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日米防衛相会談でトマホーク調達を前倒し

安全保障
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とんでもない事になってきたな。

日米防衛相会談 トマホーク調達を1年前倒しで一致

2023/10/5 06:22

米国を訪問中の木原稔防衛相は4日、ワシントン近郊の国防総省でオースティン国防長官と会談し、反撃能力(敵基地攻撃能力)にも活用する米国製巡航ミサイル「トマホーク」の調達に関し、当初計画を1年前倒しして2025年度から取得することで一致した。

産経新聞より

「ほら見たことか!型落ちトマホークを買うんじゃないか!」とサヨクが大騒ぎしそうな気配もあるが、これはそういうことじゃない。

危機感が高まる

当初の予定はブロック5購入予定だった

先ずは、ちょっと前に書いた記事を引用しておこう。

去年の12月の記事なんだけど、一度ブログの記事が吹っ飛んでいるのでこれはサルベージしたヤツだね。

この時は、JB Pressの記事で「40年前の古いヤツを買うんだ」「役に立つはずがない」と大騒ぎしていたので、「何言っちゃってるの」というような突っ込みをした。

ところが、今回報じられたニュース。

両防衛相は日本が26、27年度にトマホーク最大400発を調達する当初計画に関し、200発の型式を変更し25年度からの取得にすることを確認した。具体的には、射程1600キロで最新型の「ブロック5」の400発のうち、200発を一世代前の「ブロック4」に切り替え25~27年にかけて調達する。

産経新聞より

200発は型落ちを買うという話が出ている。とはいえ、ブロック4なので、アメリカ軍に2006年実戦配備された型となる。ブロック4からブロック5への改修は機能が大幅には変わっていなのだが、型落ちには違いないね。

国産装備取得も前倒しに

ただ、今回の決定は、「半分をブロック4で」という話であった。

ブロック4は、最新型のブロック5と射程や誘導方式で同等の機能を有している一方、通信方式はブロック5で改良されている。調達費用はブロック4が安価になる見込み。防衛省は反撃能力として配備する「スタンドオフミサイル」に関しトマホークとともに国産装備の早期取得も進める。

産経新聞より

ブロック4とブロック5の性能は、通信方式の違いを含めた機能の違いがあり、ブロック5はより高価なものとなっている。

しかし、価格よりも納期の短縮を図ったというのが、今回の話であり、この決断をしたのが新たに防衛大臣となった木原稔氏である。

前防衛大臣の浜田氏より、木原稔氏は実務寄りの人材である。浜田氏を悪く言いたくはないが、防衛実務の中身がよく分かっていなかった面があり、トップとしては良かったのだけれど、実務を伴う交渉担当としては物足りない側面があったのは事実だった。それ故、今回、木原稔氏が防衛大臣になったことで、現状把握を含めて「危機感を共有した」という事なのだろう。

風雲急を告げる

この話は、こんなTweet(今はポストというらしいが)に象徴されていると思う。

うんまあ、現実ものものとなったね。

防衛大臣としても「事態は切迫している」という判断をし、アメリカの国防大臣の同意を得られたという意味だと思う。

また両防衛相は会談で、陸海空自衛隊の一体的運用を図る「統合司令部」の設置に向け日米間の連携体制を議論していくことや、日米韓によるミサイル情報の即時共有など3カ国の協力推進を確認した。

産経新聞より

そういえば、統合司令部の設置のニュースは別に出ていたね。

自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」設置へ 防衛省

2023年8月22日 5時47分

防衛省は、サイバーや電磁波など、陸・海・空の自衛隊どれかに収まらない分野に日頃から対応する必要性が高まっているとして、来年度、各自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」を240人程度の規模で設置する方針です。

有事の際などに陸・海・空の各自衛隊を一元的に指揮する必要がある場合には「統合任務部隊」を設置することになっていますが、防衛省は宇宙やサイバー・電磁波などの分野に、日頃から対応する必要性が高まっているとして、常設の「統合司令部」という組織を新たに設置することにしています。

NHKニュースより

この時のニュースにも、即応性を高めるという意識が見られるわけだが、今回はこの統合司令部は日米間の連携を重視するという意図が見られる。

そして、それを急がねばならないのは、周囲の国際状況が不安定化しているという意味なんだろうね。

別の狙いも?

JAUKUSが現実になる?!

さて、別のニュースでこんな話があった。

新型の原子力潜水艦「オーカス」開発本格化へ 米・英・豪軍事同盟の一環

10/3(火) 8:12配信

イギリス国防省は2023年10月1日(日)、同国とオーストラリアが導入を予定している攻撃型原子力潜水艦「SSN-AUKUS」の詳細設計と長期の部品調達、関連施設のインフラ投資などに関して、英国企業と約40億ポンドの契約を締結したと発表しました。

同国防省は今回、英国企業のBAEシステムズ、ロールス・ロイス、バブコック・マリンと契約したことは、プロジェクト全体にとって重要な節目になるとしています。

Yahooニュースより

AUKUSの潜水艦の仕様が固まってきたらしいというニュースなんだけど、この話は、アメリカ、イギリス、オーストラリアが連携した軍事同盟で攻撃型原子力潜水艦を作ろうという話である。

ところが、現行のオーストラリア海軍が使っているアタック級潜水艦の老朽化が激しく、今から設計しているんでは間に合わない。そこで、どうやらヴァージニア級潜水艦がアメリカから貸与される流れになっているそうだ。

オーストラリアが「SSN-AUKUS」を運用するまでの一時的なニーズを満たすため、アメリカが2030年代にオーストラリアに複数のヴァージニア級原子力潜水艦を売却することも計画されています。

Yahooニュースより

なるほど、オーストラリアも危機感を募らせているという訳なんだけど、しかし実のところこんな悠長なことを言っていられない状況ではある。

「中国の威圧的な行動、北朝鮮の危険な挑発」などを批判し、「緊密な同盟国同士のチームワークこそがより安全なインド太平洋を実現できる」として日豪の連携強化を歓迎した。

産経新聞より

で、気になるのは冒頭の産経新聞の記事の一番最後に、こんな一文が書かれていた。おそらくは、オーストラリア海軍が間に合わない部分を、日本の海上自衛隊に埋めて貰いたいという意図があるのだろう。

これ、場合によってはAUKUSに日本が参加するという展開もあり得るかもしれないね。

軍事連携を強めることで押さえ込みたい国

何故、AUKUSの話を今回のトマホークの話題に持ち出したのかというと、現状、トマホークミサイルはアメリカ軍に配備される他、輸出が許可されたのはイギリスのみである。

ところが、このトマホークミサイルを日本へ輸出する話がでて、議会の了承も得られていることになっているが、この他に配備される国がある。それが、オーストラリアなのだ。

豪州、米からトマホーク購入へ 長距離攻撃能力を強化

2023年8月21日12:11 午後

マールズ豪国防相は21日、長距離攻撃能力の強化に向けて13億豪ドル(8億3300万米ドル)を投じ、米国から巡航ミサイル「トマホーク」を200発余り購入すると発表した。

米英とともにトマホークを保有する3カ国の一つになるとし、「敵対勢力を沿岸から遠ざけ、豪国民の安全を守る」ために必要な投資だと述べた。

ロイターより

ここも200発なんだよねぇ。

直接的な関与があるかどうかは分からないが、先に発注していた日本、後から200発欲しいと言ったオーストラリア。

で、日本は「200発はブロック4でもいい」という話になり、その会議で米国防長官のオースティン氏は、「日豪の連携強化を歓迎する」という意味合いのことを言った。

そうすると、今回のニュースは日本側としては「早期入手」の他にも狙いがあったという事を示唆するんではないのかなと。

追記

危機感が高まっているネタでもう1本記事を紹介しておこう。追記で良いかな。

有事の食料輸入計画、商社などに要請へ 政府が新法

2023年10月1日 21:06

政府は商社などを念頭に、有事に食料不足が見込まれる際に代替調達ルートといった輸入計画を提出するよう求める方針だ。異常気象による不作や感染症の流行、紛争といった有事を想定し、重要な食料を確保する見通しを明確にする。

日本経済新聞より

備蓄はもちろん大切なんだよ。大切なんだけど、今まで聞いたことのないような事態が進行しているんじゃないかと、不安になるな。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    Twitterで(Xと言いたくないだけです)、「護衛艦のVLSには割と空きがある」から「トマホーク大歓迎」という書き込みをみて、なるほど、ESSMの定数も揃えられないのか財務省のクソ共はと思っていたのが塞翁が馬、禍福はあざなえる縄のごとしで、すぐにでも戦力化出来るかも、と言うかしないとヤバい、そういう判断になってきてますね。

    これで、大陸側の中の人がヤバいと思ってくれると良いのですけれど。
    ※じゃあ今のウチに、と思う可能性も割とある。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      何故か不思議なことに、護衛艦のVLSにはトマホークがすっぽり収まり(当たり前なんですが)、なおかつ、発射も出来ると(そういうシステムなので)。
      だから、購入できれば即実践投入が可能というわけですね。そういえば空いていますもんね。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    ブロックⅣへの切替えは、より早く入手可能であることだけを考えても良い判断であるね。JSFさんの解説によると、トマホーク運用国の米英は、Ⅳ⇒Ⅴへアップグレードしているそうなので、Ⅳ導入後に三々五々とⅤに上げて行ってもいい。
    支那軍の迎撃能力も過小評価できないので、さらにトマホーク購入を検討するか、国産の巡行ミサイル開発を急ぐ必要があるね。

    閑話休題

    今年はサンマが豊漁らしい。北海道沖の近海漁獲高が例年以上に期待できるそう。
    支那だけでも魚食わなけりゃ、十分な漁獲がありますわなwww 

    • アバター 匿名 より:

      韓国漁船も来なければ漁業資源の保護に成って良い事、でも台湾漁船が来そうだ。

      • 木霊 木霊 より:

        台湾でもサンマは人気みたいなんですよね。
        ただ、そのサンマ、支那にも売るらしいので、売り先の経済が不調ならば需要は減るのかも。

    • 木霊 木霊 より:

      そうなんですよ、ブロック4を買った後でブロック5にアップデートが可能ですから、訓練のためにも早めに用意しておいた方が良い。
      「中古品を買うのかー!」「やっぱり型落ちを買うのかー!」と騒がれそうですが。

      サンマ、良いですよね。
      燃料費が上がっているので、やたらと安くなってもらっても困るところですが、サンマを食べる文化は残して欲しい。そのためにも、売って欲しいですよね。

  3. アバター BOOK より:

    おはようございます。 

    以前 航空万能さんのサイトで見たのですが、米国ランド研究所によると沖縄は初撃の飽和攻撃で滑走路が穴だらけ使用不能となるの。そこで戦闘機じゃなく滑走路不要の無人機XQ-58を置く方がよろしい。とのことですね。

     https://grandfleet.info/us-related/the-us-air-force-released-the-launch-scene-of-the-xq-58-which-rand-corp-claimed-to-be-deployed-in-okinawa/

     https://www.youtube.com/watch?v=Mq9-ALEta7Q

    ここから本題ですが、後半のヨウツベ動画によるとXQ-58はトマホークと同じ値段。間に合うなら残り200機分はこちらに変更するのと日・米とも喜ばしいのかも?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      XQ-58って何かと思ったらウイングマンですか。
      有望な兵器なんだろうとは思いますが、未だ完成と言うわけではないところと、トマホークとは用いる用途が違うのが残念ですね。
      XQ-58の開発が加速するという意味では、お金を注ぎ込む価値はあルと思いますけどね。

      • アバター BOOK より:

        こんばんは!

        >トマホークとは用いる用途が違うのが残念ですね。

        トマホークに比べXQ-58は
         ①速度・ペイロード・価格は同等 ②航続距離は2~3倍 ③迎撃避け能力はステルスとAI制御で数倍?

        なのでトマホークと同じ使い方(自爆)しても上位互換と言えるのでは?

        それは置いといても何より、第6世代の戦いではコイツらが主役のはずですから、早いうちに習熟する利点が大きい。

        ….まだ開発中が残念ですが、米軍は既に1000機ほど発注したとか?(情報アイマイ、ごめんなさn)

        余談

         個人的には第6世代戦闘機ってホントに要るの? 
        実際要るのは、こいつらXQ-58等を遠隔コントロールするための「ステルスAWACS」であって、構想図のF-3やテンペストは、個人的に「なんか違う」気がしてます。

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