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スウェーデンのNATO加入に前進

北欧ニュース
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去年の8月辺りの続報なのだが、スウェーデンがNATOへ加入した。……いやまだだった。

スウェーデンのNATO加盟、トルコ議会が承認 残るはハンガリーだけ

2024年1月24日

トルコ議会は23日、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める法案を287対55の賛成多数で可決した。

BBCより

特別な話はないので、「トルコの議会承認がなされたよ」という話だけだ。

NATO拡大

トルコ議会は承認

さて、去年の4月にこんな記事を書いた。

北欧3カ国がNATOに加入するよ、という話だ。

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ノルウェーはNATOの設立メンバーであるが、スウェーデンとフィンランドは長らくNATOへの加盟を躊躇していた。

ところが、ロシア軍がウクライナに侵攻してきたので、親ロシア派であったスウェーデンとフィンランドとしても方針を変えざるを得なくなった。

西側とロシアの中間の立ち位置で、中立的な立場で商売をしてきた2カ国だが、同じ立場だったウクライナが飲み込まれてしまったのである。明日は我が身だと感じたのだろう。

だが、NATO加盟には全加盟国の同意が必要となる。これは、加盟国への戦争行為に自動参戦する規定があるためだと言われていて、どこか1カ国が攻撃されたら、全員で対応するというのがNATOの規定となっている。集団自衛権の発動は加盟国に義務づけられているのである。

で、スウェーデンとフィンランドの加盟に反対したのがトルコだった。

トルコも同意

トルコは、政治的に反対に立ち回った方が利益が大きいと判断していたからなのだが、トルコも親ロシア政策を続けていながらNATOに加盟している。

何故反対するのかは、ちょっと分かりにくい。

スウェーデンは2022年5月、ロシアのウクライナ全面侵攻を受けてNATO加盟を申請。しかしトルコは、同国がテロ組織に指定するクルド人武装勢力をスウェーデンが受け入れているとして、加盟に難色を示していた。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が支持に同意したのは昨年7月だった。

BBCより

その理由は記事にある通り、トルコにとってスウェーデン国内に内在するテロ組織の殲滅は、死活問題となるからだ。

軍事国家で大統領であるエルドアン氏の独裁体制が続いているトルコだが、クルド人武装勢力との対立にはかなり手を焼いている。そして、トルコ国外に逃げたテロリストを保護したのがスウェーデンで、断続的にスウェーデンからトルコのテロ組織への資金援助が続いていると言われている。

この点についてスウェーデンは、スウェーデンの国内法に基づいてテロ組織を検挙し、トルコに引き渡す約束や資金援助を止めさせるように働きかけることとした。また、トルコはF-16の耐用年数延長のプロジェクトを推進するにあたって、おそらくアメリカからの何らかの優先的な取り扱いを受けたこともあって、議会に諮ることを約束したのが去年の7月。

時間はかかったけれども、トルコ議会の承認も得られたので、めでたくスウェーデンもNATOに加入したということになった。いやまだだった(2回目)。

残るはハンガリー

実は、スウェーデンの加盟批准をしていないのはもう1カ国あった。ハンガリーである。

これにより、スウェーデンの加盟を批准していないNATO加盟国はハンガリーだけとなった。

BBCより

何だよ、ハンガリー。

ハンガリー、果たしたロシアへの義理 NATO拡大容認

2024年1月25日 1:35 (2024年1月25日 8:51更新)

ハンガリーのオルバン首相は24日、米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)へのスウェーデンの新規加盟を容認する考えを表明した。NATO拡大には既存の全加盟国の承認が必要で、最後まで慎重だったオルバン氏の動向に注目が集まっていた。突然の方針転換は、欧州に軸足を置きながらロシアにも接近してきたオルバン氏のバランス外交の一環と位置づけられる。

日本経済新聞より

……と、思ったら加盟支持してきたよ。何だよ、ハンガリー。

というか、ハンガリー、実はトルコと違って以前から強硬反対派という感じではなかった。

ハンガリー首相にEU内から批判、プーチン氏との会談巡り

2023年10月27日午前 10:30

欧州連合(EU)首脳会議のためにブリュッセルに到着したエストニアとルクセンブルクの首脳は26日、ハンガリーのオルバン首相が今月の訪中時にロシアのプーチン大統領と会談したことを批判した。

エストニアのカラス首相はオルバン氏にこの問題を提起すると述べ、ルクセンブルクのベッテル首相はプーチン氏との会談はロシアの侵攻を受けるウクライナ国民に「中指を立てる」ようなものだと非難した。

ロイターより

ただ、立ち位置は親ロシア派であり、対ロシア制裁にも繰り返し反対してきた。まあ、トルコみたいな立ち位置でやってきた国なんだよね、ハンガリーは。

経済分野では、輸入する天然ガスの7割が未だにロシア産である。ロシアから融資を受けて原発を作る計画もあるようだ。

ただ、この姿勢を続けることも危うくなってきた。流石にEUの中でただ1国反対を続けるのは難しいのだろうね。

ハンガリーは、スウェーデンの敵対的態度を批判している。ハンガリー政府の報道官は昨年3月、スウェーデンの政府高官が「崩れかけた道徳的優位の王座」に座っていると非難した。スウェーデンは以前、ハンガリーがEUの民主主義の原則に背を向けていると非難したことがある。

だが、事態進展の兆しもある。ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は23日、クリステション首相をブダペストに招き、NATO加盟に関する協議を行うと発表。書簡の中で、「より集中的な対話が、信頼関係の強化に貢献するだろう」と述べた。

BBCより

なかなか厳しい立ち回りをしているハンガリーだが、オルバン氏、相当面の皮が厚いのだろう。自国の利益を引き出すために、立ち回るだろうと思われる。

とはいえ、ほぼ決定したスウェーデンのNATOの加盟を止めるだけの力はハンガリーにはないので、いつまで引き延ばすのか?が、ポイントなんだと思う。

正直、ハンガリーとスウェーデンの間に決定的な確執があったわけではない。ある意味、ハンガリーはNATOの中で、或いはEUの中での政治的な駆け引きをやっているだけなのだ。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    画像保存して置けば良かったのですが、この件で「これで欧州側のロシアの不凍港は、出口を全部NATOで抑えられた」という呟きをついったーで見ました。
    確かに、その通りかと。
    なので、ウラジオとかの重要度が上がるかも……

    ハンガリー、ポーランドその他も含め、ランドパワーのスーパーパワーの前には、小国はいかに生き残るか、自分は利をかすめ取るかを常に考えなければならない、その意味で、旧東欧諸国の生き様は納得は行くのです。
    行くのですが……とはいえ、これでロシア的には頭の痛い問題が増えた(確定した)のも確か。

    ロシアのやけくそが、いつまで続くのでしょうか。ヒートアップしないことを祈ります。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      ロシアにとって出口を全て抑えられたのは痛いですね。
      そして、日本は北方領土に関して懸念すべきでしょう。北海道までその覇権を伸ばす可能性が高い。出口を求めてさまようロシアの餌食になる前に、しっかりと対応出来る体制を構築すべきです。支那や北朝鮮が手を出してくる可能性もあります。

  2. アバター 一読者 より:

    NATOの東方拡大を恐れる余り、ウクライナに攻め入った結果がこれ。
    どんな戦略を描いて侵攻したのか甚だ疑問だ。

    • 木霊 木霊 より:

      どうしてそういう判断になったのか?その辺りは気になりますけど、ウクライナ侵攻を決断したプーチン氏、未来の歴史家はどう評価するかも気になるところ。
      ロシアの戦略はどうだったのか?は、結果から見るとかなり杜撰だったのではないか、という疑いが持たれますね。

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