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JB pressに「時代遅れ」と揶揄される最新式トマホーク

報道
この記事は約11分で読めます。

JB pressの記事は割と読むのだが、時々的ハズレな事を書いている人もいるようだ。

40年前開発のトマホークでは日本は守れない、これだけの理由

2022.12.19(月)

国家安全保障戦略(安保戦略)が決定する前に、なぜ高い兵器を購入することが決まるのか。日本は、戦い方と抑止力を検討して、どの武器を持つべきなのかよく考えるべきだ。

JB pressより

途中までは、防衛産業を育てよう的な感じの内容だったのだが、途中からおかしなことになっている。

時代遅れなのか?

トマホーク・ミサイルを購入

日本の自衛隊が敵基地攻撃能力(領域外攻撃手段)を獲得する事が決まって、メディアは大騒ぎなのだが、トマホーク・ミサイルを買う話は以前からチラホラ出ていた。そこでは「国産より早期配備が可能」というところが、トマホーク・ミサイルが選ばれた理由だと紹介している。

もちろん、国産の「12式地対艦誘導弾」は改良が進められている。だが、配備は令和8年度以降にずれ込むと予想されているために、素早く戦力を高めるためには、既存のミサイルを入手する方が手っ取り早い。つまり、国産「12式対艦誘導弾」と、トマホーク・ミサイルも導入するよという意味だ。

そして、僕のこの記事の中でも「時代遅れ感」があるとは書いた。

が、本当に時代遅れかどうか、という話はまた別なんだな。

40年前に開発

さて、このJB pressの記事は、パトリアの事についても突っ込み待ちなんだが、そこは敢えてスルーして、トマホーク・ミサイルについて言及していこう。

トマホーク巡航ミサイルは、ほぼ40年前に開発された兵器である。

1991年の湾岸戦争、2001年からのアフガニスタン戦争、2003年イラク戦争などで、大活躍した。

~~略~~

さらに、防衛省が米国製の巡航ミサイル「トマホーク」について、2027年度までをメドに最大500発の購入を検討しているという。

岸田文雄首相は12月13日のジョー・バイデン米大統領との首脳会談で購入交渉を進展させる方針を確認し、「反撃能力」の保有に向け、準備を加速させている。

だが、ちょっと待ってほしい。

JB pressより

だがちょっと待って欲しいのはオマエだよ。朝日新聞構文を使うな!

確かに、1974年に計画が始まって1980年に水上艦から試射、そして、1983年に配備されたのがトマホーク・ミサイルだ。が、それはブロックIの話で、その後、ブロックII、ブロックIIIと改良されている。

湾岸戦争(1991年)に初めてトマホーク・ミサイルは戦場に投入されて使用されたが、これはおそらく量産型に改良されたブロックIIAであり、通常弾頭型のミサイルだ。TLAM-Cが261発と、TLAM-Dが27発使われている。

その後、ブロックIVに改良する計画が持ち上がったが、これは高価になりすぎるとしてキャンセル。2000年代に入ってからは、タクティカル・トマホークと呼ばれる廉価バージョンが提案され、結果的にこれがブロックIVとして採用されるに至る。イギリス海軍が採用しているのもこのバーションであり、2004年以降に実戦配備されている。

で、最新型はブロックVだ。

The US Navy has an upgraded Tomahawk: Here’s 5 things you should know

Dec 15, 2020

WASHINGTON – The U.S. Navy test-fired its new Block V Tomahawk from the destroyer Chafee in December, introducing the newest generation of the venerable Tomahawk cruise missile to its arsenal.

~~対訳~~

ワシントン – 米海軍は12月、駆逐艦チャフィーから新型のブロックVトマホークを試射し、由緒あるトマホーク巡航ミサイルの最新世代を兵器庫に導入した。

Defense Newsより

2020年に配備され始めているタイプである。

つまり、40年前に開発されたのではなく、2年前に改良されたミサイルを購入するというのが、今回の計画なのである。

トヨタ・カローラは1966年より販売しているが、今、「カローラを買うぜ」と言う人がいたとして、「60年年近く前のモデルだから買う意味無いよ」と止めるバカはいないだろう。最新モデルは12代目 E21#型で、2018年より販売が開始されていて、以降毎年改良が重ねられている。

兵器のライフサイクルが長いからと言って、昔の仕様のまま売っているわけでは無い。

大きな4つの問題?

で、冒頭に紹介した記事では古いミサイルだという前提で、3つの問題があると指摘している。

  1. ミサイルの速度が遅いので、迎撃される可能性が高い
  2. 敵対国は超音速滑空体の実験をしているので、抑止力にならない
  3. 10年後には新たな巡航ミサイルに置き換わる

うんうん、この3つの課題は、ブロックVであったとしても当てはまる。

確かに巡航ミサイルは飛翔速度が遅いので迎撃されるリスクがあるのは事実だ。しかし、弾道ミサイルと事なり、弾道の予測が難しいのも巡航ミサイルの特徴である。更に低空を地形に沿って飛行するのであれば、迎撃の難易度は上がる。

確かに、ロシアが開発したS-300やS400などの防空ミサイルは優れた迎撃能力を持ってはいるが、その守備範囲は余り広くない。ロシアによれば、S-400は400km先の六つの目標に対する同時処理能力があるとしているが、それは長距離対応用のミサイル40N6が装備されている場合だ。短~中距離用の9M96系列は射程40km程度であり、3種類のミサイルが選択的に配備される。だから、巡航ミサイルの探知を早期に発見できた場合に対処が出来るよ、という話になり、標的ごとに防空ミサイルを用意するのは現実的ではないことから、多数のトマホーク・ミサイルを配備する前提であれば、対応可能である。1番目の問題は、実は然程問題にならない。

実際に、アメリカ軍がシリアを攻撃した際には、ロシア軍のS-400で迎撃したという話にはならなかった。配備された場所から遠すぎたのである。

また、超音速滑空体なら日本でも研究しているので、トマホーク・ミサイルに加えて配備することになるだろうから、2番目の問題は心配することでは無い。

3番目の話は、欲しいのは今なので、10年後の事は議論するに値しない話だ。10年後の新たなミサイルはその時買うよ。

持つか持たないかの検討?

そして、結びの部分も言いたいことは何となく分かる。

日本は、現段階では、速度が遅い巡航ミサイルで抑止力を保有することは必要だ。

だが、近い将来には、どのミサイルが抑止力になるのかを十分に検討すべきだ。

日本は、弾道ミサイルを開発・製造する時に来ている。日本には今のところ技術があるので、持つか持たないかの検討に入るべきだ。

JB press「40年前開発のトマホークでは日本は守れない、これだけの理由」より

しかしこの部分もかなり事実誤認があるようだし、そもそも自己矛盾を生じている。

先ず、この記事の冒頭に書かれているように、アメリカから最新のトマホークを買うことはほぼ決まっている。つまり、「持つか持たないかの検討」など不要なのだ。弾道ミサイルの保有ではなく、巡航ミサイルの保有を決めたのだから。

そして、短期的にはトマホーク・ミサイルで、中期的には12式地対艦誘導弾改良版を配備していくことが決まっている。更に、超音速滑空体の開発も既に進めている。

https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2019/doc/fukuda.pdf

弾道ミサイル技術に関しては、正直、日本には必要な要素は揃えている。ただ、持つという決断を今のところしていないだけで、必要であれば開発をするだろうとは思う。実際に2023年よりこれに類するものが量産開始される(追記にて言及)。

更に、極超音速の飛翔体を迎撃する技術の開発も始まる。

「極超音速」対応の迎撃技術 日米、共同研究を検討

2022年12月3日 21:00

日米両政府は中国やロシアが配備したとされる極超音速滑空兵器(HGV)を迎撃する新たなミサイルの技術の共同研究を検討する。地上に向け突入し始める前の遠方を滑空する段階で迎え撃てるようにする。既存の防衛網で対処できない高度を飛ぶHGVの迎撃手段を持ち、抑止力を高める。

日本経済新聞より

こちらはまだ構想段階ではあるようだが、対応出来るように検討が始まったようだ。

つまり、記事に書かれたようなことは既に色々決まっていて、現状認識も間違った部分が多いという感じになっている。ガッカリだよ。

弾道ミサイルを保有する議論

なお、JB pressの記事のお題に乗って、本当に弾道ミサイルの保有について最後に少し考えてみよう。

これまで何故、日本が長距離ミサイルを持ってこなかったのか?といえば、色々理由はあるのだけれども、一番の建前としては憲法9条の戦力不保持に抵触するから、と言う理由だ。戦後長らく、アメリカから日本の戦力増強が警戒されていたと言うことも大きな理由にはなるのだけれど。

さておき、憲法9条に対するロジックは、解釈によって「国家が有する固有の権利である自衛権は放棄していないよ」というところがベースで、自民党はココに「最小限の戦力保持」という足枷を嵌めることで、日本の防衛方針を維持してきた。

ただ、この自衛権には、敵国の基地を攻撃することは含まれるというのは、政府解釈であって、国連憲章第51条に「武力攻撃が発生した場合(if an armed attack occurs)」と規定されていて、この「武力攻撃」に「攻撃着手」が含まれるという意味となる。

攻撃着手の判定が困難であると言う点には、ここでは目を瞑るが、攻撃着手を潰すことに対して、どんな手段を用いて攻撃してもそれは即ち「反撃だ」という事になって、それは巡航ミサイルに限らないということになる。だから、弾道ミサイルを配備するという選択肢はあるだろう。

なお、巡航ミサイルの飛翔速度は遅いので、恐らく攻撃着手をもって敵基地を打撃したとして、敵側のミサイル発射準備には間に合わないだろう。「だから弾道ミサイルを保有しろ」という議論になるようだが、そこは極音速ミサイルを保有するという流れになっている。

極超音速ミサイルとは 音速の5倍以上で飛行、探知困難

2022年11月3日 2:00

音速の5倍以上の「極超音速」で低い高度を飛ぶミサイル。放物線を描く弾道ミサイルと異なり速度や方向を変えて飛行する。探知や迎撃が難しく、既存のミサイル防衛システムを突破する「ゲームチェンジャー」の技術とされる。英語ではHyper-Sonic Missileと表記する。

大きく2つの種類に分けられる。一つは特殊なエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM=Hyper-Sonic Cruise Missile)だ。日本はこのタイプの開発をめざす。もう一つは極超音速滑空兵器(HGV=Hyper-Sonic Glide Vehicle)と呼ばれ、弾道ミサイルなどで打ち上げた後に弾頭部が分離しグライダーのように滑空して目標へ向かう。

日本経済新聞より

つまり、日本が弾道ミサイルを保有するメリットがあるのは、極超音速巡航ミサイル、または超音速滑空兵器の開発が完了するまでの話。そして、弾道ミサイルの迎撃は比較的容易であるために、巡航ミサイルの方がメリットが大きいのではと判断されているようだ。

弾道ミサイルを保有するケースで有利なのは、重量のある弾頭、即ち核弾頭の搭載がより容易である点だが、核兵器の保有に関しては日本政府も一度も許容したことがないため、議論の余地はない。

確かに、弾道ミサイルの技術は、ロケット技術を保有する日本にとっては開発の容易な分野ではあるのだが、利点があるのか?と言われると時間的メリットがでる程度で、それならばトマホーク・ミサイルで良いよね、という話になると思う。

追記

えー、コメントを頂いて、弾道ミサイルの話、誤解していたことが発覚したので、追記して訂正させて頂きたいと思います。ハイ。

島嶼防衛用高速滑空弾ブロック1が量産開始予定(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
8月31日に日本防衛省から来年度予算の概算要求が提出されました。その中で自衛隊が計画している長距離スタンドオフ兵器の一覧が掲載されています。我が国の防衛と予算-令和5年度概算要求の概要-日本防衛省(

先ず紹介しておきたいのがJSF氏の解説である。この記事の中で言及があるのだが、島嶼防衛用高速滑空弾ブロック1が実質的な弾道ミサイルであると、そういう事になる。

本文中、新たに弾道ミサイル開発など意味が無い旨の記載になっているのだけれど、当初の記載だと、弾道ミサイル開発はやっていないと言うような意味合いだった。が、現実的にはその技術をベースに、高速滑空弾の開発をやっている。

いや、資料で見ていたハズなんだけど、弾道ミサイルに分類されることに気が付かなかったというか、その認識が無かったというか。

防衛省「高速滑空弾」部隊新設へ 九州と北海道に配備を検討

2022年12月10日 5時09分 

防衛省は、音速を超える速度で滑空する「高速滑空弾」を運用する部隊を陸上自衛隊に新たにつくり、九州と北海道への配備を検討していることが関係者への取材で分かりました。

「高速滑空弾」は、音速を超える速度でグライダーのように滑空して目標に向かうミサイルで、従来よりも迎撃が難しいとされ、防衛省が離島の防衛などのために2018年度から開発を進めています。

NHKニュースより

この記事でも高速滑空弾に関する部隊を作る旨の内容があるのだけれど、紹介されているのは途中から滑空する部分。

滑空飛翔前は弾道ミサイルとして打ち上げるんだよね。

いやー、失敗失敗。

追記2

さて、答え合わせできる記事が出てきたな。

防衛関係費、前年度比26%の大幅増 「反撃能力の保有」などに配分

2022/12/23 17:29(最終更新 12/23 19:28) 

政府が23日に閣議決定した2023年度当初予算案は一般会計の総額が114兆3812億円となり、22年度当初予算から6兆7848億円増え、11年連続で過去最大を更新した。

~~略~~

反撃能力の手段にもなる長射程ミサイルの調達など「スタンドオフ防衛能力」の強化には、約1兆4207億円を充てる。このうち米国製巡航ミサイル「トマホーク」(射程1600キロ以上)の取得には、2113億円を計上。取得するトマホークは最新型の「ブロック5」となる。

毎日新聞より

やっぱり買うのはトマホーク・ブロック5だって。最新型だそうだよ。

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