によると、中国の大手国有銀行が21日、オフショア人民元の流動性を積極的に吸収している。これを受け、人民元を売り持ちにするコストが上昇した。
国有銀行は中国人民銀行(中央銀行)の委託でオフショア外為市場で取引することが多いが、自己勘定や顧客の注文で取引を行う可能性もある。
関係筋は、オフショア人民元の流動性引き締めは元相場の安定にもつながると述べた。
ロイターより
利下げしたのに流動性の引き締めか。ああ、正確にはオフショア人民元の流動性引き締めだね。
このオフショア人民元は、香港、シンガポール、イギリスなど、支那本土外の居住者が取引する海外市場で取引されるものを指すとのことで。つまり、支那国内の方は流動性を引き示したわけじゃないんだ。
まあ、海外で売られれば人民元安の方向に向かうからね。しかし、積極的に吸収する(人民元買いオペレーション)からってコントロールできるのかね。国内(オンショア)の利下げして国外(オフショア)で買いオペに走る。アクセルとブレーキを両方踏む所行だ。外貨準備高がすり減るね!
こうした中、中国政府は、内需拡大に力を入れる方針を示していて、中国人民銀行は、利下げによって、企業向けの貸し出しや、不動産市場への資金供給を増やし、景気を下支えするねらいがあるとみられます。
NHKニュースより
相変わらず内需拡大を狙ってはいるみたいなんだけど、0.1%程度でそんなには動かないだろう。確かに利下げで人民元安に拍車をかけたくないという気持ちは分かるが、内需刺激効果も薄いと思うんだよね、これだと。
土地バブル潰しは狙い通りだった?
なお、不動産投資に関しては習近平氏としても放置できなかった。だから、敢行したという意見もある。
これはこれで説得力はあるんだけど、狙い通りだとすれば、経済が悪化したタイミングで潰すというのはどうなんだろう。
狙い通りというにはちょっと遅すぎるんじゃないか。
習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄…突き進む「ソ連化」の道
2023年2月16日(木)17時27分
中国共産党の第20回党大会(2022年10月開催)では、習近平(シー・チンピン)国家主席が今後5年間も政権を担うことが確認された。ただし、それが中国経済にとって何を意味するかは、3つの要素に左右される。国の制度、過去と現在の経済状況、そして指導者の政治的意図だ。
中国の最も基本的な制度は全体主義であり、経済を含む社会の全領域に共産党の独占的支配が及んでいる。全体主義型統制を支える党=国家の制度は、1949年にソビエト連邦から全面的に移植されたものだ。
~~略~~
土地と銀行の国家独占は金融・財政システムも不安定化させた。地方政府が土地を担保に国有銀行から巨額の借り入れを続けたこともあり、中国全体の対GDP比債務残高は19年第1四半期には300%に達した。
さらに深刻なのは、その大半が土地や金融商品を担保にした住宅ローンであることだ。経済が減速している今、景気の波を増幅させる効果があるこの種の債務の担保価値低下は経済システム全体の重荷になり始め、金融・財政危機を誘発しかねない。
Newsweekより
現在の習近平氏の目指す方向性としては、地域分権全体主義(RDT)が転けたから、民間部門への統制を強める、地方政府への支配を強めた感じなのかな。
結局、反乱の芽を摘むために地方政府で蓄財した役人などの粛正をし、儲けのネタも潰していく過程で、やり過ぎた土地バブルも抑制する意図があったのは間違いないと思う。
ただ、その波及効果まで狙い通りだとはちょっと思えない。
救済策が出されるが
ちなみに、救済策がでてきているらしいのだが、これがまた。
中国「隠れ負債」1800兆円の驚愕試算 地方政府が不動産開発に過剰投資、救済策も〝焼け石に水〟金融危機に発展も
8/21(月) 17:00配信
中国恒大集団が米連邦破産法15条の適用を申請したことをきっかけに、中国の「不動産バブル崩壊」への懸念が改めて広がっている。特に問題視されるのが不動産開発などに資金を投じてきた地方政府の〝隠れ負債〟だ。負債総額は「約1800兆円」との試算もあり、金融危機に発展するリスクがくすぶっている。
~~略~~
中国政府は救済策として、地方政府に債券発行を通じて約1兆元(20兆円)を調達することを認めるとブルームバーグなどが報じた。一部の融資平台は7~10%の高金利を支払っており、金利3%程度の債券に借り換えて負担を軽減できるという。ただ、負債総額の規模からみると〝焼け石に水〟との見方もある。
Yahooニュースより
えーと、Bloombergの記事か。
中国、約20兆円のLGFV債務を地方政府に付け替えへ-関係者
2023年8月11日 20:40 JST
中国は省レベルの地方政府が債券発行を通じて約1兆元(約20兆円)を調達し、資金調達事業体(LGFV)やその他のバランスシート外の発行体による債務の返済に充てることを容認する。経済や金融の安定にとって最大級の脅威となっている問題の対処に向け、小幅な一歩を踏み出した。
~~略~~
今回の措置はLGFVを含む弱い発行体の実質的な救済で、債務負担を地方政府に付け替えるものだ。
Bloombergより
これは、お盆前に扱った記事に出てきた「一連の措置」の一部なんだな。
それにしても、20兆円規模というのは少ないね。当然ながら焼け石に水である。そして、対策が資金調達事業体の債務を地方政府に付け替えるというロクデモナイ発想。いや違うな、地方債務の問題は寧ろ悪化する話だったよ!
地方債務の解決の話は、何処に行ってしまったのだろう?
中国、公的資金で銀行救済 「特別債」発行2.3倍に
2023年8月20日 19:00
中国の地方政府が中小銀行救済のための資金調達を急増させている。1〜7月に発行した特別債の合計額は2022年通年の2.3倍に達した。不良債権処理は銀行経営を圧迫しており、公的資金を注入してでも金融リスクを抑え込もうと躍起になっている。
地方政府が発行するのは「専項債」と呼ぶ目的を限定した特別債だ。国内の商業銀行が買い手で、発行利率は2%台半ばの10年物国債金利に一定の利率を上乗せしている。
日本経済新聞より
そういえば、中小銀行の救済にも地方政府に発行させた特別債を使うというニュースがあったな。このままだと、地方債務は膨らむ一方だよ!
支那共産党は対策に迷う
東南アジアも経済成長鈍化
こうした支那経済の悪化と、支那共産党の対策が後手に回っている様子が影響して、東南アジアの経済成長率も鈍化しているらしい。
東南アジア GDP伸び率が鈍化 中国経済からの影響懸念
2023年8月21日 14時51分
東南アジアの主要国のことし4月から6月までのGDP=国内総生産は、多くの国で伸び率が横ばいか鈍化しました。経済面で関係が深い中国で景気回復の勢いの鈍化が鮮明となる中、東南アジア経済への影響が懸念されます。
このうち、タイのことし4月から6月までのGDPの伸び率は、去年の同じ時期と比べて1.8%とプラス成長となったものの前の3か月よりも伸び率は鈍化しました。
これは、中国や欧米向けの自動車や精密機器の部品などの輸出が低迷したためです。
NHKニュースより
うんまあ、仕方がないよね。東南アジアの場合は、特に機械部品の関連は支那が貿易のハブみたいになっているところがあるから。
東南アジアでは経済面で関係が深い中国で不動産市場の低迷が長期化し、景気回復の勢いの鈍化が鮮明となるなか、経済の減速への懸念が強まっています。
NHKニュースより
支那の不動産市場の低迷も、東南アジアの景気に影響することになるだろう。そうなると、世界的な経済低迷というのが視野に入ってくる可能性はあるな。
なお、更に経済的に苦しんでいる韓国は、支那の経済成長の爆発的な回復を心待ちにしているようだ。
強い対策が打てない
そんなわけで、世界的な経済にとっても支那の「強い対策」というのは期待されている。
コラム:米国が中国上回る経済成長、今年最大の「サプライズ」に
2023年8月21日4:21 午後
今年になって投資家が対応を迫られてきた経済や市場の全ての波乱要素のうち、米国の成長率が中国を上回っている状況ほどの「サプライズ」はなかなか見当たらないだろう。
1月時点で示された今年のコンセンサスではこのような事態は到底考えられなかった。「ゼロコロナ」政策解除直後だった当時の中国経済はまるで巻かれたバネがはじけるような勢いがあったのに対して、米国は連邦準備理事会(FRB)による過去40年で最も急激な利上げサイクルの下で逼塞し、リセッション(景気後退)に陥るとみなされていたからだ。
~~略~~
中国では以前にそうだったように、当局が大規模な金融・財政刺激策を打ち出して市場を驚かせ、経済をてこ入れしてもおかしくない。
ただ投資家が今年になって中国から大量に資金を引き揚げたこと、米中の10年国債利回り格差が2007年以降で最大に開いたこと、そして人民元が同じく07年以来の安値に接近したことには、いずれも相応の理由が存在する。
デフレや若者の記録的な高失業率、不動産セクターの危機、歴史的に低調な銀行融資、対外貿易の急激な落ち込みといった問題は、すぐに解決されそうにはない。
シティの新興国市場戦略責任者ディルク・ウィラー氏と同氏のチームは今週、「一連の期待外れのデータを踏まえ、市場は依然として中国(経済)のハードランディングを心配し続ける公算が大きい」と記した。
ロイターより
ロイターの記事などを見ても、失業率は高いし、不動産開発は危機的だし、銀行融資も低調、対外貿易も急激に落ち込んで、これらに対する特効薬は見つからないといった言及がなされている。
それでも、「当局が大規模な金融・財政刺激策を打ち出して市場を驚かせ、経済をてこ入れ」という、起死回生の一手を望んでいるようだ。習近平先生の次回作にご期待ください。
これまで、支那は民主主義国家としては考えられないような対策を打って、景気回復を行ってきた。それの犠牲になるのは支那人民なのだが、それはさておき、「驚くような規模の景気刺激策」が求められているのは事実のようだ。
逆に言えば、そんな見たこともない手を打たない限りは、回復には時間を要する可能性が高いのだろうね。
下放
そういえば、数年前にこんな記事を見かけた。
「下放」の悪夢再び?若者の農村派遣計画に中国騒然
2019.4.18(木)
中国のエリート養成機関「共産主義青年団(共青団)」が2022年までに延べ1000万人の学生たちを農村に派遣する計画を打ち出したことが、毛沢東時代の“上山下郷”運動の再来か? と物議を醸している。
習近平国家主席が第19回党大会の政治活動報告で打ち出した「郷村振興計画」に呼応した方針のようだが、文革時代のトラウマをいまだ抱える知識人層には大不評。習近平はかねてから共青団に対して辛辣な批判を公表し“共青団”つぶしに動いていたので、権力闘争ではないかという見方もある。一体、この“新・上山下郷”運動の狙いはどこにあるのだろうか。
JB pressより
食糧増産計画や、大躍進計画に似た発想である退林還耕は以前にも紹介したが、この記事の「下放」というのも似たテイストの話である。少なくとも方向性は同じなのだろう。
結局、習近平氏は毛沢東のやり方に心酔して、似たような政策を打つ傾向にあるようで。当時は「損馬鹿な」と思ったが、そういう意味では「下放」というのも強ちおかしな話ではなかったのかも知れない。2019年に騒ぎになったこれ、いよいよ実現する方向に動いているようだ。
とうとう文化大革命に逆戻り~中国の大卒予定者1158万人、就職難で新たな就農運動へ
2023/6/23
中国政府「国家統計局」が5月16日付で発表した経済データによれば、4月に全国の都市部で調査した失業率は5.2%で、3月の5.3%より0.1ポイント改善した。
4月の都市部失業率の内訳は、16~24歳:20.4%、25~59歳:4.2%であった。3月の都市部失業率の内訳は、16~24歳:19.6%、25~59歳:4.3%であったから、4月の前者は0.8%上昇し、後者は0.1%低下したことになる。
現代ビジネスより
若者の失業対策にもぴったりだ!
都市から若者を追い出す中国【コラム】
記事入力 : 2023/08/20 16:50
「青年よ、農夫になれ」
中国の人気バラエティー番組『農業をやろう(種地吧)』は、こんなメッセージを露骨に伝える。19歳から26歳の俳優・アイドル歌手10人が田舎で半年間農業に取り組む過程を追うこの番組は、ナレーションとせりふを通して青年たちの農村行きを督励する。出来が良いおかげで、今年2月にオンライン動画配信サービス(OTT)のiQIYIで配信が始まって以降、中国OTTバラエティー視聴率ランキングで2位にまで上った。
文化大革命当時、都市の青年を農村へ送り込む「下放」という政治キャンペーンがあったが、現在の中国では「新下放」運動が起きている。本質は、大都市から青年たちを追い出すというものだ。リ・オープニングの後、経済回復が遅く、雇用市場が崩壊するや、都市はエリート青年らを引き受け切れなくなっている。「遊んでいる青年」らを田舎へ送れば社会不安要素が取り除かれ、米国のサプライチェーン封鎖に備えて食糧生産量も増やせる、という計算もあっただろう。
朝鮮日報より
これが新たな対策としては案外有用かも知れないね(棒)。下放政策にしたがって、農村に青年を送り込んだら、次に生まれるのは紅衛兵だろうか。
コメント
木霊様ども。少し周囲遅れで読みました。えっと、コレは経済面前だけの見出しは勿体ない記事ですよ。
後半の下放再び……のくだりね。
年配の知人にはギリで下放された人や、
ギリで紅衛兵だった人がいるんで、あの時代がメチャクチャだったのは聞いてるんでますけれどね。まさか、そこまで再現するとは思えなかったが……そのまんまとは言わずまとも似たような形になりつつあるとはねぇ……。
まぁ、でも私も今は半農民・農園労働者でもあるんで思いますが、一人っ子の都市戸籍の若者が農村の労働力にはなりませんよ。
採算取れてる妻の一族の農園だって労働はキツい。キツいから治療家でマッサージ師の私がマスオさんできている訳です。農村の格差はこの10年でかなり減った(毒入り冷凍餃子事件の時に比べれば)でも、小皇帝でデジタル世代にとっては単なる流刑でせう。
下放するより解放軍に入れて鍛える方が先なのではないですかね?
支那の現状は、文化大革命へ一直線ですよ。
「下放」の話に触れましたが、「紅衛兵」についても実際にそうなりつつあるようで。監視社会には機械を使って監視するだけでなく、お互いに監視して通報することを推奨している状況なんだとか。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73298180S3A800C2FF8000/
この辺りの話もなかなか興味深いですね。
尤も、ご指摘通りに農民というのはキツい職業であります。一人っ子政策によって小皇帝として育てられた世代には、耐えられないでしょうね。