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ワグネル、ロシア軍に吸収される流れに

ロシアニュース
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そうかー。プーチン氏にとってプリゴジンは邪魔だったんだね。

プーチン大統領、ワグネル戦闘員らに「国家忠誠の誓約」義務づけ…事実上の軍編入が狙いか

2023/08/27 20:35

ロシアのプーチン大統領は25日、ウクライナ侵略に自発的に参加する戦闘員らに対し、「国家への忠誠の誓約」を義務づける大統領令に署名した。23日にジェット機の墜落で死亡したエフゲニー・プリゴジン氏が創設した民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員らを念頭に国防省の統制を強化し、事実上、軍に編入する狙いがあるとみられる。

讀賣新聞より

似た趣旨の記事を書いてしまった後なんだけど、こういう切り口で考えるとプリゴジンは殺されるべくして殺されたと言うことになるな。

ワグネルとプリゴジン

苦境を迎えるロシア軍

ウクライナ戦線でロシア軍は、なかなか苦戦しているようだ。

ウクライナ軍 南部でロシア軍“最も強固な防衛線”一部突破か

2023年8月27日 19時57分

領土奪還を目指すウクライナ軍は南部ザポリージャ州でロシア軍の最も強固な防衛線の一部を突破したとも伝えられ、今後、南部でのさらなる前進につなげられるかが焦点です。

NHKニュースより

ウクライナ軍が善戦しているという意味では良いニュースなんだろうが、ロシア軍の立場に立つと、なかなかの苦境にあるようだ。

特に、南部ザポリージャ州はプリゴジン率いるワグネルが参戦していた地域である。しかし、プリゴジン氏は「南部戦線は地獄だ」「これ以上粘るのは無理」と、首都モスクワへの強訴を計画して失敗する。

ワグネルの反乱(2023年6月23日)が失敗に終わり、プリゴジン氏は暗殺された。

しかし、ロシア軍は未だにウクライナ南部に軍隊を侵攻させていて、退却してはいないのだ。

ロシア兵は「畑で採れる」

第二次世界大戦の際には、「ソ連兵は畑で採れる」と言われるほどの状況であった。これは、ろくに訓練を受けていない新兵が戦場に次々と投入される事を指して表現した言葉である。

そして、現在のロシア軍もまさに同じ状況になっている。

今月24日、NHKの取材に匿名で応じたのは、ウクライナ軍の「第71独立猟兵旅団」に所属する偵察部隊の指揮官で、この部隊は現在、反転攻勢の焦点となっている南部ザポリージャ州で戦闘に参加しているということです。

指揮官は、部隊の詳しい位置は明かせないとしつつ、前線の状況について「いくつかの地域で成功し、成果が増えている。ロシア軍の1つ目と2つ目の防衛線の間で戦闘が行われているところもある」と述べ一部の地点では、第1の防衛線を突破するなど、少しずつ前進していると明らかにしました。

ただ、ロシア軍の防御について「地雷が密集している。手薄な部分を探しているところだ」と述べたうえで「ロシア側は常に兵力を補充している」と述べ、ロシア軍は、適宜、兵士を入れ替えるなど戦力を維持、増強しているとして警戒感を示しました。

NHKニュースより

ウクライナへ侵攻したロシア軍は、兵士の補充を刑務所で行ったとして有名になったが、ろくに訓練を受けていないという状況は同じである模様。

このために戦力差が無くともウクライナ軍側が押していける状況らしいが、次々とおかわりが登場する状況に苦戦はしているようだ。

これって、ロシア軍側がジリ貧ってことなんだろうね。

脱プリゴジン

プリゴジン存命の時にこんなニュースがあったのだが、この時から今の展開というのは恐らく予定されていた。

ワグネル「脱プリゴジン」、プーチン氏が新トップ提案か…車列60台ベラルーシ入り

2023/07/15 21:51

ベラルーシの独立系軍事監視団体「ガユン」は、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」部隊とみられる約60台の車列が15日、ベラルーシ東部モギリョフ州オシポビチ近郊の軍事キャンプに到着したとの分析を明らかにした。プーチン露大統領は反乱を起こした創設者のエフゲニー・プリゴジン氏の影響力排除を進めており、ワグネルはプリゴジン氏抜きで活動を続ける見通しとなっている。

~~略~~

反乱に参加した戦闘員は8月まで休暇を取っているとの証言もあり、ベラルーシに入った戦闘員の多くはアフリカで活動していた部隊との見方が出ている。

讀賣新聞より

アフリカの部隊ね。

プリゴジン氏、アフリカ利権保持狙いプーチン氏と確執 墜落前

2023/8/26 13:30(最終更新 8/26 20:34)

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は25日付朝刊で、自家用ジェット機の墜落で23日に死亡したとみられる民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏が、墜落の数日前に中央アフリカを訪問していたと報じた。アフリカでのワグネルの影響力排除を進めるプーチン露大統領らの動きに対抗して同国を訪れたとみられている。

毎日新聞より

そういえば、暗殺される直前にはプリゴジンはアフリカに渡っていたと思われる証拠が幾つか出ている。

人材がそろそろ枯渇し始めているロシア軍にとって、戦闘を経験しているワグネルの部隊は是非とも欲しい人材であろう。

プーチン氏は露有力紙コメルサントの取材に対し、6月29日に露大統領府で行われたプリゴジン氏やワグネルの司令官ら35人との会談を振り返り、トロシェフ氏の名前を挙げていた。トロシェフ氏らワグネル司令官の多くは露国防省と契約するというプーチン氏の提案にうなずいたが、プリゴジン氏だけが「彼らは同意しないだろう」と反対したという。トロシェフ氏は露軍の退役軍人で、ワグネルでは司令官を務めている。

讀賣新聞より

どうも、プリゴジンが暗殺される前に色々画策していた風景が浮かび上がってきたね。「ワグネルはワシが育てた!」「ワグネルはやらん」ということなのだろう。

そして署名

だが、プリゴジン亡き後、大統領令によってワグネルの兵士はロシアに帰属することになったようだ。

大統領令は25日に公布された。露独立系紙「モスクワ・タイムズ」によると、戦闘員らは「ロシア連邦への忠誠を誓うこと」や「指揮官や上官の命令に厳格に従うこと」が義務づけられた。

讀賣新聞より

何というか、ワグネルはロシア軍傘下というより、ウクライナ戦争に参加した治安維持部隊という側面が強かった。

それ故に、ロシア軍の指示を受けずに独自に行動する自由が与えられていたようなのだが、これがプリゴジンが暗殺されることで大幅に話が変わった。政権に対する影響力のある人物が少なくなってしまい、結果的にワグネルはロシア軍に従わざるを得ない。

しかし、既にロシア軍の上官の存命率が低いことを考えても、まともな指揮ができて動ける軍隊が何処までロシアに残っているのやら。

追記

取りこぼしたニュースがあったようで、ちょっとこのニュースは見逃せない。

ロシア反体制勢力、ワグネル兵士に報復促す

2023年8月25日10:52 午前

ロシアの反体制派武装集団は、民間軍事会社ワグネルの兵士らに対し、創設者エフゲニー・プリゴジン氏や司令官のドミトリー・ウトキン氏の死に対する報復として、ウクライナ側に寝返るよう呼びかけた。

ロシア非常事態省によると、プリゴジン氏、ウトキン氏を含む計10人がモスクワ郊外で23日に墜落したプライベートジェット機に搭乗していた。生存者はいないとしている。

ウクライナ側で戦うロシア義勇団(RVC)の司令官、デニス・カプスチン氏はワグネルの兵士ら向けに動画を投稿し、ワグネル幹部の死に関与したロシア国防省の「番犬」として働くか、あるいは報復するのかを「真剣に選ぶ時がきた」と強調。「報復するにはウクライナ側に寝返る必要がある」とした。

ロイターより

情報戦の対象になっているニュースだと思うので、このニュースの重みをどうやって評価するか?と言う点についてはなかなか難しい。

ただ、このニュースに登場しているロシア義勇団の司令官、デニス・カプスチン氏と言うところに引っかかった。

ロシア義勇軍団、プーチン政権への武装蜂起呼びかけ…ウクライナ拠点に侵入攻撃

2023/03/03 23:28

ウクライナと接するロシア西部ブリャンスク州の知事は2日、「ウクライナから破壊工作集団が侵入し、発砲した」と発表した。ウクライナに拠点を置くロシア人部隊が同日、侵入攻撃を認め、プーチン露政権への武装蜂起を呼びかける動画をSNSに投稿した。プーチン大統領は「テロ」と非難し、ウクライナへの報復を示唆した。ウクライナ側は関与を否定している。

~~略~~

ドイツの有力誌シュピーゲルなどによると、動画に映っていた兵士の一人は、創設者のデニス・カプースチン氏とみられる。

讀賣新聞より

デニス・カプスチン氏はプリゴジンとの連携をとっていたわけではなく敵対関係にあったようだが、プリゴジンの乱の際には、カプスチン氏はプリゴジンのことを「立場は真逆だが、真の愛国者だ」とエールを送っている。

しかし、プリゴジンが暗殺された今となっては、ワグネルを取り込もうという動きを見せているらしい。ロシア軍と反乱軍の両者がワグネルの兵士の獲得に躍起になっているみたいだね。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ワグネルがロシア軍に吸収されるのは火を見るより明らかでしたが、さてそうなると、多少なりとも不穏分子を抱えた彼らをどう処遇するか?
    まあ、速攻最前線送り、後ろからは政治士官と機関銃、こんな所でしょうか?
    折しもザポリージャで防衛戦が突破されかかってますし、使いどころでしょうね。
    ただ、兵も人の子、それと解っててむざむざ死にに行きますかね……
    彼らが前線で反乱でも起こしたら面白いんですが、そこまでは期待してません。
    せいぜいサボタージュと敵前逃亡くらいでしょうかね……

    メシと金が潤沢だった傭兵は、素直に質素を重んじる軍の言うこと聞くとは思えないです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      「どう処遇するか」はかなり揉めると思いますよ。本当ならばウクライナの前線で使いたい人材ですが、それの元締めを殺してしまいました。
      アフリカ方面で使うつもりだったのでしょうが、その目処もちょっと怪しいですね。
      人材として送り込んでも、送り込まなくても前線崩壊の切っ掛けになる気がします。

  2. アバター 河太郎 より:

    こんにちわ。ゴルゴ13を思わせて怪しい。スパイ小説好きなので不謹慎ながら
    ワクワクして読みました。ロシアによる始末なのでしょうが、軍幹部による説と、プーチン説と2つありますね。
    異常気象説まで合わせると8つとか。
    米国、プーチン、軍、ウクライナ、気象、飛行中のトラブル発展……
    んで……木霊樣や皆様の御意見を伺えればと思いお願いします。

    果たしてプリコジンが本気でプーチン打倒を決意していたら(計画してたら)
    クーデターは成功したと思いますか?

    御意見をうかがえれば幸いです。では。
    先はお願いまで。

    • 木霊 木霊 より:

      「ロシアで起こる出来事に、プーチン氏が関与していないことなどない」とまことしやかに言われますが、当たらずとも遠からずなのでしょう。

      で、プリゴジンのクーデターは成功したのか?のご質問ですが、これがなかなか長くなりそうな話ではあります。ですので、できるだけ簡潔に。

      そもそもクーデターというのは政権を転覆して終わりではなくて、その先がある話であると理解しています。つまり、プーチン氏を見事失脚させることが可能であったとして、プリゴジンは自ら、或いは近しい者をトップに据えてロシアを制圧する、そこまで出来てはじめてクーデター成功だと言えると思います。

      そうすると、そもそも国家観の無い様に見えるプリゴジンが、クーデターに成功できたとは思えません。プリゴジンの乱は、ロシアの国境を超えた後に実に速やかにモスクワの直近にまで至りました。浸透速度という意味で、実に鮮やかであったと言わざるを得ない。まるで無人の野を往くが如くに大した戦闘も起こらないままモスクワ近郊にまで至った、という事実を考えると、1968年6月1日に発生したマチアス・ルスト事件に似た空気を感じます。
      この一件は架空戦記もので知ったのですが、当時19歳のルストは、ハンブルグでセスナ172B型をチャーターし、ノルウェー、フィンランドを経由して、モスクワの赤の広場に至ります。当日、ソ連の国境警備隊は休日で警備が手薄であり、大韓航空機撃墜事件の影響もあって追跡した戦闘機が民間機を撃墜するのを躊躇ったのが、成功の一因であったとされています。
      この事件の責任を取って、ソ連の国防相や上級将校、高級将校を大量に更迭させたと言われます。

      おそらく、ロシアは内側に浸透してしまえばかなり脆い。その事をプリゴジンは改めて示してしまいました。まあ、本邦もベレンコ中尉亡命事件(1976年9月6日)を経験しているので、ルスト事件を笑えないのですが。

      さて、そういった事を考えると、プリゴジンがやる気さえあればモスクワ市内どころかクレムリンまでの浸透は可能だっただろうと思います。プリゴジンの指揮能力は最前線で指揮官として生き残った事からも証明されるので、軍事的な手腕を疑ってはいません。それなりのものがあったのでしょう。
      ただしその先、果たしてプーチン氏を殺害或いは失脚させてロシアの実権を握ることが出来たのか?といえば、おそらくは無理ではなかったのかと。僕が考えるプリゴジン・クーデターの成功条件は、モスクワ近郊まで浸透するまでの段階で呼応して各地で武装蜂起する勢力が存在したことです。しかし、ロシア義勇軍団や自由ロシア軍団という反政府勢力ですら当日は動きはしなかった。連携が出来ていなかったという側面もあるのでしょうが、ソレが可能となるカリスマ性をプリゴジンが有していなかったということもあるでしょう。プリゴジンは選択肢としてはナワリヌイ氏などを担いでモスクワへ至る選択肢もあったはずです。何しろ刑務所へ出入りできるルートがあったのですから。しかし其れも選ばなかった。西側とのパイプがあれば、其れを実行する資金援助などの可能性すらあったはずです。ナワリヌイ氏を担ぐのであれば、ですが。

      つまり、それが出来なかったのか或いはやらなかった時点で、クーデター成功は不可能であっただろうというのが僕の見立てであります。

      • アバター 河太郎 より:

        木霊樣どうもありがとうございます。なるほど…と思いました。
        2・26でも決起軍は陛下の賛同を得られず崩壊しましたね。
        たしかにプリコジンがモスクワ制圧できても、その後は政治であり、ナワリヌイ氏のようなリーダーがいないとどうにもならない。
        その次に西側の承認とかも必要になる。その為にはカリスマある政治家を用意して、しかる後にもっともらしい綱領をあげる……プリコジンには無理でしょうね。いや、勉強になりました。ありがとうございます。

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