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H3ロケットの打ち上げ成功、おめでとう!

科学技術
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というわけで、嬉しいニュースに軽く触れていこう。

「H3」ロケット2号機 打ち上げ成功 前回の失敗乗り越える

2024年2月17日 18時41分

日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が17日午前、打ち上げに初めて成功しました。激しさを増す宇宙ビジネスをめぐる国際競争で今後の日本の宇宙開発を担う“切り札”として対抗していくことが期待されます。

NHKニュースより

H2Aロケットの打ち上げ成功率は48号機打ち上げ時点で98%で、「成功して当然」というような空気がある中、H3ロケットはなかなか苦戦した。だからこそ、成功して肩の荷が下りた方も多いのではないだろうか。

先ずは第一歩を刻んだ

開発者としても一安心

記者会見を見たが、プロジェクトマネージャーも喜色満面であった。

「物凄い重い肩の荷がおりた。満点です」H3ロケット開発責任者 成功の記者会見

2024/2/17 13:35

17日午前に打ち上げられ、打ち上げに成功した日本の次世代主力ロケット「H3」2号機について、責任者である宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史プロジェクトマネージャは17日午後の記者会見で、「物凄い重い肩の荷がおりた。満点です。でもH3はこれからが勝負。しっかり育てたい」と述べた。

産経新聞より

今回は2基の人工衛星を打ち上げていて、1号に載せられていた先進光学衛星「だいち3号」は尊い犠牲になったが、キヤノン株式会社の気象・地球観測衛星(CE-SAT-IE)と、セーレン株式会社開発の超小型人工衛星(TIRSAT)が無事に打ち上げられる運びとなった。なお、この他にダミー衛星2.6tが載せられていた。

何というか、2号機の方が安い衛星を載せていた上、前回の失敗を踏まえたダミーを載せていたのは、苦笑せざるを得ないのだが、まあしょうがないよね。

H3ロケットの開発動機

さて、H2Aロケットが高い成功率を持つ優れたロケットであるのにも関わらず、H3ロケットを開発した理由なのだが、1つは打ち上げコストの削減ということが挙げられている。

コスト半分…宇宙ビジネス参入へ H3ロケット2号機打ち上げ成功

2/17(土) 17:50配信

日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が打ち上げられました。ロケットは予定された軌道に投入され、打ち上げは成功しました。

Yahooニュースより

とはいえ、あくまで打ち上げコスト削減は目標である。

 開発費用打ち上げ費用
H2ロケット2,750億円190億円
H2Aロケット1,532億円85~120億円
H3ロケット2,061億円50億円

参考までにどの程度の打ち上げ費用がかかるかを紹介しておくが、あくまで目安である。実際に、H3ロケットの打ち上げコストは現時点でここまで下がっていない。

会見に同席した三菱重工の江口雅之執行役員は、「造り始めたばかりなのでコストダウンは目標に達していない。10号機か15号機くらいで競争力が出るような形に持っていきたい」と述べ、「円安の追い風も受けて国際競争力のある製品にしていきたい」と語った。生産能力を現在の年5─6機から10機程度まで増やし、宇宙事業の売り上げを「ロケット関係で2─3割増やしたい」という。

ロイター「H3ロケット2号機打ち上げ成功、衛星も分離 1年で挽回」より

1号機、2号機の打ち上げ費用は明らかにされていないが、おそらくはそれなりのコストがかかっていると思う。

H2Aの1回の打ち上げ費用は、欧米より高額な約100億円で、価格競争力が低い。一方、H3はコスト削減を徹底。専用開発だった電子部品の約9割に自動車用を転用するなどして、約50億円に半減させた。

組み立て作業も、ライン生産の強化のほか、3Dプリンターや産業用ロボットの導入で、1カ月から半月に短縮。受注から打ち上げまでも、2年から1年に縮めた。

産経新聞「初号機と2号機の「違い」」より

専用品だった部品を汎用品にして価格を下げるという狙いは分かるのだが、これが打ち上げに耐えうるかどうかの判定がなかなか難しかったようで。

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1号機の失敗

一応、1号機で何を失敗したかについても軽く触れておこう。

新開発LE-9エンジン

先ずはエンジンだ。

 1段目ブースター2段目
H2ロケットLE-7SRBLE-5A
H2AロケットLE-7ASRB-A3LE-5B
H2BロケットLE-7ASRB-A3LE-5B-2
H3ロケットLE-9SRB-3LE-5B-3

1段目のエンジンは新開発のLE-9エンジンで、エキスパンダーブリードサイクルと呼ばれる日本で開発した仕様のエンジンを使っている。部品点数をLE-7Aより20%少なくしたことで、コストダウンに貢献しているけれども、これがなかなか開発が難航した原因でもあるようだ。

開発は、平成11年から始まって令和2年に実機テストに漕ぎ着けた。が、使用部品(液体水素ターボポンプのタービン動翼)が疲労破壊してしまう問題や、エンジン燃焼室内壁に穴が空く問題などが出て、令和3年まで打ち上げ延期となる。

その間に度重なる工夫をして、なんとか1号機の打ち上げに漕ぎ着けたのだけれども。

2段目エンジンの点火失敗

残念ながら1号機の打ち上げは失敗した。その原因が2段目エンジンの点火失敗であった。

2段目エンジンはLE-5Bを3基使っていたが、従来から用いられる実績のあるエンジンであったので、この失敗は開発者を驚かせた。その失敗の原因は、電気系統の問題だったようである。

「H3」打ち上げ失敗 想定されるケースは9つ JAXA

2023年6月22日 18時16分

ことし3月、打ち上げに失敗した日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、試験や解析などをもとに失敗に至ったと想定されるケースを9つに絞り込み、このうち2つは「H3」だけに搭載された機器が深く関係しているケースだと明らかにしました。

ことし3月、日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機は2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗し、これまでの調査でエンジン内部の機器がショートなどを起こした可能性が高いことがわかっています。

JAXAは22日、最新の調査結果を報告し、試験や解析などをもとに機器のショートなどに至ったと想定されるケースを9つに絞り込んだと明らかにしました。

NHKニュースより

ただ、原因特定には至らず、9つのシナリオのウチ、濃厚なシナリオ3つに絞って、全て対策をして打ち上げを行った。

H3初号機失敗、背景に「実績重視、対策や確認の不足」文科省が報告書

2023.10.30

 今年3月の大型ロケット「H3」初号機の打ち上げ失敗について、文部科学省は原因究明や再発防止策を盛り込んだ報告書をまとめた。過電流が生じ、2段エンジンに着火できなかった。2号機以降で、過電流の原因として考えられる3通りのシナリオ全てに対策を講じる。失敗の背景には、長年の装置の実績を重視したことや、対策や確認の不足があったなどと指摘した。

Science Portalより

今回は、この対策が功を奏したという風に理解すれば良いのだと思う。

JAXAは、三菱重工業と二人三脚で原因を探り、第2段エンジンの点火装置を改良のほか、装置や部品、検査体制など見直せるものは全て見直した。岡田さんは「失敗を乗り越える出口が見えずしんどい時期もありモチベーションの維持が大変だった」と振り返る。ただ、「失敗で味わうつらい時間が、若いエンジニアを強くした側面があった」とも語った。

徹底した洗い出しでH3製造の工程には磨きがかかり、2つの組織の連携も深まった。三菱重工の新津真行(まゆき)H3プロジェクトマネージャーは「立場の違いを超えてワンチームになった。1年間、密度の濃い活動ができた」と振り返る。

産経新聞「初号機と2号機の「違い」」より

失敗した意義があったかどうかは、2号機以降の実績にかかっているのだけれど、今回はその一歩を踏み出したということになるだろう。

実際のところ、H2ロケットは2回の失敗を経験し、H2Aロケットも1回の失敗を経験している。1回失敗したくらいで「全部ダメだ」とレッテルを貼る必要はない。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    たいへんよくできました🌸🌸🌸
    JAXAは一皮むけた感じ

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