近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
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空自動く、イスラエルからの邦人避難に備える

安全保障
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従来では考えられないスピードだな。

空自機がジブチへ出発 邦人退避、不測事態に対応

2023/10/14 10:39

イスラエルからの在留邦人の退避活動に当たる場合に備え、航空自衛隊機のKC767空中給油輸送機1機が14日午前、愛知県の小牧基地から周辺国のジブチへ向け出発した。日本政府が手配したイスラエル中部テルアビブからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ向かうチャーター機による退避が困難になるなど、不測の事態を念頭に置く。ジブチに置かれた自衛隊拠点に待機し、退避活動への投入に備える。

産経新聞より

それでも対応は遅いとの誹りは受けるだろう。ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けたのが10月7日。イスラエルは直ちに反撃して8日には激しい戦闘になった。結論から言えば、あと2日は早くして欲しかった。

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もっと早くが理想だが

イスラエル脱出作戦

イスラエルが「戦争状態に有る」と宣言したのが10月8日で、イスラエル軍とテロ組織ハマスの間では軍事的な衝突が散発的に発生。

イスラエルの死者100人、首相「我々は戦争状態にある」…ガザへの報復空爆で198人死亡

2023/10/08 00:06

パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスは7日、数千発のロケット弾をイスラエル領内に撃ち込み、境界を越えてイスラエル南部の町に戦闘員数十人を侵入させ、銃撃戦が発生した。

~~略~~

ハマスの軍事部門カッサム隊のムハンマド・ディフ司令官は声明を出し「(イスラエルの)占領による犯罪を終わらせる決意をした」と軍事作戦の開始を宣言した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はビデオ演説で「我々は戦争状態にある」と述べ、イスラエル軍は数万人規模の予備役を招集。戦闘機によるガザへの空爆を開始した。

讀賣新聞より

これにより本格的に戦争が始まってしまった。

通常、戦争とは国家間で行われるものであり、おそらくイスラエル軍は掃討作戦というつもりだったのだろうが、ハマスの態度を見て相容れない状況だと判断したのだろう。

もともと、イスラエルはハマスを適度に追い詰める程度で掃討することは考えていなかった。イスラム社会には多数の過激派がいて、様々な主張を掲げて温厚なタイプから手のつけられないタイプまである。ハマスも、発足当時はイスラエル政府から支援を受けていたんだよね。PLOよりマシだと考えていたわけだ。その辺りの経緯はこちらで言及したが。

ところが、時を経ることに先鋭化して、今では立派なテロ集団である。ガザ地区で支配権を持ち、PLOからは一線を画す行動を選択していて、パレスチナ政府にとっても御しきれないテロ集団となってしまった。

電気もガスも水も

ちなみに、先日はこんなニュースがあった。

焦点:電気も水も逃げ場もない、絶望の淵に立つガザ

2023年10月12日午後 5:53 GMT+9

スラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザは、イスラエルによる報復攻撃で230万人の住民のほとんどが電気も水も手に入らない状況に置かれた。この狭い区域がイスラエルによる何百回もの空爆を受け、逃げ場を失った住民は絶望の淵に立たされている。

~~略~~

ガザ唯一の発電所は数日間断続的に稼動していたが、11日に燃料が切れて停止。電力がなければ住宅への給水は不可能だ。夜はほぼ暗闇の状態で、爆発の火花や懐中電灯代わりの携帯電話の明かりがときどき光る。

ロイターより

このニュースを見て「イスラエルはなんて酷いんだ」と憤る人も多かっただろうし、僕もその一人だ。だが、調べてみるとどうにも納得がいかない。

ガザ地区唯一の発電所が操業停止、燃料不足で

2018年2月16日 16:03

パレスチナ自治区ガザ地区唯一の発電所が15日、燃料不足のために操業を停止した。当局が明らかにした。悪化しているガザ地区の人道状況に懸念が生じている。

通常はガザ地区の電力の約5分の1を賄っているこの発電所の操業停止により、すでに深刻な電力危機がいっそう悪化するとみられている。

AFPより

これは2018年の記事で、この時も停電している。その前も停電していて、調べて出てきた2008年の記事でも数日間は電気が使えなかったらしい。

僕が理解できていなかったのは、ガザ地区では自前である程度は電力を賄うことが出来ると思っていたが、実は2008年の段階で需要量の3割で2018年の段階では2割に落ちている、残り8割は外部から供給されていたという事になる。

電気もガスも外部から供給されており、これを止められるとガザ地区の方々は生活に困る。だから燃料の供給や電気やガスの供給を止められれば住民は困るわけだが、供給される以上は電気代もガス代も支払う必要がある。水も同様だ。

だが、この料金が不当に高いとしてハマスは踏み倒しをしていて、これをパレスチナ自治政府が肩代わりして支払うというような構図であるという。

イスラエルが労働者を募集

そしてこれが去年の記事。

「天井のない監獄」ガザの労働者がイスラエルで急増 その狙いは

2022年4月18日 16時00分

イスラエルが、パレスチナ自治区ガザ地区からの労働者の受け入れを増やしている。昨年5月には、ガザ地区の武装勢力とイスラエル軍との間で激しい軍事衝突が起きたばかり。情勢の安定化につながるのか、注目されている。

~~略~~

だがイスラエルは昨秋から、ガザ地区からの労働者の受け入れにかじを切っている。昨年10月末、これまで計7千人だったガザ地区の人々のイスラエルでの労働許可を1万人に増やした。2007年にガザ地区を封鎖して以来、最大の数とみられる。検問所では、イスラエルに向かう男性たちの姿がよく見られるようになった。さらに今年3月には、計1万人を追加で許可することも明らかにした。

ガザ地区にあるパレスチナ自治政府の内務省によると、昨年10月から12月上旬までに、ガザ地区では2万1千件の労働許可への応募があった。うち、許可されたのは1万件弱。不許可の理由は明らかにされていないが、イスラエルが安全上の懸念がないかを調べているとみられる。

朝日新聞より

イスラエルにとってガザ地区より労働者を受け入れるということは、安い労働力の確保というメリットを得られるかわりに保安上のリスクを抱えることになる。それでも、労働許可を出した背景には、賃金を得ることでの自活を即すことと、宥和政策を推進する狙いがあったのだろう。

そもそも、パレスチナは食料、住居、教育、健康、文化など、生活のあらゆる面で国際援助をうけ、依存している。「可愛そうなパレスチナ」を演じているわけだ。

戦争を仕掛ける前に、まずその依存体質を何とかしよう、な!

実際に、ハマスが支配している状況に嫌気が指す住民たちも多かったらしく、別の記事で紹介したがハマスは支持を失ってきている状況だった。そんな中で暴発したのだ。かなり迷惑に感じた人も居ただろう。

もちろん、人道的な立場から見て電気ガス水道などライフラインを止めてしまうという行為は如何なものかと思う。だが、その電気ガス水道などを送るの配管を掘り出し、ロケット弾に加工している様子を考えると、なんだかもやもやする。あまつさえそのロケット弾をイスラエルに撃ち込んだのだ。

そりゃ、「もうコイツラとは話ができない」と、イスラエル側が感じたとしても責められまい。色々な背景はあれど、ハマスはイスラエルの支配が受け入れられない人々が集まった組織である。前提からして、和平に辿り着けるのか、という気はしてしまうし、かの地ではそれを何度となく繰り返しているんだろうね。

各国政府は市民の脱出のために奔走

えーと、話が逸れた。

こんな状況だから、自国民をイスラエルに在留させ続けることは危険であると、各国の政府が動き始めた。

イスラエルからの市民脱出、各国政府・航空会社が対応奔走

2023年10月12日午後 1:46 GMT+9

イスラエルが戦闘状態に陥ったのを受け、各国政府と航空会社は同国から本国に観光客や住民を帰還させるための対応に奔走している。

イスラエル国営のエル・アル航空は11、12の両日、アテネ、ローマ、マドリード、ブカレスト、ニューヨーク、パリ、ラルナカ(キプロス)、イスタンブールとイスラエルを結ぶ臨時便12便を運航すると表明した。同社は既に、ニューヨークからの追加便なども発表している。

ロイターより

当然ながら航空機の通常運行は続けられない。

英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、治安上の懸念からイスラエルの首都テルアビブ行きの便の運航を中止すると発表した。

チェコのリパフスキー外相は記者団に対し、オマーンでの会議出席後にイスラエルに寄り、政府専用機でチェコ人34人を帰国させたと明かした。

デンマークはイスラエルとパレスチナ自治区にいるデンマーク国民および永住資格者について、軍の輸送機を派遣して脱出させると表明した。

消息筋によると、独ルフトハンザ航空は政府との話し合いを受け、12、13の両日、イスラエルに臨時便を飛ばすことを計画している。

ブティジェッジ米運輸長官は、イスラエル行きの便について政府が米航空会社とまだ協議中だと述べた。

ロイターより

脱出機の手配も佳境である。10月12日の段階で、ね。

自衛隊は14日から

で、冒頭の記事に戻ると、10月14日午前に日本も動き出したと。あ、邦人の現地からの退去自体は既に始まっている。

日本人51人韓国機で退避 イスラエルから

2023/10/14 12:07

韓国外務省は14日、イスラエルに滞在する自国民163人を軍の輸送機で退避させると発表し、日本人51人、シンガポール人6人も同乗すると明らかにした。既にイスラエルを出発した。同日夜にもソウル郊外の軍用空港に到着する予定。

産経新聞より

既に動いていた韓国軍の輸送機が、自国民を運ぶついでにアジアの人々も同乗させてくれた模様。これには感謝しかない。個人的にもいつもネタにして大変申し訳無い。まあ、止めませんが。

だがこれは、自衛隊が遅いのではなく日本政府が遅いのである。

防衛省によると、今回の活動は、自衛隊法84条の4で定められた「在外邦人等の輸送」に基づく。上川陽子外相から木原稔防衛相に対して13日に、輸送の準備行為をするよう要請があり、同日、防衛相が自衛隊機の国外待機を命令した。

産経新聞より

おそらく小牧基地では事態発生直後から避難を予想して準備開始。早々に準備を終わらせていた可能性が高い。

でなければ、13日に要請して同日自衛隊機の国外待機を命じ、翌朝には出発できるわけがない。

木原防衛相は13日、派遣するのはC2輸送機などと明らかにしていた。

産経新聞より

13日の時点で派遣する輸送機の目処が付いていたのだから、そういうことだろう。

政府の決定はこれまでに比べれば早い方ではあったが、それでも遅い。実際に自衛隊機ではなく韓国軍機に邦人が登場させてもらってイスラエルから退去している事を考えても、「早い」とは言えないだろう。

自衛隊としては、政府の判断を待っているのでは遅いのだけれど、命令なしに作戦行動を実施するわけにも行かない。歯痒いところだろうね。

この決定プロセスの遅さは、日本にとって致命的な事態をもたらしかねない。何としても、早い決断が出来るような仕組みにして欲しいと思う。とはいえ、最後は総理の決断1つなんだろうけれど。

追記

政府を批判したような記事にしてしまったが、一応、加味した方が良い情報もあるので紹介しておきたい。

イスラエルから退避 日本人51人搭乗 韓国軍機がソウル近郊到着

2023年10月14日 14時01分

イスラエルからの出国を希望した日本人51人を含む、200人以上を乗せた韓国軍の輸送機が14日の夜遅く、ソウル近郊に到着しました。

韓国軍は、イスラエルからの出国を希望する韓国国民のために輸送機を派遣し14日にイスラエルのテルアビブの空港を出発したあと経由地のスリランカを経て、昨夜11時前に、韓国・ソウル近郊の軍用空港に到着しました。

NHKニュースより

韓国がいち早く軍用機をテルアビブの空港に派遣した背景には、韓国とイスラエルの間には直行便が出ていないことがある。

したがって、自国民を救出するという意味で、韓国からの直行便として軍用機を飛ばしたという事になる。

翻って日本の場合だが、実はテルアビブ空港は成田との直行便がまだある。

自衛隊機をイスラエルに出すためには色々と問題(主に法律的な問題で、それ故にジプチに飛んでいる)が出るため、イスラエルからドバイまでのチャーター機を用意して、そこから帰国できるように手配したという流れのようだ。

「非代替可能性」や「緊急性」に懸念がある(直行便が存在する)ということが、自衛隊機をイスラエルまで飛ばす事が出来なかった理由だろう。従って、無料で乗せてきてくれた韓国軍には感謝するけれども、チャーター機が有料だった事を批判する気にはなれない。ただ、ドバイ経由が良いことなのか?という話はまた別なのだけれども。

コメント

  1. 河太郎 より:

    そう、自衛隊は少しも悪くない。日本政府が遅い。法改正が必要ですね。
    しかし大切なライフラインをロケット弾に変えるハマス……こいつらはケダモノです。気の毒なパレスチナ市民は何とかしてあげたいものですが、……じゃあって相手はケダモノです。国境を開いてエジプトに逃がせっても、110万人が押し寄せたらエジプトも困ろう。英仏が引き取れ!
    んで、人道回廊を開けばケダモノはそこでテロを起こすし、もともとが信頼喪失した自分等の権力維持の為にテロしてるから、難民に混じって上層部や、今後の海外でのテロの為に戦闘員も逃がすでしょう。それを封じる為にはイスラエルが強硬ならざる得ないのも解る。
    しかし水も食料もない都市で空爆(T_T)
    不憫であります。
    現実的な話に戻して、地下壕がやたらある訳でせう? もともと物資供給の為にトンネルも掘ってるし。てことは……
    空爆して地上の建物を破壊しても、瓦礫を隠れ蓑に、地下壕から迎撃戦してくる。ロケットをあれだけ貯蔵していたのだから、水と食糧と医薬品は備えてあると見るべきで。トラップ仕掛けられた地下壕と、瓦礫の中の戦闘だと、イスラエル兵もかなり死にますね。戦車は地下に潜れませんし。
    何よりもヨルダンとか近隣のイスラム圏が介入してくると、本当に中東大戦争になってしまう。米国はバンカーバスターを与えたのでしょうか? 戦後の事も考えずにクラスターをウクライナに渡して使用させてるくらいだし。
    ここから先は展開を注目せざる得ないですが、ニュース観ていて胸痛い(T_T)

    • 木霊 より:

      シビリアンコントロールという意味では、確かに現行法制は硬いんですが、有事の時に動かせないというのは何とも。
      エジプトは国境を閉じちゃいましたし、本気で何処に逃がすのか?という感じになってきました。
      北欧も難民受け入れはなかなか難しいのが実情ですし。

      バンカーバスターをアメリカ軍が持ち出す話はもう既にあって、イスラエル軍も既に持っているんじゃ無いかと。
      空母を派遣していますから、恐らく積んで行くのでは無いかと。

      結局、戦争が始まって不幸なのは国民なんですよね。イスラエル人もパレスチナ人も、一般市民が一番割を食う感じですね。救いがないですよね。

  2. 砂漠の男 より:

    どうも外務省の現地情報収集が稚拙なために、政府の意思決定が遅れたようだね。
    だから害務省などと揶揄されるんだけど。
    砂漠の男が若き日に海外勤務に出かけた際、現地の直属上司から「何か起こっても大使館をアテにするな」とアドバイスされたものだ。大使館は何もしないし、すべてが遅いし、邦人を保護しないが常識だったさ。大なり小なりいまもそうなんだろう。知らんけど。

    • 木霊 より:

      追記にも書いたのですが、未だ通常便が動いているんですよね。
      そこが判断遅れた理由だったのでは無いかと思っています。結果から言うと、さっさと特別便を作って送迎すべきだった気はしますが。

  3. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ・無辜のガザ市民が血を流すのは見ていて辛いです。が、自らの手で、テロ組織であるハマスを追い出し、せめて手を切る努力をしなかった(していたのかも知れませんが効果がなかった)段階で、こうなる結末はいずれ見えていたとしか思えません(つまり、まるっきり無辜とは言いきれない)。※同じ意味のことはアフリカの難民にも言えると思ってます、話逸れますが。なので、WHOや赤十字のCMが大嫌い。俺たちに何をしろと?募金するのはやぶさかないけど、まずは内戦止めて畑耕せ。
    ・その難民の移動を妨害するハマス、こいつらが諸悪の根源(今回に限り)なのだから、マスゴミはもっと叩けよと。さすがに「道塞いでる」とか報道が出始めましたが……
    ・C-2を出すのは賛成。折角の高性能を存分に使って欲しい。なんならもっと突っ込んだ使い方(意味深)してもよいかと。まあ、民間人を民間空港からピックアップするだけならKC-767でも問題ないか。いざとなりゃ現地で多国籍軍に給油……いやいや(笑)

    ガザの市民は、イスラエル地上軍が来たら、速攻で投降して欲しいと思います。
    もちろん、そこに便衣兵なり人間爆弾なりが混ざってないことは、自分達でもちゃんとチェックした上で。
    でないと、投降も認められなくなりますから……

    • 木霊 より:

      こんばんは。

      >募金するのはやぶさかないけど、まずは内戦止めて畑耕せ

      激しく同意です。最早これに尽きるというか。
      国際社会が甘やかしすぎる問題もあって、なんというか被害者ビジネス的な側面がどうにも。西側諸国はアメリカにしてもイギリスにしても中東に負い目がある部分もあるのと、国内にユダヤ人、パレスチナ人、イスラム教徒が沢山いることが、マイナス方向に働いているので、今のスタンスを崩すのは難しいのでしょう。

      • BOOK より:

        おはようございます。

        >>募金するのはやぶさかないけど、まずは内戦止めて畑耕せ
        >— なんというか被害者ビジネス的な側面がどうにも –

        私もどちらにも激しく同意です。

        プラスもうひとつ大きな問題を

         時代が時代なら「さむれえ雇うだよ」で何とかなった野盗共、、、
        が、いまじゃ「重火器」持って「村ごと町ごと国ごと」奪い取ってく。

         すると、外国軍隊雇うだよ。 対戦車ミサイル買うだよ。 になって

        売る側・援助側(主に地下資源利権狙い)によるマッチポンプ案件という側面と、買う側の被害者ビジネス的側面が恐らく絡み合ってますね。