なし崩し的に作る方向になりそうだな。
KF-21ボラメ生産量折衝案… 「20機+武装試験条件20機」推進[新隊員の軍フリックス]
入力2023.11.07.午前10時39分 修正2023.11.10. 午前7時44分
韓国型戦闘機KF-21 ボラメ初の生産量を40機から20機に減らさなければならないという事業妥当性調査内容が知られ、議論が起きている中、政府が妥協案を模索している。
Naverより
お金があれば作れば良いんじゃないの。
折衷案は実現可能か
20機製造にしようぜ
さて、KF-21が「順調だ」と韓国メディアでは騒がれている中で、水を差すような話が出ていた。
初期ロットで40機作るという予定で、2024年から製造が開始されるはずだったんだけれども、「20機にしようよ」という議論が出てきたという。
その理由は、未だ対空攻撃手段も獲得できていないから、ということのようなんだけど。
韓国国防研究院(KIDA)の事業妥当性調査で、当初来年の量産契約締結後、2026~2028年初めに量産で確保しようとしていた40機を20機に減らさなければならないという暫定結論が出てきて、懸念の声が高まると収拾に出たものと解釈される。
~~略~~
KF-21ブロックⅠ事業は基本飛行性能と空対空戦闘能力の具備に焦点を合わせている。
現在KF-21は去る3月飛行中中距離空対空ミサイルミティア武装分離試験と空中機銃発射試験、そして去る4月短距離空対空ミサイルAIM-2000武装分離試験に成功した状態だ。
KF-21は今後、実際の空中標的を浮かべた状態で標的を合わせる武装試験に乗り出す予定だ。
Naverより
今のところ、KF-21戦闘機のボディからミーティア中距離空対空ミサイルと、AIM-2000短距離空対空ミサイルの切り離しに成功しているに過ぎない。あ、20mm M61A2バルカン砲も搭載していて、こいつの発射にも成功しているらしい。まあ、バルカン砲については引き金を引けば弾が出るだけの話なので、さほど難しい事ではないんだろうけれど。
アメリカのせい?!
問題は空対空ミサイルの方で、慣性誘導(Inertial Navigation System: INS)と指令誘導(command off line-of-sight guidance:COLOS)などを採用しているミーティアも、戦闘機側からある程度誘導してあげる必要があるんだけど、それがどうやら上手く行かないのかそもそも手を付けられていないのか。
AIM-2000(IRIS-Tの韓国制式名称)などは短距離空対空ミサイルとして開発されたミサイルであり、ヨーロッパで運用されている。こちらも慣性誘導を使うのとオフボアサイト射撃能力を持っているので、それなりに戦闘機側との通信を必要とする。
この辺りで手間取っているということは、火器管制プログラムが完成の域にないって事なのかも知れない。
今回のKF-21戦闘機の製造にあたって、コレまで運用してきたAIM-9X系の短距離ミサイル統合は許可されなかった。アメリカからAIM-9XやAIM-120 AMRAAMの統合に関する技術移転がなかったため、今まで使ってこなかった空対空ミサイル体系をKF-21戦闘機の制御系に組み込まねばならず、ここが上手いこと行っていないのはある意味仕方のないことだ。何故ならば、コレまでライセンス生産してきた経験値が、その分野では活かされない可能性が高いからである。
何故そんなことになったのか、という点は良く分からないんだけど、アメリカは割とこういう意地悪なことをやるので仕方がないね。日本のF2戦闘機開発でも似たような話があったし。
折衷案
で、どうするかというと、ユンユンはこんな案を持ち出してきた。
この関係者は引き続き「条件付ではあるが、防産業企業は当初、計画通り40機を基準に事業を進めることができるだろう」と話した。
一次的に20機超量産に突入し、武装試験の成功を条件に再び20機追加量産に入るということだ。
Naverより
えーと?
武装試験が成功したら20機追加で作るよ?だって。これは2次生産分に回すという意味なんだろうか。そうすると、コメント頂いたロジックと同じってこと?!
ちょっと意味が分からないんだけど、条件付きで取り敢えず20機作っちゃおうという話になる所は変わっていないし、前の話でも合計120機製造から20機減らすと言うことではなかったはず。
今回のコレがどう折衷案になっているのかイマイチ理解が追いつかないぞ。
あと、どうやらこの辺りが本音のような気がしてならない。
F-4とF-5系戦闘機の退役で、適正な戦闘機保有台数すら確保できていない状況で、空軍の戦力空白が避けられず、システム総合企業である韓国航空宇宙産業(KAI)はもちろん、ハンファシステムとLIGNEXONEをはじめとする500社以上の協力会社の追加費用や遊休人員の発生など、防衛産業界全体に悪影響を及ぼすというものだった。
Naverより
要は、「もう40機製造するで計画しているんだから、今更止めると言われても困る」という話なのかな。
そういえば日本でもAH-64Dの製造で困ったことがあったっけ。単価が53億円程度だったのに、生産縮小で調達数が62機から13機に縮小しちゃったから、単価が216億円にまで跳ね上がっちゃった話ね。最終的には単価が93億円くらいになったようだけれど。
当然、沢山作る予定だったものを「やっぱり作らない」と言われれば、製造側は困るのは分かる。分かるんだが、そのリスクを負ってでも初期ロットは20機という決断をしたのだから、業界の都合を持ってこられても困るとは思う。
お金が……
なお、前の記事でも書いたのだけれど、どうも韓国政府の予算的に「キビシイ」のも今回の判断に影響しているような気がする。
この辺りはまだ「気がする」程度の話ではあるんだけども、ウォン安も進んでいるし、キビシイ判断はやむを得ない部分はあるのではないだろうか。
韓国政府 国防予算案まとめる 北朝鮮核・ミサイルへの態勢強化
2023年8月29日 16時39分
韓国政府は来年の国防予算案をまとめました。日本円にして6兆5000億円規模と、ことしより4.5%増えていて、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に備えた態勢強化を進めるとしています。
~~略~~
具体的には ▽ミサイル発射の兆候を捉えた場合の先制攻撃と ▽発射後の迎撃 ▽それに、攻撃を受けた場合の大量報復攻撃という「3軸体系」と呼ばれる態勢の強化にあてるとしています。
NHKニュースより
韓国政府は来年の国防予算について、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に備えた体制強化を進める予定である。具体的には、3軸体系と呼ばれる態勢のうち先制攻撃と大量報復攻撃を担当する玄武ミサイルの開発を加速させる積もりだろうと思う。
「弾頭重量9トン」の高威力弾道ミサイル 3日に試射の見通し=韓国軍
2023.02.01 14:07
韓国軍によると、国防科学研究所(ADD)は3日に西海岸の試験場で「玄武」系列の弾道ミサイルの発射実験を実施する見通しだ。
~~略~~
軍が試射するのは「玄武5」と呼ばれるミサイルとされる。弾頭重量は8~9トンと、核ミサイルではない在来型のミサイルの中では類のない高い威力を発揮するという。最大射程距離は公表されていないが、弾頭の重さを調節すれば中距離弾道ミサイル(IRBM)級の3000キロ以上も可能とされる。
聯合ニュースより
この手のミサイル開発記事は、幾つも出されているからね(注:記事の信頼性はちょっと疑っているのだが)。
また、3軸体系の戦力を効果的に統合運用するための戦略司令部を2024年に創設予定であり、玄武ミサイルを有効に撃てる態勢を整えるという意味なんだろうと思う。
国防予算の確保
なお、コレの中身を書いている記事があったのでリンクを貼っておこう。
ただ、だらだらと引用しても分かりにくいので、表にしてみる。
費目 | 金額 | |
---|---|---|
防衛力改善費(2.0%増) | 17兆179億ウォン | |
戦力運営費(5.8%増) | 40兆1089億ウォン | |
韓国型3軸体系(9.4%増) | 5兆2549億ウォン | |
中高度偵察用の無人航空機 | 1294億ウォン | |
地対空誘導弾パトリオットの性能改良 | 1294億ウォン | |
長距離砲迎撃システム | 769億ウォン | |
230ミリ多連装ロケット | 417億ウォン | |
大型機動ヘリコプター事業 | 3507億ウォン | |
3000トン級の潜水艦事 | 2486億ウォン | |
作戦的な対応能力の強化 | 6兆6447億ウォン | |
K2戦車の第3期量産 | 1788億ウォン | |
3000トン級の次期護衛艦事業 | 4295億ウォン | |
戦闘予備弾薬の確保 | 9749億ウォン | |
有人・無人の複合戦闘システム | 1660億ウォン | |
宇宙・サイバー分野の偵察・監視能力の向上 | 683億ウォン | |
重要技術の強化 | 1兆3959億ウォン |
まあまあ色々な分野に予算を付けているのが分かると思うのだが、イマイチKF-21関連の予算が何処に含まれているのか分からない。
防衛力改善費が国防予算全体に占める割合は従来3割を超えていたが、来年度は29.8%に縮小する。防衛事業庁によると、艦艇や航空機などの大型事業の終了により関連分野の予算が減るためで、追って次世代戦闘機の第2期事業などが始まれば予算は再び増える見通しだ。
聯合ニュースより
……含まれていないのか?
えーと、過去に2015年に8兆9000億ウォンの予算がついているという記事があったけれども、これが第1期事業の予算であると考えれば、インドネシアの未払い分が足りない事や、ウォン安の影響。更にはF-35Aの追加購入20機なども影響している可能性が高い。
何というか、残念だったね?
折衷案が実施されない可能性も
懸念されるのは、取り敢えず20機に削減された状況で予算が蚕食されると、残り20機製造の予算が残っていませんでした、残念でしたね、というような事になりかねないことだ。タダでさえ韓国政府の予算がキビシイ状況である。稼ぎ頭であった輸出産業が振るわず、輸入も減っている。トータルで黒字であっても、貿易依存度の高い韓国にとっては極めて危険な話である。
今後、防衛産業にお金を突っ込んでいる場合じゃない事態に陥る可能性だってあるのだ。これ、防衛産業側は相当抵抗しそうだな。そして、そこを強行するとユンユンの支持率は更に下がる結果に……。
そもそも、40機同時に作って量産効果を出そうとしているんだけど、それは「完成した前提」があってのこと。リスク分散するのであれば、初期ロットは減らした方が良いんじゃないかな?
え?そんな安全策は必要ない?寧ろもっと作れ?
まあ、頑張って条件闘争やってくださいな。でも、KF-21戦闘機の価格で結構な割合を占めるエンジンはウォン安によって随分と値上がりしちゃっているので、苦しいことには違いがない。今はキビシイというのが本音なんじゃないだろうか。
追記
不安を助長するネタをもう1つ。
FT紙「ポーランドの政権交代で韓国の武器輸出失敗に終わる恐れ」
2023.11.09 16:59
ポーランドの政権交代が過去最大規模となる韓国のポーランド向け武器輸出に悪影響を与える恐れがあるという外信報道が出てきた。フィナンシャル・タイムズは8日、ポーランドの政治的変化により韓国の数百億ドル規模の武器取引が中止される恐れがあると伝えた。
中央日報より
ポーランドの政権交代の話は1ヶ月くらい前のネタではあるが、選挙で負けて過半数維持できなかったというニュースであって、政権交代に至ったという話ではまだない。
ただ、野党の連立が成立すれば政権交代という話になりそうで、そうすると、今の野党は韓国からの武器大量購入を批判していたので、話が流れそうと言う内容である。
これに先立ち昨年7月と10月にポーランド政府はロシアのウクライナ侵攻を契機に国防力強化に向け、韓国企業からK2戦車1000台、K9自走砲672門、FA50軽攻撃機48器、K239多連装砲288門などを購入する基本協定を締結した。これに伴い、ハンファエアロスペース、現代ロテムなどはポーランドと総額計17兆ウォン規模の1次武器供給事業実行契約を結び、20~30兆ウォンに達する2次実行契約締結を準備している。
中央日報より
今のところ決定しているのは、1次武器供給事業実行契約で、17兆ウォン規模のもの(1次契約がご存知K2戦車180両、K9自走砲212門)だけ。そういえば、先日も似たような話で騒いでいたな。
前回は韓国側の事情だったが、今回はポーランド側の事情というわけだ。あ、前回の話も、ポーランドが韓国に融資をお願いしようとしたら外国融資担当の輸出入銀行の枠が上限に達しちゃったという話。だから、「韓国側の事情」というだけではないね。
まあ、何れにしても予算にも影響しそうな話なんだよね。いよいよKF-21開発に回すお金が怪しそうだが。
コメント
こんにちは。
>今回のコレがどう折衷案になっているのかイマイチ理解が追いつかないぞ。
毎度おなじみ、
「もう作るって言っちゃったニダ!」
「もう作っちゃったニダ!」
「誰かが責任とって謝罪と賠償しる!」
になるんじゃないですかね?(棒)
どうせ「法的に効力のある証文」なんて誰も作ってないだろうし、あっても「法の方が機能しない」でしょうから。
ギャハハハ!(棒)までのオチで吹きましたわ。ま、「その通りの人達」なのが笑えない現実ですけれども。
メディアでは「折衷案」と報じていましたが、僕の理解力が足りなかったようでこんな記事になっちゃいましたね。
ご指摘の展開は見たくないなぁ。
まあ、騒いだところで作るしかないわけですから、予算の限りやるんじゃないでしょうかね。