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陸自ヘリ事故発生により、離島での運用が問われる

安全保障
この記事は約7分で読めます。

ハッキリしたことが分かっていない段階で、この記事を書くのは躊躇われる。実際、痛ましい事故だし、自衛隊の将来を背負うべき人材が失われたことは、胸が締め付けられるような思いである。

先ずは亡くなられた方にはお悔やみと、未だ行方不明の方には一刻も早い発見を祈りたいと思う。

陸自ヘリ事故、隊員と見られる1人を新たに発見…引き揚げた計5人は死亡確認

2023/04/18 21:20

陸上自衛隊の第8師団長ら隊員10人が搭乗した多用途ヘリコプターが沖縄県・宮古島周辺で行方不明になった事故で、陸自は18日、海中の捜索で隊員とみられる1人を新たに発見したと発表した。海中から見つかったのは6人目となった。

讀賣新聞より

行方不明者は4名。1名が発見され、既に死亡が確認されたのは5名である。

一刻も早い事故原因の究明を望みたい

多用途ヘリ「UH60JA」、レーダーより消失

令和5年4月6日、沖縄県・宮古島付近で飛行中だった陸上自衛隊のヘリコプターの消息が分からなくなった。空港管制と無線で会話していたのは6日15字54分頃。その2分後の事だったという。

消息不明となったUH60JAは、米国製多用途ヘリコプターUH-60「ブラックホーク」の日本国内製造された機体。国内では「ロクマル」と呼ばれるようだ。陸自の他に海自、空自も導入している汎用機体で、国内では100機以上の採用実績のある機体だ。

そして、当日、宮古島分屯基地より飛び立ったUH-60JAは、海上を飛行中に消息を絶つことになる。当時、異常発生を知らせる無線通信も、隊員の脱出時に発信されるトランスポンダの緊急事態信号も、救命無線機の信号の何れの発信も確認できておらず、まさに「消息不明」であった。

必死の捜索が続けられて、4月13日の夜までに複数の破片や部品が確認され、16日になってようやく伊良部島北側の水深106mの海底で事故機胴体部分が確認されるに至る。

事故原因は現時点で不明

非常に残念なことに、現時点で事故原因は不明である。

掃海艦「えたじま」がソナー捜索中に、水深100mほどの海底に機体らしきものを探知するまで、手がかりとして発見されたドアの一部や機体内部パネル、外部にある整流板が見つかるのみだった。

推測されるのは、異常発生を伝えるまもなく水面に叩き付けられるように墜落し、隊員は脱出するまもなく海中に飲み込まれただろうと言うことだ。発見された機体の胴体の中で6名が発見されたことから、海中に水没してから海底に至るまでに脱出することも出来なかったようだ。

4月7日の段階で、海上に漂う機体側面に取り付けられていたスライドドアが発見されている。原型を留めたスライドドアがロック状態で発見されたことから、海中に没する段階でスライドドアが物理的な衝撃によって外れたと考えられる。その後に誰も脱出することが出来なかった事から考えて、墜落の衝撃はかなりの者だったと推測される。

陸自ヘリ引き上げ「民間の知見と技術を活用」 海保は大型測量船も現場に配置

2023年4月18日 火曜 午後8:55

自衛隊は海上保安庁とともにまだ見つかっていない4人の捜索を続けるとともに、海に沈んだヘリの胴体部分の引き上げに向けて民間の船の選定を進めることにしています。

~~略~~

陸上自衛隊は事故原因の究明のカギを握るヘリコプターの引き上げに向け民間のサルベージ船を手配することにしています。

FNNプライムオンラインより

祈るような気持ちで生存者の確認を待ってはいたが、引き上げは早くとも5月になりそうであり、生存は絶望的になってしまったのが返す返す残念である。

フライトレコーダーの回収は困難

事故原因の究明のためには、フライトレコーダーの回収が必須なのだが、コレの回収は相当困難だろうと思われる。

陸自ヘリ、記録装置に発信機能なし 自民党会合で防衛省

2023/4/18 23:13

防衛省は18日、沖縄県の宮古島付近で陸上自衛隊のヘリコプターが行方不明となった事故に関し、陸自ヘリに標準装備されているフライトレコーダー(飛行記録装置)には、位置を知らせる発信機能や海上で浮上する機能が付いていないことを明らかにした。同日開かれた自民党の国防部会などの合同会合で説明した。海上自衛隊や航空自衛隊のヘリには備わっている。

国場幸之助部会長らによると、防衛省の説明では、自衛隊ヘリには記録装置自体は通常備わっているが、常に洋上を飛ぶ想定の海空自ヘリには墜落などで衝撃が加わると外れるよう設計され、海上で見つけやすいように光や電波を発する仕様になっている。だが、陸上を飛行する想定で設計された陸自ヘリは、こうした機能は備わっていない。

産経新聞より

残念なことに、海自や空自のヘリの機体に取り付けられた、墜落の衝撃で外れて海上で浮上する機能の付いたフライトレコーダーは、陸自の機体には採用されていないそうだ。

これは、陸上を飛行する場合に、フライトレコーダーが事故時に外れる仕様にすると、原野や森林などで探しづらくなると予想され、また、敵に持ち去られるリスクが高くなることも考慮している為、自動発信装置も搭載されていない為らしい。合理的な理由があったのだが、離島での運用を考えると、今後は「適切ではない」と判断されるのかも知れない。

憶測に踊る人々

ところで、消息不明の報道が出たときに、「支那に攻撃されたのでは」という憶測が飛び交った。

攻撃受けた可能性は? 防衛省幹部に聞く陸自ヘリ不明の理由

2023年4月9日 11時13分

沖縄県・宮古島周辺で陸上自衛隊員10人が乗ったヘリコプターが消息を絶った事故は、原因がはっきりしないことからインターネット上では外部から攻撃を受けたとの臆測が飛び交っている。その可能性について防衛省関係者に取材した。

~~略~~

その後、インターネット上ではヘリが中国軍の攻撃を受けて墜落したのではといった内容の書き込みが相次いだ。前日の5日に中国海軍の空母「山東」が沖縄の南で初めて確認されていたことから、関与を示唆するような書きぶりもあった。事故後に海上でヘリの一部とみられるものが見つかったことも、攻撃で破壊されたと受け止められる一因となったようだ。

朝日新聞より

攻撃を受けたのでは?とか、電波妨害を受けたのでは?という憶測が飛び交って、ネットでは随分と騒がれた。

政府もきちんと否定すれば良かったのだが、証拠がない状態で否定することは難しかったのか、13日になるまで明確な否定はなかった。

こうした点について、吉田圭秀・統幕長は13日の記者会見で、「事故発生時に、(中国軍の)特異な海上航空における動向は認知していない」と述べた。

防衛省は、中国軍の情報収集艦が6日に沖縄本島と宮古島間を通過し、太平洋に出たことを公表している。同省の青木健至報道官も11日の会見で、航行したのは6日未明のことで、「事故発生の時間とは大きく異なっている」と指摘していた。

讀賣新聞より

ハード面を改めるのは時間が必要なんだけど、こういったソフト面は直ぐにでも改めるべきだろう。日本政府も広報部を置かない?政治家は演説は得意なんだろうけど、広報という面で言うとどうも宜しくない感じがする。

それはともかく、全貌が明らかになるまで待ちましょうや。

現時点ではパイロットのミスなのか、整備の問題なのか、或いは別の理由があるのかすらハッキリ分かっていない。分かっているのは、敵性勢力からの攻撃を示唆する証拠は何もないことだけだ。

が、既に分かっている事を総合すると、これまで陸自用のUH-60JAとして調達されてきた機体は、離島で運用する場合にはあまり適切ではなさそうだ、ということ。

緊急用フロートは海上自衛隊の哨戒ヘリのほか、海上保安庁の全55機のヘリに装備。平成20年に宮古島近海で不時着水したケースでは、緊急用フロートを展開し人命が救われている。

産経新聞より

緊急用フロートを装備するということも、検討すべきではないかという意見がでている。陸上運用の際にはデッドウェイトにしかならないが、海上に出る可能性があるのなら、人命救助の確率を上げてくれる装備である。結果論ではあるんだけどね。

起こってしまった事故は仕方がないのだが、原因究明を含めて今後の改善に繋げて欲しいと思う。

Twitter他、色々不快な表現をされる方を見かけはするんだけど、国民に出来ることは事故原因究明と、対策を待つことだけである。こんな記事を書いておいてなんだが、騒いだところで何の意味もない。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    あくまで想像ですが、墜落状況が余りにも唐突すぎるので、何らかの原因(山や崖の吹き下ろしの乱気流)とかに巻かれてひっくり返って海面に叩きつけられた?とか思ってしまいます。

    色々問題はありますが、改善案として「高級将校を同じ機体に一度に乗せない」がまず徹底されるべきかと。

    • 木霊 木霊 より:

      パイロットの海上飛行経験が少なかったというのが、原因かも知れないなとは思います。
      が、何にせよ、もうちょっと情報が出てからですね。

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