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水陸機動団が離島防衛を想定して日米共同演習に参加

安全保障
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水陸機動団が共同訓練「アイアン・フィスト」へ参加したという報道があった。

離島防衛を想定 陸自と米海兵隊の共同訓練開会式 佐世保市

02月26日 06時03分

離島の防衛を想定した陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の共同訓練が九州・沖縄で始まり、長崎県佐世保市で開始式が行われました。

NHKニュースより

陸上自衛隊所属の水陸機動団が創設されたのは平成30年のこと。日本版海兵隊として登場して、アメリカ海兵隊との共同訓練が出来るようになったと言うことの意味は大きい。

離島奪還訓練の意味

西部方面普通科連隊

それ以前は西部方面普通科連隊として600人規模の部隊であった。西部方面普通科連隊も創設は平成14年なので、それまでは本当に離島防衛という分野に目を向けていなかったと言えるだろう。

西部方面普通科連隊時代からアメリカ海兵隊との共同演習に参加していたが、支那の軍事力が高まってきたことと、習近平氏が台湾統一の野望を隠さなくなってきたことがあって、3,000人規模の組織に改編し、水陸機動団として整理し直した。つまり、離島奪還及び離島防衛に本腰を入れ始めたという意味である。

この中で陸上自衛隊の水陸機動団の辻一第2水陸機動連隊長は「日米共同の水陸両用作戦遂行能力を向上させるとともに日米同盟の結束の強さを示すことができる」とあいさつしました。

これに対して第31海兵遠征部隊のマシュー・ダナー隊長は「この地域全体の安全を維持するという揺るぎないわれわれの決意を認識させる」と訓示しました。

NHKニュース「離島防衛を想定」より

水陸機動団の能力維持・向上の為にも定期的な演習は、今後とも欠かせないと思う。

水陸機動団が創設されるきっかけとなったのは、アジアの安全保障における中国の急速な台頭です。中国は南シナ海での管轄権を主張し、この10年ほどの間、人工島を造成するなどして事実上の軍事拠点を次々と建設してきました。そして、沖縄県の尖閣諸島周辺にも公船をたびたび送り込み、領有権を主張する活動を活発化させるようになりました。こうした国際情勢の変化を受けて、防衛省は日本に数多くある離島の防衛強化に乗り出すことになったのです。

NHKニュースより

リスクが高まっている以上は、対策を急がねばならないのだ。

アイアン・フィスト

日米の合同演習というのは幾つか種類があるが、アイアンフィスト(鉄拳)の名を冠する演習に日本が参加したのは、平成17年より米国カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンを中心に実施されたものが最初だったようで、以降、毎年1月に行われる同演習に部隊規模で参加するようになった。

このアイアンフィストが日本国内で開催されたのは、去年が初めて。

日米演習「アイアン・フィスト」終了=離島奪還を想定、国内では初―沖縄

2023-03-12 19:01

離島の防衛や奪還を想定した日米の共同訓練「アイアン・フィスト」が12日、終了した。これに伴い、米海軍施設「ホワイトビーチ」(沖縄県うるま市)に停泊する海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」で式典があり、両国の指揮官が訓示を行った。

同訓練は2月16日から、鹿児島県・徳之島など九州・沖縄の各地で実施され、自衛隊約700人、米軍約800人が参加した。これまで米国内で行われ、日本国内での実施は初めてだった。

時事通信より

そして、アイアンフィスト23より、本格的な離島奪還を想定した訓練となっている。これが意味するところは、支那の台湾侵攻を想定した話だということである。

また、中国共産党は、もともと中国の領土ではなかった台湾を自国の領土と主張し、武力による占有も辞さない姿勢を見せている。 一方、ロシアのウクライナ侵攻によって、インド太平洋地域で同様の攻撃が起こることを日本とその同盟国やパートナーが懸念している中、10月に日本上空で発射された弾道ミサイルを含む2022年の北朝鮮の記録的な数のミサイル実験は減少の兆候を見せていない。

アイアン・フィスト演習では、駐留軍基地がない日本の島に戦力を展開し、捕獲された離島を奪還するシミュレーションを行う。 戦闘訓練では、水陸両用の上陸作戦とパラシュート訓練を組み合わせる。

マシュー・C・ダナー(Matthew C. Danner)大佐は、「私は第31海兵遠征隊の指揮官になった時から、米国海兵隊と陸上自衛隊、海上自衛隊の強い絆を目の当たりにしてきた」とし、 「その強固な基盤の上で、2023年アイアン・フィスト演習は、地域の安全保障と安定のために協力し、我々合同軍の比類ない強さと能力を示すことになる」と述べた。

FORUM「二国間演習「アイアン・フィスト」の開催地が日本の島々へ」より

アメリカ第31海兵遠征隊の指揮官は、実際に「地域の安全保障と安定のため」と発言しており、アメリカ軍としても台湾有事が絵空事ではないと認識していることが示唆される。

台湾有事との関係

台湾有事に関しては、このブログでも良く扱うテーマとなっていて、既に幾つか記事を書いている。

仮に台湾有事が現実のものとなった場合、地政学的に、沖縄有事と台湾有事は連動していることは否定できない。実際に、人民解放軍が台湾に侵攻するとするのであれば、その前に先島諸島を押さえることは必須だからだ。

地図を見て頂ければ分かる通り、台湾と先島諸島の位置関係は目と鼻の先である。与那国島から台湾本島までは200km未満の距離なのだ。

支那が台湾への侵攻を考えるのであれば、大陸側ではなく太平洋側からのアプローチは不可欠。他国の軍隊が与那国島に使える基地を持っている状態は、何とも都合が悪い。逆に、先に占拠できれば個々を拠点と出来ることは大きい。そういう意味で与那国島を始めとした先島諸島の制圧は、台湾侵攻を前提とすると、基地の有無にかかわらず必須である。

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本当に台湾有事はあるのか?

台湾有事に関する技術的な考察

尤も、合理的に考えれば支那が台湾を軍事侵攻するというのは、あり得ない話であり、軍事的オプション無しに統一するのが支那にとっても望ましいのは疑いようがない。

なお、東洋経済にこんな興味深い記事が紹介されていた。

「TSMC熊本進出」を台湾有事ばかりで語る人たちへ

2024/02/27 5:20

TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場、JASM(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング)が2月24日に開所式を行った。同社はデンソーおよびソニーセミコンダクタソリューションズを少数出資者に迎え入れ設立された。また、2月6日には新たにトヨタ自動車も少数出資者に迎えて2027年末までの稼働を目指した第2工場を建設することが発表された。

TSMCの進出理由について筆者は「『TSMC熊本進出』のあまり語られない本当の理由」として解説した。一方で、これらのTSMC日本進出をいわゆる台湾有事と関連して解説される方も多くいる。

東洋経済より

文章中では明確に語られていないが、「台湾有事を危惧したTSMCが海外に拠点を作ってリスク分散している」というような発言をする方がいるようで、実際に僕自身も過去の記事で、似たような趣旨の話を書いていて苦笑を禁じ得ない。

だが、この筆者は、「軍事占領した台湾で半導体工場を稼働させることは現実的ではないから」と、軍事侵攻の発生には否定的な立場である。

この点、経済的合理性に基づいた判断をするのであれば、東洋経済の記事に書かれていることは納得できる。ただ、これはTSMCの生産能力を手にするために台湾侵攻はあり得ないという考察であって、それ以外の可能性に関しては特に触れていない。

実際、TSMCを失うと、日本やアメリカその他の先進国にとっては経済的に大ダメージとなる。したがって、支那がアメリカと事を構えることを決めたとすれば、台湾への軍事侵攻もしくは海上封鎖というオプションは作戦として成り立ちうると考えている。

尤も、台湾へ軍事侵攻するくらいであれば、ミサイルの飽和攻撃を加えた焦土化作戦として実行する方が現実的なのだが、それは台湾という存在を地上から消し去るということに等しく、その事が支那の利益に繋がるかどうかはちょっと怪しい。

ただし、習近平氏は幾度となく軍事侵攻を臭わせる発言をしており、その可能性を否定してはいないし、支那の行動を見ている限りは経済的合理性だけで判断しているとは思えない。

習近平氏の気まぐれ1つで人民解放軍が動く可能性があるというのが、現実である。人民解放軍は国軍扱いではあるが、指揮命令系統のトップとなっているのは支那共産党であり、習近平氏がそこの指導的立場にあり異論を唱える人がいない以上は、習近平氏がその気になりさえすれば人民解放軍を動かせることを意味する。

台湾侵攻の発生リスク

そして、台湾情勢の悪化という点に関しては、多くの企業も懸念を示しているのが実情である。台湾侵攻が経済的合理性がないとはいえ、実際にリスクはあると考えている人は多い。

「台湾情勢」日本企業の約6割“リスクとして感じている”

2024年2月26日 4時55分

いわゆる「台湾有事」への懸念が強まるなか、日本企業のおよそ6割が台湾をめぐる緊張の高まりをリスクとして感じているという調査結果がまとまりました。

この調査は、コンサルティング大手の「KPMGコンサルティング」が上場企業などを対象にアンケートを行ったもので、320社余りから回答を得ました。

それによりますと、特に影響が懸念される経済安全保障上のリスクを、複数回答で尋ねたところ、台湾情勢の緊迫化が64%、中国による貿易管理の規制強化が58%、アメリカによる対中国の規制強化が57%でした。

NHKニュースより

このリスクというのは台湾本島への上陸作戦があると考えているよりは、海上封鎖を含む台湾の経済的な停滞を含む話であると思う。そして、そういった懸念は困ったことに十分に考え得るのだ。

更に言えば、台湾を海上封鎖すると言うことはすなわち日本のシーレーンに壊滅的なダメージを生ずるという意味でもあり、都合が悪い。

そして、発生可能性が低いとはいえ、発生を想定するのが訓練というものである。発生可能性がゼロというのであれば別だが、万が一に備える必要があるのが軍隊なのだから訓練をやらないという話にはならないのだ。

発生可能性があれば訓練は無駄にならない

そういう意味でこういった避難計画を立てて、机上演習してみる。或いは、実行可能なのか訓練を実施するというのは、意味のあることとなる。

避難計画、宮古は鹿児島経由 八重山は福岡、台湾有事想定―政府調整

2024年02月28日07時03分配信

政府は台湾有事を想定した沖縄県・先島諸島の住民避難計画に関し、宮古地域(宮古島市、多良間村)は鹿児島空港を、八重山地域(石垣市、与那国町、竹富町)は福岡空港を経由地とし、両空港から各地の避難先へ移送する方向で調整に入った。九州各県と山口県が2024年度中に策定する避難受け入れの「初期的計画」に反映させる。

時事通信より

この話に関しても、またぞろ批判をしている方々がお見えであるが、困ったことである。

日本国民の避難を計画するのは、政府としても当然の話。

政府は現在、受け入れを担う九州と山口の自治体に対し(1)ホテルや旅館、公営住宅といった宿泊設備(2)食料などの備蓄(3)利用可能な医療機関―についての情報を問い合わせている。3月末までに結果をまとめ、具体的な避難先の選定に活用する。

時事通信「避難計画、宮古は鹿児島経由」より

避難の対象は先島諸島の住民と観光客計約12万人と見積もっているのだけれど、リスクマネジメントを考えると台湾からの避難(難民発生)を想定する必要も出てくる。そして、その中にどの程度の工作員が紛れ込む可能性があるのか?といったことも考えねばならないだろう。

そういう意味では、どこかの離島に避難場所を設定するなんて事まで考慮しなければならないかもしれない。なかなか難儀な話ではあるが。

……と、ちょっと話が逸れてしまったけれども、離島奪還訓練の必要性と台湾有事の発生を想定した避難計画の策定というのは、緊急性の高い話として行わねばならない検討事項であろう。そして、日米合同訓練をするということは、非常に大切な事であると思う。

そういえばどこかの新聞は「支那を刺激するから、訓練を止めろ」とか社説を書いていた気がするが、はて、どこの間抜けだったかな

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ミリオタの七面鳥としましては、新型の20式小銃がどれくらい役に立つのか、評価を聞きたい気持ちでいっぱいです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      20式小銃ですか。あまり情報を見かけませんよね。「水に強くなった」とか、そんな話は聞きますが……。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    昨年までアイアン・フィストは米国で実施されてきたけど、今年沖縄で機動団と海兵隊が足並みを揃えたことは、周辺諸国に圧力をかける意味で実に効果的だったと思う。

    沖縄県知事と国交省の『辺野古代執行』訴訟で、2/29最高裁が県知事の上告を棄却し、県知事の敗訴が決定した。辺野古鳴動してデニー一匹だったね。
    本当は米海兵隊基地など無いに越したことはないが、いまは必須だから仕方がないね。馬毛島自衛隊基地も24時間態勢で怒涛の工事が進んでいるそう。

    沖縄離島でのシェルター設置も急務だね。こちらは有るに越したことはない。仮に12万人としても、全員を本土へ退避させる余裕は恐らくないだろうから。

    身も蓋も無いが、ウクライナ支援より沖縄防衛のほうが遥かに大事だ。ウクライナ支援はEUがやるべきことだからね。

    • 木霊 木霊 より:

      あー、正確には去年からですかね。アイアン・フィストの国内開催は。
      いずれにせよ、国内でしっかりと訓練することは大きな意味があります。そして、ご指摘通りシェルター設置なども必須ですから、しっかりと予算を付けて工事を急いで欲しいですね。幸いにも活動家は多面的に行動できるほど居ませんから、同時に工事を急げば、大したことは出来なくなります。

      そして、ウクライナへの支援よりも重要と言うことも正にご指摘の通りですが、ウクライナへの支援を止めるというのもアナウンス効果的に宜しくありません。あくまでヨーロッパが主体でやりますよと言うスタンスを崩してはダメですが、日本としてもやれることを頑張りますよと言う姿勢が重要ですね。

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