とんでもない記事が出てきたな……。
富士通は賠償負担する必要、郵便局えん罪事件で責任判明なら-英政府
2024年1月9日 9:30 JST 更新日時 2024年1月10日 13:02 JST
富士通は、英国で数百人の英郵便局管理職が窃盗の罪で不当に起訴されたり有罪判決を受けたりした一大冤罪事件で、公的な調査によって責任が認められた場合、補償を行う必要がある。英政府閣僚らが主張している。
Bloombergより
イギリスの閣僚も無理筋で騒いでいるというわけではなさそうなんだが、ヨーロッパでは割とこの手の賠償も通ってしまう可能性が。アメリカほどではないが、結構理不尽な判決もあるからね。
イギリス郵便局の問題が日英関係にも影響するか
サブポストマスターが現金着服
ちょっと悪意のあるサブタイトルの付け方だが、「サブポストマスター」というのは、イギリス郵便局の郵便局長のことである。
この各地の郵便局長550人が冤罪で逮捕される事件がイギリスで発生し、大騒ぎになったというのだ。
郵便局長550人が冤罪被害 横領容疑、真相は勘定系のバグ
2020.03.03
英国郵便局の窓口業務を手がける英ポストオフィスで大量の冤罪が生じた。長年にわたって郵便局長550人に、誤って横領の罪を着せていた。20年ほど前に構築した勘定系システムにバグがあり、窓口の現金とシステム上の残高に不整合が頻発していたのが原因だった。ポストオフィスは同社を訴えていた郵便局長に合計5800万ポンドを賠償する。
日経XTECHより
記事によると、2000年代前半以降、イギリスでは郵便局業務に勘定系システムのHoraizon(ホライゾン)を導入して金融サービスなどを提供している。このホライゾンにバグがあったために冤罪が発生してしまったようだ。
問題があると認定されたHorizonは、ポストオフィスが2000年に運用を開始した勘定系システムである。英国の郵便制度は民営化されており、郵便事業を手がける英ロイヤルメールと、郵便局の窓口業務を手がけるポストオフィスなどが存在する。ポストオフィスは英国内に約1万1500の郵便局を展開し、郵便サービスに加えて年金受取口座や保険販売といった金融サービスや、提携する銀行の窓口サービスなどを提供している。現在のHorizonはこれらの窓口業務を支え、1日当たり600万件以上のトランザクションを処理している。
日経XTECHより
このホライゾンの抱えたバグのために、金融系の業務において郵便局窓口における現金残高と、ホライゾンの記録する残高が一致しないケースが多々あり、これをヒューマンエラーだと認定して郵便局長を処分してしまったようなのだ。
アラン・ベイツ氏を代表者とする元サブポストマスターのグループは2016年、ポストオフィスによっていわれなき横領の罪を着せられたとの訴えを起こしていた。運営する郵便局の窓口における現金の残高とポストオフィスの勘定系システム「Horizon」が記録する残高とが一致しなかった際に、ポストオフィスから「現金を横領していた」と疑われた。そして2000年代前半以降、現金の不足分を弁償させられたり、横領の罪で警察に告発され逮捕・投獄されたりしていた。これらの損害を賠償するようポストオフィスを訴えていた。
日経XTECHより
いやいや、550人もの冤罪を生み出す前に、システム側のトラブルを疑おうよ。大体、人手でチェックしていたら金額が合わないなんてことはそれなりに発生していたわけで、銀行員に聞いたら銀行業務でもそれなりの頻度で騒ぎになるようだ。
まさかコンピューターがミスしないだろう?と、信じて疑わなかったらしいのだが、キチンと調べたのか?調べなかったから、コレだけの冤罪を産んだのだろうね。
テレビドラマが切っ掛け
で、今回このような騒ぎになった背景には、どうやらこの事件を取り扱ったドラマが関係しているようだ。
同社は勘定系システム「ホライゾン」を2000年前後から英ポストオフィスに提供してきた。このシステムの欠陥により、「サブポストマスター(民間受託郵便局長)」と呼ばれる英郵便局管理職が窃盗の罪を着せられ、数百人が破産したり収監されたりし、何人かは自ら命を絶った。
この問題を巡って、最近のテレビドラマ化によって国民の怒りが高まり、政府は被害者への補償を迅速に行うと約束している。
Bloombergより
この「最近」というのが、2024年1月に本騒ぎを題材として作られたテレビドラマ「Mr Bates vs the Post Office(ミスター・ベイツ vs 郵便局)」らしい。
全4話が放映され、国民的に盛り上がっちゃったということらしいんだが……、ドラマだろう?
富士通は何に関与していたのか
さて、Bloombergは富士通に責任があるかのような書きっぷりだが、富士通が何故イギリスのシステムに関与していたのかが良く分からない。
ので、ちょっと調べて見た。
どうやら、ホライゾンシステムを作ったのはICL Pathway Limitedという会社らしい。ICL(International Computers Limited)はイギリスのコンピュータサービス会社で、1968年に設立されている。そして、ICLのメインフレーム事業は、郵便局や内国歳入庁、労働年金省、防衛省などのイギリス公共部門との契約で、イギリスの公共事業会社に対して高いシェアを持っていたとのこと。
富士通との関係は、1981年のICLの経営危機以降、技術提携という形で深まったらしく、富士通も公共機関などに対する強みを持っていたことで、ICLとの親和性が高かったのだろう。で、ICLはIBMとの競合で富士通との関係を更に深めて、1990年には富士通がICL plcの株式80%を取得し、1998年にはICLの唯一の株主になった模様。
つまり、富士通はホライゾンを作ったICLを買収して株主になっているということだね。では、問題となるホライゾンシステムの開発は何時始まったのか?というと、1996年にICLが契約を獲得するところから始まっている。つまり富士通傘下のICL Pathway(1995年に設立された富士通の子会社)が実質的な責任を有していたということになる。
そうすると、富士通の責任があるということにはなりそうだ。実際に富士通がこの件にどれだけ絡むことが出来たのかはさておき、責任を負うべき立場にあるのは間違いがない。
調査は未だ終わっていない
ただ、本件はバグの存在が明らかになったわけではなく、裁判所がバグ、エラー、欠陥が含まれたシステムだと認定した状況である。
これより先にストライド氏は、英ラジオ局「タイムズラジオ」に対し、調査によって「富士通が多くの意図的ミスを犯し、そればなければ起きなかったであろうさまざまな問題を誘発したと判断されれば、それはかなり深刻な事態ということであり、非常に深刻な結果を招くことになるだろう」と語っていた。
Bloombergより
ところが、Bloombergは富士通がこうしたミスやバグを意図的に放置したというようなことを報じていて、何とも悪意を感じる話ではある。
この手のシステムは、運用開始前にテスト運用するのが一般的なんだが、この時のテストでは問題が起きなかったということなんだろうか。そして、郵便局側が支店の郵便局長の「システムの欠陥の訴え」を無視したことは、問題とならないのだろうか。
この件に関して、2013年にICLのプログラムにバグがあったというレポートが既に出ており、しかしシステムには問題がなかったという結論を出している。だが、どうやらシステム的に問題があるのだということになりそうである。恐らくだが、調査はこれからなんだろうね。
富士通の広報担当者は、サブポストマスターらの苦痛に一役買ったことを謝罪し、英政府の実態調査に加わっていると説明。「何が起こったか理解し、そこから学ぶために全面的に調査を支援している。サブポストマスターと家族の生活に及んだ計り知れない影響が、調査結果からあらためてうかがえる」と電子メールでコメントした。
Bloombergより
被害者の救済のためには問題点をしっかり解明できる必要があるのだけれど、イギリス世論がドラマのお陰で盛り上がっちゃっている現状だと、なかなかそれを待てないのだろうね。
そもそも一番責任を負うべきは郵便局のハズなんだが、そこはどうなるんだろうね。
コメント
こんにちは。
みずほ系のアレに比べれば、かわいいバグなのかも知れませんが……
バグのないシステムは存在しない、同じミスが勘定系で多発するなら、そりゃシステムも疑いましょうね、という教訓ですね。
コンピュータなんて(AI)も、所詮は道具に過ぎないんですから。
※マイクロソフトの、バージョンアップの度に「仕様です」が増えるのは本当に許さない。
こんにちは。
みずほのアレもどうにもならん状況なんでしょうけれど、止めることも難しいという地獄みたいな話です。
コンピュータは「ミスを犯さない」というのは、幻想ですよね。プログラム通りに動くだけで、ミスをしないわけじゃないんですから。