あまり気の進まないニュースではあるんだけど、まあ、第一報を取り上げたしね。
研修医の職場離脱 韓国政府「法と原則にのっとり措置」
2024.03.04 09:17
韓国政府が医師不足などの対策として発表した大学医学部の入学定員増に反発して専攻医(研修医)が職場を離脱している問題で、曺圭鴻保健福祉部長官は4日、政府の対策本部会議を主宰し「違法な集団行動に対する政府の対応原則は変わりない」と強調した。職場に復帰していない専攻医を確認するための現場点検をこの日から実施した上で「法と原則にのっとり措置する計画だ」と述べた。
聯合ニュースより
はいはい、混乱中ですよー。まあ、追加できる情報は多くないんだけど。
職場離脱で免停
定員を増やすのが嫌
先ずは、韓国での医療業界の混乱なんだけれど、韓国政府が医学部の定員を増やそうとしたら、それに医師が反対したという話だ。
日本でも加計学園問題(平成29年)で騒いでいた時期があって、あれは獣医学部の定員増に関わる話だったのだけれど、獣医師会が「医者を増やすな」と圧力をかけていた構図であった。
そして、質問の急先鋒に立っていたのが、今、国民民主党の党首をやっている玉木氏であった。彼は実家が獣医師の家系だったので、その関係で質問に立ったと聞く。
ただ、日本では獣医師がデモをするなんて事態にはならなかった。そもそも獣医師が居ないという現状は隠しようがなく、特に畜産業界では悲惨らしい。
一方の韓国はというと……。
曺氏は「いかなる理由であれ、医師が患者のもとを集団で離れることは容認できない行為で、政府は国民の生命を保護するため法律にのっとった処分をためらいなく履行する」とし、専攻医には「各自の進路に重大な問題が発生しかねないことを留意してほしい」と呼び掛けた。
聯合ニュース「研修医の職場離脱」より
患者が困っても関係ないらしい。
免停へ
で、流石に患者の治療をせずに職場を離れた研修医に対しては、それなりの罰を、ということになったらしい。
前日には大韓医師協会(医協)が医学部入学定員の拡大に反対する大規模な集会をソウル市内で開催した。曺氏は「患者の診療に背を向け集団行動をしたことに深い遺憾を表する」と述べた。製薬会社の営業社員らに集会参加を強要したとの疑惑があることにも言及し「厳格に調査し、法に従って措置する」とした。
聯合ニュース「研修医の職場離脱」より
免許停止ね。事前情報では3ヶ月という話だったけれども、まあまあ長い期間、医療行為が出来ないということになる。
韓国政府、免許停止の手続き開始 職場離脱の研修医7000人
2024年03月04日12時29分配信
大学医学部の入学定員を増やす韓国政府の方針に反対する研修医らが集団で辞表を提出した問題で、保健福祉省は4日、職場復帰を求める政府の命令に従わなかった研修医約7000人の医師免許停止の処分手続きを始めると発表した。
時事通信より
ただ、それが罰になるのかはちょっと分からない。免許剥奪というのであれば罰になるのだろうけれど、免停ではね。
どうなることやら。
野党は医師会と連携する
で、この話は前も書いたのだけれど、医師の数を増やすのに反対しているのは、医師会だけではない。野党もコレに賛同しているようだ。
尹大統領の支持率 2週連続4割超=与党46.7%・最大野党39.1%
2024.03.04 08:00
韓国世論調査会社のリアルメーターは4日、全国の18歳以上の2006人を対象に先月26~29日に実施した調査で尹錫悦大統領の支持率は41.1%だったと発表した。前回調査(19~23日実施)より0.8ポイント下落と、5週ぶりに小幅に下がったものの、2週連続で40%を上回った。不支持率は0.6ポイント上昇した55.4%だった。
聯合ニュースより
で、そのお陰もあってか、与党が支持率が上がっている一方で、野党の支持率はかなり下落している模様。
支持率下落の理由は、色々あるのだろうが……。医師の数に関する話でここまで反対する理由は不明だ。「利権」ということなんだろうけれどね。
それにしても7,000人かぁ。確か、1万人越えというニュースは見かけたので、半分くらいは処分対象になりそうってことかね。逆に言えば、かなり強い抵抗だよね。研修医は何故ここまでの抵抗を見せているのか。
韓国政府は根っこの部分を手当てしないと、医師会の対応で墓穴を掘りそうな気がする。
追記:韓国人の医師と兵役について
コメント頂いたので、一応調べて見たら面白い記事があったので紹介しておきたい。
韓国の「兵役未実施」の専攻医、辞表が受理されればすぐに兵役履行の義務
登録:2024-02-26 05:06 修正:2024-02-26 06:36
政府の医学部増員計画に反発し、専攻医が大量に辞職願いを提出して勤務地を離脱しているなか、兵役に行っていない専攻医の兵役履行にも関心が集まっている。これらの専攻医は、研修過程を終えた後に軍医官として入隊することを条件に、兵役が延期されている。一般的な状況であれば、「研修中断時」はすみやかに入隊しなければならない。
ハンギョレより
韓国人が韓国で医師になる場合には、次のような課程を経ることになるようだ。
- 6年制の医大卒 → インターン1年 → 専門課程4年 → 医師免許取得 → 兵役
- 4年生の大学 → 4年制の大学院(メディカルスクール)→ インターン1年 → 専門課程4年 → 医師免許取得 → 兵役
18歳で無事に高校卒業して医大に入学出来た仮定で、11年の勉強期間は兵役を猶予されることになる。つまり、29歳までは兵役が猶予されるか、+2年で13年の勉強期間は兵役(31歳まで)を猶予されることとなるハズなんだが……、兵役は30歳までに果たさねばならぬ(医師の場合は33歳までらしい)ので、途中で兵役に従事する道もありそうだな。
なお、医大を出てから公衆保健医師になり、実質的に兵役免除を選ぶみちもあるのだが、それが楽な道であるかどうかは不明。
問題は、研修機関を退職した場合、ただちに入隊しなければならないという点だ。兵役法施行令は、研修機関を退職した場合、直近の入営日に現役将校または公衆保険医として入営しなければなければならないと規定している。
ハンギョレより
今回のように、研修期間を退職した場合には、ただちに入隊せよという規定があるようだが、入隊して医官になると、研修医の穴を埋めるために病院に派遣されるというのだから、矛盾も甚だしい。
すぐには軍隊に行かなくてもいいからといって、安心できるわけではない。義務士官候補生の資格要件の1つは「33歳までに研修過程を終えなければならない」ことだ。専攻医過程を33歳までに終えられない状況が発生すれば、候補生の資格を失うことになり、現役将校または公衆保険医として入営しなければならない。
ハンギョレより
なるほどー。韓国が軍医を確保するシステムはこのようになっているのね。
追記2:韓国でのこの対応は実に正しい
さて、この7,000人の医師免許停止処分が果たしてどうなったのか。
専攻医7千人免許停止手続き突入…破局へと突き進む韓国政府と医療界の対立
登録:2024-03-05 01:04 修正:2024-03-05 08:17
政府は、未復帰の7千人あまりの専攻医(インターン、レジデント)に対する免許停止などの行政処分の手続きに突入した。大量の医師免許が停止される可能性がある。これに反発し、一部の専任医や教授は集団行動に参加している。
保健福祉部のパク・ミンス第2次官は4日の中央災害安全対策本部のブリーフィングで、「政府は現場を点検し、違反事項に対して法と原則に則って対応する計画」だとし、「7千人あまりの免許停止処分の手続きに突入する」と表明した。すでに政府は、医療現場を離れた8945人の専攻医のうちの7854人について、所属病院から業務開始命令不履行確認書を受け取っている。
ハンギョレより
順調にことは推移しているようだ。
政府の制裁が現実化したにもかかわらず、専攻医の集団行動には大きな変化がない。むしろ専任医(フェロー)や医学部の教授の一部が再契約に応じずに病院を去ってもいる。福祉部と各病院の説明によると、全国の医療機関の専任医の平均再契約率は1日現在で30%ほど。2月末に病院と1年単位で契約を交わす専任医の再契約率は例年だと70~80%だが、その半分にも満たない水準だ。また、慶北大学医学部のある教授は公開の場で「政府は脅迫ばかりしている」と述べ、教授職を辞すと表明している。政府と専攻医の駆け引きが専任医や教授にまで拡大しつつあるのだ。
ハンギョレ「専攻医7千人免許停止手続き突入」より
駆け引きは広がっているモノの、実際にその立場に置かれた研修医達にとってみたら、複雑な心境なのだろう。政府と完全に対立しているが、実のところ政府の方針の方が正しいのだから。
“本当にやる気は”…7千人免許停止開始に専攻医の心境「複雑」
入力2024.03.04. 午後 4:02 修正2024.03.04. 午後 5:02
政府が「専攻医の復帰」デッドラインとして定めた期限が過ぎると同時に、数千人の専攻医に対する免許停止措置に突入した。医療界は表面的には「免許停止をしても構わない」と淡々とした姿勢を維持しているが、内部的には検察の召喚調査に同行する弁護士を探すなど、生存法を模索している。
NAVERより
そりゃまあ、「政府が絶対に折れるだろう」という予測を立てて拳を振り上げたものの、世論は政府の味方をしているので折れる気配がない。
選挙目的の政策だという意見もあるが、しかしこの医師の数の拡大に関しては十数年前から韓国の課題として掲げられ、誰も手を付けなかった案件なのだから韓国人としては解決して欲しかった話でもある。つまり、選挙だけの話だという切り取り方は、戦略の誤りになってしまう可能性が高い。
コメント
前回、軍医大学を創立して、と書き込んだ者です。
韓国では国家試験が無いので医学部を卒業すれば医師になれるそうです。
そして、兵役は軍医として勤めるそうです。
コメント頂き感謝しておりますが、どうも頂いたコメント内容は若干事実と違う部分も見受けられるようです。
まず、韓国に医師の国家試験が「無い」というのは正しくないようですね。
https://gendai.media/articles/-/119258?page=3#
一応、国家試験はあるのだけれども、合格率95.7%なので「医学部を卒業すれば医師になれる」というのはほぼ事実ですね。「韓国に医師の国家試験がないも同然である」というべきか。
あと、「兵役は軍医として」というのは、本来の兵役は19歳からなので、多くの大学生は1学年や2学年の後、休学して兵役を務めるようです。例外もOKらしいですが。
ただ、医学生の多くは医大6年+病院のインターン(全科ローテーション)1年+専門医課程(レジデント)4年を経て医師になり、ここから軍医官を務めるというコースを選択するようで。
つまり、今、研修医が辞表を出しているのは、この医大卒業後に行うインターン時代の人々が該当するようで、これの穴埋めをするために、軍医官が宛がわれているという構図なのは、ちょっと皮肉ですね。先輩に嫌がらせしているのに等しいのかもしれません。
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/49252.html
結局のところ、本件で医師会と野党・共に民主党が連携するならば、
医学部定員増が来月の国会選挙の争点にもなるということでしょう。
他方で、医学部定員増についての最近の世論調査では、3/4が賛成
との結果が出ているらしいので、本件は与党に有利にはたらくかも。
https://www.afpbb.com/articles/-/3508016
そういえば、岸田首相が訪韓を取りやめたそうだけど、もし行けば
韓国側に選挙目的に利用されただろうから、取りやめは僥倖だった。
もとから、大谷君の試合を観戦しに行くなんて嘘っぱちだからね。
岸田訪韓の話、おそらくは韓国側からの要請です。
そして、現時点で韓国現政権は支持率が高い状況なので、わざわざ日本の首相を招いてリスクをとる必要が無くなった。僕はそのように解釈していますよ。
こんにちは。
本件、ユン政権はビタ一文まからん体制のようで。
※とはいえ、「今すぐ復帰すれば見逃すかもよ?」という猶予は仕込んだのですね。
今までデモ側のやりたい放題だった「民意」が、少しは変わる……とは思えないのが……
今回の総選挙と、この後の大統領選と、その次の総選挙あたりまで様子見ないとワカランですね。
※それまで国があるかどうかの方が正直心配ですが。
こんにちは。
この問題、どうなるんでしょうね。
そう簡単には結論がでないようですが……。