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聖水大橋崩落事故の話から学ぶべきこと

橋シリーズ
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これも記事に起こしておく必要はあるのではないかな、と思った。

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記事の引用はしないが、リンク先のサイトには、韓国映画「はちどり」のことが言及されている。2020年に日本でも公開されたらしいのだが、興行成績は今ひとつだったらしい。韓国では大ヒットしたらしいんだけどね。

さておき、その中で出てくるのが、聖水大橋崩落事故と三豊百貨店崩壊事故の2つである。

今回は聖水大橋崩落の方を扱っていく。

  • 1979年に漢江に架けられた聖水大橋、15年後に崩落
  • 手抜き工事と、点検結果隠しが要因
  • 過去の事例に学ばないのが韓国の実情

聖水大橋、崩落ス

完成から15年

橋長1,160.8m、幅員19.4mのこの橋は、1977年に着工して1979年に完成している漢江に架かる橋だ。

現在架けられている聖水大橋

こちらは現在、同じ場所に架けられている「聖水大橋」だが、当時よりも拡幅されて塗装の色も変えられているそうな。

1979年に完成してから漢江の交通を支えていたが、15年後の1994年10月21日午前7時40分頃、橋の中央部が突如崩落。通勤時間帯と重なったこともあって、多数の死傷者を出すことになる。

何とも痛ましいことである。

原因は手抜き工事

鋼製のトラス橋が部分的に欠落するというのは珍しい事例ではあるが、構造的な問題と、手抜き工事が問題であったことが後に発覚する。

崩落してしまった中央部分は、そのまま川に落下し、落下の衝撃で32人の命が失われ17人が負傷した。

主原因は、中央の吊り桁を鋼製トラスから吊っていた、I型断面の吊り部材の溶接不良で、溶接部分より疲労亀裂が進展したために、溶接部分の強度が著しく低下し、突然の崩落という形になってしまったようだ。

更に不幸なことに、施工時の施工管理検査方法が杜撰だったために、手抜き施工による溶接不良の箇所が発見できず、定期点検は行われていなかったことも問題だった。

設計ミス

さて、施工ミスや点検不良などの原因の他にも、困った問題があった。それが、設計者であっった大韓コンサルタントのミスである。

構造としては、両側の橋脚から張り出した鋼製トラス構造の定着支持桁が中央の吊り桁を垂直材で吊り支持するゲルバー構造を採用していたが、設計時には標準車両荷重を18tと見積もっていた。

ところが、利用しやすい位置にあったこの橋は当初見込まれていたよりも多くの車両が通行し、1日の交通量は10万5千台と予定の2倍以上となっていた。更に過積載車両の取り締まりも出来ておらず、標準車両荷重24tで利用されるようになった。

その結果、リンク連結部に負荷がかかり、一番弱い溶接部分に疲労亀裂が進展したというのが後の調査から分かった事故原因とされている。

これを「設計ミス」と断定してしまうのには少々気の毒な気はするが、しかし想定されていた荷重の安全率を考えると、1.5~1.7を見込む必要があるところ、標準車両加重は1.3程度で崩落してしまった。したがって、設定されていた安全率が低かった可能性がある。そして、設計時に設定された標準車両荷重が適切だったのかという点も含めて、設計的な問題点を抱えていた可能性はある。

報告無視

更に、後に「補修点検日誌」の存在が明らかになって、定期点検は行われていなかったのだが、事故前にクレームに対応するために点検が行われていた模様。

実は、崩落前にユーザーから「揺れが激しくて恐怖を感じる」旨の訴えが複数あって、目視点検などを行う他、ソウル市当局が事故前日の夜にも応急の補修工事を行っていたようだ。

更に、8月以降10月に崩落するまでに3度、崩落した周辺の溶接部分に腐食が確認され、溶接不良も確認できると指摘があったようだ。同年2月には検査担当者が「崩落の危険が大きい」と報告しており、管理事務所は、点検による異常を事前に察知していたと言うことが分かっている。

ソウル市の道路整備課長と設備改良係長はこの件で業務上過失致死の疑いで、道路局長は虚偽公文書作成の疑いで、逮捕されている。

再設計して架け替えられる

この事故を契機に、漢江に架かる全ての橋の緊急点検が行われ、欠陥が発覚した1本が架け替えられることとなった。

聖水大橋も、標準車両荷重の数値を引き上げて再設計をし(設計はイギリスの企業が担当)、事故翌年の1995年5月に着工、1997年7月に再開通に至る。

「94年崩壊」聖水大橋、またも不正工事

2001/09/05 10:59:45

94年の崩壊事故で32人の死亡者を出し、再建工事が行われている聖水大橋が、設計図通りに施工されていないことが分かった。ハンナラ党のペク・スンホン議員は4日、ソウル市の国政監査資料を通じ、このように主張した。

ペク議員は「現在、8車線拡大工事が行われている聖水大橋を現場調査した結果、17番橋脚を支える構造物(鉄筋を入れ、セメントで固めたもの)のセメントの厚さが、設計図では10センチと均一でなければならないが、実際には4.5~20センチと、ばらばらに施工され、安全に深刻な影響を及ぼす恐れがある」と明らかにした。

アーカイブより

ただ、残念なことに後に不正工事が発覚して、再度点検が必要な事態となったものの、適切な処置が行われたようで、今に至るまで1997年に架けられた橋は使われている。

橋の崩落は起こしてはならない

こうした橋の崩落事故は、様々なパターンで発生するため、過去の事例をしっかり学んで設計・施工・管理に活かすべき事案である。

先進国の何れも例外なく橋の崩落事故を体験しているのだから、この例1つとって、韓国の橋梁が危ないという話をするつもりは毛頭ない。

だが、何年経っても似たような事故を起こすのが韓国の実態である。最近の事故でもこんなのがあったよね。

過去の事例に学ばないことこそが、最大の問題なのである。

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