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三菱重工製、車両搭載型ドローン撃墜システムの話

安全保障
この記事は約6分で読めます。

リクエストがあったので、触れておくことにする。実は、以前に触れたんだけど記事が残っていなくて。だから、過去のニュースを題材に言及して行くことになる。最新ニュースでないことにはご容赦を。

まるでSF、レーザーでドローン撃墜を三菱重工と川崎重工が競演

2023.03.20

SFの世界から飛び出したような兵器が姿を現した。三菱重工業と川崎重工業は、防衛・セキュリティーの総合展示会「DSEI Japan」(2023年3月15~17日、幕張メッセ)に、高出力レーザーを使った車両搭載型のドローン撃墜システムのプロトタイプをそれぞれ出展した。

日経XTECHより

今年の防衛・セキュリティー総合展示会「DSEI Japan」で、ソレは発表された。

レーザー兵器

ドローン迎撃システム

ドローン迎撃をレーザーで行うという考え方は、アメリカでも実用化されつつあって、アメリカ海軍のサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦に搭載したレーザー兵器でドローンを撃墜したと報じられたのは、2020年のこと。

軍艦からレーザービームでドローンを撃墜するテストに成功したとアメリカ海軍が発表
テクノロジーの発達と共に無人航空機(ドローン)の軍事利用が注目を集めており、既に「チープな手作りドローンが各国の軍隊にとって脅威となっている」との指摘もあります。そんな中、アメリカ海軍のサン・アントニ...

固体レーザー兵器を艦載して、ドローンを撃墜するデモンストレーションを行って「成功した」と報じている。

CNNでもこのニュースを記事を取り上げていた。

The US successfully tested a laser weapon that can destroy aircraft mid-flight

Updated 3:56 PM EDT, Sat May 23, 2020

Hong KongCNN —

A US Navy warship has successfully tested a new high-energy laser weapon that can destroy aircraft mid-flight, the Navy’s Pacific Fleet said in a statement Friday.

Images and videos provided by the Navy show the amphibious transport dock ship USS Portland executing “the first system-level implementation of a high-energy class solid-state laser” to disable an aerial drone aircraft, the statement said.

The images show the laser emanating from the deck of the warship. Short video clips show what appears to be the drone burning.

~~対訳~~

アメリカは航空機を飛行中に破壊できるレーザー兵器の実験に成功しました

米海軍の軍艦が、航空機を飛行中に破壊できる新しい高エネルギーレーザー兵器のテストに成功したと、海軍太平洋艦隊が金曜日の声明で発表した。

海軍が提供した画像とビデオには、水陸両用輸送ドック船USSポートランドが「高エネルギー級固体レーザーの最初のシステムレベルの実装」を実行し、空中のドローン航空機を無効化する様子が映っていると、声明は述べている。

画像は、レーザーが軍艦の甲板から発せられる様子を示しています。短いビデオクリップは、ドローンが燃えているように見えることを示しています。

CNNより

他にもイスラエルでビーム兵器「Light Blade」の実用化が報じられていたし、韓国もまた開発に着手して「百発百中だった」と報じていた。

つまりまあ、各国がしのぎを削って開発を続けているということだね。

防衛省の資料を見ると、やっぱりアメリカが先行しているような印象だけれども。

三菱製のレーザー兵器

で、日本も防衛相が旗を振って、三菱重工が実用化に漕ぎ着けたというのが、冒頭のニュースだ。いや、正確にはプロトタイプが公開されただけなので、実用化にはもうちょっと時間は必要かも知れない。

2021年11月に「車両搭載高出力レーザ実証装置の研究試作」として防衛装備庁三菱重工と契約した案件の成果というわけだね。

展示された実物はこんな感じのアイテムで、比較的小型であることが分かる。

なお、防衛省が公式にコンセプト動画も紹介している。

今のところ、車載型のものを想定しているようだ。

イメージ動画はしっくりこないが……。

同社のブースではドローンを撃墜するテストの模様を撮影したビデオを流し、実際に撃ち落としたドローンも展示した(図2)。なお、大気中の水分によるレーザー光の吸収の影響については、「ある程度の降雨では大きな問題はないが、霧やもやの影響については今後確認する」(説明員)としている。

日経XTECHより

レーザー兵器にありがちな欠点はあるようだが、種子島で既に実証試験をしており、今後の展開としては車載型と艦載型の実証を予定している模様。レーザー兵器の素晴らしいところは、ドローンを攻撃して外した場合にも弾が落ちてこないことだね。ミサイルを撃ったら、目標を外して破壊命令を出したところで、破片が地上に降り注ぐことになるから。

海自、電気駆動型高出力レーザーシステムの艦艇搭載性等に関する調査研究を契約
防衛省・自衛隊の調達について紹介するブログです。

海上自衛隊用の設備といえば、レールガンの方もちょっと気にはなっているんだけどね。

海自、40mmレールガンの仮装備等(調査工事)を契約
防衛省・自衛隊の調達について紹介するブログです。

レーザー兵器は1回照射するのには電気代の数百円程度のコストがかかるだけだと試算されていて、安価なドローンによる偵察・攻撃に一定の効果が期待できる。

威力には課題も

ただ、三菱重工のプロトタイプは、10kWの固体レーザーを利用するタイプで、射程は1.2km程度。各国並に100kWくらいには出力を高めたいとしているのだが、そうすると出力の問題が出てくる。

じゃあ、日本はやっていないのか?というと、どうやら川崎重工の方が手掛けている模様。

「ドローン」1機漏らさず迎撃、防衛省が技術研究急ぐ ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
防衛省は多数の飛行ロボット(ドローン)によるスウォーム攻撃への迎撃効率向上に関する研究を2023年度に始める。高出力レーザーやマイクロ波など、それぞれの技術の特性に応じて役割を最適配分し、ドローンを1...

これが情報が少ないのだが、どうやら先行テストとして50kWのタイプは実証済みで、100kWのタイプを川崎重工が作っているらしい、ということのようだ。

これ、テスト風景らしい。明示はしていないのだけれど、おそらく時期的に50kWのタイプのテスト風景だろうと思う。化学励起ヨウ素レーザーを使ったレーザー兵器とのことだが、小型化に難があるので車載型にまで小型も難しく、艦載型くらいにしか対応出来そうにないのは残念である。

高出力のレーザーシステムは、日本国内の複数のメーカーが技術を持っているし、大電力の発電に関しても技術があるので、もうちょっと予算を確保できれば研究開発は加速できるかもしれない。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    さっそくの記事をありがとうございます。おかげで概要は良く掴めました。
    まだまだかぁ。予算もっと割けないのかなぁ。もう中国ドローン対策完璧ぐらいに思って空騒ぎしてしまいました。
    出力装置はかなりコンパクトですね。川崎重工業のやつも、大型トレーラーのコンテナくらいには収まってるし。放射部分はかなりコンパクトなので驚きました。もっと、こう……東宝の地球防衛軍とか(笑)ああいうゴツゴツしたのを想像してましたから。ただ…やはり開発を進めないと未だ未だ……。発電装置のデカさという点ではレールガンも同様と思われるので、そこがコンパクトかつ大電量化すると、どっちも上手くゆきそうですね。
    あと、すっかり忘れてましたが我が国は多湿な気候で、モヤや霧はどーにもならない弱点があるんですね。すると、やはりレールガンが良いのかなぁ?
    武器輸出禁忌を撤廃したら、日本製の高性能レーザー砲は中東でニーズありそうに思えますが。そう考えると、もう非核三原則だの武器禁輸だの、御花畑はいい加減にしろですねぇ。

    • 木霊 木霊 より:

      三菱重工の製品のできを見る限り、予算というよりも決断力かなと。
      射程が1.2km程度でも、車載タイプなら使いどころはありそうです。エイムに多少課題があるのかもしれませんが、試作車両くらい作って重要施設の防衛に使っても良さそうなものです。基地周辺をぶんぶん飛んでいる取材用のドローンを撃ち落としてしまえば(以下自粛

      レールガンの方は良い感じで仕上がっているようですが、レールガンはレールガンの、レーザーはレーザーの良さがありますから、どちらも頑張って実用レベルまで引き上げて欲しいですね。

  2. アバター BOOK より:

    木霊さま 皆様 こんばんは

    >三菱重工のプロトタイプは、10kWの固体レーザーを利用するタイプで、射程は1.2km程度。
    >各国並に100kWくらいには出力を高めたいとしているのだが、、、おそらく時期的に50kWの
    >タイプのテスト風景だろうと思う。化学励起ヨウ素レーザーを使ったレーザー兵器とのことだが

    ふむふむ。 数10kWクラスと100kW超では、技術的にもカテゴリ違うのでは?

    まず、10kW 射程1.2km は、悪くない、どっちかと言えばパワーアップより 小型・低コスト化が望まれるのでは? ウクライナ見てると理想はドローンや歩兵が運べる程度だけど現行技術では無理そうだし
     自衛隊運営なら海上戦や沿岸戦が主(であってほしい)のでヘリコプターとかボート用なんとかどうかな。

    ところで10kwクラスのファイバーレーザー発振器
     例1:フジクラ10kWクラス
      ttps://www.fiberlaser.fujikura.jp/products/high-power-fiber-laser.html
     例2:IPGフォトニクス(米国)
      ttps://www.ipgphotonics.com/jp/198/FileAttachment/YLS-U+Series+Datasheet.pdf

    体格でまだ米国に倍負けてる(三菱重工のレーザーは日本電産に売却したみたいで何か詳しいの出てこない)が木霊さん記事の光学部分、ニコン・キャノン・エプソンぐらいも参入してこないかな、、、、

    余談ですがレーザー兵器は兵器のデモ動画みたいに光線が見えるようだと経路でエネルギーロスしてる証拠だから、途中は見えないのが良い。多分こんな感じが良い
     ttps://www.fiberlaser.fujikura.jp/movie/chokujyoshosya02.mp4

    次100kW超クラス

     化学励起ヨウ素レーザー:って要するに化学燃料式のようですね。(燃やすわけじゃないけど(笑) まあバカでっかい発電機やバッテリー運ぶより効率は良いし、なんなら小型化できれば戦闘機にも積める?
     国内だと遠藤先生のとこが凄いですね。

     化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)
      ttps://teamcoil.sp.u-tokai.ac.jp/researches/whatsCOIL/index.html
     大出力レーザーによるスペースデブリ除去
      ttps://teamcoil.sp.u-tokai.ac.jp/researches/debris/index.html

     地上からスペースデブリ落とせるらしい。兵器転用するとスゲー!

     自衛隊・防衛装備庁から資金が出ると、日本学術会議が妨害するんだろうな。。。

    • アバター BOOK より:

      あ、技術カテゴリー
       <100kW : 産業用ファイバーレーザー
       >100kW : ヨウ素レーザー

      て感じです。 カテゴリ違いと書いて何も書いてないこと気づきましたごめんなさい

    • 木霊 木霊 より:

      > ふむふむ。 数10kWクラスと100kW超では、技術的にもカテゴリ違うのでは?

      いやー、技術としては全く違いますよね。
      もちろん、10kwクラスは近接迎撃という意味で使い勝手の良いシステムだと思います。破壊力がどこまで稼げるのかはわかりませんが、ドローンを撃ち落とす程度の性能があることは既に示していますから、パッケージとしては色々なテストを経た上ででしょうが実戦投入可能なレベルまで高められているような感じですね。

      100kwクラスは、もうちょっと攻撃距離を伸ばしたいという用途に使えるようです。
      ただ、ヨウ素レーザーは昔から研究されているようなんですが、イマイチものにならないようなんですよね。やっぱり資金をもっと積まないとダメなのでは。

  3. アバター BOOK より:

    木霊さま 皆様 こんばんは

    追記 山童さん もとい 河太郎さん向け(笑)

    >もう中国ドローン対策完璧ぐらいに思って

    BOOK妄想に従えば、少なくとも都市部は あとちょっとスマホ 5,6Gインフラが整えばハード的には大丈夫じゃないかな?(ソフト・法制度が問題かもですが、、、)

    5~6G携帯が「本領を発揮する」「建設中の」電波 数10~100数十GHz帯 ってもう光・赤外線に近づいいてて直進しちゃうので、基地局アンテナはAESAレーダーと殆ど同じ構造してます。

     なので基地局はスマホの位置(範囲数cm)を狙って電波ビームを放出し、スマホが移動しても追従します。
     追従速度は、、、理論上限を言えばマッハで測れる速度では振り切れませんね。(レーダーと等価ですから(笑) マッハでなくワープで測る速度なら振り切り可能かな?)

     さて、日本の5Gインフラ。米国勧告に従い支那ファーウェイは排除しましたから、有事にはレーダーに転用できますし、イザとなればマイクロ波・防衛兵器に転用できます。

     携帯基地局、通常10W程度ですが、有事に100局ほど同じ方向に向ければ1kW。 1kW電子レンジのパワーをご存じなら

     偵察用ドローンなど一撃撃墜可能と、お分かりかと、大型ドローンならもっと沢山の局or秘密の?ハイパワー局が協力すれば、、、、

     「今」対ドローンレーザーの良し悪しを心配するのは「前線」のことで、民間の守りはもう出来てると思って良いのじゃないかな?

     つくづく「支那ファーウェイ」基地局を排除していなかったらと、想像すると恐ろしい。

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