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工廠の復活は実現するか

安全保障
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工廠とは、軍隊直属の軍需工場の事である。かつては、日本国内にも幾つか存在したのだけれど。

軍事産業に「助成金」…防衛産業強化法案が審議入り 製造施設国有化規定で「軍管理工場の復活」懸念も

2023年4月7日 22時44分

岸田政権が進める防衛力の抜本的強化を支える防衛産業強化法案は7日、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。装備品輸出に取り組む企業を助成する基金の創設などを通じ、国内の防衛産業を維持・強化する狙いがある。自民、公明両党は月内にも装備品輸出ルールの緩和に向けた協議を始めるが、識者は「官民でタッグを組んで、軍事産業の促進に突き進むのでは」と危ぶむ。

東京新聞より

相変わらずの東京新聞だが、「軍事産業の促進に突き進むのでは」って、ダメなのかな?

どのように防衛力の強化を図るか

防衛産業は儲からない

日本では特にそうなのだが、とにかく防衛産業は儲からない。

防衛産業の企業撤退相次ぎ 生産ライン国有化など 法案閣議決定

2023年2月10日 13時30分

防衛産業からの企業の撤退が相次ぐ中、政府は10日の閣議で、自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業の事業継続が困難になった場合は、生産ラインを国有化し、別の企業への委託を可能とすることなどを盛り込んだ法案を決定しました。

~~略~~

浜田防衛大臣は閣議のあとの記者会見で「自衛隊の任務遂行に必要な装備品の製造などを担う防衛産業は、まさに防衛力そのものだ。事業撤退や外国への依存に伴い安定的な供給が脅かされるリスクなど、さまざまな課題が顕在化しており、企業の声も踏まえて法律案を提出することにした」と述べました。

NHKニュースより

国内の防衛産業の多くは撤退を始めている。正直、割に合わないのだ。先日も、津島製作所が撤退を決定した。

島津製作所、空自向け部品製造から撤退へ…低収益で防衛事業の継続困難

2022/11/01 13:00

分析機器大手の島津製作所(京都市)が、防衛関連事業から撤退する方針を固めたことがわかった。航空自衛隊向け部品の製造などをしているが、開発費に見合う利益を期待できないと判断した。新規の設備投資を見送り、事業の譲渡先を見つけた後に撤退する。日本の防衛産業では事業の継続を断念する企業が相次ぎ、防衛力強化を掲げる政府の課題となっている。

~~略~~

防衛関連産業では、同様に撤退を決める国内企業が相次いでいる。小松製作所は自衛隊車両の新規開発を取りやめ、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)も艦艇の建造から撤退。今年2月には、輸送機用ブレーキなどを製造する油圧機器大手のカヤバ(KYB)も、撤退方針を公表した。

讀賣新聞より

カヤバも小松製作所も三井造船(現:三井E&Sホールディングス)も、撤退を決めている。

自衛隊の都合でコロコロと仕様が変わる上に、スペシャル仕様でヘビーデューティー。トラブルがあれば責任を取る必要があるし、技術転用も難しいと来た。何より、大学が研究を拒む(主に日本学術会議のせい)為に、研究も満足にできない。

アメリカですら、兵器産業は利幅が薄い。

残念ながら民間企業にお願いしても、先は見通せない。

工廠はどんな存在か

第二次世界大戦前だって、事情はさほど変わらない。今ほど酷くはないが、結局のところ戦争のために兵器開発をするのだから、平時において儲けが期待できるような産業にはならないのだ。

ではどうしたか?といえば、大雑把に言えば国家が管理する工場を作って、兵器の生産も行ったのだ。それが工廠という存在である。

防衛省によると、包括的な防衛産業強化を目的とする法案の提出は1954年に前身の防衛庁が発足して以来、初めて。背景には、防衛分野の事業から撤退した企業が2003年以降で100社を超えるなど、生産基盤の維持を見通しづらくなっていることがある。下請けの中小企業を含めると、戦闘機で約1100社、戦車で約1300社、護衛艦で約8300社が関係しているとされ、技術継承も課題となる。

東京新聞より

防衛省が「包括的な防衛産業強化を目的とする」と掲げているが、戦前の日本において工廠が産業集積の役割を果たしており、地域産業の育成に一役買っていたことと関係がある。

良くも悪くも特殊な兵器を作るためには高い技術力を要するので、産業の育成という意味において非常に大きな役割を果たす。もちろん、旨い話ばかりではないんだけどね。

与党は近く、装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針改定の議論に着手する。現状では原則禁止されている殺傷力のある武器の扱いを巡り、解禁に前向きな自民党と慎重な公明党の溝は埋まっていないが、日本にとって望ましい安全保障環境の創出につながるとして、輸出促進を図ることでは一致している。

東京新聞より

良くも悪くも、輸出できなければ産業として成り立たないし、コストダウンできない。

呉海軍工廠

工廠として有名なのは、呉海軍工廠だろうか。かつて、戦艦大和を作ったことで有名である。

旧呉海軍工廠を訪ねて(上)近代化のトップランナー…70年目で世界一の戦艦・大和を造る

2018/3/21 11:40

明治維新から150年。発足したばかりの明治政府にとって、最大の課題の一つが近代的海軍の建設だった。明治中期に整備された日本最大の軍港を擁した広島県呉市を訪ね、旧海軍の歴史に日本近代化の成功と失敗、そして現代につながるヒントを求めた。

産経新聞より

旧呉海軍工廠を訪ねて(下)成功と破綻…近代の縮図

2018/3/26 07:20

明治22(1889)年に旧海軍の鎮守府が置かれて以来、国内最大の海軍工廠を有する一大軍港として発展した広島県呉市。海軍が消滅して70年以上たった現在もなお、市街の至る所でその遺産を目にすることができる。

産経新聞より

引用してはみたが、割と感傷的な内容の割に中身が薄い記事ではある。が、要は呉海軍工廠は日本のトップエリートたちを集めて、国産戦艦を作るための技術を高め、ついに日本軍が国産の戦艦を手にするに至ったという話。ある程度の成功を収めたと言っていいと思う。

だがこの記事は、何故か失敗談に「現に戦中の航空機の生産合理化などは欧米よりひどく遅れてしまった。何でも国産化に拘泥しすぎたのは落とし穴だった」などと航空機の話を出している。

いやー、戦艦や駆逐艦を建造する技術は優れていても、航空機製造の技術はさほど高くなかった。特に日本はエンジンの製造技術が遅れていたので、「生産合理化」がどうとかいう話ではない気はする。

呉海軍工廠は戦後にアメリカ軍によって解体されてしまったので、破綻とはまた違う。若干違和感の残る記事ではあるが、謂わんとしていることは分かる。驕ってはダメだということを言いたいのだろう。

民間事業者に譲渡する計画には無理がある

さておき、国家が管理する兵器製造工場を作る話は、悪い話ばかりではない。まあ、戦後の歴史を見ると、国家主導の産業は色々失敗しているだけに、不安は残るのだが。

そして、軌道に乗ってきた事業を民間に譲渡するというのはどうなんだろう。

今回の法案に関しては、事業の継続が難しくなった企業の製造施設について、国が取得・保有できる規定にも懸念の声が上がっている。実際の管理運営は民間委託し、「できるだけ早期に事業者に譲渡するよう努める」と定めるものの、不採算を理由に引き受け手を見つけられなければ長期間、国有化されたままになる。

軍事評論家の前田哲男氏は本紙の取材に「民間が買い戻すのは難しく、国がずっと保有することになるはずだ。戦前のような軍管理工場の復活に近づきつつある」と話す。

東京新聞より

「民間が買い戻すのは難しい」と評価しているが、利益体質にならなければ民間は手を出すことは無かろうと思う。

そして、輸出できる体制にならなければ、そうはなるまい。

それでも技術は売ることが出来る。

よって、工廠を復活させ、技術を高めながら兵器を作ることがそんなに悪いことだとは思わない。防衛力の維持のために最低限の技術力を確保することは急務だ。まあ、民間がやるにせよ国家がやるにせよ、兵器輸出によってメイドインジャパンの兵器が各国に出回るようにならなければ失敗なんだろうけどさ。

ともあれ、工廠はダメという論調には違和感を禁じ得ない。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。
    大変な遅刻コメントになりますが、連休明けですので御容赦を。

    工廠、というか我が国の防衛産業を鑑みるに。
    ・国防に関する要求仕様が特殊すぎて、他国に展開する汎用性が低い事が多い
    ・戦前から中途半端に技術力が高く(これは明治維新からの「追いつけ追い越せ富国強兵」の賜物でもあるわけですが)、これを維持したかったら国産するのが一番良い
    ・が、前述の理由で要求のハードルは高く、海外に売れる見通しも低い≒数が出ない、高いものにつく
    ・特に戦後は、国民の理解が得られず予算が付かない
    ・おまけに、学者連中はこぞって「兵器開発まかりならん」とか寝言を言う
    という状況で、「好きでガラパゴス化してるわけじゃねーぞ!」って事なんだと思うのですが……
    ※これだけの排他的経済水域を護り、かつ、資源輸送のシーレーン防衛も視野に入れ、さらに、国境を接するのは有数の陸軍国かつ海軍もバカにならないのが二つ&キ○ガイ国家一つ&敵に回しても味方にしても扱いに困るのが一つという、ある意味イスラエルより酷い状況を、「勢いで制定した」憲法九条縛りでどうにかしろって、どんな無理ゲーですか?

    技術がなけりゃ、買うだけで話し済んでいた(それはそれで大変)のですが、技術の維持も考えると、お金がいくらあっても足らないという……戦前も状況は基本同じでしたので、当時の軍部もそりゃ陸さん海さんで金の取り合いになるわな……と。

    その意味で、国民レベルで少しずつですが意識が変わってきているのと、国際共同開発が割と上手く行ってくれているのがありがたい所です。
    日英伊の共同開発戦闘機、コケてくれるなよと願うばかり。
    工廠も、技本が旗振って民間が潤うような体勢が作れれば、言うことないのですが……
    ※絶対にテンペストに独仏を入れてはいけない。
    ※コマツと三菱はちょっと頭冷やそうか……ホーワとダイキンはもっとメジャーになって良いと思います。

    • 木霊 木霊 より:

      古い記事にもコメントは歓迎します。ただ、気がつくのは遅くなりそうですが、その点はご容赦を。(汗
      で、工廠の話ですが、正直、現実的な話とは言い難い部分はあります。
      強硬な反対は予想されますし、何より話が軌道に乗る前にあっちこっちから横槍が入ってくることは間違いありません。
      技本は十分頑張っているとは思いますが、なにぶん予算も規模も足りません。まずは、その辺りも改善して欲しいところですよ。