ああ、アシアナね。
韓国アシアナ航空機、飛行中にドア開く 機内で恐怖の光景
2023.05.27 Sat posted at 12:00 JST
韓国ソウル(CNN) 韓国で26日午後、南東部・大邱の空港への着陸態勢に入っていたアシアナ航空旅客機のドアが開くトラブルがあった。この出来事を捉えた動画には、機内に強風が吹き込み、おびえた乗客が肘掛けをつかむ様子が映っている。
CNNより
日常にほんのりお笑いを、というコンセプトで軽めの記事も紹介しておこう。乗客にしてみれば恐怖そのものだったのだろうけれど。
どうして開いてしまったのか
乗客の一人がドアを開く
このニュース、意味が分からないことに、故障でドアが開いたわけではないのだ。
航空会社の関係者によると、非常口座席に座っていた30代の男がドアを開けたとみられる。当時、同機は高度213メートルを飛行中で、大邱への着陸の2~3分前だったという。
CNNより
飛行トラブルの多いアシアナ航空ではあるが、今回ばかりは航空会社が悪かったと言うよりは、乗客の中に狂人がいて不幸だったねと言う話。
一方、大邱地裁は28日、警察が航空保安法違反の疑いで請求したこの男の逮捕状の発付可否を決める審査を行う。男は警察の調べに対し「最近失業し、ストレスを受けていた」とし、「着陸前に息苦しくなり早く降りたかったのでドアを開けた」と供述している。
聯合ニュースより
犯人の供述も意味不明である。
一定の高度以上では開かない扉
そもそも、今回開いてしまったドアは、非常用ドアであった。乗客が避難する際に開くドアなので、通常は開閉することはない。
今回のアシアナ機は、扉の取っ手にかぶせられたプラスチックカバーを開け、取っ手を回すと数秒で扉が開く構造だった。航空機の機種によって多少の違いはあるが、ほとんど取っ手を回す、あるいは扉を手前に引っ張るなどの簡単な操作で扉を手動で開けることができる。しかし、一定の高度以上で飛行中の航空機の扉を開けることは事実上不可能だ。飛行機の外の気圧と機内の気圧の差が大きく、人の力で扉を押しても開かない。飛行高度である上空約3万フィート(約9キロメートル)における大気圧は地上の25%程度であり、機内ではシステム上、地上と同じ気圧を維持しているため、差が大きい。ただし、飛行高度が約1000フィート(約300メートル)まで下がると機体の内と外の気圧差が縮まり、扉が開けられるようになる。この場合も扉は一度ではすぐに開かず、徐々に開く。この日のアシアナ航空機事故は着陸2-3分前、上空約820フィート(約250メートル)で発生したものだ。
朝鮮日報より
記事に説明がある通り、気圧差があるので飛行高度が3万フィートの時には開くことが出来ない。ところが、1000フィート以下になれば手動で開くことが出来るのだとか。
それにしたって飛行中にまさか扉を開く人間がいるとは想定していなかっただろうことは想像に難くない。まさに「想定外」という奴だろう。
しかし、避難を行うためのドアなので、乗務員しか開けないような施錠をするというのも望ましくはないだろう。
アシアナ航空によると、同機には乗客194人を含む計200人が搭乗していた。地元消防によると、12人が過呼吸による軽傷を負い、9人が大邱市内の病院に搬送されたという。
CNNより
乗り合わせた乗客にとっては不幸なことだが、こういう不思議な事故も希には起こるのである。
追記
類似事案
さて、この手のニュースが他にもないか調べてみたら、あった。
飛行中の米旅客機の非常ドア開けようとした男を逮捕 客室乗務員刺そうとする動きも
2023.03.07 Tue posted at 18:50 JST
米警察は6日、ロサンゼルスからボストンに向かう機内で客室乗務員の首を壊れた金属製のスプーンで3回にわたり刺そうとしたとしてマサチューセッツ州の男を逮捕した。男はその前に非常口のドアを開けようともしていたという。
男には危険な武器を使用して航空機の運航及び客室乗務員の業務を妨害した疑いがかかっている。男はボストンの空港で逮捕され、9日予定の公判まで拘束される、
当該の機体の飛行中、客室乗務員は機内のドアの1つが解除されているとの警告表示に気付いた。調べたところ、ドアのハンドルが完全に施錠された位置から押し出され、非常用のレバーが解除されていることが分かった。司法省が明らかにした。
乗務員はドアの近くにいた男と言葉を交わした後で、機長に事態を報告。機長らは男が機体に脅威を及ぼしているとみて直ちに着陸する必要があると判断した。
その直後、男は座席から立ち上がり、何事か口にすると客室乗務員1人に向かって行き、壊れた金属製のスプーンで刺そうとする動きを見せた。乗務員の首のあたりに3回当てたと司法省は述べている。
男は他の乗客らに取り押さえられ、着陸後直ちに連行された。
CNNより
なかなか狂気を感じるニュースなのだけれど、これ、2023年3月の記事である。実はかなり最近にも類似事案があったというわけだ。
ドアの構造
ところで、コメントを頂くまで「おかしい」とは感じなかったのだけれども、「飛行機の外の気圧と機内の気圧の差が大きく、人の力で扉を押しても開かない。」の部分は、確かに違和感を感じる記載ではある。
理論的には、高度の高い場所では「外圧よりも内圧の方が高い」のだから。なので、蛇足ながら少し調べてみた。
旅客機用客室ドアの例
左: 1.ドアの上下端を畳む 2.引く 3.外へ開く
中: 1.少しずらして噛み合わせを外す 2.外へ開く
右: 一度手前に引いてから上げる
外開きドアであっても、ドアの左右の縁だけしっかりしたプラグ形状で機体に固定するようにしておき、上下の縁は折りたたむ形状とすることで、一度内側に少し引いてからドアを少し回転させてドア開口部から機体の外に出すことで開くものがある。
同様に外開きドアでドアの左右の縁に互い違いの出っ張りを付けることでプラグと同じように機体に固定できるようにしておき、開く時には少し持ち上げて出っ張りがドア枠に当らないようにしてから外に開く形式もある。
また、天井部に余裕のある広幅で2階を持たない機体では、内開きドアでも、内側に少し引いてから上にドア全体をスライドさせることで開くものがある。
乗降に空港施設の支援が受けられない路線に使用される機体では、ドアの内側に折りたたみ式のタラップ(エアステア)を備えるものもある。主翼上などに非常脱出専用で通常の乗降に使用されない非常口扉を備えた機種がある。
wiki「旅客機の構造」より
色々なパターンがあるようだが、多くの旅客機は外側からアクセスして開く扉を採用しているようで。しかし非常用ドアは乗客が開かねばならず、内側から開く必要がある。今回の扉はどうだったかは明らかではないが。
しかし、差圧で開きにくくなることは間違いなさそうだ。
飛行中の機内は与圧されるため、外気に比べて気圧が高くなっています。そのため、機体の中から外に向かう圧力が胴体にかかっているのです。その強さは胴体1平方mあたり6t。
http://skyshipz.com/より
なかなかの重量が扉にかかっている(外に向かう圧力)ようで、旅客機のドアを開けるには、概ね一度内側に少し引っ張ってから外開きする構造になっているために、高い場所を飛んでいる時は開けない。
問題となった機体のドアを見てみると、内側に「TO OPEN」と書かれたレバーを回して開ける構造であることがわかり、そして、どうやら上のイラストの真ん中のタイプらしいことが分かる。
なるほど、圧力の関係で開けないというのは正しいそうだけれど、外圧がかかっているので開けないと誤解する表現は宜しくなさそうである。
コメント
こんばんわ。ふぅん…なるほど。たしかに高空だと気圧差でムリでしょうね。
一瞬、1971年のD・B・クーパー事件の真相はコレかと想うたですが。クーパーは高度9千フィートの機体からパラシュートで脱出している。(奪った身代金の一部は発見されているが、生存の有無は未だに不明)コレではありませんね。
なんにせよ、ハイジャッカーがこの事を利用する事はないですねぇ。ホッと。
高度300㍍くらいだと、もう着陸体勢でしょうし、着陸で減速していてもF1マシンくらいの速度はあるので、その高度で飛び降りたら助からんですものね。
とはいえ怖い話ですねぇ。あたまおかCやつがやらないとは限らないし。
映画などだと、高高度から非常用ドアを開けて脱出!なんてシーンが希にあるんですが、外開きの扉では、よく考えたら無理ですよね。
そういえば、圧力隔壁が壊れて墜落した航空機もありましたが、高高度で外気が入ってくると言うのは極めて危険なことです。
しかし、D・B・クーパー事件、知りませんでしたが、なかなか面白い事件ですね。
何か脱出方法はあったのでしょうが、航空機の構造や条件を熟知していないと実現はできないでしょう。
非常用ドアは、「誰でも脱出できる」ように設けられたものだと思いますが、悪意のある人間を排除できないのは困った話ですね。
こんにちは。
「そこで万能ガムテープですよ!」
って思いましたが、故障じゃなくて人為的なものなのですね。
写真見る限り、非常ドア開いて脱出シュートが展開した上に引き千切られてますから、エンジンより後で何より……着陸進入中に前の方でこれやられて、シュートがエンジンに吸い込まれたら……
「何事につけ、人為的に(悪意をもって)ルールを破るもにに対しては、性善説前提の法や対策は無力である」と、つくづく思わされます。
この件は、下手人が韓国人でなくても、いつでもどこでも起こりうるので。
※一時期あった「非常コックで電車止める」はこの類型と思えます。
万能ガムテープは、韓国案件だと良く登場しますね。
実際に、緊急時にはガムテープは有効ではありまして、バイクのツーリングの時には手放せないアイテムです。
韓国で問題になりがちなのは、ガムテープで暫定対策が、ちょっと長期間になりがちなところでしょうかね。
さておき、今回のケースはそう言った話とはちょっと趣が違いまして。
何処の国でも発生し得て、対策の難しい話なんですよね。しっかりした教育が一番の対策かも知れませんが、悪意に対処は難しい。
木霊様、皆さま、今日は
>飛行機の外の気圧と機内の気圧の差が大きく、人の力で扉を押しても開かない。
これは変です。機外の気圧が低く、機内の気圧が高いのです。気圧差によってドアは飛行機の【外側に向けて】押さえつけられています。「扉を押しても開かない」は【機外から押しても】でしょう。
ドアはドア周囲の枠に「ひっかかる」ように作られていて、外へ向けて強く押しても破壊するまで開きません。
開ける時はロックを外して一旦内側に引き込み、ドアを斜めにするなどして外側に押し出すのです。上空では開ける事ができないのは、気圧差による外側へ押す力に打ち勝って「引き込む」事ができないからです。
なるほど。
確かに高度が高ければ外気圧は低くなり、航空機の中は与圧された状態、つまり内圧は高くなることになるはずで、「人の力で扉を”押して”も開かない」というのは理論的におかしいですね。
ちょっと追記しておきます。
横合いから失礼、ちょっとだけ補足を。
>外圧がかかっているので開けないと誤解する表現
与圧のかかる航空機のドアは、基本的には「穴よりでかい」ので、そのままでは上空の「機内気圧>機外気圧」の関係で絶対開きません。
音楽好き」さまがおっしゃる「ひっかかる」はこの事で、為に、一度ドアを機内に引き入れて、斜めにして外に出すのがセオリーですね。
※もちろん、ロックやヒンジが物理的に破壊された場合は、あるいはドア枠が疲労破壊した場合はこの限りではありませんが……いずれも墜落事故の原因。
気圧差がほとんど無い状態だったからたまたま開けられたのでしょうけれど、一つ間違うとその瞬間にバランス崩して墜ちてたかもなので、重大インシデントというかこれ事故ですよね。
以上、釈迦に説法、失礼しました。
いえ、とても勉強になりました。
いざ役に立つ時が来るかもしれません。役に立つ事がなければ無事とい事で、それは良い事ですが決して無駄ではありません。