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支那市場に望みをかけるドイツ

北欧ニュース
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ドイツの自動車会社の生存戦略か。正直、上手くいくとは思えないのだが、EVシェアが増えていることを考えれば当然の戦略なのだろうか。

アングル:ドイツ車、中国市場で劣勢 EVが変えた業界勢力図

2023年4月23日7:33 午前

ドイツの自動車メーカーが、18日に開幕した世界有数の自動車展示会「上海国際自動車ショー」に全精力を注いでいる。電気自動車(EV)時代に優位に立つには、中国で成功できるかが勝負の分かれ目になるとみているためだ。

ロイターより

ただ、思い切った戦略をとることの多いドイツだが、大抵間違った方向に行く印象なんだよね。全てが間違いと言い切れないんだけど、歴史を見るとねぇ。

ドイツは支那でEVを売りまくりたい

EV戦略で支那を制することは出来るか

さて、ドイツが支那のEV市場で勝負をかけるというのが、冒頭のニュースの内容である。

確かに、支那人の富裕層がステータスを得るためにドイツ車を買う時代があったのは事実だ。しかし、そういった個人の嗜好はあっさり支那共産党の方針で覆されるのが支那の日常である。

フォルクスワーゲンを始めとするドイツ車が、支那でそこそこ売れているのは事実らしいんだけどね。

今年の上海国際自動車ショーは、フォルクスワーゲン(VW)が取締役会メンバー全員に加えて従業員100人余りを現地入りさせるなどドイツ勢の存在感が際立ち、日本勢やフランス勢と対照的だ。コンサルティング会社オートモーティブ・フォーサイトのエール・ツァン氏は、ドイツメーカーが課題を深刻に受け止めている証左だと指摘する。

ロイターより

先日行われた上海国際自動車ショーで、フォルクスワーゲン社が力を入れた広報を行ったことが記事になっている。

まあ、ドイツメーカーの乗用車販売の1/3が支那へのセールスだというから、敗北するわけにはいかないという意気込みは分かる。そして、ドイツ車はそこそこ優秀でデザインに優れている。

VWが上海ショーで新型EV「ID.7」、航続距離は700km

2023.04.21

ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、「上海モーターショー」(一般公開日:2023年4月20~27日)で、最新の「IDシリーズ」となる「ID.7」を発表した。ブランド初のアッパーミッドサイズの電気自動車(EV)セダンで、欧州と中国で2023年後半に発売する予定。その後、2024年に北米にも導入する。

日経XTECHより
航続距離が最大700kmのアッパーミッドサイズセダン「ID.7」

優れた技術に優れたデザインというのが、かつてのドイツ車の印象であったのだが、EVに関しては若干後追いの状況になっているらしい。

だが、なんとか売上を伸ばしたいということのようだ。

ID.7は、欧州・北米向けをドイツEmden工場で生産し、中国では現地生産する。フォルクスワーゲンは、2026年までに10車種のEVを導入する計画で、2023年は「ID.3」、ロングホイール版の「ID. Buzz」、そしてこのID.7を発売する。

日経XTECHより

ただ、支那での現地生産は、必ずしも上手くいくとは……。

BYD優勢

現在、支那におけるEV市場の圧倒的勝者はBYDなんだそうな。

ドイツメーカーは中国のEV市場でシェアが上昇しているが、まだまだ小さい。ロイターが中国汽車工業協会(CAAM)の販売統計をもとに計算したところ、中国EV市場におけるアウディ、BMW、VW、メルセデス・ベンツのドイツメーカー4社の合計シェアは2022年が4.8%で、20年の2.2%から拡大した。しかし、4ブランドのEV販売を全て合わせてもBYDの4分の1にすぎない。

ロイターより

支那共産党は、EV普及のために随分と補助金を突っ込んだうえ、「愛国」のかけ声の下に、国産車両の購入を進めた。そして、ここへ来て補助金が打ち切りになったことから、更にコスト的に買いやすい支那製のEVの普及に拍車がかかったようだ。

中国BYD、テスラ超えへ物量作戦 23年EV販売倍増狙う

2023/4/6 19:40

中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)が生産・販売規模の拡大を加速する。2023年に最大で前年比2倍の360万台とする新車販売目標のうち約半分をEVが占めるもようで、米テスラを上回って世界首位になる可能性もある。

日本経済新聞より

特にBYDは支那の国内シェアも、世界シェアも驚異的な速度で伸ばしている。おそらく今年はテスラの販売台数も抜くだろうと予想されている。部品の1つに至るまで自社生産できる強力なサプライチェーンを構築し、割安な車両を世界に販売できる体制を整えたことが強みのようだ。

おそらく、日本車メーカーも今後、相当苦戦を強いられるだろうとまで言われている。

さておき、2022年の支那のEV市場のシェアはこんな感じで、GMやテスラが食い込んではいるが、BYDが圧倒的である。そこにドイツ車が食い込めるのか?というとなかなか厳しいようだ。

ドイツメーカーは中国での販売てこ入れの一環として、中国人のEVブロガーやマーケティングの専門家などに声を掛けていると、実際に接触を受けたブロガーの1人が明らかにした。

中国ブランドは欧州進出のために新たな販売戦略を採っており、アナリストは欧州で既に地歩を築いているブランドがデジタル時代に対応するために、こうした動きから学ぶべきだとしている。

ロイターより

努力はしているみたいだけど、これ、色々とノウハウを盗まれるだけじゃないのかなぁ。

EV市場は成長市場?

群雄割拠の支那市場

ところで、支那のEV市場だが、巨額の補助金を投入してEV促進をしたは良いけれど、最近は少しブレーキをかける方向のようだ。

中国新興EV「小鵬汽車」、新型車不発で業績失速

2023/04/13 15:00

中国の新興EV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車の業績が失速している。

同社は3月17日、2022年10~12月期の四半期決算と2022年の通期決算を発表。それによれば、通期の売上高は268億6000万元(約5171億円)と、前年比28%の増加にとどまった。また、純損益は91億4000万元(約1760億円)の赤字となり、損失額が前年比9割近くも拡大した。

東洋経済より

巨大なマーケットがあるとはいえ、武漢ウイルスの蔓延でロックダウンするなど、かなり過激な政策も実施された。その結果、EVマーケットもやや低調だ。

中国のEV業界、BYDなど国内企業が伸び、テスラは失速状態―軸足を海外に移すのか(上)

2023/03/14

中国の自動車産業は2022年、コロナ禍の影響で販売減少を余儀なくされた。しかし、その分、今年は反発して大幅な伸びが期待される。今、自動車販売の中心になるのがEV(電気自動車)であり、外資系としてはテスラ、国内系としてはBYDが牽引する。

~~略~~

これまで中国EVでは外車神話があったが、BYDや上汽通用五菱などの国内有力企業が躍進して、テスラの牙城を脅かしていることは事実である。

霞山会サイトより

支那市場で覇権を握っていたテスラも、失速状態にあるそうな。直接的な原因は、支那で起こったEVの暴走事件に起因すると説明されていたが、それだけではないのだろう。

世界EVシェアは10%を超える

とはいえ、世界的な傾向を見ると、日本で起こっていることとは随分異なるようだ。

世界EVシェア、ついに自動車販売の10%

2023.1.18

2022年は電気自動車(EV)の世界販売台数が大幅に伸び、初めて自動車販売全体の10%に達した。米ウォール・ストリート・ジャーナルが調査会社のデータを基に1月16日に報じた。

~~略~~

LMCオートモーティブによれば、22年におけるBEVの自動車販売に占める比率は、欧州で11%、中国で19%だった。EVボリュームズによれば、プラグインハイブリッド車(PHEV)を含めた場合、欧州でのEVシェアは20.3%になる。

ドイツ自動車工業会(VDA)によると、欧州最大の自動車市場である同国では、22年に新車生産台数の25%をEVが占めた。同年12月にドイツ国内で販売されたEV台数は、内燃エンジン車を上回った。

JB Pressより

世界のEVシフトは加速を付けているようで、一気にEVの販売台数が伸びた模様。

このうちEV(BEV+PHEV)の販売台数は15,201台で、1ヶ月の販売数としては過去最高記録を更新。シェアは3.18%で前年の1.85%から約1.7倍に上昇しました。3月はBEVの成長に加え、これまで数カ月間ほど成長が弱かったPHEVのシェアも再度成長に転じ、前年の0.83%から1.4倍となる1.17%まで増加。主にトヨタや三菱のPHEVモデルが成長を牽引しています。

2023年4月11日 EVsmart Blogより

日本のシェアは3%程度らしいので、大きな差が出ているな。とはいえ、シェアの伸びは衰えていないそうなので、今後、EVを採用していく人は増えていくのだろう。

ただ、電力需給や電気料金のことを考えても、果たして本当にEV市場が広がるのかはよく分からない。EVの不便さも解消されておらず、購入者はそれとどう向き合うのだろうか。

日本国内でEV用充電インフラの整備が進む

日本国内の話になるが、国交省が重い腰を上げてようやく対策に乗り出した。

高速道路における電動化インフラ整備加速化パッケージについて (METI/経済産業省)

基本はEV用の充電インフラを増やそうという話なのだが、暫定的に高速道路から降りてEV充電を可能とする構成になっている。苦肉の策だな。

ただ、そもそも充電インフラが整備されたところで、EVには「充電時間」という問題点があり、継ぎ足し充電するにしても1回につき30分~40分程度の充電時間を要する。高出力の充電インフラを整備して充電時間を短縮する話はあるが、設備は高額になる。果たして「同じ電気料金」でチャージできるのかは疑問だ(それでも10分程度はかかるようだが)。

ABB(グローバルでエンジニアリング事業を展開する多国籍企業。世界85以上の市場で68万台以上の電気自動車用充電器を販売)の充電インフラ「Terra 360」は、コンボ規格の360kWなら3分以内で航続距離100kmを充電できる。もはや、給油並みの「気遣い」で済みそうだ。しかも1基の設置で最大4台の車両を同時に充電できるというから、充電渋滞の不安も軽くなるだろう。ただし同じ機種でもCHAdeMO方式を使う場合は今のところ、150kWが最速とのこと。ちょっと残念。

2022-05-07 Webモーターマガジンより

世界レベルで見ると更に高速充電が可能な設備はあるが、国内での整備が進むのは時間を要するし、そもそもの問題として、急速充電をするとバッテリーに負荷がかかるため、メーカーは急速充電を推奨していない。

EVの火災

更に、EVが火災を起こすと消火が困難であるという問題がある。これと急速充電の因果関係は言及されてはいないが、無関係ではないだろう。

相次ぐEV火災の「消えない火」 バッテリー冷やせず再燃する

2021.09.22

電気自動車(EV)の火災事故が世界各地で相次いでいる。衝突事故に伴う炎上など原因はさまざまだが、共通するのが事故処理の難しさ。一度鎮火してもバッテリーの発熱によって再燃してしまうのだ。全米防火協会(NFPA)や米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査結果から実態に迫る。

日経X TECHより

そして、EVが発火した場合に消火するのが極めて困難であり、長時間燃え続ける性質を持っていることも問題だ。

目立つEVの火災事故だが、販売10万台あたりの火災件数はHVが最悪--次いでガソリン車
米国の自動車保険比較サイトAutoinsuranceEZ.comは、火災を起こしやすい電気自動車(EV)、という印象が事実かどうか確認するための調査を実施し、結果を発表した。

車両火災の頻度で言えばEVはガソリン車やハイブリッド車に比べて低いというデータがあるものの、普及が進めば話は変わる可能性は高い。

結局のところ、バッテリーの消耗が火災の主原因だということになれば(その可能性は高い)、車両の老朽化が進めば発火のリスクは高くなる。

EVの普及によって様々な問題が噴出した時に、果たしてそれを乗り越えて更にシェアを増やすことが出来るのかどうなのか?という点は興味深い。

将来的にEVに置き換わるのか

支那でのEVシェアは圧倒的に高くなって、その販売台数に若干ブレーキがかかりつつアルという報道も出ている。

販売台数が半減 岐路にある〝世界一〟EV市場中国の実情

2023年3月1日

販売台数はマイナス49.9%(前月比)。

中国自動車工業協会は2月10日、2023年1月期の自動車産業概況を発表した。目を引いたのが新エネルギー車(NEV。電気自動車、プラグインハイブリッド、燃料電池車を含む中国独自のカテゴリー)の販売急落だ。前月のほぼ半分となる40万8000台にとどまった。

中国は世界最大のEV(電気自動車)市場である。22年のNEV販売台数は前年比93.4%増の688万7000台。中国一国で世界シェアの50%超を擁している。右肩上がりの成長を続けてきた中国EV市場が突如としてマイナス成長に転じた、その理由をめぐっていくつかの見方が並立している。

Wedge ONLINEより

おそらくは利便性とのバランスを考えて購入に踏み切る人と、やっぱり止めるという判断する人に分かれるのだと思うが、傾向的にはEVは普及が進んでいるものの、懐疑的な意見も出ているようだ。

エンジン付きのプラグインハイブリッドの方が良いという判断をする人も増えていて、傾向的にはプラグインハイブリッドの普及の方が増えている。

今後どうなるのか?という点を考えると、支那においてもEVオンリーで勝負をかけるのはかなりリスキーな気はする。フォルクスワーゲン社はプラグインハイブリッドも作っているので、そちらの方にもっと力を入れた方が良いんじゃないかな。

一方の日本企業にしてみれば、世界市場のEVシフトは恐怖するレベルの加速度であり、今回、上海国際自動車ショーで青ざめたんじゃないだろうか。EVの流行は一時的なものなのか、それとも恒久的なものなのかはしっかり見極める必要があるのだが、EVに切り替えると傘下で部品を作っている企業が軒並み悲惨なことになるからなぁ。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    EVの話をする場合、
    ・今までのシェアは、精密機械であるエンジンを作れるかどうかが大きかった
    ・現時点で、モーターの差はエンジンほど大きくない≒途上国でも作れる
    ・これからガソリンスタンド整備するより、給電網整備した方が国家戦略にかないコストもかからない国もあるだろう
    ・欧米や日韓、中国沿海部のような給電網の整備された地域と、アジア中東アフリカのような給電網がないに等しいところとを同じに見てはいけない(電気無くてもガソリンなら手に入る所はEVに向かない)
    等々、色々と前提条件がつくわけですが……

    ホンダに対する某国の「同じものが作れるようになりました、もう来なくて良いです」の例もありますから、デザイン以外で差別化が出来なくなったら、そりゃ国産買いますよね、って話でしょうね……

    • 木霊 木霊 より:

      エンジンの開発をやらなくても車を造ることが出来るというのは、かなり大きな意味があるようです。
      ただ、二次電池の方はもうちょっと頑張って貰わないと使い物にならなそうではあります。

      が、トータルで見て造りやすいのがEVですから、そりゃ、EVシフトは進むんでしょう。
      そして、ご指摘のように自国で造ることが出来るようになれば、「ハイさようなら」となりますよね。

  2. アバター BOOK より:

    木霊さま 皆さま おはようございます。

    望ましいのはEV?HV?PHV?etc? と言う本質論をすっとばして申し訳ありません(オイオイ)

    BOOK私見ですがBEV用2次電池・技術競争・第1ラウンドはBYD勝利がおそらく見えてきました。

     どういうことかと言うと この記事でも言及されてる火災安全性

    先行普及しているヘビーなEVは走る火葬場だという法則?がありましたがBYDは例外となりました。

     BYDの安全な「リン酸鉄リチウムイオン電池」
      https://www.youtube.com/watch?v=4b6IlYuF2cQ
     の45秒あたりのドリル貫通試験が圧倒的です。

     その道の方に聞いたのですが
    「リン酸鉄リチウムイオン電池」が材料系として安定なことは学会ではみんな知ってた(既知)。エネルギー密度あまり高くないので注目されてなかった。BYDが何らかのエネルギー密度ブレイクスルーしたのだろう。全個体? 今のリチウムより多少まし程度「リン酸鉄リチウム」の方がずっと安全 とのこと

    BYDはもともとバッテリーメーカーなのでテスラ・トヨタも採用しています。
    https://hasimoto-soken.com/archives/5621#toc4

    ドイツEVに話を戻して

     今までアメ車・韓国車なら普段の性能快適、だけど走る火葬場、でもまあそんなイメージダウンも無いでしょうが、、、、

    VW、ベンツ(あるいは日本・レクサス)は、それじゃ売れない。今のところBYDからバッテリー買うしかなさそう。