ミャンマー関連ニュースに言及するのは、本ブログでは初めてかな。過去には触れているのだけれど。
ミャンマー外務省高官が出席 ASEAN外相会議
2024年01月29日12時28分
ラオスのルアンプラバンで29日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議に、ミャンマー国軍が派遣した外務省高官が「非政治的な代表」として出席した。2021年のクーデター後、国軍側は主要な会議を欠席していた。
時事通信より
2021年に軍事クーデターが起きて、ミャンマーは民主化を断念した。民主主義が素晴らしいモノだとは言わないけれど、軍事政権もだらしないようだ。
ミャンマー国内は内戦が続く
ミャンマー国軍が劣勢
先進国では民主主義がさも「大切な価値観」というかのように扱われるのだけれども、実際はそうではない。
特に知識階級と労働者階級で大きく認識が乖離しているところでは、どちらかというと独裁主義のような形、或いは社会主義のような集団指導体制を目指した方が、色々とバランスが良いこともある。
ミャンマーはどうだったのか?について判断することは難しいが、少なくとも軍が実権を握っている現状はバランスが悪いようだ。
ミャンマー国軍が劣勢、少数民族武装勢力の攻勢で500か所の拠点陥落か…国土の7割に戦闘広がる
2024/01/28 11:30
ミャンマーで国軍がクーデターを強行し、アウン・サン・スー・チー氏の民主派政権を倒してから2月1日で3年になる。軍事政権の打倒を目指す少数民族武装勢力などが昨年10月、国軍に本格的な攻撃を仕掛け、国軍は劣勢に立たされている。国軍の空爆強化で国民の犠牲も拡大し続けており、国軍の強権統治が混乱に拍車をかけている。
讀賣新聞より
ミャンマー国軍が失敗したのは、各地に点在する少数民族を抑えることが出来なかった事だ。
昨年11月、「もう人を殺したくない」と武装勢力に投降した。民主派勢力などへの激しい弾圧に嫌気がさし、脱走や投降する国軍兵士が増えているという。
讀賣新聞より
ミャンマー国軍は各地を制圧するために、かなり強硬な武力制圧をやったようだ。
お陰で人心掌握に失敗してしまった。
国軍のトップ降ろし
少数民族武装勢力を抑えることができない国軍は、指導力のないトップに苦労しているらしい。
親軍派で「国軍トップ降ろし」の声続出…戦闘に不満か ミャンマー
2024年1月27日 7時30分
国軍によるクーデターから間もなく3年となるミャンマーで、昨秋から続く少数民族武装勢力との戦闘が全国に拡大し、国軍が劣勢に立たされている。国軍内部の不満が高まり、支持者がミンアウンフライン最高司令官を公の場で批判する異例の事態となっている。
朝日新聞より
まあ、もともと、軍事クーデターを成功させたミンアウンフライン氏は、随分と小者だったらしく、国家のトップの座に座ったモノの統治する能力は欠如していたらしい。
「最高司令官は『テロリスト』と戦うには弱腰すぎる。彼に国は統治できない」。今月10日、最大都市ヤンゴン中心部で、僧侶が数百人の支持者に訴えた。
朝日新聞より
また作戦立案能力も、随分とお粗末だったようだ。
批判の発端は、昨年10月に北東部シャン州で始まった少数民族武装勢力による国軍への一斉攻撃だ。国軍は武装勢力を「テロリスト」とみなして反撃を試みたが、多数の拠点を奪われるなど劣勢を強いられ、今月6日には中国国境に近い主要都市ラウカイを「ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)」に奪われた。
その直後、MNDAAの兵士がラウカイ周辺の仏塔をハンマーで傷つける様子を映した動画がSNSで拡散し、熱心な仏教徒が多い多数派のビルマ族の反感を買った。「国軍史上最大の降伏」と非難されるラウカイからの敗退と相まって、親軍派の怒りの矛先が国軍トップに向けられた。
朝日新聞より
2023年10月の作戦失敗が、特に大きく響いているようだね。
ミャンマーの少数民族
先ずはミャンマーの地図を紹介しておこう。
ミャンマーはかつてビルマと呼ばれた国家で、首都はラングーンからヤンゴンに改称されている。ところが、2005年にミャンマー政府は首都機能をヤンゴンからネピドーへと移転。
港に近いヤンゴンからネピドーに首都を移転した背景には、色々な事情が絡んでいると言われているが、ハッキリした事情は説明されていない。ヤンゴンが20世紀の初期にはロンドンと肩を並べるほど栄えた都市だっただけに、今でもミャンマー経済の中心地として機能している。
ネピドーは、未だに周囲に何もないような片田舎の都市であるので、新都市建設には打って付けだったようだ。
で、この首都移転の理由の一環として言われているのが、多民族国家という立ち位置に配慮したという話だ。ビルマ国内には、カチン、カヤー、カレン、チン、モン、シャン、ラカインの7民族があり、さらに134の民族に細分化すると言われるミャンマーの民族構成なのだが、最大勢力はビルマ族、次にモン族、カレン族と続くようだ。ネピドーは、カレン州、シャン州、チン州に近く、上ビルマと下ビルマの中間に位置する。民族間のパワーバランスを抑える為にも、ネピドーへの移転は都合が良かったと言われている。
これまでも自治権拡大を求めて国軍と戦ってきた北東部シャン州の少数民族武装勢力らは、国軍の弱体化を見透かすように昨年10月27日、国軍拠点への本格的な攻撃を開始した。西部や東部など他地域の少数民族武装勢力や、クーデター以来、国軍との戦闘を続けていた民主派勢力の一部も合流した。国軍は今月26日までに500か所以上の拠点を失ったとの報道がある。
戦闘地域も広がっている。調査研究機関「ミャンマー戦略政策研究所」は昨年末、クーデター以降に全土の約67%で戦闘が行われたと発表した。
讀賣新聞より
だが、ミャンマーの少数民族はミャンマーという国家への帰属意識が薄く、支那からの支援を受けているようだ。
そして、反政府勢力としてゲリラ戦を展開しているという。訳が分からないよ。
別にミャンマーに関して、何か思うところがあるわけではないのだが、結局トップの資質に欠ける人物が政権の座にいるというのが問題なのだろう。
大規模恩赦
尤も、支持の低下を気にしてはいたようで、大規模な選挙をやって民意を問う流れを約束していたし、年初には恩赦もしていた。
国軍トップ「選挙を実施」 9000人以上に恩赦―ミャンマー
2024年01月04日16時50分
クーデターで国軍が実権を握るミャンマーで4日、英国からの独立76周年を記念する式典が首都ネピドーで開かれた。国軍トップのミンアウンフライン総司令官は、声明で「選挙を実施して選出された政府に役割を引き継ぐ」と表明。だが、少数民族との武力衝突が続いており、実現は不透明だ。
時事通信より
恩赦はお手軽に支持率を集めてる手段としては有効だと言われている。ただ、この時は少数民族達に響かなかったらしく、国軍総崩れという状況になりつつある様だ。
冒頭のニュースは、そうしたことに関連した動きだと考えた方が良いだろう。
国軍は21年4月、ASEANと「暴力の即時停止」など5項目の合意をしたが大半を履行せず、主要な会議から排除された。官僚など非政治的な代表の出席は認められたが、国軍は反発して欠席していた。
時事通信より
ASEANとの合意を無視して主要会議から排除された結果、拗ねてしまって会議に出てこなくなったミャンマー国軍だが、「このままでは拙い」と考えたと言うことだ。
ただ、恩赦も会議出席も効果は薄そうである。一番の問題は、軍事業議会が各地の少数民族武装勢力を抑えることができていないことなのだから。
総崩れ
なお、2023年の失敗は軍事的な掌握の失敗を意味している。
ミャンマー 少数民族一斉攻撃で軍が守勢?鍵を握るのは中国?
2023年12月22日
おととしのクーデター後、軍が実権を握るミャンマーでいま異変が起きています。
「自らの身を守るため投降する道を選んだ。その判断に悔いはない」
少数民族の攻撃を受け、投降したミャンマー軍の大尉はこう語りました。
軍が各地で守勢に立たされ、兵士の投降が相次いでいるミャンマー。いま何が起きているのか、取材しました。
NHKニュースより
NHKのポンコツ解説を紹介しておくが、ミャンマー国軍が各地で守勢に立たされたことや、反政府勢力が手を結んで攻勢をしかけていることは事実である。そして、これに民主派勢力が合流したというのだが……。
そもそも、民主化運動の指導者と言われる、アウンサンスーチー氏はビルマ建国の父の娘であって民主化運動の旗頭に据えられているが、国家顧問に就任した2016年から2021年までに民主化が進められたかというと、さほど伸展はなかった。
むしろ、ロヒンギャを弾圧したり、政治体制をトップダウン式で維持することで実質的に独裁に近い形で政治運営をしていたりと、民主主義などとは異なる状況だったようだ。しかし、国軍を支配下に置くことに失敗したことが、クーデターの引き金を引くことに繋がる。ミンアウンフライン氏の指導力が優れていたから軍事クーデターが成功したわけではなく、アウンサンスーチー氏の政治の失敗が招いた結果だと僕は考えている。
で、ミンアウンフライン氏の指導力がないことが、少数民族武装勢力の反抗を許し、劣勢に立たされることに繋がるわけだ。今や、ミャンマー国軍は総崩れと言っていい状況だろう。
支那は国軍を支持
NHKニュースは、鍵を握っているのは支那だとしているが、正直支那の人民解放軍にミャンマーの抵抗組織を纏めて軍事政権転覆に繋げるだけの実力はない。
せいぜい武器供与くらいが関の山で、対話の場を整えるだけの政治力も支那にはない。
国際社会はミャンマーの主権尊重すべき、中国外相が軍政トップと会談
2023年5月3日午後 2:11
中国の秦剛外相は2日、ミャンマーの首都ネピドーで軍事政権トップのミンアウンフライン総司令官と会談した。秦外相は、ミャンマーが独自の発展の道を見出すことを中国は支持すると述べ、国際社会はミャンマーの主権を尊重し、平和と和解の達成を支援すべきとの認識を示した。中国外務省が3日に会談内容を発表した。
ロイターより
ミンアウンフライン氏は支那と手を握っているので、寧ろ国軍の方に支那からの支援の手が伸びている状況だ。
支那としても詐欺や麻薬関連のトラブルは困るので、国軍で抵抗勢力の力を削いで行くことが望ましいと考えていると思う。とはいえ、ミャンマー国軍としても支那の人民解放軍の力を借りて抵抗勢力を蹂躙するというわけにも行かないんだよね、国内問題だから。
と言うわけで、ミャンマーの混乱は、強い指導力を持ったカリスマがトップに立たない限りは、終息しそうにない。
追記
ちょっと気になるニュースがあったので、追記しておきたい。
ミャンマー覚醒剤汚染深刻 軍政統治及ばず、日本にも流入
1/20(土) 8:00
軍事政権の支配が揺らぐミャンマーで、少数民族武装組織の支配地域を中心に覚醒剤など違法薬物の製造が急拡大し、市民の汚染が深刻化している。「ヤーバー」と呼ばれる錠剤型の覚醒剤が1錠千チャット(実勢相場で約45円)で出回り、幅広い層が常用。周辺国を経由し日本やオーストラリアにも流入する。現地で実態を追った。
Yahooニュースより
ミャンマーなどが昔から「黄金の三角地帯」と呼ばれる程、麻薬の製造が盛んであったことは、皆さんご承知だと思う。
シャン州チャウメーで薬物中毒者を支援するティンマウンテインさんによると、2021年2月のクーデター後、軍政の統治が及ばず取り締まりが不十分な「野放し状態」。中毒者数は「2~3倍に増えた」という。2023年10月末に始まった少数民族の一斉蜂起後、状況はさらに悪化している。
Yahooニュースより
麻薬の製造で資金を確保し、反政府勢力として活動をすると。支那側の組織ともかなり繋がっているんだろうね。放置は悪手なんだけど、肝心の軍政府が対応出来ていないんだよな。
コメント
こんにちは。
スーチー氏、理想主義のお姫様で、しかもその理想主義が相当なお花畑かつ割と社会主義というか革命主義というか、民主主義や資本主義とはそこそこかけ離れていた印象が強いです。
というか、アラブやアフリカもそうですが、多民族国家は実は民主主義は向かないんですよね……必ず、人数の多い部族が政権を握るから。
こんにちは。
アウンサンスーチー氏がダメとかそういうことを言うつもりはないのです。ですが、ご指摘の通り民主主義を前面に打ち出しても国家は纏まらないのが、ミャンマーの実態なのだと思います。全体主義でも軍事国家でも、国内を平定してこそ、なんだと思いますよ。