スポンサーリンク

国際協力とODA、そして日本に足りないもの

政治
この記事は約8分で読めます。

政府開発援助(ODA)の話を子供達とする機会があって、自分の説明が果たして「これでいいのか」と考え直してみる切っ掛けになったので、少し整理していきたい。

途上国ビジネスとODAが果たす役割とは? 「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニーの挑戦

2024年3月11日(月)11時30分

<アジア5カ国でマイクロファイナンス事業を展開する五常・アンド・カンパニーの代表執行役で創業者の慎泰俊氏と、同社に出資するJICAの民間連携事業部部長・小豆澤英豪氏による対談。途上国の社会課題解決に向けたビジネスの可能性と今後のODAの在り方について語る>

Newsweekより

そもそも、政府開発援助(ODA)とは何で、何のために行っているのか?ということについて先ず言及したい。

ODAと原資

原資はどこから?

ザックリしたテーマではあるが、話が大きくなりすぎるといけないので基本的なところを先ず整理。

政府開発援助(ODA)とは何か?という話だが、ここは外務省のサイトを参考にすべきだろう。

開発協力、ODAって何だろう

大雑把にいうと、外国を支援するためのお金なのだが、「経済協力」に限っても大雑把にこれだけの種類がある。

画像1

当然、「政府開発援助」と言うからには、基本的には日本人の税金から賄われるものである。

こちらは令和5年度の一般会計における歳出と歳入のグラフである。うち、一般会計歳出からは5,650億円である。グラフだと、経済協力費5,114億円(0.4%)となっている部分だね。

額が異なっているのは、一部が特別会計から供出されているためである。

ODAの財源の多くは一般会計からではない

ところが、令和5年度ODA事業予算は2兆7,533億円となっている。一般会計及び特別会計から拠出(つまり税金)された額はうち約21%に留まり、残りのお金は一体どこから?という話になる。

財政投融資等70%、一般会計特別会計21%、出資・拠出国債9%

それがこちら。首相官邸からの引用だが、原資の7割は財政投融資などから賄われている。

ザックリ説明すると、財務省が投資をやっていてその利益をODAの原資に充てている格好になっているということだね。

そして9%は出資・拠出国債という名の国債で賄っているので、これは国民からの借金だ。

財政投融資は一般会計とは異なる

分かりにくいのは、「財政投融資は税金ではない」という話だ。

こんな相関図を使って説明すると、税金を原資としている一般会計の他に、債権などの資産を原資とした財政投融資という二本立ての予算で日本の政治は動いている。

これが一般企業の会計とシステムが違って分かりにくいので混乱の原因となるのだが、歳入及び歳出の他にも資産があるよという話となる。複式の決算だと、資産と負債で表すためにどのような資産状況であるかが分かり易いのだが。

で、これを分かり易く示しているのが新宿会計士さんのサイトである。

img

僕自身には会計の知識がないため、この図表の正しさは分からないのだが、数字自体は公表値ベースで作られているので、おそらく間違いはないのだと思う。

まあ、細部はお任せするとして、大枠で説明したいことの意味は、国の資産というものがあって、ODAはそこから拠出されている。しかし、ODAは税金によらない部分の方が大きいということだね。

スポンサーリンク

バラマキなのか

ODAはバラマキか

では、ODAなどの国際的な支援を何故行っているのか?何故行わなければならないのか?という話を書いていきたいと思う。

アメリカ向け装備部品増産へ、日米首脳会談で連携強化調整…日本がウクライナ支援を下支え

2024/03/10 05:00

日米両政府は4月に予定する首脳会談で、防衛装備品を巡る「共同生産体制の強化」について合意し、成果文書に明記する方向で調整に入った。ロシアによる侵略が続くウクライナ支援で米国の生産体制は 逼迫ひっぱく している。日本がウクライナ支援を下支えすることで日米同盟の結束を示し、抑止力維持にもつなげる狙いだ。

讀賣新聞より

「国外へのバラマキは無駄だ」ということを口に出して言う人がいて、ウチの子供も似たような発言をしたのだけれども、ここには根本的な間違いが幾つかある。

1つは、「国際協力は必要」という国際的なコンセンサスがあると言う事だ。

日本のODA、22年2.3兆円 円安で目減りしたが米独に次ぐ3位

2023年4月13日 17時30分

外務省は13日、2022年の日本の途上国援助(ODA)の実績(暫定値)が174億7533万ドルで、前年より0・9%減ったと発表した。減少は円安が進んだためで、円ベースでは前年より18・7%多い2兆2968億円。国別では、前年と同じく米国、ドイツに次ぐ3位だった。

朝日新聞より

日本以外にもODA拠出している国があって、トップはアメリカ。2位はドイツ、3位に日本という順番になっている。

こちらのデータは2021年のものだが、ODAの拠出額は軒並み先進国が名を連ねている。あれ?GDPのランキングとはちょっと違うよね?

世界のGDPランキングトップ10のグラフ

GDPランキング2位の支那、5位のインド、9位のロシアはODAを行っていない。インドはともかく支那もロシアも社会主義国家である。そして、この3カ国とも「先進国ではない」からといって、経済支援を行ってはいない。フランス語で言うところのノブレス・オブリージュというヤツは社会主義国家には馴染まないのだろう。

内政干渉の手段

ただ、支那やロシアが対外援助をしていないのか?といえば、影響力工作の一環として資金を出して技術を供与するような形で拠出しているため、「していない」とも「している」とも言い難い感じだ。

対外工作は、技術協力や国内研修を含む無償援助、無利子借款、支那輸出入銀行が実施する優遇借款から構成されるそうで、対外工作にかなりの金額を費やしているようだ。2016年には66億ドルを費やしたとされていて、年々増加しているようだ。

「大国外交」の成果、自信みせる中国指導部 5年ぶり対外戦略の会議

2023年12月29日 17時30分

 中国指導部が外交戦略の方針を話し合う「中央外事工作会議」が27、28の両日、北京で開かれた。国営新華社通信が伝えた。最高指導部メンバー全員や在外大使らが出席、習近平国家主席が重要演説し、習体制が展開する「大国外交」が国際社会への影響力を高めているとした上で、さらに主導権を握るべきだとした。

朝日新聞より

そうした外交手法は更に加速させていく積もりではあるようだが、外資が支那に流れ込まなくなったために、維持が出来るかどうかは不明である。

……ちょっと話が逸れてしまったが、支那のソレほど露骨でないにせよ、ODAも結局のところは日本の影響力工作の一環である。

日本の国益も重視しています。

ODAは海外の利益だけではなく、日本の利益にも直接つながることを前提に設計していますので、一方的に支援先の国だけがメリットを享受するものではありません。

①日本にとって望ましい国際環境の能動的な創出 →二国間関係の強化、海上輸送の円滑化、日本の信頼向上、国連・国際機関等での我が国の立場への支持

②日本経済の安定・成長 →エネルギー・資源・食料の供給・確保、日本企業の海外展開支援(投資環境・物流の改善)

③在留邦人・日本企業の安全

首相官邸のサイトより

言葉を選べばこんな感じではあると思うのだけれど、もっと泥臭くODAが外交ツールであるとハッキリ言うべきだろう。ハッキリ言えば、日本も影響力工作をしろって話なんだ。もちろん、支那のように批判を受けるやり方では困るので、もう少しお上品にやる必要はあるだろうが。

でも、外交は綺麗事だけじゃないんだよね。

スポンサーリンク

ODAの在り方の変化

そうは言いつつも、形骸化したODAの在り方に関しては、近年、随分と手を入れてきたようだ。

「オファー型協力」のODA強化 開発協力大綱を8年ぶり改定

2023年6月9日 9時30分

政府は9日、途上国援助(ODA)の基本方針となる新たな「開発協力大綱」を閣議決定した。大綱の改定は2015年以来8年ぶり、3回目。重点政策の一つに、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の推進を初めて盛り込んだ。

大綱では、ODAを「外交の最重要ツールの一つ」と位置づけ、エネルギー・食料危機、気候変動などに直面する途上国への関与を強める必要性を指摘。ODAの効果的・戦略的な実施をめざし、日本の強みを生かした協力を積極的に提案する「オファー型協力」を強化するとした。

朝日新聞より

より要望の強い分野への支援を心掛けるということなんだけど、これは相手国政府を通すと歪んでしまう矛盾を孕んでいる。

「開発のための新しい資金動員に関する有識者会議」第1回会合の開催(結果)

外務省は更にこんな姿勢を見せているのだけれども、この話はもっと根本的な部分を解消していかねばならない。

つまり、日本としても諜報機関をしっかり作り、外国の情報を積極的に集めて分析までする必要がある。外国への支援を行うにしても、本当に何が必要なのか?ということをしっかり見極める必要があるからだ。

窓口が言っていることが正しいとは限らないのだから。

当然、外交と防衛は表裏一体なので、安全保障という意味でも諜報機関は必要である。これは、スパイを作れという意味だけれども、工作員はその地域に根ざして情報収集をやるような人材が特に必要なのである。

そういう意味では、日本の外交官はしっかり仕事をしていない人もいて、諜報員としては不適格のようだ。しっかり仕事をしてくれている人ももちろんいるんだけどね。そして、何より分析をやる機関の規模が小さすぎるので、取り扱う情報も少ないのが現状である。内閣情報調査室(内調)みたいな組織はあるけど、200名程度で回しているらしい。一方、アメリカのCIAは2万人規模で活動していて、その予算も莫大である。

今後の安全保障を考える上でも、その辺りはしっかりと拡充して欲しい。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ODAでかけた橋の隣に、もっとデカいのを支那がかけたのはどこの国でしたか。
    事ほど左様に本邦は「武士は食わねど高楊枝」が過ぎると思うのです。

    もっと泥臭く、札束で横っ面叩いてこいと。
    特に東南アジアとアフリカと南米は。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      支那がちゃっかりしているという意味では、日本のODAで作った橋の名義変更しちゃうくらいは「合理的判断」なんでしょう。
      日本は外交ツールとしての支援が少ないことが問題だと思いますよ。日本人の税金も使っているのですから、もう少し効果が高い投資を行う感覚で支援をして欲しいものですね。

タイトルとURLをコピーしました