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ライセンス生産品日本製パトリオットが、アメリカに輸出される

安全保障
この記事は約7分で読めます。

昨日前の記事なんだけど、軽く触れておきたい。

パトリオットを米国に輸出、政府が最終調整…防衛装備移転3原則改正後の初事例

2023/12/20 05:00

政府は、22日にも改正する防衛装備移転3原則と運用指針に基づき、国内で製造する地対空誘導弾パトリオットミサイルを米国に輸出する方向で最終調整に入った。改正後、初の輸出事例となる見通しだ。ウクライナ支援を続ける米国で深刻化するミサイル不足を解消し、インド太平洋地域での米軍の抑止力維持につなげる狙いがある。

讀賣新聞より

うんうん、うん?ナンダッテー!日本がぶきゆしゅつ?!ゆるさーん(棒)

イヤほんと、どんどんやってください。

「平和国家」の建前の呪い

ぶきゆしゅつさんげんそく

故安倍晋三が苦心の末に作った防衛装備移転三原則なのだけれど、彼が存命中には武器輸出をついに叶えることが出来なかった。

それまでは何度か解釈の変更が行われていたモノの、基本的には武器輸出三原則と言われるものが堅持されてきた。

  1. 三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
  2. 三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
  3. 武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

外務省のサイトより

これが昭和51年に出した政府統一見解で、当時の三木内閣が出したものだが、日本政府は「平和国家」の建前でこれに準じた方針を採ってきた。

しかし、昭和51年の方針が現代に合わなくなっているのは必然であって、寧ろ未だに守っている理由が良く分からなかった。

そこで第二次安倍内閣の時に、防衛装備移転三原則を作った。

防衛装備移転三原則

これが長い上にごちゃごちゃとしているのだが、平成26年になってようやくこれを閣議決定。要は、安全保障上必要な場合には輸出できるよということにしてある。

尤も、国債輸出管理レジームに則った運用というのは武器輸出三原則の時と大差ないので、基本的には紛争当事国に輸出しないという「建前」ではある。

岸田政権が初の事例

しかし安倍政権の時には終ぞ武器輸出は叶わず、その状況は菅義偉政権であっても同じであった。これを実現したのは、なんと岸田政権である。

散々批判されている岸田政権だが、仕事をすればするほど批判されるのが日本の政治である。アホか。

フィリピンへの国産レーダー輸出完了 完成品の海外輸出は初

2023年11月2日 20時57分

防衛装備庁は、航空機などの動きを監視する国産のレーダー1基についてフィリピンへの輸出が完了したと発表しました。防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」に基づき完成品を海外に輸出したのは初めてとなります。

政府が2014年に策定した「防衛装備移転三原則」に基づき防衛装備庁が働きかけ、3年前、国内の大手電機メーカーとフィリピン政府との間で航空機などの動きを監視する2種類のレーダー4基を輸出する契約が成立しました。

NHKニュースより

NHKが報じたフィリピンへのレーダー輸出だが、岸田政権がしれっと実現したように見えるモノの、この話は安倍政権下で着々と準備が進められてきた事である。安倍晋三はこの動きに着手した後に辞任してしまうのだが、管政権下でもしっかりその話は進められ、岸田政権になってようやく実現したという背景になっている。

防衛装備完成品を初輸出 中国念頭 警戒管制レーダーをフィリピン軍に 岸田総理大臣は | NHK政治マガジン
日本の大手電機メーカーが製造した防衛装備品、“警戒管制レーダー”がフィリピン軍に引き渡された。防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」に基づき輸出された完成品はこれが初めてで、実現には政府...

NHKは安倍晋三の名前を出すのが余程嫌らしく、この関連ニュースでも一切触れていない。

これについては「輸出できる装備品を広げてさらに促進すれば紛争を助長しかねない」などと慎重な意見がある。

装備品の輸出は他国の安全保障にどこまで関与していくかという問題でもある。 どこの国に何を輸出するのかも含めて精緻な議論が求められる。

NHKニュースより

こんな寝言をほざいているが、レーダー輸出したくらいでガタガタ言うなよ。それは防衛装備品であって、他国を侵略する兵器ではないのだ。

日本は1967年に佐藤栄作政権が「武器輸出三原則」を策定して共産圏や紛争国への武器輸出を禁じ、76年には三木武夫政権が原則禁止に強化したが、第2次安倍政権は14年に「防衛装備移転三原則」を制定。(1)紛争当事国などを除く(2)輸出を認める場合を限定し、厳格に審査する(3)目的外使用や第三国移転に事前同意の義務づけといった条件付きでの輸出に門戸を開いた。

朝日新聞より

朝日新聞ですらしっかり触れているのに。

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アメリカに輸出

で、今回は、パトリオットミサイルをアメリカに輸出するという。パトリオットミサイルはアメリカ製の兵器で、日本でライセンス生産を行っている。

それなりの技術を有するので、何処の国でも製造できるというわけではない。で、ライセンス生産をするとライセンス料を支払わねばならないのだが、支払先はアメリカのレイセオン社やロッキード・マーティン社である。

そして、割高になった日本製パトリオットミサイルを、アメリカ軍が買うという不思議な話になっている。

輸出を検討しているのは、自衛隊が北朝鮮の弾道ミサイル迎撃などに使うパトリオットミサイル3(PAC3)や、旧式のPAC2。いずれも、開発元の米企業に日本企業が特許料を支払って国内で製造する「ライセンス生産品」だ。

現行制度では輸出が厳しく制限されているが、22日の改正でこれを大幅に緩和する。完成品の輸出も可能となるため、政府は早期にミサイルの輸出手続きに着手する方針だ。

讀賣新聞より

それも輸出するのは最新式以外のモノも含まれるという。

もう、苦笑いするしかない。

政府は、こうした規定も踏まえ、輸出したミサイルが米経由でウクライナに渡らないよう、米側に管理の徹底を求める考えだ。

讀賣新聞より

いや、ウクライナに迂回輸出するのは間違いないよね。少なくとも、心太方式で老朽化したアメリカ製の兵器を輸出することは間違いない。

米紙「ウクライナに送られた韓国の155ミリ砲弾、欧州全体より多い」
中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします

韓国も似たような事を既にやっていて、韓国製155mm砲弾はウクライナに渡っている。

ウクライナ軍が必要とする砲弾の量は月9万発以上だが、米国の生産量はこの需要の10%をやや上回る程度にすぎない。米国の元高官はWPに「簡単な計算だ。ある時点からは必要な量の砲弾を供給できなくなった」と話した。

中央日報より

同じ事になるのは目に見えている。

じゃあ、もう日本から直接ウクライナに輸出すれば宜しいではないかと思うんだけど、そこは防衛装備移転三原則が邪魔をして「できない」事になっている。

その辺りも見直すべきだと思うよ。ウクライナはあくまで自衛戦争をやっているのであって、好き好んで戦いを続けているわけではないのだ。

追記

記事で書くつもりだったことをすっかり忘れていて、なんとなく生煮えの内容になって申し訳ない。この「武器輸出」の話だが、アメリカ経由でウクライナへ支援することに賛成しているという趣旨で書き始めたのではなかった。そういう内容になってしまっているけれども。

では何が言いたかったのか?と言えば、フィリピンへの輸出を皮切りにシーレーン防衛に資するような話にすべきだという事である。

フィリピンに配備されるレーダーはコイツ。対空捜索をするレーダーだ。

【お知らせ】
プレスリリース等のお知らせを掲載します。

探知範囲は明らかにされていないようだが、凡そ半径500km程度だとされている。

まあまあ妥当な探知範囲だね。これをあと3基設置してフィリピン上空をカバーしようという事になるんだろうと思う。当然、嫌がる国はいるよね。台湾にも米軍のレーダーが設置されているけれども、フィリピンの上空を守るにはフィリピンにレーダーを置くしかないわけで。

比に空自戦闘機 時代は変わり日本は『同盟国』と歓迎
【マバラカット共同】フィリピン北部マバラカットのクラーク空軍基地に6日、航空自衛隊が派遣したF15戦闘機2機が到着し、歓迎式典が開かれた。日本から東南アジア諸…

そして、フィリピン上空を防衛するのに、日本の自衛隊と一緒に訓練する時代になったのだから、連携して運用出来るために防空レーダーはどうしても欲しい。

そういう意味でも防衛装備品、いや武器輸出は積極的に行って、日本の自衛隊と連携できるルートを作っておくことで、日本のシーレーン防衛に資することになるのである。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    へ? パトリオットの輸入じゃなくて?
    本国製品より割高になるのに?
    んで、あーそうかウクライナね。
    正直、ウクライナなんざどうなろうと知った事でないですが、この問題はヤバい事を含んでる想う。
    要はグローバリスト進展により、米国の国内工業生産が海外に散っていて、米国内の兵器生産では「間に合わん」て事ですねぇ。そして別に兵器だけじゃあるまい。これはグローバリストからすれば当然なんだけど、その海外生産拠点を結ぶ流通網が「正常に働く」という前提の上に成り立ってます。
    だからソマリア海賊とかブチ殺す訳でないですか。あとナイジェリアのデルタ付近の海賊(原油生産のスタッフを狙う誘拐)とかすね。
    んで〜ここに秋口から「パナマ運河の水量軽減で船舶通過数半減」て事実ある。
    そこへ来て、イエメンのフーシ派の紅海の出口付近でのヘリとボートによる海賊活動が笑えない段階に来てます。
    ようするに、コロナでコンテナ船が港に入れない数年前のような、流通網の混乱と、資材不足による生産現場の混乱が、
    今後に襲ってくるんでないの?
    って予測してるんてすよ。武器が枯渇してるってのはあるんでしょうが、割増になるの承知で大量発注てのは普通でないのかなと。
    とりあえずスエズを安全に使えるようにしろよと。ウクライナなんざどうでも良いから。

    • 木霊 木霊 より:

      ペトリオットの輸出だから、記事にしました。
      ウクライナには頑張って欲しいところではありますが、それはそれとして今回のようなケースで輸出が出来るのは、面白いし、あって然るべきだと思います。

      そして、ご指摘通り、シーレーン防衛の方が日本にとっては大切なので、しっかりと支援するべきですね。その辺りのことは追記しました。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    米国は、西回り(直送)は危ないから、東回り(本国経由)で送るんだろう。
    米国も「キシダはチョロい」と思っているだろうな。
    米国様仕向けは、超法規的措置扱いなんだろう。

    • 木霊 木霊 より:

      「キシダはチョロイ」と舐められているのは事実なんでしょうね。
      完全に原則の抜け道を狙った運用なんですが、あんな原則そもそも必要か?という話でありまして。

  3. アバター 匿名 より:

    アメリカ側に航空目標用PAC2ミサイル(MIM-104E)を生産する余裕が無い。

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