教育勅語の何が問題なのかサッパリ分からないが、面倒な人達がいるのね。
教育勅語引用、広島市長が続ける考え 議会で「今後とも丁寧に説明」
2024年2月22日 10時15分(2024年2月22日 17時26分更新)
広島市の職員研修の市長講話で戦前・戦中の「教育勅語」の一部を引用していることについて、松井一実市長は21日の市議会で「今後とも丁寧に説明していきたい」と述べた。これまでも記者会見などで、新年度以降の研修でも引用を続ける考えを示してきた。
朝日新聞より
このニュースも、ちょっと良く分からないと思って読んでいたのだけれど、これ、多分、教育勅語がなんなのか?というところにズレがあるんだな、きっと。
そもそも教育勅語が気に入らないだけ
何が問題なのか
先ずは、何が問題とされたのかを確定させていこう。冒頭の朝日新聞では、こんな風に触れている。
松井市長は市長に就任した翌年の2012年から毎年、講師を務める市の新規採用職員と新任課長級職員の研修で教育勅語の一部を引用している。昨年の新規採用職員研修の資料の「生きていく上での心の持ち方」と題した項目では、教育勅語から「爾臣民 兄弟に 友に」で始まる一節を掲載した。
朝日新聞「教育勅語引用、広島市長が続ける考え」より
ふむ。
教育勅語というのは、明治23年10月30日に官報で公表された天皇陛下の詔である。「勅」は天皇陛下の意志を示す言葉で、詔勅の一種である(天皇陛下の直接の叡慮(意思)を外部に表示したもの)。
明治天皇の教育に関する詔が、いわゆる教育勅語と呼ばれるものなのである。ここは押さえておくべきだろう。
こんな感じで示されたものなんだけど、現代人はちょっと読めない。僕にも無理なので、読み下し文も用意しよう。
朕がおもふに、我が御祖先の方々が国をお肇はじめになったことは極めて広遠であり、徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ、又、我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし、国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって、教育の基づくところもまた実にこゝにある。汝臣民は、父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦むつび合い、朋友互に信義を以って交り、へりくだって気随気儘きずいきままの振舞いをせず、人々に対して慈愛を及すやうにし、学問を修め業務を習つて知識才能を養ひ、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起つたならば、大義に基づいて勇気をふるひ一身を捧げて皇室国家の為につくせ。かくして神勅のまに々々天地と共に窮りなき宝祚あまつひつぎの御栄をたすけ奉れ。かやうにすることは、たゝに朕に対して忠良な臣民であるばかりでなく、それがとりもなほさず、汝らの祖先ののこした美風をはつきりあらはすことになる。
ここに示した道は、実に我が御祖先のおのこしになった御訓であって、皇祖皇宗の子孫たる者及び臣民たる者が共々にしたがひ守るべきところである。この道は古今を貫ぬいて永久に間違がなく、又我が国はもとより外国でとり用ひても正しい道である。朕は汝臣民と一緒にこの道を大切に守って、皆この道を体得実践することを切に望む。
Wikipedia「教育に関する勅語」より
このうち、広島市長は「爾臣民父󠄁母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦󠄁相和シ朋󠄁友相信シ~」の部分を引用したそうな。
質問状の中身
何が問題か良く分からないので、別のニュースを引用しておく。
研修での「教育勅語」の引用めぐり市民団体が広島市に質問状
02月16日 19時51分
広島市の松井市長が職員向けの研修で「教育勅語」の一部を引用して講話してきたことをめぐり、市民団体が情報公開請求で入手した過去の研修の録画を検証した結果、疑問点が出てきたとして市に質問状を提出するとともに、引用の中止を改めて求めました。
NHKニュースより
この方、松井一実氏は広島市長になるだけあって割と差は的な考えを示す人物であり、2011年に初当選して以降4回当選している。広島では広く支持されている人物であると言って良いだろう。
しかし今回質問してきたのは、左派系の活動家のようだ。これ、内ゲバでは?
広島市では、平成24年度以降の新規採用職員と新任課長級職員の研修で、毎年、松井市長が教育勅語の中の「爾臣民兄弟に友に博愛衆に及ぼし学を修め業を習い知能を啓発し進んで公益を広め世務を開き」という部分を引用して講話してきました。
市民団体が情報公開請求でこの研修の録画を入手して検証したところ、疑問点が出てきたとして市への質問と改めて引用の中止を求める書面を16日、広島市に提出しました。
市民団体が入手したのは2020年度から23年度までの4年間の新任課長級研修の録画で毎年、教育勅語の一部が日本語と英語訳で紹介されています。
このうち2023年度の動画では、松井市長が「英訳を見ると、民主主義のすばらしいことを書いてある文書という風に見える。良きものは残すということがあってもいいのではないか」などと述べています。
NHKニュース「研修での「教育勅語」の引用めぐり市民団体が広島市に質問状」より
うーん、何がダメなのか。
「爾臣民兄弟に友に博愛衆に及ぼし学を修め業を習い知能を啓発し進んで公益を広め世務を開き」という部分を引用したらしいが、これをダメという意味が分からない。
内容をかみ砕くと
ちなみに、現代に置いて教育勅語の原文を引用する人は殆どいない。なにしろ、理解出来る人が限られるからね。おそらく松井氏も該当部分を引用した後に、かみ砕いて説明しているはずだ。
実際に、こんな感じに理解せよという話が出回っていて、こちらでは十二の徳目に整理されている。今回の話は、これの8、9、10の辺りに該当するようだ。
なお、天皇陛下の勅は井上毅原案のものなのだが、十四の徳目を教育に置いて大切にすべしと言う話になっている。現代語訳はこちらだ。
- 父母に孝行を尽くし (孝行)
- 兄弟姉妹仲よくし (友愛)
- 夫婦互に分を守って睦まじくし (夫婦の和)
- 朋友には信義をもって交わり (朋友の信)
- 誰に対しても身を慎んで無礼の挙動なく (謙遜)
- 常に自分を引きしめて気ままにせず (謙遜)
- 博く世間の人に仁愛を及ぼし (博愛)
- 学問を修め業務を習って、知識才能を進め (修学習業)
- 徳ある有為の人となり、 (徳器成就)
- 進んでこの智徳を活用して、公共の利益を増進し (智能啓発)
- 世間に有用な業務を興し (公益世務)
- 常に皇室典範・大日本帝国憲法を重んじ (遵法)
- その他の法令を守り (遵法)
- もし国に事変が起こったら、勇気を奮い一身をささげて、君国のために尽くさなければならない
ちょっと無理矢理14項目に分けた感はあるんだけど、やっぱり問題はなさそうである。
市民団体の主張
では、一体何を言っているのかというとこちら。
これについて団体側は、どのような点が民主主義か具体的に説明していないほか、引用した英文は教育勅語の一部で、緊急事態では国家に身をささげるという結論が反映されておらず誤った認識を職員に与える恐れがあるとして市長の見解を尋ねています。
NHKニュース「研修での「教育勅語」の引用めぐり市民団体が広島市に質問状」より
どうやら、上で紹介した十四の徳目の最後、14番目の部分が紹介されていないことが、気に入らないらしい。
いやちょっと待てや。
市長は「良い部分は参考にしようぜ」ということで一部引用したのに、「結論が引用されないのはダメだ」という事らしい。
さらに中森市議は、松井市長に引用をやめるよう求めた広島弁護士会(坂下宗生会長)の会長声明への受け止めを尋ねた。声明は、教育勅語が国民主権に基づく憲法や教育基本法に反するとし、引用を「明らかに誤り」と指摘している。
朝日新聞「教育勅語引用、広島市長が続ける考え」より
えーと、教育勅語の一部を紹介したら、国民主権に反するとか、教育基本法に反するとか、面倒くさいことこの上ない。
アレルギーか!アナフィラキシーか!
そもそも「有事になったらお国のために働け」というのが、どんな問題があるのかサッパリである。
これは、日本の欠陥憲法に非常事態条項が盛り込まれていないのが問題なんだよね。
そういう意味では、有事の場合に言及する教育勅語は都合が悪いという事になるんだろうけど、有事の場合以外、つまり13番目までは何の問題もないことになる。
共同通信は偏向報道をする
で、どういう問題が考えられるのかは、共同通信が伝えている。
杉田水脈議員、教育勅語を礼賛 「なに一つおかしくない」
2/19(月) 18:35配信
自民党の杉田水脈衆院議員は18日付のX(旧ツイッター)投稿で、戦時中の軍国主義教育と結び付いた教育勅語を礼賛した。「なに一つおかしなことは書かれていません」と訴えた。
~~略~~
「現人神」だった天皇への忠誠を植え付けた教育勅語は、危機を迎えた際の心構えを「大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ」(旧文部省の通釈)と説く。この義勇奉公の精神に基づき、多くの青少年が悲惨な侵略戦争に駆り立てられ、帰らぬ人となった。
Yahooニュースより
相変わらず、共同通信社は杉田水脈氏のストーカーみたいなことをやっているが、杉田氏のポストを先ず引用しておこう。
はい、十二の徳目(13項目まで)だけの紹介か。この十二の徳目だけなら何の問題も無い、というのは共同通信も暗に示している訳だが、彼らはそうは言っていない。
というか、広島市長の松井氏も、自民党議員の杉田氏も、問題のあるとされる部分(僕自身は問題だとは思わないが)は省いている。杉田氏の方は「教育勅語には、なに一つおかしなことは書かれていません」と書いちゃったので、異議が出ても不思議は無いが、それは引用が不確かであるという話なんであって、「多くの青少年が悲惨な侵略戦争に駆り立てられ、帰らぬ人となった」のは、当時の政府の戦略ミスだろうに。
だって、上でも紹介したけど、教育勅語は明治23年10月30日に官報で公表されている。日清戦争や日露戦争すら始まってねーよ!
後に、文部省が教育勅語を利用した教育を推進し、その中に義勇奉公の精神があったという話。つまり、利用されたってことなんだよね。それを「全てがダメ」「賞賛するのはまかりならん」ということにしてしまった。
このロジックは武器輸出がダメという話に通ずるものがある。武器そのものがダメではなく、輸出先が問題になるという話なら分かるんだが。或いは、ヒトラー関連の話題はタブーとするアレだね。
でも、マスコミを始めとして、皆さん情報の切り取りは良くやる話。こういう特定のところだけに目くじらを立てるのは違うと思うけど。
コメント
こんにちは。
「活動家」のダメな所は、
・どうしてそうなっているのか、過去からの流れを理解出来ない(理解しようとしない)
・相手がどういう意図で、あるいはどういう気持ちでそう言っているか理解出来ない(人の話聞かない、共感出来ない)
・「今」「自分」が最優先で、それ以外の全てが排他になる(だから平気で革命起こせる)
・なので、未来に何を残すか、どうすればいいかの思想もすっからかんに抜けている(お花畑の未来ならある)
だと思ってます。
過去から学ぶべきは学び、尊ぶべきは尊ぶ、それが出来ない人は、他者の心を動かすことなど出来るはずもないのですが……
こんにちは。
「活動家」の方々、騒ぐネタあれば良いのでしょうね。
ネタの善し悪しはあまりかんがえない、呑めれば嬉しい居酒屋親父のような話ですな。