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護衛艦不足で「ほぼ丸腰艦」を投入と煽るメディア

報道
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多用途支援艦……?

中露艦の航行活発化で護衛艦不足、ほぼ丸腰の補給艦や多用途支援艦も投入…監視能力の底上げ急務

2023/11/06 07:30

日本周辺での外国軍艦艇の警戒監視を巡り、海上自衛隊が監視能力が劣る「小型艦」や「補助艦艇」の投入を余儀なくされるケースが急増していることが、読売新聞のデータ分析で明らかになった。

讀賣新聞より

凄く違和感のある記事が出てきたので、突っ込みを入れておくか。何というか、情報が古い?

用途に合わせた運用を

多用途支援艦

記事を読むと、「本来は護衛艦が出なければならないところ、補給艦や多用途支援艦が投入されている」「お金が足りない!」「大変だー」というような意味に読める。

全公表データのうち、小型艦(掃海艇、ミサイル艇など)や補助艦艇(補給艦、多用途支援艦など)を1隻でも派遣したケースを調べたところ、11年まではゼロだったが、12年に1件(全体の4%)、20年は16件(同64%)、昨年は82件(同63%)で、今年は81件(同72%)に達した。

讀賣新聞より

うーん。

そもそも、海上自衛隊が多用途支援艦が作られた経緯が、災害派遣や訓練の他に、海上警備の目的に投入されるために作られたものである。

この多用途支援艦のエンジンはディーゼルエンジン2基で、基準排水量は980t。気軽に使えるような装備構成になっている。就役は平成14年~平成20年である。

今のところ「ひうち型多用途支援艦」は5隻あるね。

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輸送艦

海上自衛隊が運用する輸送艦は、「おおすみ型輸送艦」で現状、3隻ある。エンジンはやっぱりディーゼルエンジン2基を搭載して、基準排水量は8,900tだね。就役は平成10年~平成15年である。

輸送艦というくらいだからまあまあデカイ船で、前級のあつみ型輸送艦やみうら型輸送艦と比べると4倍以上の大きさになっている。90式戦車なら18輛搭載することが可能だ。

もがみ型護衛艦、新型FFM

あとは、この部分。

同省は乗組員を従来の護衛艦の約半数(90人)に抑えた新型護衛艦「FFM」を24隻建造して対応する。警戒監視に特化した「哨戒艦」や無人航空機の導入も進める。

讀賣新聞より

新型FFMの話が出ているが、先ずは現行型のFFMの話を書いておこう。現行型は「もがみ型護衛艦」で、令和元年から建造が始まって1番艦の「もがみ」は令和4年に就役している。

特徴のある統合マストを採用していて割と不評なのだが、のっぺりとした船体の作り方はレーダー反射断面積(RCS)の低減を意識したものになっている。

本船は当初22隻建造される予定だったが、12隻で打ち切りになり、新型FFMとよばれる船を12隻建造する話になっている。もがみ型護衛艦は現在4隻就役しており、年末に1隻、来年中に2隻就役する予定で、その後も年2隻くらいのペースで就役する予定となっている。

面白いのは、コンパクトかつ多機能な艦艇を目指して建造されたために、基準排水量は3,900tとなっていて、ガスタービンエンジン1基とディーゼルエンジン2基を搭載している。兵装にVLS16セルと62口径5インチ砲を1基、RWS2基、SeaRAM1基、17式SSM2基、324mm2連奏単魚雷発射管2基を備えているので、バリバリの武闘派である。

新型FFMはもがみ型護衛艦の能力を向上して基準排水量を4,880tとしているが、同様にガスタービンエンジン1基とディーゼルエンジン2基を搭載している。

海自新型FFMは2024年度からわずか5年間で12隻を調達へ 防衛装備庁が明かす

11/2(木) 16:15

海上自衛隊のもがみ型護衛艦「FFM」の能力向上型となる新型FFMは、2024(令和6)年度から2028(令和10)年度までのわずか5年間で計12隻が調達される計画であることが分かった。

Yahooニュースより

新型FFMも随分と急いで作る予定らしいよ。

FFM護衛艦はDD護衛艦と比べて武装は抑えめで船体も小ぶりではあるが、一番大きな違いはディーゼルエンジンの搭載である。例えばあきづき型護衛艦(基準排水量5,050t)はガスタービンエンジン4基を搭載している。なお、次級のあさひ型護衛艦はガスタービンエンジン2基を搭載している。

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不審船に対応

多用途艦支援艦、輸送艦、FFMの3種類をザックリと説明したが、いずれもディーゼルエンジンを搭載しており、エンジンの始動・停止がガスタービンエンジンに比べて容易になっている。

これはどういう話かというと、災害派遣や訓練の他に、海上警備の目的に投入にあたって、回しっぱなしにしなければならないガスタービンエンジン搭載艦ではなかなか都合が悪いのだ。大出力の駆動力を得られるガスタービンエンジンは、始動から運用出来る状態になるまで数分かかるし、停止にも時間がかかるので、再始動するまでのタイムラグが困る。だから回しっぱなしということになる。

◆警戒監視= 日本周辺を航行する外国の軍艦を24時間態勢で監視する活動。護衛艦や哨戒機で動向を注視し、複数の艦艇が長期間監視を続けることもある。外国軍機は空自が対応する。

讀賣新聞より

24時間の監視活動をするのに、ガスタービンエンジンを回しっぱなしというのは、かなり燃料を喰うし活動時間が限られてしまう。

つまり、ディーゼルエンジンを搭載することで、低速の運用時にはディーゼルエンジンを使うことが出来るようになるので、柔軟な運用が可能になるって訳だね。

何をやっているか良く分からない不審な船だが、装備はかなりショボいことが事前に分かっていれば、わざわざガスタービンエンジンを搭載した護衛艦を引っ張り出すまでも無く、多用途支援艦で対応すると。それだけの話であり、バリバリに武装した大型艦の監視に丸腰の船を持ち出したと言うこととは、ちょっと違う。

というか、そういう計画だったし、予算も付いている。

確かに海上自衛隊に「人が足りない」という話はあるんだけど、「監視能力の底上げ急務」というのはちょっとおかしな話であるように思われる。

方向性としては海上保安庁との連携とドローン運用

そして、こういった話は前々から分かっていた話でもある。

海上保安庁関連の記事は幾つか書いたけれども、そもそも海上保安庁が「軍事力を持ってはならない」というアホな話になっていて、国交省にぶら下がっているのは大きな問題である。

こっちでも突っ込みを入れたが、防衛省傘下に収めて海上自衛隊との情報の円滑共有と装備の共通化などを図り、沿岸警備の任を負わせることが出来るようにすべきでは無いか。

「無人攻撃機MQ―9」 日本にも配備間近の「死神」 名乗りを上げたのは意外にも海上保安庁

2022.7/29 11:00

日本で話題となっている「MQ―9」。米空軍が運用する無人機の1つだ。同機は、偵察任務だけでなく攻撃も行える多目的機となっており、「無人攻撃機」と表記されることもある。

ZakZakより

この記事はかなり意図的なというか恣意的な偏向が仕込まれているが、海上保安庁が導入したのはリーパーではなく、シーガーディアンである。

海保と海自が不審船訓練 シーガーディアン初投入

2023/10/4 19:17

海上保安庁と海上自衛隊は4日、秋田沖で不審船の追跡などを想定した共同訓練を実施した。大型無人航空機シーガーディアンを初めて投入し、最新のレーダーやカメラを活用して対応能力の向上を図った。

産経新聞より

まあ、MQ-9「リーパー」が元型になったのは間違いないのだが、主翼形状を一部変更してハードポイントを廃止している。更に機体の燃料タンクを拡大する改造を行っており、海上警備用にレーダー周りの改修も行われている。

わざわざ「リーパー」=「死神」の解説までご丁寧にしている辺りが、嫌らしい。

ともあれ、シーガーディアンの運用は海上自衛隊が主体となって行われることになっているので(海上保安庁はコントロール・情報処理を行う施設を持っていない)、方向性としては情報共有する話になっていると見て良いとは思う。シーガーディアンをもっと購入して、効率化できるようになると良いね。

話が逸れてしまったが、要するに冒頭のニュースはちょっと「ズレて」いるんじゃないかな。監視任務に護衛艦を持ち出すような運用は無駄なので、それにあわせた運用が出来るようになってきたというのが実情なのに、そこに触れずに「足りない足りない」というのは、おかしな話だ。

そんな風に感じた。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    領域およびその周辺域での一次監視・偵察能力の引き上げが急務という話だね。
    特に東・南支那海では、支那による攻撃的な活動が増加しているので、海自と海保、空自の密な連携が必要。また、それに必要な装備は予断なく購入するべきだし、重要な抑止力になる開発中の国産対艦ミサイルも急がないとね。

    余談だけど、昨日の産経に、支那がロシアと連携して、バルト海で海底ケーブルや
    ガスパイプラインの切断をやらかしているという記事が紹介されていたよ。
    https://www.sankei.com/article/20231107-TRVYKKKFJNNTNJ6JWM3Y2TBBD4/

    当然、支那はすでに東支那海でも台湾海峡でも同じようなことをやっている。
    チョロ岸田は、まだ支那の海上ブイを撤去しない。

    • 木霊 木霊 より:

      余談で指摘されている海底ケーブル切断って、台湾周辺でもやっているんですよね。
      これが意図的なものかについて、さっぱり分かりませんが、「効果測定」やっているんだとしたら、なかなか戦略的ではあります。

      海上ブイもこっそり破壊しておけば良かったのに。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >「お金が足りない!」「大変だー」

    よろしい、ならば防衛費増額だ。

    大増額を!!
    一心不乱の大増額を!!

    連中に恐怖の味を思い出させてやる
    連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる

    ※最後の二行はやっちゃダメです。

    という事で、そこまでわかってるなら世論を防衛費増額に持ってけよと小一時間。
    「ダメなんだーもう終わりだー(チラッ)」
    ってやってるから、マスゴミだって言われるんですよね。ホントにもう……

    • 木霊 木霊 より:

      軍靴の音は空耳ですね(棒)。

      しかし、騒ぐだけ騒ぐのがメディアの戦略なんですな。
      いや、戦略じゃ無くて単なる日和見主義なのかも知れませんが。

  3. アバター 河太郎 より:

    仔細は避難訓練の処を参照という事で。
    えっと……報道機関って早稲田とか、基本的には人文型で強い名門大学が多いすね。(早稲田は慶応みたく医学部持ってない)んで、人文学の入試の小論文はヒネた回答が尊ばれるんですよ。
    その辺の事があって、文系のヒネ他奴が報道機関には多い。それはそれで意味があり、何か違う視点だから勘づく事ある。ただし、そのリストアップの過程で、てか志願者のカテゴリから「理工系」の学生は少ないすね?
    なもんで「見当違いの軍事オンチ」が報道に多いんでないすか?
    まぁ、でも、理工系の学生さんもマスコミとか志望しないだろうしなぁ。

    • 木霊 木霊 より:

      避難訓練のところで、って、あー、コメント頂いていましたね。

      いやしかし、マスコミの「軍事音痴」って、ちょっと調べれば分かる話ですよ。
      そして、分からなかったら「聞けば良い」のに。取材しないで記事書いちゃったんですかねぇ。

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